おかえりなさい |
雨が降る。
ひっきりなしにサワサワと。
秘かな音にまぎれて聞こえる階段をのぼる音に耳を澄ます。
ああ、こんなに濡れて。
疲れたでしょう、おかえりなさい。
今日はあなたに話があるの。
もう会うのはよしましょう。
金輪際、この部屋には来ないでね。
だって、あなたの帰る場所はちゃんとあるもの。
あたしは強い女じゃないけど、あなたも強い男じゃないでしょう。
この道の先が見えないのなら、ここで終わりましょう。
あなたは帰りたいのよ。
どれだけ誤魔化しても、あたしには分かってしまう。
だから今夜限りはあたしのもの。
あなたの細い指も、温かい胸も。
優しい声も、けぶる黒い瞳も、切ない吐息も。
今夜だけは、すべてすべて、あたしのもの。
雨は降る。
止むことのなくサワサワと。
さようなら、愛しい人。
さあ、おかえりなさい。
あなたを待っている女(ひと)の元へ、おかえりなさい。
説明 | ||
恋は恋でも道ならぬ恋。 | ||
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コメント | ||
天ヶ森雀さま:コメントありがとうございます。恋愛が絡むと余計嗅覚が鋭くなりますよね。(まめご) 嘘やごまかしって、たいてい分かっちゃうのが悲しいですね(苦笑)。(天ヶ森雀) |
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タグ | ||
不倫 別れ 雨 | ||
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