三重世界 第1章〜鎖〜 |
第1章 三重世界〜鎖〜
私立門脇高等学校の校門はにぎわっていた。
そこにきている野次馬のほとんどが上級生……つまり俺たち新1年生を見に来ている。
俺はあれから5年。罪を背負って生きていた。
母を殺した罪は深く重くのしかかった。だから、俺は人を助けることを覚えた。
この罪の象徴となる鎖を用いて人を助ける。
5年間をそれのために費やしてきた。
それが俺のせめてものの罪滅ぼし。
校門の賑わいを通り過ぎ、これから3年間通うことになる校舎を見上げた。
開校してからまだ5年とたっていない校舎はいまだに綺麗さを保っていた。
「きゃああああ」
その時、いきなり悲鳴のような音が響いた。
まだ賑わいのある校門にはわずかな動揺。
あちこちにいる生徒が一斉に音の発信地に向く。
発信地では二人の男子生徒が一人の女子生徒に向かって何か叫んでいた。
「おい、こら!!ぶつかってきたのはお前だろ!!あやまれよ!!」
「わ、私。しりません!!ぶつかったの私じゃないです!!」
なんともまぁ、朝っぱらからよく喧嘩なんかするなぁ。
それにしてもこの学校の治安はあまりよくないみたいだ。
こんな白昼堂々とこんなことをするとは。
「あやまればすむのになぁ。ゴルワァ」
「し、知りません!!」
「ちっ!!女だからってなめるなよ!!」
と一人の男子生徒が女子生徒に拳を振るう。
威嚇だったのか幸いにもその拳は女子生徒に当たらなかった。
「し、知らないです!!」
女子生徒は泣きながら必死に知らないと訴えている。
男子生徒は更に怒りに触れたみたいだ。
拳を強く握り締め、大きく降りかかる。
こんどは当てるつもりだろう。
仕方がないなぁ。
俺は腰を少し沈め5年間の結晶となる鎖を呼び覚まそうとする。
この5年間で俺はいろいろな技術を学んできた。
あの男子生徒を効率よく無力化することも勿論できる。
だけど、時間は間に合わなかった。
こちらが準備をしている間に男子生徒は拳を女子生徒めがけて放った。
間に合わないと思うがぎりぎりまで頑張ってみる。
しかし、俺の努力はむなしく女子生徒に拳がぶつかる。
キィイン。
と金属がこすれあう音がした。
その刹那、殴られたはずの女子生徒は無事で殴りかかった男子生徒が倒れこんだ。
残ったもう一人の男子生徒は口をパクパクさせている。
女子生徒も状況が把握できていないのか目を白黒させる。
やがて、残った男子生徒が言葉を呟いた。
「……か、会長。……に、逃げろ」
彼は体を震わせ逃げ出した。
とりあえず、鎖はもう必要ないようだ。
なにが起こったかよくわからないが女子生徒は助かったみたいだ。
俺は姿勢を戻し女子生徒に近づいた。そして、あることに気がつく。
矢だ。矢が突き刺さっている。
今までは死角となって見えなかったが矢が地面に突き刺さっていた。
「まさか……」
俺は校舎を見上げる。
そこには巨大な弓を抱えた人の影。あそこから射たのか?
遠目の所為でどんな顔かわからないが多分女性だろう。
髪の毛が長い。それ以外はよくわからない。
入学式も無事に終え教室で始めてのHRも終わった。
あの事件以外気になることがあまりなかった
余談だが、あの男子生徒はすぐに目を覚ましたそうだ。
本日行われる行事は全て消化し後は帰るだけである。
が、俺にはやるべきことがある。人を助けるという重大な任務が。
放課後の校内というのはかなり治安の悪そうな時間帯だ。
ここで不良グループでも一掃すれば治安が回復するはずだ。
と俺は校内探索へと向かう。
放課後とは言ってもまだ昼過ぎである。腹をすかせた生徒は帰るし弁当を持ってきたものは食べる。
そんな時、俺は朝の事件を反芻していた。
校舎の上から射た女性の影と巨大な弓。
気がつくと屋上に向かっていた。
この学校の屋上は簡単に入れるが生徒が少ない。
よく漫画やアニメで屋上に人がいっぱいいる状況があるが屋上なんてすぐに飽きてしまうものだ。
今日は新1年生は運動部に所属していない限り帰宅しているはずだ。
ガチャリと屋上の扉を開く。
広く開放的な空間。緑色の屋上。屋上緑化とはよくいったものだ。
屋上の花壇をほめていると声が聞こえた。
「ほう、君は新入生か?」
発信源は真後ろ。急いで後ろを振り向く。
「そう、急かすな」
そこには黒くて長い髪をした女子生徒が立っていた。
「あなたは…」
俺はこの女子生徒に見覚えがあった。
そう、今朝この屋上から弓を射った人だ。
あの時はわからなかったが今見るとはっきり思い出せる。
この女子生徒はあのシルエットと酷似していると。
「あなたは今朝、弓で射た人ですか?」
思わず直球に聞いてしまう。
その言葉を聞き女子生徒は目を見開いた。
驚いていることがわかる。
「君は……私の弓が視えるのか?」
「弓、あの巨大な弓ですか?」
女子生徒は更に見開いた。更に驚いたようだ。
「そうか……君も。」
「??」
女子生徒はそう言うと俺から離れる。
そして、驚くべき光景が目の前に現れた。
床に丸い……円形の光の線が女子生徒を囲んだ。
円形の光の線の中には文字ともいえない記号のようなものが羅列していた。
俺はそこで更に驚いた。現れたのだ。
あのこの女子生徒の背くらいある巨大な弓が。
床から生えてきたのだ。
「これが私の能力。」
普通の人が見たら信じられない光景だろう。
しかし、俺には同じような能力がある。
「君の能力はなんだ?」
女子生徒の質問が浴びせられる。
俺はこの力を見せてもいいのか?
だけど、彼女には隠しとおせる自身がない。
仕方なく俺は右手に集中する。
どこからでも鎖を出すことは可能だがイメージしやすく鎖を手の延長だと思えば扱いやすい。
朝よりもはやい速度で手ごたえが来た。ジャリジャリと鉄のこすれる音。
「来た!!」
その瞬間、俺の手から刃物が出てきた。
短剣のような両刃の小さい剣には鎖が繋がっている。
「……」
女子生徒は言葉を失っていた。
何故か先ほどよりも驚いている様子だ。
「………まさか、鎖の能力者」
まるで鎖の力を知っていたかのようなセリフ。
「そうか、君が仲介者か」
何かぶつくさと呟いている。
「君に紹介したい部活がある。来てくれるか?」
と呟きの変わりに勧誘。
女子生徒の名前は西森 明海というらしい。
どこかで聞いたことがあるようなないような名前だが別にどうでもいい。
とにかく西森さんは3年生ということで俺よりも二つ上の先輩である。
彼女が俺を連れて向かったのは校舎の隅っこにある小さなプレハブ倉庫だった。
確か、紹介したい部活があるとは言っていたが……まさかここで部活をやっているんじゃ?
その次の瞬間、俺の予想は的中した。
「新入部員を連れてきた」
と大胆にもプレハブの扉を開いた。
「おおー。そいつも力があるんすか?」
中から見覚えのある男子生徒が顔を出した。
そうだ、こいつは朝、不良と一緒にいて不良が倒されたとき逃げ出した奴だ。
「ああ、君みたいなお菓子のオマケみたいな能力じゃなく本物だ」
そう言って、西森さんはプレハブを進んでいく。
そして、俺に手招き。俺はそそくさと部室(?)に入った。
部室の中には先ほどの男子生徒のほかにも数名の男女がいた。
「会長、そいつどんな能力っすか?」
先ほどとは別の男子生徒が聞く。
この生徒は先ほどの生徒よりも馬鹿そうだ。
「ああ、紹介しよう。彼は……名前は知らないが鎖の能力者だ」
『鎖!?』
部室にいた全ての生徒が一斉に驚く。
「それって、あの会長が言っていた……」
と一人の女子生徒が言う。
この生徒は意外とまじめそうだ。
「ああ、そうだ。そろそろ本格的に始まるな……さ、君は自己紹介だ」
といって西森さんは俺を指差す。
「ええと、俺は…榊原芳樹。よろしく」
「じゃあ、よろしくな。榊原君」
とここで気になることを聞いてみた。
「ところで、ここは何の部活ですか?それに能力者って?」
さっきから能力者だとか鎖だとかオマケだとかよくわからないことを話しているので気になった。
『っ!?』
部室にいた全員が先ほどとは違う意味で驚いた。
「榊原君、君は祖父や祖母から何も聞いていないのかっ!!」
どなられた。
よくわかんないけどどなられた。
「何を聞くんですか?」
その質問に全ての生徒がはぁと嘆息した。
「いいか、これは絶対秘密だぞ」
そして、西森さんが話し出したこの世界の理というタイトルの話を。
この宇宙には始め”表”と”裏”の二つの世界がありました。
それは同時間軸に平行して存在するまったく違う世界。
そのうちの”表”の世界では獣と人が交わり、獣人と呼ばれる種族が栄えた。
獣人は圧倒的な獣の戦闘力と人の頭脳を持ち合わせた生物としては最強の存在。
普段は人の姿をしているが任意に獣の姿に変わることができる。
もう一つの”裏”の世界では人と魔が交わり、魔人と呼ばれる種族が栄えた。
魔人は魔法や魔術、魔道術といった不思議な力を操る。
その力は燃え尽きそうな火を炎へと変えたり、干上がった沼から水を発生させたりするという。
魔人はその強大な力で”裏”の世界の頂点に君臨した。
そうした、二つの世界は何億年という時を経ても交わることはなかった。
しかし、とある魔人と獣人が次元を破壊する力を手にいれついに二つの世界は交わった。
始めは平和が続いた。
魔人と獣人が交わって暮らし、共に生きていった。
だが、それは長くは続かなかった。
もともと種族の違う生物。相容れることなどなかった。
温厚な獣人と凶暴な魔人の間には戦争という傷が生まれ二つの世界は混乱した。
国という国が消え、数多くいた生物も絶滅し、二つの世界は共に滅びそうになった。
それを見ていた宇宙を作った神は三つ目の世界を作った。
神はまず、近づきすぎた二つの世界を離した。
そして、その間に三つ目の世界を作った。
こうすることによって獣人と魔人が衝突することがなくなった。
だが、それも時間の問題。
何億という時を経てできた”裏”の世界は神の予想をも超える技術を持っていた。
それに、世界は離してもいつか必ず近づき始めるため、三つ目の世界に役割を与えた。
それは二つの世界の間に挟まって仲良くさせようという途方もない役割だった。
それから数千年の時が流れとある事件が発生した。
神が死んでしまったのである。
それを機に”表”と”裏”の世界は再び衝突することになった。
残された三つ目の世界からは神から与えられた役割をこなすために数百人からなる英雄達をそれぞれの世界に送り戦争をやめさせた。
英雄達の圧倒的な力は獣人と魔人を黙らせた。
三つ目の世界はそうすることによって役割を果たした。
しかし、それも長く続かない。神のように志半ばで終わってしまうだろう。
そう考えた三つ目の世界は英雄達の力を子孫に残していくシステムを考案した。
それは自分の2世代後に自分の力を遺伝さしていくもの。
そして、三つ目の世界の時間で50年ごとに獣人と魔人の仲立ちを行った。
三つ目の世界……人類は二つの世界にない特殊な武器を用いて今も仲立ちを行っている。
「なんていうか、信じられないです」
「ふむ、百聞は一見にしかずか……」
「それに、ここからどういう風にこの部活に発展していくんですか?まさか、そいつらと戦えってことですか?」
俺はかなり動揺しているようだ。
この話には信憑性がいまいち足りないが現に俺と西森さんは能力を持っている。
他の部員も見たことはないが持っているはずだ。
「大体のところはあっているが…まぁ、この点に関してはまた後で行おう」
「後?」
この後があるのか?そう思っていると西森さんが俺に椅子に座るように言った。
他の部員も椅子に座りちょうど会議をしているような形になる。
「とりあえずは榊原君に部員の名前と能力を紹介しよう」
ああ、なるほど。西森さんはまず俺に部員の名前と顔と能力を覚えてほしいのだ。
「まずはそうだな、門脇から行くか」と西森さん。
「はい、会長」と門脇と呼ばれた女子生徒が答える。
この門脇さんは真面目そうなイメージが強い。
髪の毛はきっちり肩までで切りそろえており化粧なども最低限に抑えられている。
「ええと、私の名前は門脇 恭子、2年生です。名前を聞いて気付いたかもしれませんがこの学校の創設者の孫です」
「………」サラッとお嬢様宣言しましたよ、この人。
「え、ええと。私の能力はええと……」
と言って左手をクルクル回す。
すると、そこに光の円が生まれ何か出てきた。
それは銀色で薄く奇妙な曲がりをしていた。
かろうじて柄のようなものが数センチほど突き出している。
「ええと、ですね。これはナイフです。」
確かに、よく見るとナイフに見えなくもない。
「切れ味だけは最高のナイフです。でも、本当はナイフではなくて剣槍っていうんです」
けんそう?……聞いたこともない名前だ。
「これはきるのではなく突くものなんです。一応、お爺様にいわれ訓練してきましたが実戦はまだやったことが……」
「はいはい、ストップ。榊原君、大体わかったでしょ」
西森さんのストップ宣言のおかげで長話の地獄から開放された。
「なら、次は柿口ね」
と門脇さんの隣に座った女子生徒を指差す。
柿口と呼ばれた女子生徒はポニーテールに纏めた髪に優しそうな顔をしていた。
「はいです!!会長!!」
思ったよりも元気が良い返事をする。
「私は柿口☆千里!!高校3年生だよ。後、能力は……」
やけに早口でしかも☆がついていた。
なんなんだこいつは一体。しかも、能力はとか言っておきながら何もしない。
ただじっとこっちを見ている。しかも目が楽しそうだ。
「ワクワク、ワクワク」
「………」
「ワクワク、ワクワク」
「……なんなんだ」
にっこりと笑う柿口さん。
そのとき、柿口さんが左目を大きく開いた。
もともと大きく開いている左目だが、更に大きく開いた。
そして、その左目は発光していた。
「……」
俺はその光景に呆気を取られていた。
まず、不思議な光景だと思った。そして、美しいと思った。
光が収まると彼女の右手には不思議な形をした武器らしきものが握られていた。
「綺麗でしょ、私の能力の発動の仕方。でもね、この能力は最も、汚くて醜いものなんだよ」
笑顔でそう言うと武器を掲げた。
「これはね、勝手に人を殺す武器なんだ。完全に発動したら私の意思に関係なく人を殺すの」
怖いことを言っているのにその顔は笑っていた。
「今では、制御できているけど。一時期、人をたくさん殺したの。この血塗られたナイフで。」
柿口さんはそこまで言うと武器を戻す。
武器を戻すという行為は今のところ全員共通のようで発動させるときみたいに陣を形成しなくとも戻すことができる。
柿口さんのナイフは光の粉になって消えていく。
「私の話はここまで。次いっちゃって。会長!!」
柿口さんは笑顔でそういった。
「ああ、次は男子諸君だな。女子はもう一人特別な奴が居るが今は都合上いないので紹介はまた今度だ」
と西森さんが冷静に判断する。
「待ってましたぁああ。ついに俺の番だあぁあ!!」
妙に熱血感の高い奴が叫んだ。
どんな馬鹿野郎かと思えば朝、逃げ出したチキン野郎だった。
「ふん、そんなに俺の名前が聞きたいか。ええ!!聞きたいか?」
実はいうとそんなに聞きたくない。がここは敢えて黙っておく。
「そうか、聞きたいんだな。よし、一度しかいわない俺の名前は……」
「お前の名前など男子生徒Aでよかろう」
と西森さんが横から突っ込む。
「そうだ、俺の名前は男子生徒Aだったぁあ。ちなみに2年生だぜぇ!!」
なんか、こいつさっきよりテンションがおかしいことになっている。
「じゃあ、今度は俺のスペシャルなアビリティを紹介するぜ!!」
と叫んで椅子から勢いよく立ち上がる。
「俺の能力は華麗にして崇高な能力で名前を……」
「お前の能力名はオマケスペシャルだろ」
と西森さんの突っ込み。
「そうです!!俺の華麗にして崇高な能力はただのオマケなんですっ!!」
とかいいながら男子生徒Aは不思議な踊りをした。
阿波踊りのようなソーラン節のような……なんとも言えない踊りだ。
男子生徒Aが必死に踊っている最中俺は西森さんに耳打ちする。
「あれって発動条件なんですか?」
「いいや、彼いわく気合を入れているそうだ」
なるほどと心でほめる。確かに不恰好だが、能力に必要なのは精神力と気合。
ほとんどが心の問題なんだ。
「きたきたきたきた〜!!」
おや、能力が発動するようだ。
「ほらよ!!」
男子生徒Aの左腰の辺りが光りだした。
そして、円柱状のホルスターのような入れ物が形成されていく。
「完成だぜ!!」
彼の左腰には円柱状のホルスターっぽいものが完成していた。
そして、その中に細い棒のようなものがびっしりと詰まっていた。
「俺の能力は針だぜぇ!!」
………針。
「みろよ、厳しい特訓の果てに完成した究極の奥義”オマケスペシャル”だ」
といって針の束の中から一本取り出す。
そして、それを右手で構え部室の壁に投げつけた。
トンッという音が鳴り針が突き刺さった。
「ふい〜、これができるまで結構時間かかったんだぜ」
なるほど、これで中距離でも対応できるのか。
「よ〜し、俺が終わったから。次は湯水だぜ!!」
「勝手に仕切るな馬鹿者。…というわけだ。次は最後の湯水だ」
と西森さんは一番ガラの悪そうな湯水と呼ばれた男子生徒に言う。
「会長、悪いが俺は先にそいつの能力がみたい。本当に鎖の能力者なのか?」
湯水はあざけるようにいう。その言葉にムッとした。
「なら、俺からいきますよ」
と俺は静かに立ち上がった。
「ふん、お前の能力が本当に鎖なら俺の能力を見せてやるよ」
その言葉に更にムッとした俺は鎖を形成するのに最も分かりやすい構えを取る。
イメージは右のそでから出てくるように想像する。
やがて、イメージは形になり鎖を形成していく。
『!!』
西森さん以外の全員が驚いている。
ジャラジャラと短剣が先についた鎖が現れた。
「これで、どうだ」
対する湯水は呆気に取られている。
「まさか……本当に」
とか呟いている。
「榊原君、君の勝ちだよ」
西森さんがポンと肩をたたいた。
仕方がないので俺は鎖を解除する。
「わかったよ、俺の名前と能力を紹介してやる」
湯水は諦めたかのようにいった。
「俺の名前は湯水 匡、2年生。能力は……」
と両手を上に掲げる。
すると、一瞬にして陣が形成され棒のようなものが形作っていく。
陣の大きさは他の部員とは違いかなり大きい。
「できたぜ」
と言って俺に見せたのは大きな剣。
西洋の剣。両刃の剣はとても大きく両手でも持てるかどうか怪しい。
だが、湯水先輩はそれを片手で軽々と持っている。
「俺の能力は大剣だ。こいつは他にもいくつか特殊能力が付与されているが……それはまた今度な」
と言い大きな剣を解除する。
「どうだ、後一人ほどいるが全員能力者だろう」
西森さんはそう言って立ち上がる。
そこで気になったことを一つ聞いてみた。
「西森さんはなんで会長ってよばれてるんですか?」
「それは、私が生徒会長だからよ」
そうか、だから皆会長と呼ぶのか。
「なら、俺も会長と呼んだほうがいいですか?」
「別に私はどちらでもかまわん」
なら、俺も会長と呼ぼう。
「会長、で。部活の内容は?」
と俺が言う。
「はぁ……。それはやはり百聞は一見にしかずだ。実際に行ってみるか」
と会長。その言葉に湯水先輩が立ち上がる
「おい、マジかよ。赤村がいないのに行くきか!?」
更に門脇さんも立ち上がる。
「会長、いま行かれては今度こそ全滅です。考え直してください。」
男子生徒Aも立ち上がる。
「そうっすよ。せめて赤村さんが帰ってきたらにしましょうよ!!」
男子生徒Aは元気よく反論。
「私は、会長に賛成かな」
唯一、柿口さんだけが賛成する。
「ふむ、みんなの意見はわかるがどの道、経験が必要だ。赤村が戻ってくるのを待っていたら儀式が始まってしまうかもしれない」
会長のその言葉に。
「確かにそうだが……」
「そうっすね。」
「それは、私も同意見ですが…」
と煮え切らない返事をする。
「活性化していない。今だからこそこのメンバーでいけるのだ。皆わかってくれ。」
と会長は皆を説得する。
その言葉に反論していた全員が納得する。
「なら、全員の許可も得たし。あそこへ行くか」
と会長は言った。
そのときの俺にはその”あそこ”がどんなにつらいところかわかることなどなかった。
あれから、俺達はプレハブの部室を出て理事長室に足を運んだ。
理事長室では門脇理事長がいて。俺達を心よく迎えてくれた。
そして、理事長室の奥にある鉄の扉を開きその中を進んでいった。
中は階段になっており地下に続いているようだ。
地下に降りると冷たい空気が肌を刺した。
一行はその奥へと進んでいく。
やがて、目の前に鍵のかけられた鉄の扉が現れた。
鉄の扉は鍵を開け開くとギシギシとなり。長い年月を感じさせた。
会長曰く、この地下室は学校が建てられる前からここにあったそうだ。
俺達はその中に入っていった。
「会長、ここはなんの部屋なんですか?」
俺は会長に聞いた。
この部屋は正四角形で地面に陣が描かれていた。
ひんやりとした空気に炎の小さな暖かさは気持ちよかった。
「ここは、三重世界へ向かう扉だ」
「三重世界?」
「三重世界とは三つの世界が重なった世界で獣人、魔人、人が入り混じっている4次元空間だ。
普通、3次元から4次元に干渉は一切できないが、約46億と1100万年前に獣人と魔人が開発した
次元干渉の力により3次元から4次元に移ることが可能になった。その次元干渉の力の所為で
二つの世界はこの4次元空間を通して繋がるようになったんだ。初めはこの空間は平和の象徴
だったが、時が経つに連れ戦場に成り果てた。神はその3次元から4次元へ移る力を封じるために
新たに5次元を作成し、獣人と魔人の間を5次元空間でふさいだが月に満ち欠けが存在するように
この5次元空間は強くなったり、弱くなったりする。私達人は獣人と魔人の間にあるため5次元に
直接跳ぶことになる。では、ここで進んでいるはずの獣人と魔人の技術では何故、5次元空間を
突破できずに生まれて幼い人がこれを突破できるかというと、獣人と魔人には科学という概念が
存在しないからだ。獣人は我々並みの頭を持っているが生活に必要な程度の道具しか扱っていない
魔人に関しては道具という概念すらないに等しい。魔人はなんでも、魔法や魔術で解決しようと
するため科学技術は一切持っていない。つまり、我々人だけが便利な道具を操り、この5次元
を突破することができるのだ。」
半分と理解ができませんでした。
「ええと、つまり三重世界では獣人と魔人の小競り合いがあるんだけどそろそろ、5次元空間が
一番弱まる時期だから。獣人と魔人がいつにもまして活発になっているの。」
と門脇さんが優しく説明してくれるが一切理解できない。
「そうそう、俺達は襲ってくる獣人と魔人を蹴散らせばいいんだよ」
と湯水先輩が言う。
「蹴散らす?仲立ちするんじゃないの?」
と俺は聞く。だが、誰も答えない。
「榊原君、そろそろ行くよ」
と会長が言う。
「私も三重世界は始めてなので不安です」
門脇さんが耳元でささやいてくる。
「では、陣を発動させる」
『Ich fordere es』
会長が部屋の真ん中で呟いた。
それに呼応するように陣が光りだす。
『Ich mache eine Ansammlung der Wandel, und es ist Gotter』
何語かよくわからないが、英語でないことは確かだ。
『Ich raume jetzt nicht die dreifache Tur hier auf』
会長はまだ続ける。これは何のために行うのだろう。
『Uber der Dunkelheit; ist Manifestationsauktion mit einer Figur』
『Offnen Sie sich!!』
最後の言葉が終わると視界が暗転した。
そして、自分の意識も薄れていく。
目を開くとそこは密林だった。
さんさんと輝く太陽はまぶしくつい先ほどまでの暗闇も嘘のようだ。
「どうだい、次元突破の感想は?」
「いえ、自分の意識が薄れていたのでなんとも…」
俺は会長の姿をみる。いつの間にか巨大な弓が右手に握られていた。
他のメンバーもそれぞれの武器をもう装備している。
俺も鎖を想像し能力を発動する。
「ここが4次元の世界だ。」
と会長が言う。
「っていっても何も変わりませんけど?」
ここに来て変わったことといえば時間(太陽の高さから)と場所だけである。
これだけだったら単純にどこかのジャングルに飛ばされただけではないかと思う。
「直にわかる。」
ワオーンと犬の遠吠えが聞こえる。
しかし、ジャングルといっても鳥の声もないし、暑さもない。
「ちっ!!早速、来たか!!」
会長はそう言うと弓に矢のようなものを備える。
そして、素早く弦を引く。
「全員、今回は獣人だ。気をつけろ!!」
『はい』
俺以外の皆が答え一斉にそれぞれの戦闘位置に移動する。
俺はというと会長の隣だ。
会長と俺は4人の部員に守られるように真ん中に。
他のメンバーは俺の前後左右に一人ずつ陣取っている。
ワオーンと先ほどよりも近い距離から犬の吠えが聞こえる。
「敵の方向は右。距離は約十q」
門脇さんはまるで全てを見ているかのように情報をいう。
「七q、四q、二q、戦闘範囲です」
って早くない?敵ってそんなに早く行動するの?
俺が戸惑っているうちに会長は指示を下す
「鎖は死守。全員、散!!」
いきなり、会長に抱えられた。意味がわからずに暴れる。
しかし、会長は女とは思えない力で俺を背負い跳躍する。
俺は見た。今まで立っていたところに黒い何かが横切ったことを。
「榊原君、君は私の背中にいたまえ」
ととんでもなく恥ずかしいことをいう会長。
「いやですよ。俺も戦えますから」
「無理だ」即答だった。
「見ろ、彼らの戦いを。」
俺は会長の背中に身を任せながら部員達の戦いを見た。
門脇さんは剣槍というナイフのような奇妙な曲がりを持った武器で黒い何かを裁いている。
その速度は常人の域を軽く超えていた。
わずか2秒の間に黒いなにかの攻撃を数回も弾き更には鋭い突きを繰り出している。
俺では目で追うことさえも困難な戦いを彼女はしていた。
しかし、なんでこんなにも速い動きができるのだろう人間なのか?
答えは会長が言ってくれた。
「君は知らないと思うが能力が発動しているときわれわれは運動能力が著しく上昇するんだ。
彼女があの動きができるのはそれだけでなく彼女の持っている武器の能力が運動能力上昇だからだ。」
ほお、それは知らなかった。俺も能力発動中は運動能力が高くなるってことか。でも、高くなっている俺でも目で追うことが困難な戦いって……。
「そろそろ、だな。榊原君、よく見ているんだ」
会長の言うとおり俺は門脇さんの戦いを見る。
門脇さんは相変らずとんでもない動きで敵を見切る。黒い何かが徐々に速度を落としていっている。
一瞬、門脇さんが微笑んだように見えた。
その刹那、剣槍が淡い燐光を放ち今までよりも速い速度で黒い何かに切りかかる。
と思ったら突きだった。しかし、ただの突きではない。一瞬見えた突きの残映は音速だけではなく光速を越えた。
彼女の手の付近が湾曲して見える。そして、黒い何かに突き刺さる。
突き刺さった後も淡い燐光で相手を貫く。
とんでもない威力だった。黒い何かは見るも無残な姿に変わっていて元が難だったのかわからなくなっている。
俺はその姿に目をそらした。
「私達のやっていることは生か死の戦いだ。やらなければやられる。」
「でも、あまりいいことではない」と俺は呟く。
「それでも、私達はやらないといけない理由がある」
と会長は悲しそうな顔でいう。
「理由?生き物を殺すのに理由があるんですか?」
「あるさ、その行為によってもっとたくさんの生き物が助かるならな」
「それは、間違っていると思います」
「はぁ、もういい。榊原君、他の人も見たほうがいい。」
少し不服が残ったが大人しく観戦することにする。
柿口さんは背の高い男と対峙していた。
男は俺と変わりない人の姿。こいつも獣人なのか?
答えはすぐにわかった。
男は右手を横に振る。すると男の腕は何倍にも膨れ上がり衣服が裂け鋭い爪と毛を持った腕になった。
柿口さんは部室のときと同じ笑顔をしながら不思議な形のナイフを構えていた。
動いたのは獣人の男からだった。
大きくなった腕で柿口さんを狙い爪で引き裂こうとする。
しかし、それは柿口さんのナイフによって防がれた。
6pほどしかないナイフは鋭くて大きな爪を完全に防いでいる。
柿口さんが後ろにジャンプする。獣人の男は更に突っ込む。
異変が起きたのはその瞬間だった。
柿口さんのナイフが突然、真っ赤に染められ形が崩れた。
それを好機に獣人の男が爪を振り下ろす。その刹那、爪が音を立てて切り裂かれた。
彼女の手にはナイフ。しかし、その形状は当初のものとはかなり違い俺でも見たことがあるような一般的なナイフだった。
爪を破壊された獣人の男は形成を不利と悟ったのか腕を元の人の姿に戻す。
柿口さんは感情のこもらない目でナイフを真っ赤に染め形が崩れる。
「柿口の武器の能力は形状変化。形だけではなく質量も変化することができるが限度がある」
と会長の解説。
獣人の男は”憤怒”と力を込める。その姿は鬼を連想させた。
獣人の男は今度は腕だけではなく体全体を獣の姿に変化させた。その姿は犬いや……狼だった。
狼は今までとはまったく違う速い速度で柿口さんに近づく。
対する柿口さんは形状を変化させ大きなスローイングナイフのようなナイフになっていた。
狼は高速に移動し柿口さんを惑わそうとする。
柿口さんはナイフを使って狼に攻撃する。
狼は片方の爪を上手に使い攻撃する。
柿口さんは紙一重で狼の爪を避ける。そして、自分のナイフを滑り込ませる。
激しい攻防が続く。両者共に息すら切らしていない状況。
ふと、柿口さんに隙ができる。故意なのかミスなのかわからないが隙だ。
狼はその隙に体ごと爪を滑らせて柿口さんを襲う。
その攻撃で柿口さんは右肩に掠り傷を負う。そして、ナイフを落としてしまった。
俺には掠ったように見えたが柿口さんの傷はかなり深かった。
狼はその好機を無駄にはせず。最後の詰めを行う。
手負いの柿口さんに狼が体ごと突撃させていった。
光があふれた。それは柿口さんが能力を発動させるときと同じ色。
そして、狼は絶命した。
いきなり背中が破裂して絶命した。
生き残ったのは無表情の柿口さん。
柿口さんの手にはナイフが握られていた。
「柿口みたいな洗練された能力者は自分の武器を幾つも出すことができる。つまり、武器の量=実力だ。」
また、会長の解説。
男子生徒Aは数体の獣人と戦っていた。無数に存在する針をありえない勢いで飛ばして次々と獣人を倒していく。
「彼の武器の能力は誘導。彼が放った針は確実に獣人に直撃する」
また、新たな獣人が男子生徒Aを襲う。彼はへらへらしながらも華麗な動きを見せている。
その様は歴戦の勇者を想像させた。
しかし、あんなしょぼそうな能力なのになんであそこまで強いんだ。
「一応、いっておくが。今まで、こんな戦いが何千年と繰り返されてきたんだ。現代に残る能力は今までの激戦を乗り越えた能力なんだ
だから、しょぼそうに見えても実際は強い。弱い能力なんて数千年の時の中でとっくに血脈が絶たれている。更に前回の戦い…つまり、
50年前にあった戦いは今の数倍の能力者がいたにもかかわらずほとんどの血脈が絶たれてしまった。4大能力と呼ばれた大剣、弓、
刀、槍は前回の戦いで半分に落ちてしまった。君の鎖の能力も分家を含めて4つの血脈があったが前回の戦いで三つが絶たれ残された
一つは行方不明になっていた。つまり、君はいなくなったと思われた鎖の能力の生き残りなんだ。」
例にもまして会長の解説が続く。
そんなに俺の鎖の能力はすごいのか?
「人の能力は武器を形成する力。普通はただの武器を形成していたが数千年のときを経て特殊能力付の武器に進化した。これがなかったら
我々はとっくに滅亡している。」
会長の解説が続く中、彼はまた3体の獣人を殺した。
「まぁ、彼は幼い頃から努力を繰り返してきたからな」
湯水先輩は大きな剣で大きな獣人を真っ二つにした。
先輩の剣は敵の爪をものともせずに切り裂いていく。
数体の獣人が寄ってきてもわずか数秒で殺される。大きな剣はその重さには似合わない速度で敵を切り裂く。
その速度はまるで剣の重さを感じていないようだ。
大きな獣人を紙切れのように切り裂くと周りにいた獣人が全滅した。
「へ、低級の兵士じゃ。俺はころせねぇぜ!!」
と湯水先輩は叫ぶ。
すると、木々の間から大きな狼が現れた。
『忌々しい神の使いめ。殺してやるっ!!』
と狼から低い声が聞こえた。
「喋った!?」
「そうだ、獣人は人と獣の交わったもの。言語を使ってもおかしくない」
と会長の解説に俺は首を傾げる。
「でも、俺達の言葉が通じるのか?」
「本当は通じない。獣人の言葉はきちんとある。言葉が通じるのは三重世界だからだ。三重世界では全ての言葉が一つの言葉に変換
される。それは神が創った4次元の定理に基づく。三重世界では我々の世界の定理や法則はほとんど通用しない。今我々が地面に
立っているのは重力が働いているためではない。神が自分達の世界とまったく同じような環境に変化させているためだ。なんで、湯水が
自分並みに大きな剣を軽く振り回せるかというと剣などの無機物にはその法則がまったく通用しないからだ。現に私も重そうな弓を持って
君と空を飛んでいる。まぁ、それは私の弓の能力の一種でもあるが。弓の重さを感じないのは本当だ。」
また、長い解説が終わる。
「へっ!!雑魚が」
湯水先輩は叫ぶと同時に剣を振り上げる。
「うおおおお」
そして、獣人に向かって突っ込み、振り下ろす。
獣人はその瞬間、狼から人の姿に戻り剣をかわす。
そして、腕のみ獣化して爪で剣を弾く。
湯水先輩は剣で爪を弾く。そして、はじまる激しい攻防。
俺はその戦闘の早さに目が追いつかない。
つくづく、常人離れした人だなと思う。
そして、大きな一撃がどちらに決まる。
後ろに下がったのは獣人、その腕には切り刻ませた痕。
獣人は息を整え完全に獣化する。
そして、視認出来ない速度で湯水先輩のほうへ向かう。
湯水先輩は待っていましたよといわんばかりに剣を掲げる。
その剣に光が収束していく。
「いまだっ!!」
湯水先輩が叫ぶ。剣は灼熱に染まっている。
何もないところに剣を振り下ろす。
その瞬間、灼熱が剣から広がり地面に突き刺さりはじけた。
俺はあまりの光量に目を瞑る。
目を開けたときには剣で斬られ灼熱に染まった獣人が湯水先輩の前にいた。
「湯水の能力はいくつかあるが、今のは灼熱剣という。業熱を帯びた剣で斬ると相手は斬られるだけではなく焼かれ溶ける」
会長のわかりやすい解説である程度のことはわかった。
ワオーンと犬の吠える声が聞こえた。
もしかしたらこれは敵の合図なのかもしれない。
俺の予想は的中した。この声が聞こえた途端、生き残った獣人は撤退していった。
「よし、我々も部室に戻ろう」
先輩の一言で俺達は三重世界を後にした。
理事長室から出てわかったことがあった。
それは三重世界では30分くらいしか戦っていなかったのにこの世界はもう夕方になっていたことだ。
会長が言うには
「三重世界は”表”と”裏”の世界の時間を基準としているため時間の流れが違う。」
といっていた。
つまり、俺達はわずか30分の戦いのために数時間を無駄に過ごしたのだ。
部室に着いたとき、みんなの顔は疲れ果てた顔をしていた。
「諸君、今日はありがとうだ。榊原君、これで信じてもらえたかな?」
会長がにっこりと笑みをみせる。
「信じるも何も、あんな戦い見せられちゃ。」
さすがの俺もやれやれといった感じだ。
「まぁ、当分は行く予定はない。次行くときは…そうだな、儀式のときだな」
儀式?なんだそれは?仲立ちの儀式?
「以上で解散とする。皆も疲れただろう」
そう言ってみんなプレハブの部室から出て行く。
その足取りは少々重い。俺も家に帰ることにする。
しかし、何故俺達は戦うのか・仲立ちではないのか?
疑問が残る一日だった。
説明 | ||
あらすじ 三重世界、それは三つの世界の狭間にある危険な世界。 幼い頃、鎖の能力を覚えた主人公榊原芳樹はその鎖で己の母を殺してしまう。その償いのため、人を助けることを生きがいとした芳樹は自分と似た能力を持った少年少女に出会う。 そして、引きずられるまま三重世界に飛びこんで……。 |
||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
820 | 814 | 0 |
タグ | ||
中編 鎖 能力 異世界 オリジナル | ||
中谷キョウさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |