真なる世界へ プロローグ
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真なる世界へ プロローグ

 

「・・・・・」

手頃な芝生に寝転がり、空を見る。

少し、眩しい・・・。

思えばあの事件からこの数か月・・・あるいは数年なのか、何をして来たのかあまり覚えていない。

ただぼんやりと、しかし実感をもって言えるのは俺があの時より強くなっていることか。

あの時の俺は満足に戦えるはずもなく、ただ、ソレらを見ていただけだった。

そんな脆弱な自分に嫌気がさし、戻ってきた今じゃ鍛練の毎日。

・・・でも、あの所にはもう、戻れない。

俺が思い描いた世界には、彼女たちがいない。

苦楽を共にし、時には笑い、時には戦ったりした、大切な仲間たちが。

俺はあの世界に存在しない筈の異邦人・・・ファクターだった。

本来は正史になる筈の歴史が俺という存在が加わったことでそれは外史となってしまった。

そして、その外史となってしまった歴史の結末は―――再構成。

最後の世界の判決で『肯定』となり再構成が始まった世界は崩壊を迎えた。

勿論、再構成だから、必要とされない存在は消される。あの三人も含め、俺もだが。

その中の一人―絶対的対となる存在―である蝶蝉と名乗る漢女が俺に言ったのだ。

『思い描きなさい。貴方が思う世界を』

消される側になったとしても、俺は彼女達と居たかった。だから、俺は願う。

彼女達がいる世界をもう一度―――。

 

だが。

 

世界は俺の願いを聞き入れてはくれなかった。

目がさめれば、俺が元いた世界に「近い」世界だった。

周りを見渡してもだれもおらず、探しても、どこにもいなかった。

 

――向こうの世界は再構成に成功したのだろうか?

世界に一人、ともいえる状態で俺はぼんやりとそんな事を思っていた。

 

そしてこっちの世界は無秩序に時間が過ぎていく。

何事も変わることなく、ただただ過ぎていく。

・・・しかし、不思議なもので・・・どういうワケか、俺は鍛練を始めた。

前の世界での罪滅ぼし・・・というわけなのか、無意識に強さを求めた。

あの時、俺が弱かったから、守れる筈の者さえ、満足に守れなかった。

――何も、全て守る、なんて事は言わない。自分が守れる範囲の者を守りたかった。

 

「・・・くそっ」

腹の奥底で煮えたぎる『熱』・・・これは自分に対しての、怒りだ。

休んでいた鍛練をふたたび開始する。

 

そして。

 

ただひたすらに強さを求た、ある日。

 

「お久しぶり、ねん」

聞き覚えのある、カマ口調で猛獣を連想させるような声。

思い当たるのは一人しか知らない。

「貂蝉・・・」

振り向けばあの時と全く変わらぬ姿で現れた巨大漢女。

「・・・誰だ?」

それと、隣に知らぬ漢女が居た。

左右対称に跳ね上がった長い鬚にハイグレ一丁、それに黒衣の外套を羽織っていた。

「儂か?儂は卑弥呼という。」

卑弥呼と名乗った漢女もまた、貂蝉と同じ存在だという。

「・・・でも、ご主人様、結構変わったわね。」

「・・・そうか?」

「ええ、昔の貴方は、そんなに力を求めた人ではなかったわ。」

「・・・そう、だったけ」

昔、か。

改めて思う。俺がこっちに飛ばされたからどれだけの時間がたったのだろうか。

「それで、今回はどうしたんだ?」

「ふむ、一応そちのオノコにとっては吉報、なのかはわからんが・・・・」

長い鬚を弄りながら卑弥呼が言い淀む。

「・・・吉報?」

「ええ・・・・実は」

卑弥呼に続いて貂蝉が後を紡ぐように言った。

 

「世界は再構築されたわ。 もう一度、乱世を治めに、一緒に来ない?」

 

「・・・え?」

一瞬、聞き間違いかと思った。 ・・・再構築、だって?

「再構築・・・だって?」

「ええ。といってもご主人さまの知っている人は皆変わっていない。安心して」

「そう・・・・か」

一瞬のことで驚いてしまったが・・・そうか。世界は肯定したのか。

「オノコが驚くの無理はないわい。

 再構成とは元あったものを崩して、同じものから作り出すが、再構築はそれらを足して加えられたもの。

 かといってソレが別のものになっていないとも限られんがな」

「説明不足だったわ。 で、どうかしら?」

「・・・決まってる」

突然のことで驚いたが来ない、というなら返事は一つ。

「行くさ・・・もう一度、彼女たちに会う為にな。」

「うふふ、思っていた通りねん。 さぁ、新たな世界へと、行きましょう」

「ああ」

 

貂蝉が腕を振るうと見覚えのある光が現れた。

「これは・・・」

「ええ、ご主人様が初めて向こうの世界に行った時と同じ光よ」

「がはは。なに、恐れることはないぞ! とう!!」

そういって卑弥呼は元気よく光の中へと飛び込んだ。

「あぁ、そういうことだったのね! 抜け駆けは許さないわよ!!」

同じく貂蝉も後に続く・・・かと思えばくるりとこちらに向き。

「はい、ご主人様」

すっ、と刀を渡された。

その刀は日本刀に近いのだが、柄の先端が丸い。よく見れば、虎、龍、鳳凰、亀・・・?などの四聖獣の絵柄がかたどられていた。

「神星刀(じんせいとう)・・・とでも呼んでおきましょうか。」

「・・・・」

鞘から抜き出し、軽く振ってみる。 神星刀とよばれた刀は驚くほど軽く、俺の手に馴染んでいた。

「その刀はアーティファクトと呼ばれるものよ。今回に限って貰ってきたわ。

 それはご主人様の武器にして。」

「・・・ああ、ありがとう」

「・・・・うふふ」

「・・・・?」

貂蝉がこちらをみて笑っていた。

「どうした?」

「・・・最初に会ったとき、変わった、なんていったけど・・・根はまったく変わってないのね」

「どういう意味なんだ・・・・?」

「その刀はね、使い手を選ぶ刀なの。

 神星刀は持ち主の願いをかなえる事が出来るんだけど、その願いが邪なものだったりすると刀は錆びれ、使えないものになってしまう・・・。

 故に、持つ時から持ち主の相手の心を読み、適格者かどうかみるの。 それに、ほら。」

貂蝉が指したところを見ると、例の3つの絵柄が鈍く光っていた。

「光っているでしょう?神星刀がご主人様を主と認めた証拠」

「・・・・」

「もしかしたらもう一度、ご主人様は乱世を治める者として降り立つのかもしれない

 そしたらこの刀はご主人様の手助けをしてくれるはずよ。」

「・・・ありがとう、貂蝉」

「うふ。愛しのご主人様のためだもの。 さて、いきましょうか」

「ああ!」

貂蝉に続き、光に飛び込む。

 

・・・こうして、俺の戦いはもう一度、幕を開けるのだった―――

説明
初投稿になります。
直感で書いた感じがあるのでおかしい点がいくつかあるとおもいますが・・・。
どうか 広い心でおねがいします。
尚、このSSでは一部オリジナルが含まれますので、ご了承を。
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コメント
ふむ 絵が4つあって光ってるのが3つってのが気になる所ですな(竜我 雷)
ウィキペディアによると、鳳凰は4霊の瑞獣の1つだそうです。(麒麟・鳳凰・霊亀・応竜)を4神と呼ぶこともあるとか・・よく「青龍、朱雀、白虎、玄武」を四聖獣という「造語」を用いるとか(nayuki78)
これからの展開に期待してます。(pandora)
BUTEND→BAD ENDの新・・・げふんげふん。今後に期待させていただきます(nayuki78)
四聖獣ってたしか鳳凰は入っていないはずですよ。(ブックマン)
BUT ENDて何ぞwwww(ジョン五郎)
無印でのBUT END でしょうか・・・。 願った世界には一刀しかいなかった という設定です。 私の設定では無印→真 となる予定です。(AKNESS)
一刀だけの無印END後の話ですか?(森番長)
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真・恋姫†無双 北郷一刀 真なる世界へ 

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