真・プリキュアオールスターズ 二章
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地球とは違う並行世界に存在する無数の国の一つ、花と緑に囲まれたパルミエ王国。

一度はナイトメアによって滅びたこの国も、国民達の尽力により、元の平和な姿を取り戻していた。そのパルミエ王国を治める二人の王が通路を歩んでいた。

すらっと伸びる長身に端正な顔立ちを持ち、高貴な服装に身を包む二人の青年は、真っ直ぐに歩みながら会話を交わしていた。

「各国の王や代表は、お揃いのようだ」

「ああ、急いで皆に知らせなくては」

どこか深刻な面持ち言葉を交わしながら、眼前に迫った扉を開いた。

やや薄暗かった通路に差し込む室内の灯りが一瞬視界を覆ったも、それはすぐに慣れる。だが、扉をくぐった瞬間、二人の姿は今までとまったく別のものになっていた。

いや、既に人型をしていなかった。見た目から可愛げなマスコットキャラのような小動物の姿になっていた。

これが、パルミエ王国の王である二人、ココとナッツの本当の姿だった。

「みんな、お待たせココ!」

先程までの深刻な声色ではなく、むしろどこか楽しげに室内に向かって呼び掛けたが、それに答えるのはいなかった。

広い会議場内では、二人とよく似た小動物達がワイワイと談笑を交わしていた。

光の園の勇者、メップルとミップル、そして皇子であるポルン、皇女のルルン。泉の郷の精霊、花の精霊フラッピに鳥の精霊チョッピ、月の精霊ムープに風の精霊フープ。最後に運び屋シロップであった。

飛び回るムープとフープにメップルとフラッピ、チョッピが注意を促すも、聞き入れず、ポルンとルルンはそれを煽るようにはしゃぎ、ミップルは楽しげに見詰め、シロップが我関せずとばかりに黙り込んでいる。

皆、それぞれ滅多に会うことのない友人との邂逅に弾む気持ちを抑えきれない。だが、二人の入室に気づいたフラッピが声を上げる。

「あ、ココとナッツラピ!」

その声に二人の姿を全員が見やり、歓迎するように声を上げる。

「早く会議を始めるロプ!」

そんな様子を嗜めるように二人を見やるシロップに苦笑しながら、ココとナッツの二人もテーブルに近づき、椅子に腰を下ろす。

「みんな、ホントによく集ってくれたココ」

「お願いナツ、ナッツ達の話を聞いてほしいナツ」

表情を引き締めて告げるナッツに一同の顔がやや不思議そうになり、一様に口を噤む。それを見計らってココが話を続けた。

 

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「今日集ってもらったのは他でもないココ。なにかとても恐ろしい気配を感じたからココ……」

やや強張った面持ちと硬い声で告げられる内容に心当たりがあるのか、全員の表情が曇る。

「ミップルも感じたミポ、とても嫌な気配だったミポ」

「フィーリア皇女も気にしてたチョピ」

異変は既にパルミエ王国だけではない、光の園、泉の郷でも世界に迫る邪悪な気配を察知していた。故に、今回のこの対策会議に馴染みの面々が招集された。

「ナツ、あの気配に立ち向かうためにレインボーミラクルライトを作ったナツ」

異変を察知してからナッツは対策を講じ、その一つとしてある物の製作を行った。徐に手元に置かれたペン型のライトを掴み、持ち上げる。

「ミラクルライトメポ?」 

「これポポ?」

「ラピ?」

会議場に入ってすぐに全員に渡された物に視線を落とし、興味津々と見やる。

「それナツ、みんなに用意したナツ」

満足気に頷くと、ムープとフープが嬉しそうにもらったライトを振る。だが、勢いよく振ってしまったため、フープの手から離れたライトが眼下のシロップに直撃し、シロップが仰け反る。

「ロプ!」

流石に予想していなかったのか、盛大に引っくり返るシロップに全員が慌てる。

「無闇に振り回してはいけないナツ」

「危ないココ」

顰めた面持ちで注意を促すも、当のシロップからは苦言が上がる。

「早く言うロプ」

なんとか身体を起こし、当たった場所をさする。

「ゴメンなさいフプ」

「大丈夫ロプ」

萎縮するフープに苦笑で返すなか、チョッピがナッツに向き直る。

「ナッツ、これはどうやって使うチョピ?」

「ナツ、このボタンを押すと、奇跡の虹が現われるナツ」

見せるようにライトの柄に備わったボタンを押すと、先端のハートから小さな虹色の光が溢れ、その幻想的な光景に全員が見惚れるように声を上げる。

光を消し、ナッツは改めて全員を見渡す。

「この奇跡の光が、みんなを守ってくれるはずナツ」

「解かったポポ」

「いつ使えばいいメポ?」

「ココ、ミラクルライトを振る時が来たらココがみんなに言うココ、その時まで大切に持っておくココ」

全員が頷こうとした瞬間、突如背後からドアの開閉音が響き、首を傾げた。

「ココ?」

視線が入口に集中すると、そこには息を切らしながら佇むタルトの姿があった。

「スイーツ王国のタルトココ」

この場には呼んでいなかった友人のただならぬ様子に胸中が騒ぐ。そして、タルトは乱れる息を呑み込みながら駆け寄る。

「大変や、とんでもない奴が来よって、シフォンが襲われたんや!」

その言葉に衝撃を受け、驚愕の声を上げ、不安が襲う。

「シフォンは無事ラピ!?」

「ああ、プリキュアはんのおかげでな」

シフォンはなんとか守りきったものの、あの異形には得体の知れないものを憶え、タルトは馴染の仲間に協力を仰ごうとここへやって来た。

本題を切り出そうと、声を荒げる。

「けど早う手打たんと…全ての世界がエライことになるかもしれへ……」

最後まで続かず、全身の毛が総立ち、鳥肌が立つ。遂先程も味わったこの感覚に、同時にまさかという思いも浮かび、眼前のココ達が同じように慄いているのを視認し、慌てて振り返った。

「まさか…!」

振り返った瞬間、その背後には先程見た異形が妖しく立ち塞がっていた。

塊から伸びるように浮き出た首が4つに分かれ、その猛禽のような眼を鋭く向ける。

『我ガ名ハフュージョン…全テヲ破壊シ、真ッ暗ナ世界ニ……力ヲヨコセ……』

その異形は初めてその名を名乗り、狙いを定めるように揺らめく。

「しもた、つけられとったんか!」

己の迂闊さを責める余裕もなく、次の瞬間にはフュージョンの身体が分裂し、無数の触手が狙いを定めて襲い掛かってきた。

突如現われた敵に慄いていた一同は慌てて逃げ出すも、それを逃そうとはせず、後を追う。バラバラに散るなか、ナッツは眼を見開く。

縦横無尽に襲い掛かるフュージョンに翻弄され、妖精達が持っていたミラクルライトを手離し、宙を舞う。

「ミラクルライトが…!」

唯一の対抗手段として作ったものを失ってしまってはと思わず戻ろうとするも、その手をココが掴んだ。

「ナッツ! 何してるココ!」

留まろうとするナッツを無理に引き、引っ張るようにココは出口に向けて駆けていく。

「みんな〜! プリキュアのところに行くココ〜!」

逃げるのに必死のなか、それだけを叫ぶ。

「誰か! プリキュアに危険が迫ってると伝えるメポ!」

「プリキュアに報せるラピ〜!」

彼らにできるのは、なんとかこの場を逃げ延び、彼らが信頼する者達に伝えることだった。その叫びに妖精達は協力してその包囲網を脱し、突き破る。

そんななか、一人駆けていたルルンが躓き、倒れ伏す。身を起こすルルンの瞳に目前に迫る触手が映る。

だが、それを寸前でポルンとチョッピが掴み、立ち塞がる。

「ルルン! なぎさ達に報せるポポ!」

悲痛な表情で叫ぶポルンにルルンが衝撃を受ける。だが、その間にも拘束を振り解こうと暴れる触手を必死に掴む。

「早く行くポポ〜!」

振り払われ、飛ばされるポルンの叫びに唇をグッと噛み、涙を浮かべながらルルンは振り切るように走り出した。

 

 

――――プリキュアの許に……!

 

それだけを頼りにして……

 

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陽気漂う柔らかな日差しのなか、移動屋台であるタコカフェの看板を掲げるアカネはいつもの公園でたこ焼きを焼いていた。

「ほい、お待たせ」

「ありがとうございます!」

素早く盛り付けたたこ焼きを差し出し、受け取るのは後輩の莉奈と志穂であった。

「二人はなぎさ達と一緒に行かなかったの?」

同じ後輩であるなぎさとほのかの友人であり、仲良しグループの二人が、何故一緒に付いて行かなかったのか首を傾げる。

「誘われたんですけどね〜」

「やっぱ、私達がいないとアカネさん寂しがると思いまして」

芝居掛かった口調でおどける二人にプッと噴き出すも、その頭にチョップを落とす。

「大きなお世話だ」

声を上げて笑い、二人はそのままテーブルに座り、焼きたてのたこ焼きを頬張る。

「やっぱりアカネさんのたこ焼きは美味しいね!」

「ありがとう」

舌鼓を打ち、絶賛する二人に頬が綻ぶ。

味を噛み締めるなか、耳に別の声が聞こえ、視線がそちらに振り向く。

「やった、遂に発見です!」

思わず手を止め、入口付近を見やると、階段を昇ってくる少女達が見えた。自分達と歳近い感じの7人の少女達は表情を輝かせながら駆け寄ってくる。

そのまま一気にアカネの前に辿り着き、先頭を進んでいた少女、のぞみが身を乗り出すように尋ねた。

「すみませ〜ん、ここ、タコカフェですか?」

「ああ、そうだよ」

その答に満足したのか、手に持っていたチラシを見せる。

「エヘへ、このチラシを見て来たんです」

それは随分前に作り、そして配ったものだ。だが、実際にそれを持って現われたのは久々だけに、アカネの声も弾む。

「わざわざ食べに来てくれたの?」

「はい!」

興奮気味に頷く笑顔に横からツッコミが入る。

「のぞみの方向音痴のおかげで随分遠回りしちゃったけどね」

「ホント、我が姉ながら、バスの乗り場を間違えるなんて、抜けてるんだから」

嗜めるように呟かれ、ムッと頬を膨らませる。だが、気を取り直し、アカネに向き直る。

「あ、たこ焼き7つくださ〜い!」

「あいよっ!」

思わず腕を捲り上げ、アカネは素早く生地を焼き台に流し込んだ。音を立てて生地が焼け、香ばしい香りが瞬く間に充満し、その焼きあがっていく過程を楽しげに見詰める。

生地の外側が焼けたのを見計らい、タコを入れ、素早く裏返していく。丸い黄色の物体がいくつも出来上がり、思わず見入る。

「スゴイスゴーイ!」

「面白いです」

「ココ達も来ればよかったのにね」

何気に漏らした一言にくるみが反論する。

「仕方ないじゃない、大事な会議なんだから」

軽く頭を小突き、のぞみが苦笑する。のぞみの横で香りを吸い、うららがうっとりとなる。

「いい香りです…あ、たこ焼きにカレーをかけたら、最強かも!」

力説する様子に苦笑が満ちる。

「うららはなんでもカレーだね」

「じゃあ、たこの代わりに羊羹を入れたら」

「ないない、ないですから!」

「あはは、流石和菓子屋さん」

その味を想像したのか、ややげんなりした様子で被りを振る。

「そう言えば、以前お粥にも入れたことあったわね」

失笑が満ちるなか、のぞみが名案とばかりに立ち上がり、声を上げた。

「あ、そうだ! ソースの代わりにチョコをかけたら、甘くて美味しいかも!」

「……え?」

その言葉に既視感を憶え、アカネは思わず作業の手を止め、様子を窺っていた莉奈と志穂の二人も反射的に振り向いた。

だが、その様子を呆れたと捉えたのか、りんが大きく肩を落とす。

「のぞみ、あんたね…」

「え〜美味しいと思うだけど……」

やや口を尖らせながら反論した瞬間、笑い声が聞こえ、顔を向ける。すると、アカネが眼元に涙を浮かべながら声を押し殺していた。

その様子に首を傾げるのぞみ達に被りを振り返す。

「あははは、ごめんごめん。お客さん達、私の後輩のなぎさとほのかにそっくりで」

意図が掴めずにますます眼を丸くして混乱するなか、今度は背後から声が上がった。

「そっくり、そっくり!」

高揚するように志穂が席を立ち、莉奈が感心したように声を掛ける。

「たこ焼きにチョコなんて、なぎさにそっくりだよ! きっと、気が合うと思うよ!」

まさか、そんな変わり者が彼女以外にも居るとは思わなかったのだろう。思わぬ話題を見つけた二人はそのまま興奮した面持ちで互いを見やる。

「あ、莉奈手帳に写真なかった?」

「あ、そうだ! 確か鞄に入ってたね!」

「そうそう、前に皆で撮ったやつ!」

二人は盛り上がりながら席を立ち、そのまま離れた場所に置いてある鞄を取りに離れていく。どこか呆然と見詰めるのぞみ達に笑みを零し、そして残念そうに肩を落とす。

「今日に限っていないんだよねー…なんか、美味しいチョココロネを買いに行くって…」

せっかく気の合いそうな友人になれるというのに、肝心の当人達は今日は遠出。なんとも間が悪いと心中に嘆息する。

「あ、ソース切れちゃった…ちょっと待っててね」

手元の容器が空なのに気づき、アカネは徐に車内へと乗り込んでいった。残された一行は今の会話から聞いた名前を反芻させた。

「なぎささんとほのかさんか…どんな人なのかな……?」

3人があれ程楽しげに語るのだから、きっと素敵な人達なのだろうと、そしてどこか親しみを憶える予感にのぞみが空を仰ぎ、その様子を一行が温かく見守るなか、不意に声が響いた。

「なぎさ〜〜」

「え?」

「なに…?」

遠くから聞こえた小さな声に周囲を見渡すが、それらしい影はない。

「え……?」

のぞみがふと空を見上げた瞬間、すぐ頭上から何かが降ってきた。それは見事にのぞみの顔に抱きつく。

「ぬおおっ」

突如視界が奪われ、のぞみはあたふたとバランスを掻いて尻餅をつく。

その光景に全員が驚いてのぞみを呼び、のぞみの顔に抱きついていたものが激しく動き、叫ぶ。

「助けてよ! なぎさ〜!」

必死にしがみついて泣くそれを、のぞみは両手で掴み、強引に引き剥がす。

「ん〜ぷはっ!」

ようやく視界が開け、息を吐き出す。そして、両手に抱えるそれを初めて見た。ふわふわとした可愛らしいぬいぐるみのようなそれが、どこか驚いた面持ちでのぞみを凝視している。

「ルル、なぎさじゃないルル」

落胆した様子で落ち込むなか、のぞみを含めて全員がどこか不思議そうに見入っていたが、くるみはその姿に一人声を上げる。

「あ、あなた…!」

その言葉が最後まで続かず、のぞみの手に収まるもの――ルルンはハッとしたように空を見上げた。

「来たルル!」

「え…?」

つられてその先を見上げるなか、上空から何かが弧を描いて向かってくるのが映る。たちまち全員の顔が険しくなる。

「何、あれ…?」

ポツリと漏れる口調もどこか硬い。

「早く逃げるルル! 追ってきたルル!」

震える口調で叫ぶルルンにのぞみは表情を一瞬強張らせ、やがて引き締めて全員に頷き返す。その瞬間、ほぼ間近にまで迫ったそれから地を這うような声が響き渡った。

『力…ヨコセ〜〜』

降り注ぐように拡がったそれをよけ、一斉に身を翻して駆け出していく。地面に拡がった液体はそのまま身を起こし、鋭い動きで後を追った。

その数秒後、騒ぎに気づかずに車から降りたアカネが首を傾げた。

「ごめん、お待たせ〜〜あれ?」

遂今しがたまでそこに居たはずの少女達の姿がどこにもなく、また何事もなかったように煙を立てる鉄板のみが在るだけ。

「ねえ、さっきの子達は?」

不思議に思い、帰ってきた莉奈と志穂に尋ねるも、二人もまた同じように首を傾げるのみであった。

 

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ルルンを抱き抱えたのぞみを先頭に7人は息を切らしながら、追い縋るフュージョンから逃げていた。だが、相手は諦めるどころかますますその勢いを増すように追い縋ってくる。

「いったい、何なの!?」

「もしかして、この子を狙っているんでしょうか!?」

突然現われた得体の知れない存在と、それに狙われるルルン――事情が掴めずに、戸惑うも今は逃げるのが先だった。

「みんなバラバラルル……」

のぞみの腕のなかで身を震えさせ、消え入りそうに消沈する様子にのぞみが何かを決意したように強張らせる。

事情はどうであれ、今はこの子を守る――無意識に抱き締める腕に力を込めた。

どれだけ走っただろうか、徐々に距離が詰められていることに最後尾を走るくるみとノゾミが背中越しに相手を見やりながら注意を促す。

「ダメ、追いつかれる!」

「来るわよ!」

刹那、フュージョンはステップを踏むように跳躍し、一気に7人の頭上を飛び越え、前方に立ち塞がる。慌てて制止し、身構えるなか、フュージョンは不規則に膨張し、その身を収縮させていく。

それが警戒を煽り、険しいものが浮かぶ。

『ソイツヲヨコセ……』

狙いをつけるように声が響き、それがのぞみ達にも向けられる。

『オ前達…プリキュアダナ……!?』

発した名に全員が息を呑む。だが、そんな動揺などお構いなしにフュージョンはその形態を変貌させていく。無数の顔が浮かび、それはやがて一つの姿を成す。

そこに姿を見せる球体状の顔に浮かぶ二つの眼が開かれ、その瞳がパチンコ玉のように眼のなかで反響するように動き、中心に定まった瞬間、こちらを睨みつけた。

その姿にのぞみ達は一際強い驚愕に彩られた。

「何で…!?」

忘れるはずもない――かつて、彼女達が戦った組織『エターナル』の僕、ホシイナーだった。

緑の身体から伸びる腕が鋭い爪を宿したように研がれ、その無機質な瞳が殺気を滲ませるように見下ろした。

『ホシイナ〜!』

震撼させるかのように獰猛な叫びを上げ、ホシイナーは覆い被さるように立ち塞がった。その視線に射抜かれ、ルルンは身体を襲う恐怖に表情を悲壮に染める。

「ルル……」

「大丈夫だよ!?」

「ルル?」

頭上から降り注いだ強い言葉に恐る恐る顔を上げると、自分を抱くのぞみが威嚇するようにホシイナーを見据えていた。

「あんな奴に、貴方は渡さない! それに、はぐれちゃったお友達も一緒に捜してあげるから…だから泣かないで!」

安心させるように微笑むのぞみに、ルルンのなかで微かな安堵が沸き、声を漏らす。

「この子には指一本触れさせない! いくよ、みんな!!」

キッと凛とした面持ちで顔を上げ、ホシイナーと対峙するのぞみに並ぶように6人が立ち、強く頷いた。

「「「「「「イエス!!」」」」」」

 

のぞみ、りん、うらら、こまち、かれんの5人が懐から取り出した携帯型変身アイテム、キュアモ を握り締め、上下に開く。

 

「プリキュア! メタモルフォーゼ!!」

 

中央のボタンを押し、掲げるキュアモから5色の光が満ち、5人の姿を覆っていく。各々の光の色を宿す旋律が奔流を生み出し、そのなかへと飛び込んでいく。

淡い輝きがのぞみの身体を包み、燃える炎がりんの身体を焦がし、満ちる粒子がうららの身体を覆い、舞う緑の葉がこまちの身体を纏い、鋭い水の軌跡がかれんの身体を流れる。

次の瞬間、5人は薔薇の祝福を受けた装飾に身を包んだ。

光が霧散し、大地に足を着く5人が凛と顔を上げる。

 

「大いなる希望の力! キュアドリーム!」

 

「情熱の赤い炎! キュアルージュ!」

 

「弾けるレモンの香り! キュアレモネード!」

 

「安らぎの緑の大地! キュアミント!」

 

「知性の青き泉! キュアアクア!」

 

5つの力を宿した輝きが満ち、5つの視線が一つになる。

 

「希望の力と未来の光! 華麗に羽ばたく5つの心! Yes! プリキュア5!!」

 

雄雄しく立つ5人を導くように光が満ちる。

 

 

ノゾミが身構え、漆黒に彩られたディープキュアモを取り出し、天空へと掲げる。

 

「シャドウフォーゼ!」

 

起動ボタンを押し、天空へと掲げた液晶から満ちる漆黒の輝きを放つ光が渦を描き、その身体を包み込む。

宇宙の暗闇を流れる星々の輝きが身体を覆い、黒き装飾を施していく。

耳に黒と赤に彩られた薔薇がリングが音を鳴らし、その瞳を開く。

 

「希望を包みし深淵の星! ダークドリーム!」

 

身に纏うのは決して禍々しいものではなく、気高さを宿す漆黒の意志を胸に姿を現わした。

 

 

ミルキィ・パレット を開き、流れるようにボタンを押し、くるみが構える。

 

「スカイローズ・トランスレート!」

 

パレットから拡がる青い薔薇の花吹雪が身体を覆うように包み、装飾を施していく。

足下から昇る青い薔薇の旋律がウエーブを描く髪を両サイドで束ね、左右に青い薔薇の髪飾りが施される。

 

「青い薔薇は秘密の印! ミルキィローズ!」

 

キリッとした眼差しを向け、胸元に一際大きな青い薔薇を施し、大きく名乗り上げた。

 

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満ちていた星のごとき光が周囲に霧散し、凛と佇む7人の姿にルルンは茫然と見入る。

「プリキュアルル…?」

包まれる温かさに安堵するなか、変身した7人は緊張を解かず、身構える。

「来るよ!」

ドリームの言葉が合図になったように、ホシイナーはその腕を振り上げ、勢いよく振り下ろした。

『ホシイナ〜〜!!』

握り締められた拳が降り注ぐ瞬間、7人は瞬時に跳んだ。目標を見失った拳はそのまま地面を叩き、噴煙が舞い上がる。

分かれ、距離を取って着地すると同時に目標を捜して立ち往生するホシイナー目掛けてレモネード、ミント、ダークドリームがその場を蹴り、飛び出す。

「でやぁぁぁぁ!」

「はぁぁぁぁぁ!」

「たぁぁぁぁぁ!」

3方向からの同時のキックがホシイナーの身体に鋭く喰い込む。だが、次の瞬間…衝撃は突如分散し、蹴り当てた場所の感触が大きく緩み、3人の身体はその収縮に呑み込まれる。

「…え?」

「何…!?」

「これは…!」

3人はそのままホシイナーの身体を突き抜け、反対方向へと着地する。

「攻撃が…」

「効きません…!」

あの突き抜けた感触から考えてもダメージを受けたようには見えない。ホシイナーの身体が最初と同じく金属質の輝きを放つ液体へと変わり、その形態を変化させている。

「あいつ、ただのホシイナーじゃないわ!」

ドリームの許に降り立ったダークドリームが身構えるなか、液体のなかから再びホシイナーの顔が現われ、その無機質な瞳が不規則に動く。

「ルル!」

それが再びルルンを捉え、身を竦ませる。ニヤリと笑うホシイナーは腕を伸ばし、ドリームに向かう。だが、その寸前で割り込んだミルキィローズが腕を叩き落とす。

「はっ!」

続けて身を振り上げ、拳でもう一方の腕も弾き返す。

「この子には指一本触れさせないって…」

ドリームの前に壁になるミルキィローズに続くようにルージュ、アクア、ダークドリームの3人が立ち塞がった。

「「「言ったでしょ!!」」」

3人が腕をクロスさせ、甲が輝く。

 

「プリキュア・ファイヤーストライク!」

 

「プリキュア・サファイヤアロー!」

 

「ダークネス・シューティング…レイ!」

 

作り出した炎の球をルージュが勢いよく蹴り飛ばし、水で形作られた弓矢を引き、アクアが水の矢を放ち、両手に満ちた漆黒の輝きを掲げ、ダークドリームが光のシャワーを打ち出した。

3つの光が螺旋を描きながら収束し、ホシイナーに突き刺さる。

その光景に誰もが表情を輝かせる。3人の必殺技を合わせた力は相当なものだ。少なくともダメージを与えたと確信した…だが、それは次に驚くべき光景に変わる。

受け止めていた部位が後方に大きく歪み、その周りが大きく拡がり、己にぶつかるエネルギーを体内へと取り込んでいく。

それを証明するかのように身体が大きく膨らみ、膨張する。完全にエネルギーが身体のなかに吸い込まれ、ホシイナーは再び金属質の輝きを持ったフュージョンへと戻っていく。

だが、その大きさは先程の倍近くにまで膨れ上がり、その顔がプリキュア達を見下ろす。

『凄マジイ力ダ…イタダイタ……』

その陰が覆い、息を呑む。

「力…?」

「どういうこと!?」

睨む視線を気にも留めず、身を翻すフュージョンに身構えるも、相手は大きく跳躍し、空中に飛び上がると同時に彼方へと飛び去っていった。

プリキュア達はその光景に呆然となり、暫しその場に立ち尽くす。やがて、周囲を静寂と動物の囁きが満たすと、脅威が去ったことを理解し、警戒を解く。

「なんなの、いったい……?」

相手の意図が掴めず、訝しげなものを隠せない。そこへ、レモネードとミントが駆け寄ってくる。

「大丈夫ですか?」

ともかく、なんとか危機を脱しただけに、全員の顔がホッと安堵に包まれる。

「あ、ありがとうルル…」

窮地を救ってくれたプリキュア達に感謝を述べるルルンにミルキィローズが覗き込むように顔を近づける。

「怪我はない? ルルン…」

「ルル?」

突然の呼び掛けに首を傾げる。自分は名を伝えていないはずだ。困惑するルルンに向かって微笑む。

「あたしよ」

刹那、ポンという音とともにミルキィローズが煙に包まれ、そのなかから一つの影が飛び出し、地面に降ろされたルルンの傍に着地する。

その姿にルルンの眼が驚きに包まれる。

「パルミエ王国の…ミルクルル!」

「ルルン! 久しぶりミル!」

嬉しそうに頷き、親愛の意を示すように手を伸ばすミルクの手を取り、ルルンと二人で久方ぶりの出会いを喜び合う。

その姿に微笑ましいものを憶え、6人は小さく笑みを零す。

「なんだかよく解からないけどお友達みたいね」

暫し、ミルクとの再会に耽っていたが、ルルンがハッと何かを思い出したように動きを止めた。

「ルル! 大変ルル! なぎさとほのかに伝えるルル!」

ルルンが発した名に、ドリームは眉を顰め、首を傾げた。

「…え? その名前…さっき、聞いたような……」

聞き覚えのある名に、指を口にあてて考え込んだ。

 

説明
今回はパルミエ王国会議から5メンバーの戦闘まで。

戦闘シーンは書いてて楽しいですね。

今回登場のダークドリームの捏造設定です。


変身アイテム:ディープキュアモ

変身時の掛け声:シャドウフォーゼ

必殺技:ダークネス・シューティングレイ
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