堅城攻略戦 第三章 坑道の闇に潜む者 2 |
「ごめんなさいね、面倒な上に、本来は聞いちゃ駄目な事をお願いしてしまって」
織姫の、辺りを憚りながらの抑えた声が、図面を前に何やら話し込んでいた男たちに掛けられる。
「何を水臭い事を言いなさる、元より織姫の姐さんに救って頂いた我らの命と黒鍬者の誇り、協力できることなら何でも言って下せえ」
地図を睨みながら、周囲に指図を出していた頭領が、日に焼けた顔に不敵な笑みを浮かべる。
「まして、我らの力が、姐さんたちの戦いの助けとなるなら、寧ろ望む所……仲間や家族を手に掛けられた復讐戦の手伝いに噛ませて貰えるなら感謝しかありません、我らの力は戦でも使えましょう、もっとこき使って下さっても良いんですぜ」
頭領の言葉に、周囲の精悍な顔つきの男たちが一斉に頷く。
「ありがとう、でも、何度も言うけど妖怪と直接戦うのは私たちに任せて頂戴。貴方達の力は平和になった後にこそ生きるんだから」
織姫と鉱夫というと、実に珍妙な取り合わせに見えるだろうが、その昔、彼女が別の主に仕えていた時代に、呪術で使用する辰砂や硫黄、石英等様々な鉱物を採取する活動に同道した時に、採掘の妙味と楽しさに開眼してこちら、主と別れて後も、彼女は半ば趣味で鉱山活動を独学で極めて来た。
その伝で、この地で男性に化けて働いていた彼女が、妖怪の襲撃に際し、その正体を現して鉱夫らを統率し、鮮やかな手並みで退却を成功させてからこちら、鉱夫達からの織姫への信頼は高く、もはや信仰に近い物となっている。
「それで……情報はあったのかしら?」
織姫が慣れた様子で男たちの輪に入り、地図に目を落とす。
そこにあるのはかなり詳細な、この周辺の鉱山や川筋を記した地図。
彼ら、黒鍬と呼ばれる鉱山、治水、築城等を請け負う職人集団に門外不出で伝えられ、更新されてきた地図。
だが、その織姫の言葉に、頭領は渋い顔で首を振った。
「この辺の鉱山に関しては、坑道や掘れる物に関して、詳細の程度は兎も角ある程度はお答えできやす。 ただ、あの城の周囲のお山は、代々領主様直轄でしてね、やはり、我らの範囲ではその辺を把握してる奴は見つかりやせんでした」
「貴方たちにも判らない……かぁ」
「ええ、織姫様からお話があってからこっち、年寄にも聞いて回りましたが、坑道や出る物に関する確かな話は何も」
ただ、昔からあの山に関わって帰ってきた奴はいないという話以外は……。
「なるほど、その当時『ちょっと様子を見に行った人』も、帰ってこなかった」
「へい、まぁ、この稼業、その辺はあまり人の事は言えねぇ話ではありますが」
他人の縄張りに下手に首を突っ込む物じゃありやせん、好奇心は猫を……と言いますしね。
その頭領の言葉に、織姫の目がすっと細まる。
「金?」
「……恐らく」
ある話だ、あの堅城が代々の領主の治世のよろしきで人を集め、周辺の銅の採掘、加工による産業や交通の便の良さを生かした交易の拠点として成功して、財を成したというのは間違いないが、それとは別に、独自に資金源を保有していなければ、あれだけの城郭の維持構築は難しかろう。
直轄の金山を持っていたとすれば、頷けるところが多い。
そして、それは当然独占され、存在を隠され、子細を探ろうとする者を人知れず排除するだろう事も……。
「とはいえ、その辺は捌けた領主様でしたからね、直轄以外の鉱山に関しては、納める物納めて置けば、割と我らの好きにさせて貰えていたこともありまして、あまり危険を冒してまで、その辺を詮索しようとした奴も居なかったようで」
済まなそうな頭領に織姫は慰めるように笑み掛けて首を振った。
「領主直轄の山の話じゃ判らなくても仕方ないし、貴方達に聞いて判らないなら他に知る術も無いでしょうね、ありがとう、鞍馬にはそう報告しておくわ」
「引き続き、伝手を頼って調べは継続しますが……折角のお尋ねだってのに、姐さんの顔に泥を塗るような話しか集められず申し訳ねぇ事です」
「ああ、恐らくそうだと思っていた、彼らすら立ち入れなかった鉱山という裏付けが取れれば非常に心強い、織姫君、黒鍬の皆には、言いにくい事を尋ねて申し訳なかったと、詫びを伝えておいてくれ」
報告を終えた後に、あっさり返された鞍馬の言葉に、織姫はしばしあっけにとられた顔をしていたが、ややあって、いささか気分を害した様子で、その温順な美しい顔に似つかわしくない、険を宿した目で鞍馬を軽く睨んだ。
「貴女には判らないことが判っていた……という事なの?」
「何となくそうではないか、と思っていた程度だけどね、あの鉱山の事に関しては、少なくとも一般の間では情報が存在しないという事を、ある程度はっきりさせる必要があったのさ」
鞍馬の傍らで、ゆっくり茶を飲んでいた仙狸が、その鞍馬の言葉に低く笑った。
「先だってから面白いのう、軍師殿には、おかしくない事象がおかしく見え、今また判らないだろう事が分かっていた」
こう判じ物のような話ばかり聞かされておっては、わっちらも多少苛々はする。
にやにやしながらの仙狸の言葉を、こちらは何やら書簡を認めていた男が受けて顔を上げた。
「そうだな、鞍馬が軽薄にべらべら喋る奴じゃないのは判っているが、この辺で一度、途中経過でもいいから、少し俺たちにも話をして貰いたいな」
鞍馬は一同の顔を見渡してから、ふむ、と一つ頷いた。
「あまり予断を持たない状態で情報を集めてほしかったので、敢えて私の予想は口にしなかったのだが、そろそろ現状で得られる情報は集まってきた。確かに良い頃合いでもある、では、最近の活動の意味を説明しよう、その後、君たちの見解も聞かせて貰いたい」
居住まいをただした鞍馬が、もう一度茶で喉を湿してから口を開いた。
「端的に言うと、私が求めているのは堅城に攻め入る道だ。現状では二か所が見えている、正面、そして空からという選択肢も得られた……だが、この二つは論外だ」
鞍馬の言葉に、仙狸と男が頷く、骸骨兵団の守る二の丸三の丸跡を突破するのは不可能であるのは、最初に攻め入った時に思い知っている、そして空は……。
「空からは無理と判断した理由は? 私やおつの、天狗ちゃん、それに貴女が隙を見て潜入、敵の骸骨兵団を操る術か術者を排除し、皆を正面から迎え入れ、制圧……そんな筋書は出来ないの?」
織姫の言葉に鞍馬は渋い顔で首を振った。
「正面から攻めるよりは余程良いとは思うが、それを成功させるに際し、幾つか越えねばならない課題がある、敵が巡らせている防御に悟られず城中に潜入が可能か否か、城内の敵兵力の多寡、どんな存在が駐留しているかが不明、そして骸骨兵団を操っている術の解除は可能か否か……」
それら、必要な情報の全てが現状では不分明だし、この先も得られる見込みが薄い……そんな状態で潜入した上で、目的を達成できる、等というのは、少々見通しが甘いと言わざるを得ない。
「梁山泊の豪傑みたいな連中なら、後先考えずに突っ込んでも上手く行くのかもしれないがね」
この世は講談の世界みたいに、主人公に優しくないからね。
「というより、この世は全員が主人公で、かつ脇役みたいなもんじゃからな」
天の配剤の依怙贔屓は期待できんな、と苦笑する仙狸に、織姫も似たような顔を返す。
「まぁ、そうよね」
彼女も、それが現実的でない事はある程度承知している、ただ、鞍馬の見解を確認して置きたかった。
「そうなると、現在見えていない第三の道を探さざるを得ない……それが最近の調査活動の意味か」
男の言葉に鞍馬は頷いて言葉を続けた。
「そう、何とかしてまとまった人数の、それも直接攻撃と術に長けた式姫を組ませた状態で、あの堅城の本丸内に送り込む、その道が欲しいんだ」
堅城の中に控える存在の全容は未だ伺えないし、それを知る術も無さそうだ……であれば対応の幅を広く取った形で突入したい。
「尤もじゃな……そして、お主はそれを見出したのか?」
仙狸の言葉に、鞍馬は曖昧な顔で小さく首を振った。
「見いだせた気がする、位だがね……」
ふぅ、と小さくため息をついて鞍馬は言葉を続けた。
「最近、空を飛べる式姫達を中心に偵察してもらっていた北の砦だが、私があそこに注目したのは、あの近くに、明らかに人の作ったと思しき丘とも呼べぬ程度の土盛りが見えた事だ……鉱山近くに残土を積み上げた物があるのは不思議ではない、だがね、あの山の規模の廃坑に対して、それは小さすぎた」
鞍馬の言葉に、織姫がはっとした様子で目を見開いた。
「そうよ……あの砦は廃坑を利用したもの、廃坑になるほど採掘された鉱山にしてはあそこにある残土の量は、確かに少なすぎる」
少なくとも、あの数倍は必要な筈、何で気が付かなかったのかしら……そう織姫が呟く隣で、鞍馬は話を続けた。
「産出物が乏しい故に、早めに見切りを付けられた廃坑、という線も考えたのだが、あの鉱山は恐らくは金、もしくはそれに類する重要な鉱物を産出し、領主の重要な収入源だっただろう、そう織姫君がこの辺りを根城にしていた黒鍬衆から聞きこんでくれた時点でそれも無さそうだ……あそこはかなり掘り尽くされた上での廃坑と見て良かろう」
ならば、上空から偵察してもその存在が、この近在で確認できない掘り出された膨大な土は何処に行ったのか。
そこまで鞍馬が口にした所で、三人の顔がそれぞれ理解の色を浮かべた。
「この辺りで、それだけの土を利用しうる場所は他にはない、残土は、堅城の土壁、防塁や本丸の土台構築に使われた、故に上空からの偵察ではその痕跡は見出せぬ、という事なのじゃな」
言われてみれば確かにそうじゃが……軍師殿は一度の偵察で良く、そんな所に気が付いた物じゃな。
「ええ、そしてその残土利用の流れを考えれば、あの鉱山の入り口は堅城側にあると考えるのが自然……こちらに面している北の砦としての入り口は、寧ろ掘り過ぎて山を貫通してしまった、意図しない結果という可能性が見えてくる」
「だとすれば、北の砦は、単なる北方防御の砦というより、図らずも山を貫通して堅城に通じてしまった隧道の入り口を守る為の防御拠点が、その本質って事か……」
埋めてしまえば……という選択もあったろうが、秘密の隧道というのは、一概に不利益とも言えない。
いざともなれば、戦力を迂回させて城を包囲する連中を挟撃するなんて作戦にも使えるし、最悪時は脱出口の一つにもなる……当時の領主が、奇貨居くべしとばかりに、この隧道を生かす方向で動いた判断は頷ける。
「なるほど、あの残土の山は、こちらの入り口が開通した後に発生した物を貯めたからあの程度の量だったって事なのね……納得だわ」
いつもながら、ここにいる面々の頭の回転の良さと理解力の高さは、鞍馬にとっては居心地よく感じる一因でもある、学問としての軍略の心得は無くとも、常に劣勢を強いられてきた中でここまで戦い、勝ち残ってきたのは伊達ではないという事か。
「それで、鞍馬の次の一手は、この北の砦を抜けて堅城本丸を一気に攻めようって話……なのか?」
主の言葉に、鞍馬はうむ、と小さく口にしてから、珍しく曖昧な表情で首を振った。
「その線で考えてはいるんだが、勇み足の挙句に、逃げ道の少ない場所で行き場を失い一網打尽ではお終いだ……正直もう少し判断材料が欲しい所ではあるのさ。 所で、いすずひめ君たちに頼んでおいた、あそこの領主一族と堅城の成り立ちの情報は、まだ私も目をざっと通すしか出来ていなかったので、申し訳ないとは思ったが、こちらは仙狸君に詳細な読み込みをお願いしておいたんだが……」
説明を頼めるかな? という鞍馬の視線に、仙狸は頷いて口を開いた。
「大変面白い報告じゃったよ、こんな仕事なら、毎回引き受けたい位じゃ。 では、この報告のざっとした内容だけ説明するかの、あそこの領主は、本を辿れば黒鍬者か、それに類する鉱夫の元締めのような存在だったと見て間違いないそうじゃ、そして堅城は元々採掘、採掘品の精製、加工して東の商都に送り出す、そんな商、工を生業とする人々の拠点として誕生した場所」
金、人、物が潤沢に集まり、しかも物資を運搬する為の牛馬も常駐しているとなれば、繁栄せぬ訳がない。
自然、街道も宿場も整備され、様々な技能を持った人らが自然に行き来するようになる。
「このころはまだ、城や砦という形は無かったようじゃ、精々牛馬や生産設備を野獣や盗賊から守る為の簡単な柵があった程度」
城が出来るのはその後じゃな。
「まぁ、攻めてくる奴の存在が無けりゃ、城なんて金掛かる割に住み心地の悪い代物は要らんよな」
逆に言えば、金が集まるから、あんな化け物みたいな代物が必要になったんだろうけどな。
主の言い種に苦笑しながら、仙狸はお茶で軽く喉を湿してから話を続けた。
「主殿の言い種ではないが、近在の土豪、小領主らによる、あの地の持つ権益を奪わんとする大小の襲撃に対応したのが堅城の始まりのようじゃ。 何せ地の利も得ておる上に、元は黒鍬者や鍛冶集団の集まりじゃ、防御設備を瞬く間に構築し、潤沢な資金と物資に物を言わせて人を雇い抵抗し始めた。 そうなれば、その辺の連中では歯も立たん。 二代目が跡目を継ぐ頃には押しも押されぬ地方権力の誕生、そして、堅城もこのころに今の規模の縄張りがおおよそは出来上がったようじゃ」
城下町が先で、その空間を守る為に後から砦が出来上がった、そんな感じじゃな。
「と……この辺りまでの話はざっくり百年以上前の話となる、書き物の類が集めきれず、土地の古老の更に祖父時代の言い伝えが主となってしまった故、まぁ、この変までの話は話半分位が良かろうと、これはいすず殿の添え書きじゃ」
その言葉に一同が苦笑する。
古い話は断片的な情報のつなぎ合わせになるのが基本である、それがあまりに整合性のある話になっている場合は、作話の匂いが強くなる、話者の意図は兎も角、その伝承が実態からどれだけ歪んでるか知れたものではない。
「それでも、情報は集め、それに依って行動を決めていかねばならない、というのが軍師や学者や政を行う者の辛い所だがね」
先を頼む、という鞍馬の言葉に、仙狸は頷き返し、口を開いた。
「その後の話は、記憶が近くなってくる上に、色々な所から話が集められるだけに、それなりに信憑性が上がってくる。 三代目の頃には相応しい名前が欲しくなったのと、ちゃんとした武士、領主としての立場があった方が、一国一城の主としては良い事に気が付いたんじゃろう、毛並みの良い武家と縁戚関係になり、四代目の頃には家格も歴とした武家で通じる物になっていき、五代目にて、現在の領域がほぼ確定」
で、この五代目の頃に一つ転機が有ったようじゃ。
「転機って?」
織姫の言葉に仙狸が若干渋い表情を返す。
「堅城の今の姿への拡張と、軍事力の伸張」
「ふむ」
そこは、私も気になっていた。
そう小さく呟いて、鞍馬は何か考えるように細い頤に指を添えた。
「その時点で、城館としては十分な物が構築されており、領域内、周辺部も安定しておった、更に防備を固めた意図が良く判らぬ……まぁ、根拠地の防備は固い程安心にも繋がる、自然な情の内と言えばそれまでじゃが」
どうも狙いが読めぬ感は否めぬな、そう呟いてから仙狸は後を続けた。
「城の規模拡張に伴い、精兵を集め、かなりの数の兵を常駐させるようになった、だがこちらも防備を固める為に使われ、侵攻に出たという事例はないのう」
これに関しては、周辺領や村落では、堅城の動きに対して警戒を強め、偵察、監視を強化したという庄屋の日記なども複数確認できたそうじゃ、まぁ確かな話だとみて良いじゃろう。
「何故か、人相手には過剰な程の防備を固めだした、か」
「だが、その過剰な備えはある意味正しかった、あの城は人ではなく妖怪の手によって失陥したのだから」
鞍馬の言葉に、一同がそれぞれあいまいな表情を浮かべる。
それは何らかの予兆や知見があったのか、それとも単なる偶然なのか。
「まぁ、その後も防備を固め続ける流れは続いたようじゃが、今の六代目にして妖の襲撃により滅亡となった、現在まで領主殿の血筋の生存は、この近辺では確認されておらぬ」
固めた堅城の守りと兵団、そして最後まで領主殿自ら陣頭で防戦に努めるなど、相当頑健に抵抗してくれたようじゃな、お陰で領内の人や物の被害はこれにより最小の物となり、奴らの侵攻を遅らせてくれた事が、今のわっちらの反攻に繋がっておると思えば、領主殿達の備えはありがたい話ではあったと言えような。
「そうね、そうでなければ、私や仙狸が、この宿場に人や式姫を集めて妖怪に抵抗していた戦いも、ご主人様の助けも間に合わず制圧されていた可能性は高い」
「そうじゃな……妖怪相手に、恐らく絶望的な戦いであったろうに、全く、頭が下がる思いじゃよ」
長い話を終えて、仙狸は一つ息をついた。
「以上、わっちがかなり端折ったが、ざっとそんな所が、いすずひめ殿が自身の知識と近在の知人縁者に聞きこんでくれた物を纏めた報告書の内容じゃ。 中身を精読すれば、わっちの雑な要約とは比較にもならん程の詳細な人間関係の相関と考察もなされておる。 主殿よ、これはこの近在における権力者関連の途方もない人脈情報の宝庫じゃぞ」
今回の戦ばかりではない、後で何かと役に立つじゃろうから、主殿も目を通して置くとよい、そんな風に言われ分厚い書簡を手渡された男が露骨にげんなりした表情を浮かべる。
「必要なのは分かるんだが、どうもこの手の系図眺めるのは苦手だ、覚えてられねぇ」
根本的に、俺は他人がくっ付こうが離れようが、どうでも良いんだよな……。
ぶつくさとぼやきながら頭をかき回す主を、面白そうに眺めていた鞍馬が、若干表情を改めた。
「主君、人間関係は軍略、政略を練る上で極めて重要な判断材料になる、興味が無いのは判るが、把握はしておいて欲しい」
君の歩もうとしている、人相手には武力での介入をしない方針を貫くには、かなり繊細な調略が必要になるのだよ。
「……判ったよ、仕事として把握する事にする」
不承不承の体で頷く男の顔を、しばしにやにや見ていた仙狸が、鞍馬に真面目な顔を向けた。
「やはり、この報告内で一番気になるのは五代目以降、なぜ堅城の防備を固めだしたかじゃが」
軍師殿の意見は?
「そうだな、色々考えたいところだが、その前にもう少し事実関係、せめて彼らが何かを知った事で防備を固める事を決めたのか、良くある安心感を得るための過剰な防備だったのか……それだけでも知りたい所だ」
「そうね、とはいえ、いすずひめの調査で判らなかった事が、そうそう直ぐに調べられるとも思えないけど」
織姫の言葉に、鞍馬が渋い顔で頷く。
「君の言う通りさ、十全な情報と準備をした上で行動に移るのは理想だが、巧遅を求めて機を失うの愚は、軍略を生業とする者が真っ先に戒められる事だからね、いすずひめ君には引き続きその辺りの調査を継続してもらうよう伝えるとして、こちらも動きは掛けねばなるまい」
さて、どうするか。
■織姫
なぜ採掘マスターなのかは、公式様の4コマをご参照下さい。
始まりはゲーム内で素材を集めるのに、鉱石掘りで良く使われたキャラが織姫様だった所から始まったネタなのですが、話が進むにつれ、唯一無二の個性になった辺り、キャラは育つんだなぁと感心した記憶があります。
なお、彼女は慈愛マスターでも有ります……慈愛とは。
説明 | ||
「堅城攻略戦」でタグを付けていきますので、今後シリーズの過去作に関してはタグにて辿って下さい。 今回延々と説明会です…… |
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コメント | ||
>>OPAMさん ありがとうございます、どうしてもこういう回は必要なんですが、少しでも楽しんで読んで頂けてたら良かったです。(野良) 説明会(回)いいじゃないですか。前回と同様に一般の人々と式姫の接点や関係性が書かれたうえで次の戦いの作戦の話に入ってもらえると、今は戦場となっている場所も普通の人々が暮らしていた歴史があって・・・と説明会のおかげでその土地が身近に感じられて場所というか世界そのものに感情移入するような感じで読んでいます。(OPAM) |
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