英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり〜
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〜クロスベル市・港湾区〜

 

「全く……リィン君とロイド君のせいで、あたしが聞きたいそっちのあたしの事を聞きそびれる所だったじゃない。」

「す、すまない……」

「いや、この場合謝るのは向こうの俺達で、俺達は謝る必要はない気が……」

混沌とした様子が落ち着いた後呆れた表情で溜息を吐いて呟いた”エステル”の指摘に”ロイド”は謝罪し、”リィン”は冷や汗をかいて指摘した。

「へ……並行世界の”あたし”があたしに?えっと、何を知りたいの?あたしはロイド君やリィン君みたいに、”そっちのあたし”と比べて改変されている部分はそんなにないはずだけど。」

「エステル……君、本気でそう思っているのかい?」

「ミントやパズモさん達の事もそうだけど、何よりもママ自身もこの世界のママと比べたらたくさん改変されているよ〜?」

「髪型やその腰につけている”剣”の事もそうだけど、何よりも”逆しまのバベル”でそっちの……えっと……本物の空の女神様と一緒にイシュメルガに止めを刺した時の”アレ”って一体何なのよ!?」

目を丸くしたエステルの言葉にリィン達がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ヨシュアは疲れた表情で、ミントは苦笑しながらそれぞれエステルに指摘し、疲れた表情で呟いた”エステル”はエイドスに一瞬視線を向けた後ジト目になってエステルを見つめて指摘した。

 

「エイドスさんと一緒にイシュメルガに止めを刺した”アレ”って………ああ、あの”神技”の事か。」

「確かに普通に考えれば異種族でもないエステルさんに翼を生やした事もそうだけど、”人”の身でありながら”神技”を扱えるなんてありえないもんね。」

「ああ〜、一体何の事かと思ったけど”アレ”の事だったのね。あたしがエイドスと一緒に放ったコンビクラフトはニルやフェミリンス――――――あたしが契約している”天使”や”女神”もそうだけど、何よりもあたしの中にいるサティアさんのお陰よ。」

「そ、”空の女神”を呼び捨てって……!あんた、それがどれだけ失礼な事かわかっていて言っているの……!?」

”エステル”の指摘を聞いて心当たりを思い出したケビンは目を丸くし、リースは静かな表情で呟き、納得した様子で呟いたエステルの口から出たとんでもない言葉――――――”空の女神”であるエイドスを呼び捨てにしている事に並行世界の面々がそれぞれ血相を変えて驚いている中、シェラザード皇子妃は信じられない表情でエステルに指摘した。

「いや、失礼も何も”空の女神”の二つ名を心底嫌がっているそこの年齢を大幅に詐称している自称”ただの新妻”に今更気遣いする必要なんてないし。」

「ちょっと、エステルさん!?私が年齢を大幅に詐称している上”自称ただの新妻”ってどういうことですか!私の年齢が24歳なのは本当の事ですし、私はエステルさん達と出会う少し前に夫と結婚式を挙げたばかりですから、自称じゃなくて”本物のただの新妻”ですよ!?」

ジト目で答えたエステルの説明を聞いたエイドスは反論し、二人の会話を聞いたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「4000年以上生きている癖に、未だに年齢を詐称しているじゃない!」

「それに私達の予想通り、案の定”ただの新妻”の方を名乗ったの、そこのKY女神は。」

「アハハ……どっちもエイドスさんにとっては絶対に主張すべき事なんだろうね。」

「年齢に関しては理解できますが、”ただの新妻”である事にどうしてそこまで拘るんでしょうね?」

クレハは顔に青筋を立てて、ノイはジト目でそれぞれエイドスに指摘し、ナユタとエレナは苦笑しながら呟き

「エ、エイドス……」

「ううっ、並行世界の皆さんが今まで抱いていたエイドスへのイメージを壊してしまって、本当に申し訳ございません……!」

アドルは冷や汗をかいて表情を引き攣らせながらエイドスを見つめ、フィーナは申し訳なさそうな表情で並行世界の面々に謝罪した。

 

「な、何かさり気なく驚愕の事実が次々と判明したよな……?」

「う、うん。女神様の年齢の件もそうだけど、女神様が結婚していたなんて事実、とんでもない事実だよね?」

「えっと、ツァイト?私達の世界の方の女神様の本当の年齢もそうだけど、女神様がご結婚されているという話も本当なのかしら?」

我に返った”マキアス”と”エリオット”はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせながら呟き、”エリィ”は戸惑いの表情で”ツァイト”に確認し

「うむ………残念な事に並行世界でも女神の”あの性格”も同じだったようだな………」

「という事はオレ達の世界の女神(エイドス)も今目の前にいる並行世界のエイドス様と同じなのか。」

「そのような事実、知りたくなかったぞ……まさかとは思うが、空の女神(エイドス)の”本性”を知っていた”先代”は妾達の空の女神への”いめーじ”を守る為に空の女神の詳細について語らなかったのか……?」

「アハハハハハハッ!しかも”空の女神”自身が”空の女神”という二つ名を心底嫌がっていたなんて、面白すぎる事実じゃないか!」

「笑いごとやないやろうが、ワジ!!」

「そ、その……先程から気になっていたのですが、エイドス様とそちらの白い翼の女性の容姿は非常に似ていらっしゃっていますが、まさかエイドス様の御姉妹の方なのですか?」

”エリィ”の確認に疲れた表情で答えたツァイトの答えを聞いた”ガイウス”は目を丸くして呟き、”ローゼリア”は表情を引き攣らせながら呟いた後ある推測をし、腹を抱えて大声で笑っている”ワジ”に”ケビン”は注意し、”リース”は話を逸らす為にフィーナとエイドスを見比べながら訊ねた。

「いえ、私はエイドスの母――――――フィーナ・クリスティンと申します。不肖の娘が皆さんが今まで抱いていた”空の女神”の印象を壊してしまって、本当に申し訳ございません……!」

「ア、アハハ……僕はエイドスの父――――――アドル・クリスティン。ちなみに僕は君達と同じ人間だけど、フィーナはフィーナの故郷――――――”イース”では妹のレアと共に”女神”として称えられている存在だよ。」

「そして、そちらのお二人――――――ナユタお祖父(じい)様とクレハお祖母(ばあ)様が私やお母様にとって”先祖”に当たる方です。」

「うっ!?エ、エイドスさん……」

「はうっ!?だから、私やナユタの事を”年寄り”呼ばわりしないでって言っているでしょう!?」

フィーナとアドルの名乗りの後に紹介したエイドスの自分達に関する紹介にナユタと共にショックを受けたクレハは顔に青筋を立ててエイドスに指摘し、更なる驚愕の事実に並行世界の面々はそれぞれ驚いたり冷や汗をかいて表情を引き攣らせたりしていた。

 

「め、女神様の御両親……!?」

「そ、それに……そちらのお二人はエイドス様の”先祖”と仰いましたが……まさかそちらの世界の未来のキーアさんやエイドス様のように、エイドス様の御親族の方達も時を越えて現代のゼムリアに……」

「もういろんな意味で滅茶苦茶過ぎるでしょう、そっちの世界で起こった出来事は……」

我に返った”アリサ”は信じられない表情で声を上げ、”エマ”は驚きの表情で呟き、”セリーヌ”は疲れた表情で呟いた。

「ん?”アドル・クリスティン”……?どっかで聞いた事がある名前やな……」

「フフ、日曜学校の巡回神父としての仕事もしたことがあるケビンなら聞き覚えがあってもおかしくないわ。――――――アドルさんは自身の今までの冒険譚を日記にして残して、その日記は後の世――――――つまり、今のゼムリア大陸では”赤毛の冒険家の冒険日誌”という小説シリーズとして伝わっているもの。」

「ふえええっ!?という事はアドルさんが100数冊もあるあの有名な小説シリーズの主人公にして著者だったんですか……!?」

「し、しかもアドルさんの冒険譚を日記にして残したという事は、あの小説の内容は”アドルさんの実際の体験談”だったという事にもなるよね……!?」

「マジかよ……」

「フフ、七耀教会にとってはとんでもない事実の判明の嵐じゃないか。」

アドルの名前に引っかかっている”ケビン”に苦笑しながら答えたルフィナの説明を聞いた並行世界の面々がそれぞれ血相を変えている中”ティータ”と”トワ”は信じられない表情で声を上げ、”アガット”は驚きの表情でアドルを見つめ、”アンゼリカ”は苦笑しながら呟いた。

「フッ、空の女神の”本名”や”子孫”の件を比べれば、まだマシな事実と思うがな。」

「レ、レーヴェ、これ以上向こうの僕達を混乱させるような事は言わない方がいいと思うんだけど……」

静かな笑みを浮かべて呟いたレーヴェの言葉を聞いたヨシュアは冷や汗をかいて指摘し

「め、女神様の”本名”ですか……?」

「それに”子孫”と仰いましたが……まさか今もこのゼムリア大陸に女神様の子孫が存在していらっしゃっているのでしょうか……?」

レーヴェの指摘が気になった”エリゼ”は戸惑いの表情で、ある事に気づいたアルフィン皇太女は驚きの表情でエイドスに訊ねた。

 

「そういえば、並行世界の方々にはまだ私の”本名”を名乗っていませんでしたね。――――――エイドス・クリスティン・ブライト。この名が”私の本名”です。」

「ブ、”ブライト”って事はまさか……!?」

「エ、エステルさんとカシウスさんがエイドス様の子孫なのですか……!?」

エイドスの本名を知った並行世界の面々がそれぞれ血相を変えている中”ロイド”と”クローディア王太女”は信じられない表情で”エステル”と”カシウス中将”に視線を向け

「あ、あ、あんですって〜〜〜〜!?」

「エイドス様の御名はともかく、私とエステルがエイドス様の子孫という話は本当なのでしょうか?もし、それが本当ならエイドス様の”眷属”である”神狼”殿や魔女の長殿もそうですが、レグナートも気づいていてもおかしくないのですが……」

”エステル”は口をパクパクさせた後信じられない表情で声を上げ、”カシウス中将”は困惑の表情で疑問を口にした。

「女神の子は女神の力――――――”神”としての力を受け継がず、普通の人として生まれ、そして子を残していったのだから、眷属たる我らがお主達が女神の子孫である事に気づけなかったのだ。」

「ですがエステルさん達――――――”ブライト家”は、エイドス様のファミリーネーム――――――”ブライト”を受け継いでいたのですから、エステルさん達のファミリーネームを知った時点で気づけなかったですか?」

”ツァイト”の説明の後にある事が気になった”ティオ”が”ツァイト”に指摘した。

「逆に聞くが、遥か昔より人の子の”名”と”血”が今のこの時まで受け継がれ続けていく”奇蹟にも等しい偶然”が起きると思えるか?」

「た、確かに……」

「貴族や王族ですら国が滅びれば”名”もそうですが、血族を後の世に残し続ける事ができるかどうかも怪しいですのに、王族や貴族でもない女神様の血族が遥か昔より”ブライト”の家名を保ち続けた上、血族も残し続けていられたなんて、もはや”奇蹟”と言っても過言ではありませんものね。」

疲れた表情で答えた”ツァイト”の反論を聞いた”ノエル”と”リーシャ”は苦笑しながら同意し

「ちなみにエステルちゃんとカシウス中将がエイドス様の子孫かどうかについての件やけど、オレ達の世界での”影の国”から元の世界に帰還する直前に”影の王”を撃破した事で”影の国”の権限もそうやけど情報も全て取り戻したセレストさんが教えてくれたお陰で判明したんや。」

「それと私達の世界のセレストさん――――――いえ、”影の国”がエイドス様の血族の情報を入手した経緯についてですが、”影の国”にエイドス様の”先祖”に当たるナユタさんと、エイドス様の御両親であるアドルさんとフィーナさんが巻き込まれた事によってエイドス様の血族の情報も”影の国”に入ってきたとの事です。」

「うふふ、更にレン達の世界の”影の国”に巻き込まれたのはレン達だけじゃなく、レンやプリネお姉様の家族――――――このゼムリア大陸にとっては”異世界”に当たる”ディル=リフィーナ”の大国メンフィル帝国の前皇帝たるリウイ・マーシルンを始めとしたマーシルン皇家の一部の人達に加えて数十年前に死別したパパの戦友にして側妃達、ディル=リフィーナでは”世界の禁忌”として恐れられている存在――――――”神殺し”一行やレン達の世界で”クロスベル帝国”を建国した皇帝の一人であるヴァイスお兄さんの転生前のヴァイスお兄さん、後は何故かティオもそうよ♪」

「ふええええっ!?そ、それじゃあそちらの世界の私達は”影の国”で、女神様の凄い昔のお祖父(じい)ちゃんや女神様のお父さんとお母さんと一緒に冒険したんですか〜〜〜!?」

「オリビエやお姫様もそうだけど、”剣帝”の件を考えれば並行世界のレンを引き取った異世界の大国の皇家の面々が巻き込まれた件や死別した人物達が”影の国”で具現化した件はまだ納得できるけど、他のメンツは滅茶苦茶過ぎるでしょう……」

「しかもさり気なく何でわたしだけ、そんなカオス過ぎるメンツの一人としてエステルさん達の話にあった”影の国”という所に巻き込まれていたのですか……」

「それについては、わたしまで”影の国”に巻き込んだ”張本人”であるわたし達の世界の”影の王”しか知らないかと。」

「ハハ……”影の国”の件もエレボニアやクロスベルと並ぶ……いえ、それ以上のとんでもない”改変”じゃないか。」

ケビンとリース、レンの説明を聞いた並行世界の面々がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中”ティータ”は信じられない表情で声を上げ、シェラザード皇子妃は疲れた表情で呟き、ジト目で呟いた”ティオ”の疑問にティオは静かな表情で答え、”オリヴァルト皇子”は苦笑しながら呟いた。

 

「今までの話を聞いてふと気になったのですが……エイドス様の家名は”ブライト”で、御両親の家名は”クリスティン”との事ですが、”ブライト”の家名はエイドス様が伴侶の方とご結婚された事で家名も伴侶の方の家名である”ブライト”に変わったからなのでしょうか?」

「いいえ、そもそも”ブライト”は当時のゼムリアの人々が私を称え、送ってくれた”称号”なんです。」

「当時のゼムリアの人々が”空の女神”を称えて送った”称号”だと?一体どのような経緯があって、ゼムリアの人々から”ブライトという称号”を送られたのだ?」

”ミュラー”の疑問に答えたエイドスの話を聞いて新たなる疑問を抱いた”ユーシス”は不思議そうな表情で訊ねた。

「その事についての説明を始めたら凄く長くなるので省略して簡単に説明しますと、私の時代で皆さんが乗り越えた”巨イナル黄昏”を遥かに超える混迷に満ちたゼムリアを私がツァイト達”眷属”や夫を含めた仲間達と共に救った事に感謝した人々が、ゼムリアを救ったメンバーの中心人物であった私を称え、”ブライトという称号”を送ってくれたのです。」

「知っている者もいると思うが”ブライト”とは”光”を現す言葉だ。当時のゼムリアの人々は混迷に満ちたゼムリアにエイドスや我等が”光”をもたらした事から、エイドスを”光(ブライト)”と称えるようになったのだ。」

「混迷に満ちたゼムリア大陸に”光”をもたらしたことから、その”光”をもたらしたメンバーの中心人物であった”空の女神”に”光(ブライト)”という称号を………」

「フフ、”巨イナル黄昏”を遥かに超える混迷に満ちたゼムリアに”光”をもたらしたのだから、空の女神はその称号通りまさにゼムリアの”光(ブライト)”ね。」

「そしてエイドス様の子孫であるカシウス中将閣下やエステル様も形は違えど、”光(ブライト)”をもたらしていますわね。」

エイドスと”ツァイト”の説明を聞いた”アルティナ”は呆けた表情で呟き、”クロチルダ”と”シャロン”は苦笑しながら呟き

「はい……カシウスさんは13年前の”百日戦役”もそうですが、3年前のクーデターや”異変”でも危機に陥ったリベールに”光”をもたらしてくれましたし……」

「エステルは3年前のクーデターや異変もそうだけど、”闇”に落ちた僕やレンに”光”をもたらしてくれたね。」

「まあヨシュアやレンの場合は、”光をもたらした”というよりも、”光で闇を照らして逃げ場を無くして捕まえた”と言うべきでしょうね。――――――それよりも、崇めている女神に関わるとんでもない事実の連続を知ってしまったケビンさん達はどうするつもりなのかしら?」

”シャロン”の言葉に”クローディア王太女”は微笑みながら同意し、静かな笑みを浮かべて呟いた”ヨシュア”の言葉に続くように”レン”は苦笑しながら呟いた後”ケビン”や”リース”、”ワジ”、”ガイウス”へと順番に視線を向けて問いかけた。

 

「そら当然、エイドス様の御姿も含めて全部アルテリアに報告するに決まっているやろ!?……と言いたい所やけど、エイドス様の子孫関連はオレ達の胸にしまっておいた方がエステルちゃん達”ブライト家”の為になると思うねんな……」

「空の女神の血族が今もなお健在だなんて事実を教会が知ったら、間違いなく”ブライト家”を教会に引き込もうとするだろうからね。」

「そうですね。特にエイドス様の血を引いているエステルさんは教会の象徴として”聖女”、カシウス中将閣下は”聖人”として祀り上げられるかもしれません。」

「せ、”聖女”って……あたしの柄じゃないんですけど。」

「それは俺も同じだし、教会の象徴として祀り上げられる等御免被るな。」

”レン”の指摘に対して”ケビン”は疲れた表情で声を上げた後複雑そうな表情を浮かべ、”ワジ”は真剣な表情で、”リース”は複雑そうな表情でそれぞれ推測を口にし、二人の推測を聞いた”エステル”はジト目で呟き、カシウス中将は疲れた表情で呟いた。

「後は”空の女神の血を後の世に多く残す為”という名目で、そっちの世界の七耀教会がそっちの世界のカシウス中将の再婚話を持ちかけたり、あるいは教会が用意する女性―――――十中八九教会の上層部の親類の女性達やシスター達への”種付け”なんて話も持ち上がるかもしれないわね♪」

「た、”種付け”って……!」

「……不埒過ぎます。」

「レン、幾ら何でも最後のその予想は下品過ぎるわよ。」

「それに教会を侮辱していると捉えられてもおかしくないと思うのですが?」

「あー……その懸念も忘れていたな。レナを裏切る事をするつもりは毛頭ないし、当然再婚話なんて絶対に御免被る話だな。」

「いや、さすがに並行世界のレンちゃんの最後の予想はありえへんとは思いますけど、ただ再婚の件については完全に否定できないでしょうな……」

小悪魔な笑みを浮かべたレンの予想を聞いたその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中”ユウナ”は顔を真っ赤にし、”アルティナ”はジト目で呟き、プリネは真剣な表情で、リースはジト目でレンに指摘し、疲れた表情で呟いた”カシウス中将”に”ケビン”は苦笑しながら指摘した後複雑そうな表情を浮かべた。

「それに”ブライト家”が”空の女神”の血族であるという事実を教会が知れば、エレボニア帝国の国際的立場が非常に不味くなる懸念も考えられるからな……」

「エステル達の件を教会が知れば、何で帝国の国際的立場が不味くなるとガイウスは考えているの?」

するとその時複雑そうな表情で答えた”ガイウス”の推測が気になった”フィー”は不思議そうな表情で訊ねた。

 

「そりゃそうだろう。なんせ帝国は”百日戦役”に”大地の竜(ヨルムンガンド)戦役”――――――”空の女神の血族の故郷であるリベールを滅ぼそうとした上、空の女神の血族を断絶の危機に陥らさせた”という”大罪を二度も犯した事”も判明しちまうんだからな。」

「その”大罪に対しての償い”として七耀教会は帝国がブライト家――――――いえ、王国に正式に”百日戦役”と”大地の竜(ヨルムンガンド)”の件の謝罪や賠償する要求をする事も考えられますし、最悪は……」

「最悪帝国を”世界の敵”呼ばわりして、帝国を滅ぼす”聖戦”を起こす為に世界中の各国に参戦を呼びかける可能性も考えられますわね。」

「そして帝国も滅ぼされない為に、再び軍備を増強して世界中の国と戦争せざるをえないという事か……」

”フィー”の疑問に対して”レクター”は肩をすくめて疲れた表情で答え、”クレア”は複雑そうな表情で、”ミュゼ”は真剣な表情で、”ラウラ”は重々しい様子を纏ってそれぞれ推測を口にし

「そんなことになったら、”巨イナル黄昏”の時の状況に逆戻りじゃないか!?」

「いえ……それどころか”巨イナル黄昏”の時以上に帝国は不味い状況になると思うわ。」

「”空の女神”はゼムリアの全世界の人々が崇めている”唯一神”だからな……当然、エレボニアの国民達も”空の女神”を崇めているから、国民達自身も帝国を滅ぼす為に暴動を起こす事も考えられるぜ。」

「それに国民達だけでなく、軍人も全員”空の女神”の信者なのだから、その崇めている存在の血族を滅ぼしかねない事をしてしまったという事実を知れば”大地の竜(ヨルムンガンド)”の時と違って、軍の士気も間違いなく最底辺に落ちて、最悪は暴動を起こす国民達を止める所か暴動に加わって国民達と共に帝国を滅ぼそうとする可能性すらもありえるな……」

「そして世界や帝国の民達の全ての”怒り”の行く末は皇家と政府に向けられてしまうだろうな。」

「そんな……ッ!」

「……………………」

「姫様………」

「……………………」

それぞれの推測を聞いて表情を青褪めさせて声を上げた”マキアス”に”サラ”は厳しい表情で、”トヴァル”と”ミュラー”、”ユーシス”はそれぞれ重々しい様子を纏って更なる推測をし、それらを聞いていた”リィン”は悲痛そうな表情を浮かべ、アルフィン皇太女は辛そうな表情で顔を俯かせ、それに気づいた”エリゼ”は心配そうな表情を浮かべ、”クローディア王太女”は複雑そうな表情で黙り込んでいた。

 

「ちょ、ちょっとちょっと!?そんなとんでもない事、あたし達は絶対に望んでいないわよ!?」

「仮にそこまで状況が悪化してしまえば、エステル達――――――”ブライト家”の意志はもはや関係なくなってしまうと思うよ。」

「そうね。このゼムリア大陸にとっての”唯一神である空の女神への信仰心による闘争心”なのだから、”全ての元凶(イシュメルガ)”を滅ぼせば闘争心もなくなった”巨イナル黄昏”による”呪い”よりもある意味性質(たち)が悪いわよ。」

話を聞いて慌てだして声を上げた”エステル”に”ヨシュア”と”レン”はそれぞれ複雑そうな表情でそれぞれの推測を指摘した。

「い、今の話って僕達の世界のエレボニアにとっても他人事じゃないよね……?」

「あ、ああ……しかも、僕達の世界の場合は七耀教会は既にエイドス様の血族が”ブライト家”である事も把握しているからな……」

一方話を聞いていたエリオットとマキアスはそれぞれ不安そうな表情を浮かべたが

「いや、俺達の世界のエレボニアはこっちの世界のエレボニアみたいな心配は無用だぜ。」

「はい。エレボニアが”百日戦役”勃発の真実――――――”ハーメルの惨劇”を公表した事もそうですが、”百日戦役”の件でリベールに正式に謝罪し、メンフィル帝国に対する負債を増やすという形でエレボニアの代わりにメンフィル帝国がリベールに”百日戦役”の件に関する謝罪金等を支払ってくれましたし、エイドス様ご自身によるリベールとエレボニア、双方の王家と政府を庇う声明も出して頂けたのですから。」

「それに私達の世界の教会は”ブライト家が空の女神の血族”である上エレボニアは既に”百日戦役”もそうだけど、エイドス様ご自身が決めた”ハーメルの惨劇”に関するエレボニアの”償い”の一部を実行した事も知っているから、それ以上エレボニアを責め立てるような事はしない……いえ、”できないわ。”何せ”七耀教会が崇めているエイドス様ご自身が決めたエレボニアの償い”に、更なる償いを求めてしまえば教会自身がエイドス様への信仰を否定する事にもなるでしょうし。」

「更にそこに付け加えると”百日戦役”では”ブライト家”の故郷たるロレント市を保護し、”大地の竜(ヨルムンガンド)戦役”では窮地に陥りかけたリベールの危機にかけつけてリベールを含めた盟友達と共にリベールを侵略しかけたエレボニア帝国軍を撃退したメンフィル帝国がエレボニアを保護してくれているのですから、リベールの人々の反発は起こりにくいかと。」

「エレボニアが敗戦し、空の女神が直々に考えた償いを受け入れたからこそ、”新たなるエレボニアの存亡の危機の芽”は既に摘み取られていたという事か………」

「……その、もしかしてエイドス様はもしエレボニアが”百日戦役”の件の償いをしなければ、将来エレボニアはこちらの世界の人達が懸念している事態になりかねない事も想定した上で、”百日戦役”の償いとして僕達にあれらの条件を挙げたのでしょうか?」

レクターやクレア、ルフィナとミュゼが二人の心配は無用である事についての説明をし、それらの説明を聞いていたユーシスは静かな表情で呟き、エイドスの真意を推測したセドリックはエイドスに確認した。

 

「―――――はい。私の血族の存在によって多くの人々が不幸になる事はエステルさん達”ブライト家”もそうですが私自身も望んでおりませんので。」

「そういっている割には自ら”国としての格を下げる事”もそうだが、現エレボニア皇帝に対する処罰の内容は厳し過ぎではないかの?」

セドリックの疑問にエイドスが肯定すると”ローゼリア”がエイドスに意見をした。

「”私達の時代”を知らないから、ロゼ2号はそんな事が言えるのですよ、”私達の時代”を知るツァイトなら”私達の時代”の感覚なら私がエレボニアに求めた”ハーメルの惨劇”に対する”償い”は相当穏便であると理解できるでしょう?」

「うむ………それよりも女神よ、我が同胞を継いだ者に対する呼び方はもう少し何とかならんのか?」

「全くじゃ!誰が”2号”じゃ!?せめて、”二代目ロゼ”や”ロゼを継ぐ者”等と言った他にもマシな呼び方があるじゃろうが!?」

「今はそんな細かい事を気にしている場合じゃないでしょうが……」

「ア、アハハ………それよりも、”エイドス様達の時代の感覚”からすれば並行世界のエレボニアに求められたユーゲント陛下御自身の処罰等を含めた”ハーメルの惨劇に関する償いは相当穏便”と仰いましたけど、エイドス様の時代で”償い”を求めた場合、一体どんな内容になるのでしょうね……?」

「”空の女神達の現役時の時代”は”暗黒時代”よりも遥か昔で、それも”巨イナル黄昏”の時以上に混迷に満ちていた時代なのでしょうから、ユーゲント皇帝どころかアルノール皇家自体の”廃嫡”や”処刑”もしくは”奴隷化”なんて事もありえたと思うわ。」

エイドスの指摘に”ツァイト”は頷いた後疲れた表情で指摘し、”ツァイト”の指摘に同意した後顔に青筋を立てて反論した”ローゼリア”にその場にいる多くの者達が脱力している中”セリーヌ”は呆れた表情で呟き、苦笑した後不安そうな表情を浮かべた”エマ”の疑問に”クロチルダ”は複雑そうな表情で推測を口にした。

 

「ハッ……確かにクソッタレな話だが、並行世界のオレ達はこの後すぐに元の世界に帰るのだから、オレ達がシラを切ればいいだけの話じゃねぇか。”ブライト”の連中に関しても、空の女神の血族という証拠が書面のような形に残るモノで残っている訳でもねぇんだからな。」

「その考えは浅はか過ぎだぞ、アッシュ……”証拠”はなくても”証人”――――――ましてや”公的立場”がある人物がこんなにも多くいるのだからな。」

鼻を鳴らした後答えた”アッシュ”の意見に”クルト”は真剣な表情で指摘した。

「ガイウス、それに他の星杯騎士団の方々も。俺――――――いや、”俺達”がいずれ何らかの形でリベールに”百日戦役”の”償い”をする事を約束しますから、エイドス様の血族関連の事はこの場でそれぞれの胸に秘めてくれませんか?お願いします……!」

「私の方からも”百日戦役”の件でのリベールへの”償い”を約束するので、エイドス様の血族の秘匿の件、どうかお願いする――――――この通りだ。」

「わたくしも帝国の”皇太女”として御約束しますので、どうかお願いしますわ……!」

「リィン…………オリヴァルト殿下………皇太女殿下……オレは別にいいのだが……」

「……どうする、ケビン?」

するとその時決意の表情を浮かべた”リィン”が”ガイウス”達――――――星杯騎士団の関係者達を順番に見回して頭を下げて嘆願し、”オリヴァルト皇子”とアルフィン皇太女も続くように頭を下げて嘆願し、三人の行動を目にした”ガイウス”は辛そうな表情を浮かべた後”ケビン”達に視線を向け、”リース”は複雑そうな表情で”ケビン”に訊ねた。

「信仰している女神の血族の存在を黙っているなんて聖職者失格かもしれへんけど……色々とお世話になったオリヴァルト殿下もそうやけど、帝国の次期女帝に世界の”終焉”を食い止める為に自ら犠牲になった悲劇の英雄による約束を無下になんてできへん上、聖職者としても教会が原因で多くの信者達が”巨イナル黄昏”の時以上の混乱に巻き込まれる事は望んでへんし……何よりもエステルちゃん達”ブライト家”もそうやけど、エイドス様御自身も帝国がそんな状況に陥る事は望んでへんやろうから、オレ達の胸に秘めとくべきやな。」

「ケビンさん……」

疲れた表情で答えた後苦笑を浮かべた”ケビン”の答えを聞いた”エステル”は嬉しそうな表情を浮かべ、

「僕もケビンと同じ意見だね。それに何よりも帝国に大きな”貸し”も作れるんだから、別にいいと思うよ?」

「ワジ、お前な……」

「聖職者の言う事じゃねぇだろうが。」

”ケビン”の意見に同意した後口元に笑みを浮かべた”ワジ”に”ロイド”と”ランディ”は呆れた表情で指摘した。

「クローディア殿下。今は共和国への賠償金の支払いでリベールにまで賠償金を支払う余裕はありませんが、共和国への賠償金の支払いを終えた後”百日戦役”の件の正式な謝罪や賠償金の支払いをお父様、もしくはお父様の跡を継いで即位したわたくしが在位である間に必ず実行する事をこの場で御約束しますので、どうか後少しの間だけお待ち頂くよう、お願いします……!」

「アルフィン殿下…………―――――わかりましたので、どうか頭を上げて下さい。殿下のリベールへの心遣い、お祖母(ばあ)様にも伝えておきます。いつかその日が来る時をお待ちしておりますが……どうか、御無理だけはされないでください。」

「はい……お気遣いしていただきありがとうございますわ。」

アルフィン皇太女は真剣な表情で”クローディア王太女”を見つめて頭を下げ、アルフィン皇太女の行動に驚きの表情を浮かべた”クローディア王太女”はすぐに気を取り直してアルフィン皇太女に気遣いの言葉をかけた。

 

説明
第169話
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