恋姫英雄譚 鎮魂の修羅58
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桂花「・・・・・という事にございます」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

このイレギュラーには、華琳も呆気に取られるしかなかった

 

麗春「申し訳ありませぬ、こちらの判断で事を処理させていただきました・・・・・いかような罰も受けましょう」

 

華琳「・・・・・いいえ、よくやってくれたわ」

 

虎豹騎を連れて行かなかったのは、自分の判断である

 

潼関の戦いで一刀の力を目の当たりにし、それに頼り過ぎるのは良くないと判断したが故だ

 

一刀が居たから、天の御遣いが居たから勝てた、逆に言えば天の御遣いが居なければ勝てない、などといった風評を避ける為である

 

楼杏「まさか、私達の留守中にそのようなことが・・・・・」

 

風鈴「これは、予想だにしていなかったわね・・・・・」

 

頃「・・・・・・・・・・」

 

瑞姫「・・・・・・・・・・」

 

今回の洛陽の討伐には、元官軍の面子も参加していた

 

元将軍と大将軍と何太后であるため説得を試みてのことであるが、彼らはそんなもの意にも返さず裏切り者の烙印を押してきた

 

これは説得など無意味と判断し、武力鎮圧を慣行

 

しかし、決起した文官達が率いる兵達は、元々反董卓連合で頃達が率いていた兵が大半であった

 

文官達の大義名分がどう考えても利権目当てであることは知れているため、殆どは文官達の命令に従わず曹操軍に道を開けるばかりだった

 

文官達は悪態をつきながら次々と討ち果たされ、洛陽の討伐は一日と経たずに終了

 

一番時間が掛かったのはその後始末という、何とも張り合いの無いものだった

 

春蘭「くっそ〜、なんて羨ましい、私も呂布と刃を交えたかったぞ!!」

 

秋蘭「姉者、それは我が儘というものだ」

 

綾香「ええ、全ての巡り合わせが自分に訪れるなどと思ってはなりません」

 

今回の件は、虎豹騎を陳留に置いてきたからこそ対応出来たと言っていい

 

文句を言う筋合いなど無い、寧ろこれだけの損害に抑えられたのは労うべき快挙といえる

 

一刀「そうイウことだ、呂布ハ俺が殺しタ」

 

戦闘装束の上半身を肩にかけ右腕を固定し、全身切り傷だらけの一刀の姿は一騎打ちの激しさを物語る

 

右手は重傷で、完全に治るにはどれだけかかるか分からない

 

加え回天丹田を三回行使し全身の筋肉が断裂状態なため、暫くまともに動くことは出来そうにない

 

華琳「そう、ご苦労だったわ・・・・・しかし一刀、一つだけ言いたいことがあるわ」

 

一刀「何ダ」

 

華琳「あなたは、呂布を殺したと言っているけど・・・・・そこに立っているのは、誰なのかしら?」

 

報告をする一同の後ろを見ると

 

恋「・・・・・・・・・・」

 

そこには、自分の足でしっかり立っている天下無双が居た

 

春蘭「おい、何が呂布は俺が殺しただ、ピンシャンしているではないか!!」

 

秋蘭「ああ、これは何の茶番だ?」

 

綾香「一刀君、ふざけているのですか?」

 

あの後、下?城の水堀に落とされた恋は、急いで駆け付けた霞、雅、氷環、炉青に救出された

 

吐血量が酷かったためどうなるかと思われたが、こうして生き残ることが出来ていた

 

どうにも状況が呑み込めない一同だったが

 

一刀「ふざケテなんかイナい、呂布は俺ガ殺しタ」

 

春蘭「だから、その呂布が目の前にいるではないか、これ以上愚弄するなら容赦せんぞ!!!」

 

一刀「・・・・・見せテヤれ」

 

恋「・・・・・(コク)」

 

促され、新米の兵が装備する初期の剣を手渡される

 

すると

 

恋「うっ、ぅぅ・・・・・」

 

まるで、重さが百キロもあるものを手にするかのように、恋は剣を床に引き摺った

 

氷環「隊長様の仰る通りですわ、呂布奉先は隊長様が殺しました」

 

炉青「ここにいるのは、皆さんの知っている天下無双の恋さんではないどす、ただの恋さんどす」

 

菖蒲「はい、一刀様の言葉に間違いはありません」

 

あの一撃によるダメージで、恋の中の呂布奉先は死んだ

 

乱世の奸雄、天下無双と謳われた存在はもう居ない、恋はもはや戦えない体となったのだ

 

「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」

 

これには、一同もショックを隠せなかった

 

かつての飛将軍を見ることは、もう叶わない

 

目の前のひ弱な、ただの少女と成り果てた恋を、ただただ痛々しく見ることしか出来なかった

 

霞「そういうことや、せやからこれからは、恋の代わりはウチらがするで」

 

秋蘭「簡単に言ってくれるものだ」

 

春蘭「そうだ、この呂布と同等の働きをお前達が出来るとでもいうのか?」

 

雅「どこまで穴埋め出来るかは分らんが、恋の分までこの華雄を使ってくれて構わない」

 

華琳「そこまで言うのであれば・・・・・その言、真かどうか示してもらいましょう」

 

かつて、張遼と華雄を口説いてみせると豪語していたが、それがこんな形で我が陣営に参加する事になるとは思いもしていなかった

 

表向きは自信満々な覇王を装ってはいるが、力を失った恋を見ると内心では痛み分けな気持ちが大半を占めていた

 

楼杏「恋についての処遇は置いておくとして、ねねはこれからどうするのよ?」

 

風鈴「ええ、ねねちゃんは身の振り方を考えているの?」

 

音々音「ねねは、どんなことがあろうとも恋殿に付いて行くのですぞ!」

 

頃「付いて行くと言っても、恋がこの有様ではどうにもならんだろう、軍師として功を上げることは出来んぞ」

 

瑞姫「こう言っちゃなんだけど、この覇王は穀潰しを何より嫌うわよ・・・・・」

 

音々音「そ、それは・・・・・これから考えるのです、これからはねねが恋殿を養いますぞ!!」

 

威勢よく振舞うが、内心では焦りまくりだった

 

これまで恋の武に頼り切っていた側面があるため、いざ立場が逆転するとどうすればいいか分からなかった

 

一刀「話は終ワッタか、なら俺は休マセテもらうゾ」

 

華琳「待ちなさい、一刀!!」

 

玉座の間を出ていこうとする一刀を止める華琳

 

その表情は、焦りを見え隠れさせていた

 

華琳「一体どうしたの、そのしゃべり方!」

 

綾香「ええ、氣もどう考えてもおかしなことになっていますよ!」

 

恋を打倒した直後から、一刀の発音は明らかに異常なものとなっていた

 

かろうじて聞き取れるが、所々が更に低音となり、抜け落ちた感情が更に無くなり片言が挟まったように聞こえる

 

邪気は更に色濃くなり、立ち上りつつもユラユラと不安定な動きを見せている

 

一刀「ドウデモいいことをイチイチ気にするな、お前タチニハ、他に気ヲ配ルことがアルだろう」

 

「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」

 

玉座の間を去る一刀の後を菖蒲、氷環、炉青が続く

 

戦えば戦うほどに堕ちていく、そう思わせる天の御遣いに畏怖しか感じなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから、陳留は地盤固めの為の内政に入る

 

来たる更なる強敵に備え、国力を蓄えていく

 

綾香は一刀の怪我の具合から、半年の療養を指示した

 

当初は、そんなことはどうでもいい、と拒否していた一刀だが地盤固めが丁度半年間の予定で、それまでは英気を養うように、と命令を下される

 

周りへの示しもあり、半ば強制的に従わされた

 

とはいえ、重大な怪我は右手のみである

 

回天丹田によるダメージも無視は出来ないが、まったく動けないほどではない

 

このままでは体が鈍る一方なので、一刀は運動と称して自室を出ることとする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・お前達、仕事はドウシタ」

 

菖蒲「今日は、虎豹騎の訓練はお休みです♪」

 

氷環「はい、ですから今日一日は隊長様とお出掛けできますわ♪」

 

炉青「あに様と逢引、ずっとやりたかったどす♪」

 

斗詩「一刀様、わ、私も連れて行っていただけますか!?///////」

 

猪々子「あたいも連れて行ってくれよ、兄貴〜♪」

 

悠「一刀、あたしと一緒に、世界最速の浪漫飛行(ドライブ)に行かないか〜♪」

 

どこから嗅ぎ付けたのか、廊下で虎豹騎のお供達に取り囲まれる

 

一刀「俺は行キタイ所に行くダケだ、付イテ来たけレバ勝手に付イテこい」

 

そっけない態度を返すも、お供達は嬉しそうに後を付いて行く

 

廊下を歩いていき最初に差し掛かったのは

 

桂花「何度言ったら分かるの、そこはそうじゃないわよ」

 

美羽「ううぅ〜〜、難しいのじゃ〜〜・・・・・」

 

七乃「お嬢様、頑張ってください・・・・・」

 

風鈴「この問題は、流石に難しいんじゃない?」

 

美羽の勉強部屋であったのだが、中から桂花と風鈴の声が聞こえてきた

 

桂花「この程度で何を言っているの、そんな調子じゃ三年なんて期限、あっと言う間に過ぎるわよ」

 

七乃「でも、風鈴さんの言う通り、お嬢様の年で、これはいくらなんでも・・・・・」

 

桂花「教えてほしいと言ってきたのはそっちじゃない、文句を言うなら他を当りなさい」

 

美羽「も、文句など無いのじゃ、桂花の教授を受けられて、幸せなのじゃ!」

 

桂花「最初からそう言えばいいのよ」

 

どうやら、桂花と風鈴に教えを乞うているようだ

 

王座の才と劉備、公孫?の師なら良いチョイスと言えよう

 

斗詩「あれ、入らないんですか、一刀様?」

 

猪々子「せっかくだし、話していけばいいじゃないか」

 

一刀「下手に声をカケテモ迷惑だ、美羽ニハ時間が無いんダ」

 

悠「だな、邪魔をするのも無粋だ」

 

そして、何事も無かったかのように、一同は美羽の勉強部屋をスルーしていった

 

風鈴「・・・・・それにしても、どうして美羽ちゃんはそこまで頑張るの?」

 

桂花「そうね、それは私も気になっていたわ、確かにこの勉強内容も美羽の年にしては、不釣り合いな所があるわ・・・・・そんなに袁家に未練があるの?正直そこまで拘るほど価値のある家名とは思えないけど」

 

美羽「それもあるのじゃが・・・・・妾が一番気に掛けているのは、一刀なのじゃ・・・・・」

 

桂花「は、なんであいつの名前が出てくるのよ!?」

 

美羽「妾達は、一刀に酷い仕打ちをしたのじゃ、これはその罪滅ぼしなのじゃ・・・・・」

 

七乃「ええ、元はと言えば、私達が原因でもありますから・・・・・」

 

風鈴「そうね、一刀君がああなってしまったのは、私達の連帯責任でもあるものね・・・・・」

 

桂花「何あんた達まで美羽に感化されているのよ!?あれはあいつの自己責任じゃない!」

 

美羽「何でそんなことを言うのじゃ!!?事の発端は、妾達なのじゃ!!」

 

七乃「一刀さんの提案を蹴ったのが、そもそもの始まりですからね・・・・・」

 

桂花「あんなもの完全に善意の押し付けじゃない、悪意より質が悪いったらないわ!!」

 

風鈴「桂花ちゃん、それは悪意ならいくらでも押し付けてもいい、という解釈で構わないかしら?」

 

桂花「何でそんな解釈になるのよ!!?あんた本当に私塾の講師だったの!!?」

 

風鈴「講師とて、こういった極端な問答も必要よ、でなければ生徒を悟らせることが出来ない場合もあるのですから」

 

桂花「・・・・・・・・・・」

 

まるで一生徒に逆戻りしたかのような気分であるが、風鈴の言にも一理ある

 

一世代前の将軍だけあって、その経験値と貫禄は認めざるを得ない

 

これも一つの勉強と割り切ることにした

 

桂花「・・・・・ええそうよ、あいつがああなったのは私にも少なからず原因がある、それは認めるわ・・・・・けどね、そんなことを言い出したら私達に何が出来るのよ、いちいちそんな事を気にしていたら、為政者は表も歩けなくなるわ」

 

風鈴「・・・・・まぁ、それも分かるわ、権力無き為政者なんて、為政者足りえないもの」

 

桂花「覇道を歩む、それは悪意の押し付けに限りなく近いものよ・・・・・しかし、乱世の平定という目的がある以上、それは善意とも言えるのだから」

 

七乃「えっと〜、それって桂花さんが最初に言った善意の押し付けなんじゃ・・・・・」

 

桂花「分かっているわよそんな事、そういった道徳と反道徳の狭間で藻?き苦しむのが為政者の役目であり、それを真正面から受け止め耐えるのが器というものなのよ!」

 

風鈴「・・・・・ええ、私も漢帝国将軍を歴任したから、為政者の立場は嫌というほど知っているわ」

 

桂花「美羽、袁家を復興させるなら、あんたは将来、嫌でも政に携わることになるでしょう、だから今のうちに覚えておきなさい、為政者の心構えというものを」

 

風鈴「ただし、一刀君に対するその気持ち、決して忘れてはならないわ、でなければあなたは、あの南陽でのあなたに逆戻りしてしまうのですから」

 

美羽「・・・・・分かったのじゃ、妾もあの時には戻りとうないのじゃ」

 

七乃「大丈夫です、私がそんな事にはさせません、私と巴さんがついていますからね、お嬢様・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霞「おうらあああああああああああ!!!」

 

春蘭「どうりゃあああああああああ!!!」

 

凪「はあああああああああああああ!!!」

 

雅「ふむ、なかなかの動き・・・・・だがまだ甘い!!!」

 

凪「ぐうううう!!」

 

巴「霞と春蘭は流石ですね・・・・・ふむ、凪の動きは一刀に似ていますが、彼ほどの切れはありません、今はまだ雅の方が上ですね」

 

真桜「あかん、春蘭様と姉さんの動き、まるで見えへん・・・・・」

 

沙和「凪ちゃんがあそこまで苦戦するなんて・・・・・やっぱり世の中は広いの〜・・・・・」

 

次に訪れたのは闘技場だった

 

霞と春蘭が、凪と雅がそれぞれ試合をし、巴と真桜と沙和が片隅でそれを見学している

 

流石に今の体の状態でこの中に混ざるのは無謀なので、再びスルーを慣行

 

だが

 

春蘭「ん・・・・・おお、北郷ではないか!!」

 

霞「なんやて、一刀!?」

 

凪「か、一刀様!?」

 

雅「一刀?」

 

無駄に良い目の曹孟徳の懐刀が視界の端に一刀を発見し、一同が一斉に振り向く

 

二回目のスルーは失敗してしまったようだ

 

巴「一刀、もう怪我は大丈夫なのですか?」

 

霞「どう考えても大丈夫じゃなさそうやな・・・・・」

 

雅「ああ、歩いて平気なのか?・・・・・」

 

炉青「平気なわけないどすやろ」

 

氷環「ええ、暫くは隊長様との試合は禁止です、特に春蘭さんと霞さん」

 

春蘭「ちょっと待てぇ!!」

 

霞「なんでウチ等だけ名指しで注意されんとあかんねん!!?」

 

斗詩「そこはまぁ・・・・・」

 

猪々子「心当たり、あるんじゃね?」

 

悠「自分の胸に聞いてみな」

 

相変わらず右手を固定し、顔以外の殆どに包帯を巻いた姿を一刀は晒しているのである

 

とても戦闘が出来る状態には見えなかった

 

真桜「聞いた話によると、かなりの激闘だったらしいからな・・・・・」

 

沙和「うん、橋が滅茶滅茶になったらしいし・・・・・」

 

凪「一刀様と恋様の戦い、見れなかったことが悔やまれます・・・・・」

 

三羽烏も洛陽討伐に参加していたため、口伝でしか天の遣いと天下無双の戦いを知らなかった

 

一刀「そいつハスマナカったな、見セラれれば、お前達にもイイ刺激になっタロウニ」

 

凪「あ、いや、その・・・・・」

 

一刀「お前達ニハ、コレから腐ルホド死体の山ヲ築いてモラウンダからな、モッタイナイことをシタ」

 

霞「・・・・・ほんま、どないしてまったんや、一刀」

 

雅「一体何がお前をそこまで変えた・・・・・」

 

一刀「気付いタンダよ、俺のしてきタコト全てガ、取り返シノツカない過ちだっタコトニ」

 

斗詩「一刀様は、覚悟を決められたのです」

 

猪々子「あたいは、なにがあっても兄貴に付いて行くだけだ」

 

一刀「雅、かツテ前に下ラナイ武人ノ在リ方なンテモのを吹き込んでシマッタ、アレハ全て忘レロ・・・・・霞、お前はコレカラこの世の天辺を好きナダケ目指せバイイ」

 

あの旅の最中、この二人に生意気にも武人がどうあるべきかなんて説教たらしく問うてしまった

 

スポーツの世界大会?ワールドカップ?平和の祭典オリンピック、パラリンピック?

 

全てが下らない

 

大体これらは、戦争の代わりにしている代物である

 

戦争に振り分けられるエネルギーをスポーツで発散しているだけにすぎない

 

余りに誤魔化しが過ぎる、見ていて痛々しいほどだ

 

そんな遠回しな誤魔化しをするぐらいなら、戦争でお互いに殺し合い憎しみ合う方が、よほど真っすぐで健全である

 

一刀「お前達ニハ、ツクヅク無駄な時間ヲ過ごさセテシマった・・・・・スマナカったな」

 

悠「・・・・・んじゃ、そういうこって」

 

謝罪の言葉を最後に、一刀はお供達と闘技場を後にした

 

巴「・・・・・霞、雅、今の一刀を以前の一刀と思ってはなりません、彼は変わってしまったのです」

 

霞「いやいやいやいや、変わり過ぎやろ!!」

 

雅「覚悟を決めたと言っていたが、あれはその域を超えているとしか思えん・・・・・」

 

凪「私が、あんなことを言わなければ・・・・・」

 

沙和「凪ちゃんのせいじゃないの〜・・・・・」

 

真桜「せやな、遅かれ早かれああなっとったと思うで・・・・・」

 

霞「あれもある意味、この世の天辺なんやろうけどな」

 

春蘭「この世の天辺?今さっき北郷も言っていたが、一体何のことだ?」

 

霞「ああ、ウチの夢は、武でこの世の天辺をとることや、それは今でも変わらんで」

 

春蘭「・・・・・かつて私も、霞と同じものを目指していたが、今となってはどうでもいいものだな」

 

霞「は?武人やったら最強目指すもんやろ、当然の話やろが」

 

春蘭「お前は、自分以外の全ての人間を滅ぼすつもりか?」

 

霞「な、なんやて・・・・・」

 

春蘭「そうでもしない限り、この世の天辺に至ることなど出来んと言っているのだ」

 

雅「・・・・・まぁ、それが真理であろうな」

 

巴「それは、かつて一刀に言われたのですか?」

 

春蘭「ああ、この言葉で私は悟った・・・・・最強に至る道など無いことに・・・・・」

 

霞「ほんなら、なんで春蘭はこないな稽古してんねん」

 

春蘭「私の目標は、あくまで華琳様の剣であること、そうあり続けることだ、それ以上でもそれ以下でもない」

 

霞「それって現状維持やろ、衰退と変わらへんで」

 

春蘭「構わん、それで華琳様のお役に立てるなら、それでいいと割り切るまでだ」

 

雅「ふむ、見上げた忠誠心だ、見習うべき姿勢である」

 

霞「それでも腕は上げておくべきやろ、周りに付いて行けんくなったらことやで」

 

巴「それも否定出来ません・・・・・だからこそ、以前の一刀の言葉が突き刺さるのです」

 

霞「まぁ、乱世で名を馳せた稀代の英雄も、平和な世ではただの大量殺戮者でしかあらへんしな・・・・・」

 

巴「ええ、狡兎死して走狗烹らる・・・・・です」

 

雅「耳の痛い話であるな・・・・・」

 

春蘭「・・・・・まったくだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猪々子「なあ兄貴、そろそろどこに行くのか教えてくんないか?」

 

悠「ああ、別にぶらぶら徘徊しているってわけでもないだろ」

 

一刀「付いてクレバ分かル」

 

ぶっきら棒な受け答えであるが、それでもお供達は嬉しそうに後を付いて行く

 

その時

 

華琳「いい二人とも、これも必要なことよ」

 

綾香「ええ、どうか割り切ることを覚えてください」

 

季衣「そんなことを言われても・・・・・」

 

流琉「はい、どうしても納得いきません・・・・・」

 

頃「お主達が納得するしないの問題ではないぞ」

 

瑞姫「世の中は割り切りの連続なんだから、難しく考えるだけ損よ」

 

玉座の間に差し掛かり、中から声が聞こえてきた

 

どうやら、ちびっこ二人に教育が施されているようだ

 

氷環「あれは、季衣ちゃんですわね」

 

炉青「流琉ちゃんもいるどす、声をかけないどすか?」

 

一刀「かけタケレばかけれバイイ、俺は用がアル所に行くダケダ」

 

氷環「いいえ、私は隊長様に付き従いますわ」

 

炉青「一緒に行くどす!」

 

バレない様、来た道を引き返し別ルートで目的地へ進む

 

今度のスルーは成功したようだ

 

流琉「それなら、私達が早く乱世を終わらせればいいという事ですよね!?」

 

季衣「うん、僕頑張る、兄ちゃんの為にも、早く戦いを終わらせるよ!」

 

頃「何を言っている、終わるはずがなかろう」

 

季衣「え!!!??」

 

流琉「それってどういう事なんですか!!!??」

 

頃「仮にこの華琳が大陸を統一し、新たな王朝を立ち上げたとしても、その王朝はやがて腐敗し、かつての黄巾のように、また新たに義に燃える者共が現れ、その王朝は滅ぼされる・・・・・世とはその繰り返し、戦いが終わることなど、未来永劫ありはせん」

 

瑞姫「その王朝がどれだけ繁栄したとしても、それも結局は一時の夢、幻よ・・・・・かの光武帝が心血を注いで復興させた漢帝国でさえこの有様なのよ、他の誰であったとしても結果は同じよ」

 

華琳「止めなさい!!」

 

綾香「この子達を迷わせるようなことはしないでいただきたいです!」

 

頃「迷わず真っすぐ突き進めば全てが解決すると?・・・・・他国を滅ぼせば、独裁者を倒せば、それで平和が訪れるとでも思ったか?・・・・・否、答えは断じて否だ!!!」

 

瑞姫「だから一刀君は、各諸侯に忠告して回っていたんじゃないの・・・・・それも結局、無駄に終わったけどね」

 

流琉「・・・・・それじゃあ、私達のやっていることって何なんですか」

 

季衣「僕達、無駄なことをしているの・・・・・」

 

華琳「いいえ、無駄ではないわ・・・・・確かに私が作る国とて、いつかは滅びの道を歩むでしょう、しかしせめて百年、二百年であれば持ち堪えられる筈よ、私達の覇業はそういった尊い平和を作り出す為のものよ」

 

綾香「はい、恒久の平和というものは誰しもが望むものです、しかしそれは北斗の彼方を目指すに等しいもの・・・・・これも砂上に楼閣を築くです」

 

瑞姫「あら、上手いこと言ったわね♪」

 

綾香「茶化さないでください、この子達の先を考えてのことなのですから!」

 

華琳「季衣、流琉、前にあなた達に筋を通すだけではやっていけないと言ったわ・・・・・でも本来、筋を通すことはとても大切で、尊いことよ・・・・・しかし、それが全てではない事を胸に刻みなさい」

 

綾香「どちらに傾き過ぎても人はやっていけませんし、それこそ碌な結果を齎しません、特に為政者はそれが如実に出ます、国を率いるとはそういう事なのです」

 

季衣「・・・・・・・・・・」

 

流琉「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

菖蒲「一刀様、街に出ても大丈夫なんですか?」

 

一刀「用ガアル所へは、ドチラにシテモ通る必要がアル」

 

城の正門から堂々と街に繰り出す

 

その途端に町の人から畏怖の眼差しを送られ、モーゼの十戒の如く道が開けていく様はもはや恒例である

 

そんな中

 

天和「あ、一刀だ」

 

地和「久しぶりじゃない、一刀」

 

人和「一刀さん、お久しぶりです」

 

楼杏「怪我は大丈夫なの?」

 

秋蘭「大丈夫ではなさそうだな・・・・・」

 

月「一刀さん、もっとゆっくりなさってはいかがですか?」

 

詠「そうだよ、どう見てもボロボロじゃないの・・・・・」

 

モーゼの十戒という目立つ現象が起きて、気付かれてしまったようだ

 

7人の珍しい組み合わせの者達が近寄ってくる

 

悠「よう、張三姉妹ども、元気にやってるか♪」

 

猪々子「まさかこいつらが黄巾の主犯だったとはな・・・・・」

 

斗詩「うん、びっくりしたよ・・・・・」

 

楼杏「私も最初に聞いた時は愕然としたわ、まさかこんな子達が、あれだけの群衆を率いていたとはね・・・・・」

 

秋蘭「まったくだ・・・・・」

 

この三人の正体と黄巾党の経緯については、幽州進行時に主だった者達には知れ渡っている

 

その後の処遇について議論され、現在は軍の士気向上を目的とした興行を主な任務としていた

 

下手に手を下しても、それが原因で再び暴動が起きようものなら、たまったものではないからだ

 

氷環「皆さんは、どうしてこちらに?」

 

炉青「皆さんも休みどすか?」

 

天和「さっき興行が終わったんだよ」

 

地和「一休みで買い物をしているところよ」

 

人和「この人達とは、さっき偶然会ったところです」

 

菖蒲「・・・・・影和さんは、どうしたんですか?」

 

天和「影和ちゃんは、事務所に居るよ」

 

地和「さっきの興行もだいぶ盛り上がったからね、裏で影和が動いてくれているから、ちぃ達も伸び伸びと歌って踊れるわ♪」

 

人和「ええ、本当に助かっているわ、お土産も買っていかなきゃいけないわね」

 

波才こと影和は、張三姉妹のマネージャーとなり忙しい毎日を送っていた

 

その手腕と言ったら、あの美花に匹敵するほどで華琳も侍女に欲しいと言っていたほどだ

 

天和「ところで皆はどこに行くの?」

 

地和「虎豹騎の訓練は休みなのは聞いているけど」

 

人和「ええ、訓練場で興行をしてきたから知っています」

 

一刀「俺が用があるノハ、郊外ダ」

 

詠「・・・・・ああ、あそこか」

 

月「あまりお邪魔にならないようにしてくださいね、なにせ一刀さんが行くと・・・・・」

 

一刀「分カッテいる、善処スル」

 

そして、現在進行形でモーゼの十戒を発生させながら一刀達は町を突っ切って行った

 

天和「っはぁ〜〜〜〜!・・・・・怖かったぁ〜〜〜・・・・・」

 

地和「ちぃもよ、皆が避けるのも納得よ・・・・・」

 

人和「普通に話しているだけでもしんどいわ・・・・・」

 

傍から見れば一般的な世間話をしているようにしか見えなかった

 

だが、内心ではみるみる精神が削られ、体や声の震えを抑えるのに必死だった

 

秋蘭「やはり、お前達からしても北郷は変わってしまっているんだな」

 

地和「あんなの完全に別人よ、一刀じゃないわ!」

 

天和「うん、前の一刀からは考えられない事ばかり言うようになっちゃったんだもん・・・・・」

 

人和「ええ、この仕事に就いた時・・・・・」

 

あの袁紹軍進行の後の出来事を、人和は説明しだした

 

一刀「すまなかったな、謂れのないお前達に偉そうに説教をしてしまった、あの言葉は全て忘れろ、お前達はこれからはやりたいようにすればいい、誰にもお前達を非難する権利も資格もない・・・・・お前達は紛れもない英雄だよ」

 

人和「・・・・・て」

 

楼杏「黄巾党も英雄・・・・・英雄と殺戮者の違いが、分からなくなってくるわね・・・・・」

 

秋蘭「覇道を歩む我らにとっては、耳の痛い話だ・・・・・」

 

月「私もかつては太守でしたから、皆さんの立場は痛いほど分かります・・・・・」

 

詠「そんなの、答えなんか出せっこないよ・・・・・」

 

人和「私は、あの説教臭くても誠実に人の道を行く一刀さんの方がいいわ・・・・・」

 

地和「今の一刀を見ていると、痛々しくてしょうがないわ・・・・・」

 

天和「うん、前の一刀に戻ってほしいよぉ・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、一刀達が辿り着いたのは郊外にある田園地帯だった

 

そこには

 

空丹「そこ、右、左」

 

恋「皆、そこ食べて」

 

白湯「嬉雨、これ見て、立派に実ったの」

 

嬉雨「はい、これなら華琳様に上納しても恥ずかしくありません」

 

黄「ああ、主上様、白湯様、そんなに泥だらけに・・・・・しかし、これもお二方の為です」

 

麗羽「真直さん、他に耕す所はありませんか?」

 

真直「ここはもう必要ありませんね、お疲れ様です、麗羽様」

 

麗春「ねねよ、これならもう少し拡張できると思うんだが」

 

音々音「そうしたいのは山々なのですが、それだと恋殿と空丹様の負担が・・・・・」

 

泥塗れになりながら、田畑で汗水流す者達が居た

 

空丹、恋コンビが動物達を率い雑草や害虫の駆除を担当

 

白湯、嬉雨コンビが作物の育成を担当

 

麗羽、真直、黄コンビが牛を使い鋤返しを担当

 

麗春、音々音コンビが全体の管理を担当していた

 

麗春は虎豹騎の軍師としての仕事があるが、虎豹騎が休みの日はこうして田畑の管理の手伝いをするようになっていた

 

音々音「それにしても、この方法はなかなかに画期的ですな、嬉雨が考えたのですかな?」

 

嬉雨「違うよ、これは以前一刀さんから教えてもらった、動物を利用した農法なんだ」

 

麗春「おお、これも一刀の発案なのか、流石は一刀だ♪♪」

 

音々音「またあいつなのですか、何に対しても多芸でありますな・・・・・」

 

麗春「・・・・・ねねは、一刀を憎んでいるか?」

 

音々音「・・・・・いいえ、勝敗は兵家の常なのです、終わったことをグダグダ言うつもりは無いのです」

 

恋が無事であったのだから、それ以上何かを望むのは欲張りと自分に言い聞かせていた

 

落ち着く所に落ち着いた、そう考えれば今の暮らしも決して悪くはない

 

むしろ、安定した暮らしを手に入れることが出来て感謝しているくらいである

 

灰「ククク・・・・・クワァーーーーーー!!!」

 

麗春「どうした、灰よ!」

 

突然、麗春の肩に止まっている鷲の灰が空に向かって威嚇し始めた

 

そこには

 

音々音「な、蝗なのです!!!」

 

白湯「凄い数なの!!!」

 

麗春「このままでは作物が根こそぎ食い尽くされるぞ!!!」

 

嬉雨「そんな、せっかくここまで育てたのに!」

 

黄「主上様と白湯様がお作りになられたものに手を出すなど、不届き千万!!!」

 

麗羽「真直さん、何とかなりませんの!!!?」

 

真直「蝗害を防ぐ手段なんて、私の知識の中には・・・・・」

 

暗雲が立ち込めたのではと思うほどの昆虫の群れ

 

かつて烏丸を襲った災害が目の前にまで迫ってきていた

 

焦りまくる一同の中で冷静な者が居た

 

空丹「皆、行ってきて!」

 

恋「皆、頑張る」

 

空丹、恋コンビの指示に動物達が一斉決起

 

カモやアヒルを主とした鳥達が蝗の群れに突っ込む

 

鳥達からすれば、餌が雁首揃えてのこのこやって来たようなものである

 

蝗達は次々と鳥達の胃袋に収まっていき、暗雲は瞬く間に収束していった

 

音々音「おおおおおおおおお、流石は恋殿なのです♪♪♪」

 

真直「凄い、あれだけいた蝗が綺麗さっぱり・・・・・」

 

麗羽「素晴らしいですわ、空丹様、まさに後世に語り継がれるべき偉業と言えますわ♪♪♪」

 

白湯「お姉ちゃん、凄いなの♪♪♪」

 

黄「きゃーーーー、主上様の勇姿、この趙忠の目に、しかと刻まれましたああああああ♪♪♪」

 

麗春「なんということだ・・・・・一刀よ、これもお前のお陰だ♪♪♪」

 

嬉雨「これで、みんな飢えなくて済む・・・・・空丹様、恋、ありがとう、本当にありがとうございます!!」

 

周りは、やんややんやの大騒ぎだった

 

空丹「いいえ、この子達のお陰よ」

 

恋「褒めるなら、みんなを褒めてあげて」

 

麗羽「ああ、なんと謙虚な、この麗羽、涙で前が見えませんわ・・・・・」

 

音々音「恋殿ぉ、やはり恋殿はねねにとっての天下無双ですぞぉ・・・・・」

 

恋「・・・・・少し休憩」

 

空丹「皆、お疲れ様」

 

流石にあれだけの数を平らげれば、鳥達も満腹であろう

 

既に設置してある鳥小屋に誘導していく

 

一刀「ナカナカ良いもノヲ見せてもラッタ」

 

麗羽「あ、一刀さん・・・・・」

 

真直「・・・・・一刀」

 

黄「・・・・・・・・・・」

 

事の成り行きを離れた距離から傍観していた天の遣いとお供達に、一同が振り返る

 

恋「あ、皆・・・・・」

 

空丹「大丈夫、怖くないわよ・・・・・」

 

その途端、動物達は空丹と恋の陰に隠れ縮み上がる

 

セキト「ガウウウウウウウウウウ!」

 

恋「セキト、駄目」

 

灰「クワワワワワワワワ!」

 

麗春「灰よ、お前まで・・・・・」

 

セキトは相変わらずで、かつては一刀に懐いていた灰でさえ、それ以上近づくなと威嚇するほどだ

 

涼州連合との戦でもそうであったが、どうやら動物全般に嫌われてしまっているようだ

 

唯一気を許しているのは、愛馬の北斗くらいである

 

これが、さきほど月に注意されたことである

 

こういったことは、これが初めてではないのだ

 

こうならないように、田園地帯にはなるべく近寄らないようにしていたのだ

 

菖蒲「(かつての一刀様は、多くの動物達に囲まれていたのに)」

 

以前の一刀を知っている菖蒲は、涙ぐむばかりであった

 

斗詩「作物が無事でよかったですね、麗羽様」

 

麗羽「ええ、そうですわね・・・・・」

 

猪々子「危うく食い扶持をかっさらわれるところだったぜ・・・・・あんがとな、真直」

 

真直「そんな、私は何も・・・・・」

 

麗春「これも一刀のお陰だ、感謝するぞ♪♪」

 

一刀「見学シテイタだけだ、感謝さレル筋合いハナい」

 

嬉雨「そんな、これは間違いなく一刀さんが僕にこの農法を教えてくれたおかげだよ」

 

一刀「コンナ局所的なことニ、意味ナンカ無い」

 

嬉雨「そんなことないよ、これが成功していれば、あの蝗害を防ぐことだって出来たんだから!」

 

一刀「無意味ダナ、これハ空丹ト恋が居て初メテ出来るモノだ」

 

この偉業は、動物達に愛される者が居るからこそ実現可能なものである

 

あの烏丸にもこの農法は導入されていたのだ

 

にもかかわらず、あの様になってしまったのは二人のような人間が居なかったからである

 

仮に居たとしても、その人間が亡くなってしまえば全ては元に戻るのみ

 

そんな個人の才能がモノを言うのでは、大勢を変えることなど出来はしない

 

そう、漢王朝のように

 

一刀「ソンナことはドウデもいい、俺が用がアルノハ恋だ」

 

恋「・・・・・恋?」

 

御指名を受け、トテテと前に歩み出る

 

ちなみに、あれから恋は呂布奉先の名を捨てている

 

今は誰にでも真名を預ける生活をしているが、当人は至って気にしていなかった

 

一刀「アア・・・・・あれからドウダ、武器を振ルエルか」

 

恋「(フルフル)・・・・・駄目、重いもの、持てない」

 

今の恋は、箸より重いものは持てないと言っても過言ではないほど非力となっている

 

医者にも見てもらったが、武人としての再起は絶望的とのことだ

 

かつての大食漢は鳴りを潜め、現在はかなりの小食となってしまっていた

 

どうやらあの一撃は、彼女の体質すらも変えてしまったようだ

 

一刀「俺ハ、お前ヲ殺すつモリデ奥義を放ッタ、なのにオ前は死なナカッタ・・・・・大しタモノだよ」

 

あの時、一刀が使ったのは、無刀術奥義、紫電光・零式である

 

何故に零式が付いているのかというと、この奥義は文字通りの零式、零距離でしか使えないからだ

 

この奥義の特性は、特殊な衝撃波を起こし相手の臓器から骨まで一瞬にして粉砕するものだ

 

氣弾ではどう足掻いてもこれと同じことは出来ない、だから零式なのだ

 

この奥義は使う方もただでは済まない、体にかかる負担は回天丹田一回分のそれと大差ない

 

実際、一刀の左手の骨にはヒビが入っていて、それを他者に知られないよう隠している

 

北郷流の歴史の中でも、これを受けて生きていた者は、片手で数えられるほどしかいない

 

おまけに今回は回天丹田の上乗せである

 

そんな文字通りの破壊の奥義を使ったにもかかわらず、こうして生きているだけでも途轍もないことだ

 

一刀「改メテ言ってオコウ・・・・・お前ハ、俺が殺シタ」

 

恋「(コク)・・・・・恋は、一刀に殺された」

 

一刀「ソウカ・・・・・ならイイ」

 

踵を返し、一刀はこの場を去ろうとする

 

悠「おいおい、これで終わりかよ!?」

 

一刀「ソウダ、これを言ウ為に来たダケダ・・・・・帰ルゾ」

 

氷環「分かりましたわ」

 

炉青「では皆さん、お仕事頑張ってくださいどす」

 

そして、一同は田園を去って行った

 

白湯「・・・・・相変わらず怖いの」

 

空丹「何だか、前より凄味が増しているわね・・・・・」

 

黄「一刀さんがああなったのは、私の罪でもあります・・・・・」

 

麗羽「私のせいですわ・・・・・全てが、私の・・・・・」

 

真直「麗羽様、その罪、私も背負います・・・・・」

 

麗春「一刀、私はお前を見捨てはしない、絶対にな・・・・・」

 

音々音「恋殿ぉ、ねねは恐ろしくてたまらないのですぅ〜〜・・・・・」

 

恋「・・・・・・・・・・」

 

去っていく一刀の背中に、一同は途方もない遣る瀬無さしか感じなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

葵「ったく、劉璋の政への興味の無さは筋金入りだな」

 

桃香「はい、どうしてあんな人が州牧になんて成っているんでしょう・・・・・」

 

ここは益州首都、成都

 

城の玉座の間にて、一同は会議を開いていた

 

何故にいきなりこのようなことになっているかと言えば、答えは簡単

 

益州牧、劉璋が条件付きの降伏を宣言したからである

 

その条件とは、自分が静かに隠居する補償と約束をすることである

 

自分の家臣達には、反対や敵対行動はさせないと言っていた

 

どうも劉璋は、政より芸術や書など自分の趣味に没頭する人間だったようだ

 

この条件に、桃香は戸惑いながらも承諾すると、劉璋は飛び上がらん勢いで大喜びし、州牧の座を明け渡し、辺境の地へと去って行った

 

事実上の無血開城である

 

鶸「なんだか、自分の責務を押し付ける相手を探していたって感じです・・・・・」

 

蒼「うん、待っていましたと言わんばかりだったよね・・・・・」

 

蒲公英「責任感の欠片もないね・・・・・」

 

翠「ああ、これなら自分の権威を守るために戦う方が、まだ責任感があるぜ・・・・・」

 

楽に益州を手中に収めることが出来たは良いが、肩透かし感が拭えなかった

 

雛里「政というのは、人間同士の付き合いであり駆け引きです、あの方はそれを煩わしいとしか感じないのでしょう、王としての器は、最初から無かったのです」

 

要するに、一つのことを極めることに特化した人間である

 

たった一つのことに己の全てを注ぎ込む、職人や芸術家と同じである

 

様々な事象に意識を向け、一度に二つ以上のことを考えなければならない仕事というのは、一番相性が悪い

 

俗に言う、自閉症や発達障害者がこれに当たる

 

そういう人間には、政などといった多方面に渡る仕事は、決して出来ない

 

逆に言えば、そういった人間でない限り一つのことを極めることは決して出来ないとも言える

 

鈴々「なんだか、手に入れたというより、押し付けられた感が半端ないのだ・・・・・」

 

愛沙「ええ、これで良かったのでしょうか?・・・・・」

 

桃香「まぁ、あの人も喜んでいたし、これで良かったんだよ・・・・・」

 

朱里「では桃香様、これより我々は、この蜀の地と荊州を拠点に、国力を蓄えます」

 

桃香「あ、うん、そうだね」

 

朱里「そこで桃香様には、この蜀の王となっていただきます」

 

桃香「・・・・・ええええ!!!??おおおお、王様!!!??」

 

雫「朱里、いきなりそれは無理があるのでは!!?」

 

桃香「そそそそ、そうだよ!!私が王様なんて、空丹様と白湯様にどんな顔をすればいいか・・・・・」

 

朱里「漢王朝は、もはや滅んだも同然です、であれば私達が新たな漢王朝を建てる他に道はありません」

 

白蓮「それにしたって王だなんて、州牧でいいんじゃないのか!!!??」

 

朱里「それでは困るのです、生中な肩書では、あの曹操には到底対抗出来ません」

 

桃香「曹操さん・・・・・」

 

あの人としても為政者としても目標に値する華琳を思い浮かべる

 

あんな完璧超人を敵に回して本当に良かったのかと思えてくる

 

星「一刀殿までもが加わっているのだからな、奇跡が連続で起きでもしない限り勝てる気がせん・・・・・」

 

朱里「もちろん、今すぐというわけではありません、暫くは州牧の肩書に収まっていただきます」

 

葵「・・・・・異議を申したいところだが一理ある、俺もあいつらの力を目の当たりにしているからな」

 

翠「いいのか、母さん・・・・・」

 

葵「現実は直視しなきゃならん、空丹様と白湯様に目を覚ましてもらうまでの辛抱だ・・・・・お前らも桃香様に協力しな」

 

鶸「分かりました!」

 

蒼「うん、頑張るよ!」

 

蒲公英「西涼の仇、絶対取るよ!」

 

そして、それぞれがそれぞれの役割を決めようとしている中

 

朱里「・・・・・美花さん」

 

美花「?・・・・・はい、何でしょう、朱里様」

 

伏龍は、劉備一の侍女に耳打ちをしだした

 

朱里「美花さんに、頼みたいことがあります」

 

美花「何なりと、お申し付けください」

 

朱里「では、驚かないでください、きっと美花さんにとって、辛い役目を言い渡すことになりますから」

 

美花「・・・・・・・・・・」

 

いつになく真剣な朱里の眼差しに、美花は背筋を正し心構えをする

 

朱里「美花さんに、天の御遣いを暗殺してもらいたいのです」

 

美花「っ!!!??」

 

声が出かかってしまった

 

心臓を鷲掴みにされたような衝撃が全身を駆け巡る

 

朱里「このままでは、私達は決して曹操には勝てません、それほどまでに私達と曹操とでは絶対的に力に差があり過ぎます、しかし曹操の力の中枢でもある天の御遣いを亡き者にすれば、勝率を五分五分には持っていけます」

 

美花「しかし、それは・・・・・」

 

朱里「戦で天の御遣いを倒すとなると、その被害は甚大なものとなります、それこそこの蜀の存亡すら危ういです・・・・・桃香様の為にも、お願いします」

 

美花「・・・・・・・・・・」

 

桃香か一刀か、この究極とも言える選択に美花の心は激しく揺れ動く

 

どちらも美花にとって大切な人である、桃香は絶対の主人であるが、一刀は第二の主人と言える

 

敵対する以上、いつかはその時が来るのは分かっていたが、それがいきなり来てしまい、どうすればいいか分からなかった

 

朱里「美花さん、どうか私情を捨ててください、このまま行けば桃香様は滅びの道しか歩みません」

 

美花「・・・・・わかり、ました・・・・・この孫公祐、私情を捨て任務を達成して見せましょう」

 

朱里「ありがとうございます、桃香様には私から言っておきます」

 

美花「よろしく、お願いします・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炎蓮「ふぃ〜〜〜、やっとこさ一段落ってとこだな」

 

雪蓮「ええ、ようやく宗部、宗伍の奴らを滅ぼせたわ」

 

蓮華「でも、山越は駄目でしたね・・・・・」

 

小蓮「うん、あとちょっとだったんだけど・・・・・」

 

梨晏「あと一歩という所で逃げられちゃったからね」

 

冥琳「しかし、あそこまで突き崩せば再起するにしても相当な時間が掛かるはずです」

 

穏「はい、ここ数年は何も出来ないはずです〜」

 

亞莎「揚州平定は、何とか形になったでしょう」

 

建業の城の執務室

 

主だった者達による会議が行われていた

 

内部問題の解決に一息といった雰囲気かと思いきや

 

粋怜「酒宴と洒落込みたいところだけど、そういうわけにもいかないものね・・・・・」

 

祭「うむ、そのような時間、ワシ等には有りもせんわ」

 

雷火「宗部、宗伍など比較にならん強大な敵が控えておるからのう」

 

包「曹操、天の御遣い・・・・・考えたくもありませんねぇ・・・・・」

 

炎蓮「グダグダ言ったところで時間の無駄だ、出来ることをするのみよ・・・・・んで、美周郎としちゃ、今後の方針をどう考えてんだ?」

 

冥琳「そうですね、内部の敵を一掃出来ましたが、その代償は決して小さくはありません、ここは内政に力を入れるべき・・・・・と言いたいのですが、我々にそんな悠長なことをしている余裕などありはしません」

 

梨晏「というと?」

 

冥琳「ここは無理をしてでも、領土の拡張を図るべきかと」

 

雪蓮「狙うは、荊州辺りかしら?」

 

冥琳「ああ、以前の失態を拭うという意味でも、荊州は取るべきでしょう」

 

炎蓮「ぐっ・・・・・痛てぇとこ突いてきやがるな・・・・・」

 

かつて一人で突っ走ったせいで、美羽の客将にまで成り下がったのは記憶に新しかった

 

祭「あれは我らの連帯責任であろうに」

 

粋怜「炎蓮様を見失ってしまったのは、私達の落ち度よ・・・・」

 

雪蓮「そうそう、母様も最終的に助かったんだから良いじゃない」

 

蓮華「ええ、一刀のお陰で・・・・・」

 

小蓮「・・・・・・・・・・」

 

この二人は、未だに一刀のことを諦め切れずにいた

 

雷火「蓮華様、小蓮様、お気持ちは分かりますが、あ奴に関しては、もはやこれまでかと」

 

包「そうですよ、今のうちに手を切っておいた方が、傷も浅くて済みますよ」

 

蓮華「そうは言われても・・・・・」

 

小蓮「うん、シャオ、一刀のことが忘れられないよ・・・・・」

 

炎蓮「あいつを推していた俺が言うのもなんだが・・・・・蓮華、シャオ、ここまで来ちまった以上、俺達に迷っている余裕なんざねぇぞ」

 

雪蓮「そうよ、立ち塞がってくる以上は、倒さなければならないわ」

 

蓮華「・・・・・分かりました、私も孫家の人間、私情は捨てます」

 

小蓮「シャオは、もうちょっと時間が欲しいかな・・・・・」

 

梨晏「(一刀ぉ・・・・・)」

 

ある意味、二人以上に葛藤を抱えているのは彼女だった

 

かつて共に旅をし、お互いの純潔を捧げ合った思い人と敵対する

 

その心労と言ったら、当事者にしか分からないものであろう

 

穏「・・・・・まさかとは思いますが、今すぐ荊州に打って出るとか言いませんよね?」

 

冥琳「馬鹿を言うな、私とてそこまで安直ではない」

 

亞莎「ほっ、良かったです、冥琳様がご乱心なされてなくて・・・・・」

 

冥琳「さっきも言った通り、内部の敵を倒した代償は決して小さくはありません、軍の建て直しに最低でも半年は必須、細作達も残党狩りに忙しくしています、あの三人が帰ってくるまでは待たねばなりません」

 

炎蓮「うっし、ならその半年でやれることは全てやるぞ・・・・・ただでさえ後れを取っているんだ、休みなんざないと思え!!」

 

そうして、各々は自分の持ち場へと散っていく

 

そんな中

 

冥琳「(出来れば秘密裏に天の御遣いを消しておきたいが、今は無理だ・・・・・だがいつかは)」

 

以前に一刀の拉致に失敗しているが、あの三人以上の細作は呉には居ないのも事実である

 

暗殺の成功率を上げる策を、美周郎は練るのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燈「(・・・・・このままでは駄目ね)」

 

夜の帳が下りる中、自室にて元沛郡の相が思案に耽っていた

 

燈「(一刀様・・・・・いいえ、天の御遣い、あれは危険よ)」

 

幽州進行後の一刀を影ながら観察していた燈の心中には、危機感しかなかった

 

以前の一刀ならともかく、今の一刀を生かしておくのはリスクしかないという結論に達していた

 

嬉雨「・・・・・・・・・・」

 

部屋の寝台には愛しい我が子が静かに寝息を立てていた

 

燈「(ごめんなさい、嬉雨・・・・・こんな方法しか取れない私を許して)」

 

我が子を起こさぬよう、燈は物鬱げに部屋を退出していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、到着したのは天の遣いの寝室

 

燈「(危険分子は、早めに処理しておかないとね)」

 

懐に短刀を忍ばせ、燈はゆっくりと扉を開ける

 

そこには

 

影和「あ、燈様ではありませんか」

 

燈「っ!!?・・・・・影和ちゃん、と一刀様」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

元黄巾党幹部と、相変わらず邪気を立ち昇らせる天の遣いがお茶に舌鼓を打っている姿があった

 

燈は影和の経緯を既に聞いており、彼女の仕事ぶりには感心しているため真名を預けるに至っていた

 

影和「こんな夜更けに、いかがなされました?」

 

燈「え、ええ・・・・・一刀様の夜這いに来たのよ?//////」

 

影和「え!?」

 

咄嗟の言い訳であるが、この状況ではこれが一番の言い分であろう

 

燈「でも、これは時期が悪かったわね・・・・・私もお茶をしてもいいかしら?」

 

影和「あ、はい・・・・・では、用意いたします/////」

 

燈「それとも、影和ちゃんも夜這いに混ざる???//////」

 

影和「そ、それは!・・・・・・・・・・お言葉に甘えてもよろしいでしょうか?//////」

 

燈「あらあら、影和ちゃんも乗り気みたいね♪・・・・・では一刀様、今宵は私達のお相手をしていただいてもよろしいでしょうか???//////」

 

影和「・・・・・どうか、可愛がってください、一刀様?/////」

 

そして、二人揃って、着ている服をはだけさせていくが

 

一刀「・・・・・俺を殺シニ来タか」

 

燈「っ!!?」

 

影和「は!?」

 

核心を突く一刀の言葉に、二人は強張る

 

一刀「言い訳ハ、そノ忍ばセテイル獲物を出シテから聞くゾ」

 

燈「・・・・・はぁ〜〜〜〜、これは適わないわね」

 

素直に、燈は懐から短刀を出した

 

影和「燈様!!?」

 

一刀「いい・・・・・俺を生カシテおけなイト判断シタか」

 

燈「ええ・・・・・このままではあなたは華琳様の敵、いいえ、それどころかこの大陸の敵になる可能性があるもの」

 

一刀「ナルホド、賢明ナ判断と言エルな」

 

影和「そんな・・・・・燈様、このようなことはお止めください!」

 

燈「そうもいかないわ、私も我が子が可愛いもの、不穏分子は出来る限り取り除いておきたいわ」

 

影和「だからと言ってそのようなことを、私が許すとでも思いますか!!?」

 

燈「思わないわね・・・・・だからあなたも生かしておくわけにはいかなくなったわ」

 

一刀「俺と正面カラやり合っテ勝つつモリカ」

 

燈「勝つつもりなんてないわ、刺し違えるつもりよ」

 

怪我を負っているとはいえ、燈が影和を退けかつ一刀を倒すなど現実的ではない

 

それでも、燈は短刀をゆっくりと抜いた

 

当然、影和が立ち塞がるが

 

一刀「・・・・・美花、隠れてナイデ出てコイ」

 

燈「え!?」

 

影和「み、美花さん!?」

 

窓の方に声をかけ、暫くすると

 

美花「・・・・・気付かれておりましたか」

 

その窓から、劉備一の侍女が軽やかな身のこなしで入ってきた

 

燈「・・・・・誰かしら?」

 

美花「私は、孫公祐、劉備様の侍女を務めるものです・・・・・影和さんもお久しぶりです」

 

影和「どうして、美花さんがここに?」

 

美花「それは・・・・・」

 

とても言い辛そうにしている美花の代わりに一刀が口火を切る

 

一刀「どうヤラ、お前モ俺を殺シニ来たようダナ」

 

影和「ええ!!?」

 

美花「・・・・・はい、あなた様のお命、頂戴しに参りました」

 

影和「美花さん・・・・・」

 

燈と美花、二人の挟み撃ちにあい、影和もどうすればいいか分からなかった

 

美花「しかし一刀様、そのしゃべり方はいかがなされたのですか?」

 

一刀「ドウデモいいことをイチイチ聞クンジャない・・・・・大方、諸葛亮か?統辺リノ差シ金か」

 

美花「・・・・・はい、諸葛亮様のご命令です」

 

燈「・・・・・・・・・・」

 

これは援軍と呼んでいいのか

 

城に無断侵入している時点で、すでに極刑ものであるが、今の燈からしてみれば有り難い

 

影和と一刀の気が少しでも逸れれば儲けものである

 

一刀「マサカ状況が変わったカラ、俺を殺せるトデモ思っているンジャないだろうナ」

 

燈「・・・・・それでも、私はあなたを殺すわ」

 

美花「桃香様の為に・・・・・お許しください、一刀様」

 

これが出任せであることは誰の目にも明らかである

 

暗殺が失敗した時点で、燈と美花の命運はもはや尽きたのだ

 

ここで死ぬ覚悟を決め、両者ともに短刀を握り締める

 

一刀「マッタクどいつもコイツも、勝手ニ来て勝手に盛り上がラレテも困るんダガナ・・・・・オ前達にハ話しテオくか」

 

美花「・・・・・何を話すというのですか?」

 

一刀「俺が曹孟徳トシタ密約についテダ」

 

燈「今話すことなのかしら?」

 

一刀「いいカラ聞け・・・・・俺と華琳ノ密約はナ・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影和「そんな、そんなこと・・・・・」

 

美花「一刀様、あなた様はどうしてそこまで・・・・・」

 

燈「それは、本当なの・・・・・」

 

三人は、一刀の話した内容に、愕然とするばかりだった

 

影和「そのようなこと、不毛でしかないではありませんか!」

 

美花「一刀様、本気で言っているのですか!?」

 

燈「そうよ、それではあなたは一切報われないじゃない!」

 

一刀「報わレル報わレナイの問題じゃナイ・・・・・やるカ、ヤラナいかだ」

 

「「「・・・・・・・・・・」」」

 

この言葉に、三人は呆気に取られるしかなかった

 

ここにいる存在は、自分達などよりも遥かに強固な覚悟で事に挑んでいるのだ

 

自分達の覚悟が、いかに薄っぺらいかを嫌でも認識させられてしまうほどに

 

影和「・・・・・お二人とも、これでもまだ、このお方を殺す気でありますか?」

 

燈「・・・・・いいえ、私には、もう何も言うことはないわ」

 

美花「・・・・・はい、一刀様のお覚悟、しかと受け止めました」

 

両者は、短刀を鞘に納め机に置いた

 

一刀「言っテオクが、この事ハ他言無用ダ、華琳トオ前たち以外、知ル者は居ナイ・・・・・洩らせバドウナるか、分かっテイルな」

 

影和「はい、しかと胸に刻みます」

 

燈「此度は大変失礼を働き、誠に申し訳ありませんでした・・・・・あなた様に幸があらんことを」

 

美花「一刀、様・・・・・」

 

一刀「サッサト帰れ、お前の主ハ劉備玄徳だロウ」

 

美花「・・・・・はい・・・・・では、御免!!」

 

そして、劉備が一の侍女は成都へと舞い戻って行く

 

その表情は、今にも泣きだしそうなほど、憂いに満ち満ちていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美花「(お許しください、朱里様、桃香様・・・・・やはり私には、一刀様を殺すことなど出来ません)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、Seigouです

 

ここで元黄巾党幹部、波才こと影和(リンホウ)の容姿について説明したいと思います

 

前にも紹介していましたが、具体的な容姿については触れていなかったため、かなり遅まきながら紹介したいと思います

 

今更感が半端ないですが、今後の彼女のポジションを考えると具体像があった方がいいと判断しました

 

彼女の容姿は、アズー〇レー〇のベ〇ファ〇トと思ってください

 

このゲームは自分はやったことがありませんので、このキャラの詳しい設定については殆ど知りません

 

美花と同じくらいのスキルと似たような雰囲気のキャラを思い浮かべていたらこのキャラに行きつきました

 

では、もう一話ほど投稿したら阿修羅伝に行きたいと思います・・・・・待て、次回

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心滅の修羅
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コメント
暗殺に失敗したとしても美花ほどの優秀な人材は処分しないでしょう。今の朱里だとやりかねない雰囲気はあるけど(小説好き)
燈ならそうするよなとしか思えないのでそれは良し。美花は暗殺失敗(しかも初っ端で標的にバレてた)について処分……しなくても良いと思いますが、今の朱里はやりかねないのがまた。一刀は本格的に壊れ、一刀と戦えると評された恋は無力化されて曹操軍の庇護下に……愈々わからなくなってきたぞ、この外史。(Jack Tlam)
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