原付の法定速度は30km/hだけど、昭和の原付は たしかスピードメーターの目盛りが100km/hまであった気がする。僕の2ストRGは72km/hまで出たし、友人の4ストCBは追い風なら75km/hまで出ると威張っていたのを思い出す。50ccなんてドリンクなら一口で飲み干せる量なのに たいしたパワーだ。ヘルメットを被るのは自由だった。スクーターもまだベスパみたいなのしかなくて、原付バイクに乗ってるだけで不良扱いされた時代だった。遺伝だろうか 僕の4人の子供たちはみんなバイクが好きだ。末娘なんかは 車酔いのする四輪より、バイクの方が良いという。 群れて走るのが好きな人達もいるけど、僕は孤独が好きな人の方が オートバイに似合ってると思う。高校2年のとき ふいに秋晴れに誘われて旅がしたくなった。やっぱりバイクにはロックだと ストーンズの歌をサティスファクションと口ずさみながら、かっこいい一人旅をイメージしながら 毛布とワインとフランスパンを原付に積んでフラッと出かけた。(今なら未成年者の飲酒運転は重罪だ)最初の夜は廃バスを見つけたのでその中で寝た。翌日はあまりに寒くて寝ていられなくなり 3日目に旅を断念した。9月の北海道の夜は凍え死ぬほど寒かったのだ。この時初めて 現実は小説みたいにかっこよくは行かないと思い知らされた。帰宅後は案の定 家出騒ぎになっており、みんなは 何か悩みがあるのではないか?と心配していた。でも 理由は先程書いた通りで「とても気持ちの良い天気だったので 学校へ行くのがもったいなかった」からなのだ。担任教師はそんなフザケた理由に納得しなかったから、むりやり心の悩みを捏造した。僕は人生に満足してるから、悩みがないのが 悩みなのです。♪サティスファクション‥‥‥〈実話〉 |