英雄伝説〜黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達〜 |
8月26日、PM1:30、クロスベル帝国・光と闇の帝都クロスベル――――――
メンフィル・クロスベル連合とエレボニア帝国の大戦から4年後、特務支援課から捜査一課の所属となったロイドは日々捜査官の一人として帝都クロスベルを中心に働いていたある日、同じ捜査一課で働いている上司の一人にして自身の守護天使でもあるルファディエルと共にクロスベル双皇帝の一人―――――ヴァイスハイト・ツェリンダー――――――通称”ヴァイス”の呼び出しによって皇帝の執務室を訪れてヴァイスからある説明を受けていた。
〜オルキスタワー・34F・皇帝執務室〜
「”合同捜査隊”、ですか?」
ヴァイスの説明を聞いていたロイドは不思議そうな表情を浮かべて呟いた。
「ああ。お前達も最近”とあるマフィア”共が急激に力をつけてきて勢力を拡大している話は知っているな?」
「!その”マフィア”というのはまさか……!」
「現在はメンフィル・クロスベル連合の領土となっている旧共和国で活発的に活動していて、警察や遊撃士協会だけでなく裏社会の組織までもが危険視している”A(アルマータ)”ね。”合同捜査隊”という呼び方や、アルマータの活動区域が旧共和国――――――クロスベルだけでなく、メンフィル帝国の領土でも活動している事を考えるともしかしてメンフィル帝国との”合同捜査”かしら?」
ヴァイスの指摘で心当たりをすぐに思い出したロイドは血相を変え、ルファディエルは静かな表情で呟いた後ヴァイスに確認した。
「そうだ。連中の実態はメンフィルも未だ掴めていないようでな。メンフィルの諜報関係者も連中の内偵を実行しているものの、未だ実態を掴めていない所か、他の組織――――――現地の警察やGovernor Intelligence Department(総督情報省)、そして遊撃士協会のように”犠牲者”まで出ているとの事だ。」
「!!」
ヴァイスの説明を聞いたロイドは目を見開き
「警察もそうだけど、旧共和国の情報機関である旧CIDの関係者や遊撃士、旧CID(中央情報省)やエレボニアの情報局、更には結社すらも上回っているメンフィルの諜報部隊が実態を掴めていない所か、”犠牲者”まで出しているなんて私達が想定していた以上の危険な組織になりつつあるようね。」
「ああ……それこそ、危険度や凶悪さで言えばあの結社やD∴G教団をも上回るかもしれないな……」
目を細めて呟いたルファディエルの推測にロイドは厳しい表情で同意した。
「そういう訳で双帝国の”中央”の俺達やリウイ達もアルマータを本格的に捜査、並びに撲滅させる組織を結成することを決定してな。――――――ここまで言えば、お前達がここに呼ばれた”理由”もわかるだろう?」
「俺とルファ姉がその”合同捜査隊”のメンバーに選ばれて、その件についての詳細な説明の為にここに呼ばれたという訳ですか……」
説明を終えたヴァイスに答えを促されたロイドは真剣な表情で自身の推測を口にした。
「そうだ。GIDや遊撃士もそうだが、時には”暗殺”も行うメンフィル帝国の諜報関係者まで殺した件を考えるとこちらも対抗する為に相当な手練れを用意する必要がある。で、捜査の為にカルバード州に送るCrossbell Central Police Department(クロスベル中央警察)の関係者の手練れとしてお前達が挙がったという訳だ。」
「あの……質問いいでしょうか?」
ヴァイスの話を聞いてある事が気になったロイドは戸惑いの表情でヴァイスに声をかけた。
「ん?なんだ?」
「捜査の為に警察の関係者の中でも戦闘能力が高いルファ姉を送る事は理解できるのですが……何故俺もなんですか?戦闘能力という点で考えればダドリーさんやセルゲイ警視等と言った人達が他にもいるのですが……」
「連中の標的が帝都(クロスベル)にも向けられる可能性も考えると、帝都の防諜を薄くすることはできないし、この合同捜査隊には”現場での臨機応変な考え”も求められているからな。その点も考えるとロイド。”初代特務支援課”のリーダーとして様々な事件に臨機応変に対処していたお前の方がダドリー達よりもこの合同捜査隊のメンバーとして”適正”だからというのもあるが、この”合同捜査隊”のアルマータの捜査と並行して行う”業務”の事も考えると”特務支援課”に所属していたお前達の方がダドリー達よりもやりやすいからというのもある。」
「へ………”アルマータの捜査と並行して行う業務”、ですか……?」
ヴァイスが口にしたある言葉が気になったロイドは不思議そうな表情で首を傾げた。
「……恐らくだけどその”捜査と並行して行う業務”とやらはかつて”特務支援課”にいた頃に行っていた”支援要請”なのじゃないかしら?」
「はっはっはっ、さすがルファディエルだな。カルバード州(むこう)のあらゆる組織は人手不足のようでな。現地の警察は当然として、GIDや遊撃士協会からも手を貸してもらいたい仕事があれば”支援要請”という形で遠慮なく回して構わない事を伝えている。――――――勿論アルマータに関する捜査が関わればそちらを最優先にさせてもらう事も伝えて了承してもらっているぞ。」
「ちょ、ちょっと待ってください!話の内容は理解しましたが、まさかとは思いますがその”支援要請”は俺とルファ姉だけが担当するって事ですか!?だとしたら、幾ら何でも人手が足りなさ過ぎて”本来の業務であるアルマータの捜査”ができなくて、本末転倒ですよ……!?」
ルファディエルの推測に対して呑気に笑った後に答えたヴァイスの説明を聞いて冷や汗をかいて表情を引き攣らせたロイドはある事を察すると我に返った後慌てた様子で指摘した。
「安心しろ。”支援要請”は”合同捜査隊自体に対して出される支援要請”だから、当然メンフィルから派遣される”合同捜査隊”の者達も”支援要請”を担当してもらうし、クロスベル側の”合同捜査隊”の者達はお前達だけではないぞ。」
「ほっ……ちなみに俺達以外のクロスベル側の”合同捜査隊”のメンバーとの顔合わせもそうですが、メンフィル側の”合同捜査隊”のメンバーを今ここで教えてもらう事は可能ですか?」
ヴァイスの話を聞いて安堵の溜息を吐いたロイドはある事をヴァイスに訊ねた。
「ああ、構わないぞ。ちなみにこれがメンフィル側の”合同捜査隊”のメンバーの顔触れだ。」
ロイドの質問に頷いたヴァイスはロイドにある資料を手渡した。
メンフィル側の”合同捜査隊”メンバー
エレボニア総督リィン・シュバルツァー将軍
リィン・シュバルツァー付き秘書見習いセレーネ・L・アルフヘイム
リウイ・イリーナ独立親衛隊”鉄機隊”団長リアンヌ・ルーハンス・サンドロット将軍
”鉄機隊”隊長デュバリィ大佐
”鉄機隊”副長エンネア少佐
”鉄機隊”副長アイネス少佐
メンフィル帝国皇女レン・H・マーシルン皇女
SSS級猟兵団侍衆”斑鳩”副長、”白銀の剣聖”シズナ・レム・ミスルギ並びに斑鳩の”忍び”達
エレボニア王国トールズ士官学院特科クラス”Z組”担任クロウ・アームブラスト教官
エレボニア王国鉄道憲兵隊クレア・リーヴェルト少佐
エレボニア王国三大名門”ログナー侯爵家”当主アンゼリカ・ログナー侯爵
「どうだ?メンフィルは中々の豪華なメンツを寄越しただろう?」
「………………………………」
「まあ、”豪華”と言えば”豪華”だし、”灰色の騎士”――――――いえ、”灰の剣聖”が契約している異種族達も戦力として含めると戦力面は”過剰”同然の充実さだけど……」
ロイドに資料を渡したヴァイスはからかいの表情で問いかけ、資料を全てルファディエルと共に目を通し終えたロイドは驚きのあまり口をパクパクさせ、ルファディエルは苦笑しながら呟き
「つ、突っ込み所が多すぎてどこから突っ込めばいいんだ……!?」
我に返ったロイドは疲れた表情で声を上げた。
〜エレボニア王国・バルヘイム宮・エレボニア総督執務室〜
一方その頃、エレボニア総督を務めているリィンは自身の婚約者の一人にして”パートナードラゴン”でもあるセレーネと共に”総督”である自分の補佐をしてくれているパントから”合同捜査隊”についての説明を聞かされ、その”合同捜査隊”のメンバーにリィンとセレーネが含まれている事を知った。
「い、いやいやいやいや……!?話の内容は理解しましたが、何でその”合同捜査隊”のメンバーに俺――――――”エレボニア総督”まで含まれているんですか……!?」
「エレボニア総督であるお兄様が、エレボニアを長期間留守にすれば、色々な問題が発生すると思うのですが……以前もお兄様や私達がメンフィル本国に行ってヘイムダルを留守にしている間に起こった事件――――――”ヘイムダル決起”事件という”前例”がありますのに……」
説明を聞き終えたリィンは疲れた表情で突っ込み、セレーネは戸惑いの表情で指摘した。
「無論その問題についても考えている。君とセレーネ嬢に関しては1週間の内、3〜4日”合同捜査隊”のメンバーとして活動して残りの日数はヘイムダルで通常業務を行ってもらう。幸いにもリィン君は”魔神”や”女神”と契約しているから、”転位”でいつでもカルバード州とヘイムダルを移動できるから移動時間のリスクはないだろう?」
「それはそうですが……ただそれでも、”エレボニア総督”である俺にしか処理できない書類が溜まる事でエレボニアの政務に支障をきたすと思うのですが……」
パントの説明を聞いたリィンは戸惑いの表情で更なる疑問を指摘した。
「その件に関しては私が君の代わりに処理しておくからエレボニア総督にしか処理できない書類が溜まる事はないから、心配無用だ。」
「た、確かに政務に関しては完全に初心者の俺に”補佐”として俺に色々と教えて下さったパント卿でしたら安心ですが、それでも俺自身が出席等しなければならない会議とかもあるのですが……」
「その点に関しては君がヘイムダルに滞在している日に行えるようにエレボニア王国政府やアルノール王家の方々と調整する事になっているから大丈夫だ。」
「……………」
自分が口にした問題点を次々と即座に答えたパントの答えを聞いたリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせて黙り込んだ。
「え、えっと……ちなみにその”合同捜査隊”のメンフィル側のメンバーは私とお兄様以外だと、どのような方々なのでしょうか?」
「君達以外のメンフィル側の”合同捜査隊”のメンバーはサンドロット卿にデュバリィ大佐、それとレン皇女殿下だ。」
「ええっ!?サンドロット卿とデュバリィさん、それにレン皇女殿下が!?……あれ?そういえばレン皇女殿下は身分を偽って現在北カルバード州の名門高等学校――――――”アラミス高等学校”でしたか?そこに留学中と聞いていますが……まさか、その”合同捜査隊”の件が関係しているんですか?」
セレーネの質問に答えたパントの答えを聞いたリィンは驚いた後ある事を思い出してパントに訊ねた。
「いや、元々レン皇女殿下は”別件の調査”の為にアラミスに潜入留学していたんだが、”A(アルマータ)”の件が問題化した事で既に現地入りしている殿下も”合同捜査隊”に組み込まれることになったんだ。――――――とはいっても”生徒会長”を務めているレン皇女殿下に関しては生徒会の業務を疎かにすることはできない上私のように生徒会長としての業務を任せられる者もいないから、殿下には普段は導力ネットによる情報収集をしてもらう程度だ。勿論重要作戦時――――――例えば”A”の本拠地を襲撃するといった作戦の際は高等学院を休んでもらって君達に合流してもらう事になっているよ。」
「レン皇女殿下が高等学院に留学している話は聞いていましたが、”生徒会長”を務めていらっしゃるのは初耳でしたわね……」
「ああ……ハハ、けど確かに殿下なら”生徒会長”も容易に務める事はできるだろうな。」
パントの口から語られた意外な事実を耳にしたセレーネは目を丸くし、セレーネの言葉に頷いたリィンは苦笑した。
「―――――話をメンバーの件に戻そう。”合同捜査隊”のメンフィル側のメンバーは他にもいてね。そのメンバーの中には斑鳩の”副長”を含めた斑鳩に所属している数名の”忍び”達も含まれている。」
「な―――――シズナ達まで!?えっと……パント卿もご存じのように、メンフィルは情報局を信用できなく、かといって各国の首脳達の前でその時が来ればエレボニアの”保護”を解いてエレボニアを一国家としての独立を認める事の宣言や誓約書にサインをしたことから”保護期間中”のエレボニアに自国の諜報部隊を投入し辛い事情もある為、エレボニア総督である俺がメンフィルとは無関係の団体であったシズナ達”斑鳩”と長期契約を交わすという形で彼女達にエレボニア総督側の諜報を請け負ってもらっていますが……シズナ達には既に話を通しているんですか?」
パントの口から語られた更なる驚愕の事実を聞いたリィンは絶句した後困惑の表情でパントに訊ねたその時
「―――――勿論、その件については”別件の依頼”として”契約”しているから心配無用だよ、リィン♪」
突然シズナが覆面の偉丈夫と共にリィン達の前に現れた!
「シ、シズナ……それにクロガネさんも……」
「お久しぶりでござる、リィン殿、セレーネ殿。」
「ア、アハハ……相変わらず登場の仕方が突然ですわよね、”斑鳩”の方々は……」
シズナと覆面の偉丈夫――――――”斑鳩”に所属している”忍び”の”中忍”にしてシズナの従者――――――クロガネの登場にリィンは冷や汗をかき、クロガネはリィン達に軽く会釈をし、セレーネは苦笑しながらシズナとクロガネを見つめた。
「フフ、君達と共に行動するのは1年半前の”ヘイムダル決起”――――――いや、あの時共に行動したのは”バベル”の時くらいだから、実際に長期間行動を共にするのは4年前の大戦以来になるね、リィン♪」
「言われてみればそうだな……ハハ、シズナに加えてクロガネさん達もいるんだったら、俺は必要ないと思うんだがな……」
シズナの話にかつての出来事を思い返したリィンは苦笑しながらシズナを見つめた。
「4年経ってもその謙虚さは全然変わっていないね。うん、相変わらず可愛い弟弟子で何よりだ♪」
「ちょっ、シズナ……ッ!?パント卿やセレーネもいる目の前で、”これ”は止めてくれ……!クロガネさんも彼女に何か言ってやってください……!」
(アハハ……未だに人目もはばからず、エリゼお姉様や私達にも同じことをしているお兄様だけは他人の事は言えないと思うのですが……)
「申し訳ござらんが、姫の”それ”は斑鳩を率いる者として問題がない数少ない楽しみであり、普段姫に五月蠅く行っている某が姫の数少ない問題のない楽しみを奪う訳にはいきませんので、耐えて――――――いや、むしろ”役得”と思って受け入れて欲しいでござる。」
一方シズナは嬉しそうな表情を浮かべてリィンに近づいて頭を撫で、シズナに頭を撫でられたリィンが恥ずかしがって反論している中、その様子をセレーネは苦笑しながら見守り、クロガネは静かな口調で呟き、クロガネのマイペースな部分にリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「ハハ、仲がよくて何よりだ――――――」
リィンとシズナの様子をパントが微笑ましそうに見守っていたその時、扉がノックされた。
「おや、どうやらまだ説明していなかったメンフィル側の”合同捜査隊”のメンバーも来たようだね。――――――入りたまえ。」
「へ。」
ノックを聞いたパントは入室の許可をし、パントの話を聞いたリィンが呆けたその時扉が開かれ、ある人物達が部屋に入ってきた。
「フフッ、やはり”彼女”もメンバーの一人だったようだね。」
「ったく、リィンがメンバーの一人だからもしかしてと思ったが、やっぱりそこの”化物”以上の女もメンバーだったか……そいつを含めたゼムリア大陸最強の猟兵団の加勢があるんだったら、俺達なんざお呼びじゃねぇだろ……」
「アンゼリカ先輩にクロウ……!?そ、それにまさか貴女も”合同捜査隊”のメンバーなんですか――――――クレアさん……!?」
部屋に入ってきた人物達――――――アンゼリカは興味ありげな表情でシズナを見つめ、クロウは疲れた表情で溜息を吐き、アンゼリカ達の登場に驚いたリィンはアンゼリカ達と共に部屋に入ってきた人物―――――クレア少佐に視線を向けた。
「はい。私を含めたこの場にいる3名がそちらの”斑鳩”の方々のように、メンフィル側の”合同捜査隊”のメンバーとしてメンフィル帝国に協力する事になっています、総督閣下。」
リィンの疑問に対してクレア少佐は静かな表情でシズナとクロガネに視線を向けた後答えた。
「あの……どうしてアンゼリカ先輩達がメンフィル帝国側の”合同捜査隊”のメンバーなんですか?アンゼリカ先輩達はシズナさん達と違って、明確に”メンフィルとは別の国家の組織や貴族に所属している人達”ですが……」
「ま、簡単に言えば1年半前の件に関する”エレボニアとしての罪滅ぼし”だよ。」
「へ……1年半前の件というと、”ヘイムダル決起”の件だよな?何であの件の罪滅ぼしとして、クロウ達が今回の件に関わる事になったんだ?」
セレーネの疑問に対して肩をすくめて答えたクロウの答えが気になったリィンは不思議そうな表情で訊ねた。
「フッ、それについては私の方から説明させてもらおう。」
「オリヴァルト殿下……」
するとその時オリヴァルト王子が部屋に入室し、オリヴァルト王子の登場にリィンは目を丸くした。
「リィン君も知っているように1年半前の件――――――”ヘイムダル決起”はメンフィル帝国に被害を出さなかったとはいえ、現在のエレボニアを”保護”しているメンフィル帝国の面子を潰すも同然の事件だった。しかしリィン君達のメンフィル帝国への取り成しやメンフィル帝国の寛大な心遣いによって”ヘイムダル決起はエレボニア王国としての意志ではなく、メンフィル帝国の保護を受け入れたアルノール王家や王国政府に不満を持っている一部の者達による反乱”として片づけてもらった上、本来ならばエレボニア王国自身のみで解決しなければならない所をメンフィル帝国に加えてクロスベル帝国からも様々な理由を”建前”に事件解決の為の人材を派遣してくれたからね。その”恩返し”と”罪滅ぼし”の為に、現状アルマータとやらのマフィアの被害を受けていないエレボニアは対価は一切求めずメンフィル帝国の協力者という形でクロウ君達を”合同捜査隊”のメンバーに入れてもらったのさ。………まあ、連合の”合同捜査隊”のメンバーの顔触れを考えるとせめて”二大武門”の筆頭伝承者である子爵閣下かマテウス卿のどちらかはメンバーに入れたかったのだけど、生憎二人とも現状長期間エレボニアからは離れられないからね……現在のエレボニアが用意できる長期間エレボニアから離れても大丈夫な精鋭として、彼らに頼んで了承してもらったんだ。――――――すまないね、”ヘイムダル決起”の時はそちらのシズナ君達を含めたメンフィル帝国にとって強力な戦力を派遣してもらい、決戦地である”逆しまのバベル”の攻略の際は私達エレボニアにとっては返し切れない恩がたくさんあるリィン君自身にも協力してもらったにも関わらず、あまりに力になれなくて。」
オリヴァルト王子は説明をした後シズナとクロガネに視線を向け、そしてリィンに視線を向け直すと頭を下げた。
「……どうか頭をお上げください。そのお気持ちだけで十分過ぎます、殿下。」
「えっと……ちなみにお三方共それぞれ多忙の身でしたのに、本当に現状のエレボニアから長期間離れて大丈夫なのですか?」
オリヴァルト王子の謝罪に対してリィンは静かな表情で答え、セレーネはその場の空気を変えるかのようにクレア少佐達に訊ねた。
「はい。”鉄道憲兵隊”はミハイル従兄(にい)さんを始めとした優秀な将校が他にもいますから、私如きが長期間離れても大丈夫です。」
「俺の方はZ組の担任をランディに任せてきたから、心配無用だぜ。」
「私も煩わしい政務は父上に押し付けたから、大丈夫さ。――――――むしろ4年前の大戦の件での父上の強制隠居によるボケ防止にちょうどいいくらいだよ♪」
セレーネの問いかけにクレア少佐とクロウがそれぞれ答えた後笑顔で答えたアンゼリカの話を聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
〜オルキスタワー・34F・皇帝執務室〜
「……ま、そういう訳でエレボニアの連中もメンフィル帝国の協力者として”メンフィル帝国側の合同捜査隊”のメンバーとして加わったという訳だ。」
「そうだったんですか……」
一方その頃ヴァイスからリィン達の事情について聞かされたロイドは静かな表情で呟いたが
「旧CIDであるGIDの面々にとっては少々複雑かもしれないわね。かつて彼らが特に警戒していた人物―――――”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の一人が正々堂々と旧カルバード共和国の全土で”捜査”をするのだから。」
「い、言われてみれば確かに……」
苦笑しながら呟いたルファディエルの推測を聞いたロイドは冷や汗をかいて表情を引き攣らせながら同意した。
「フッ、安心しろ。こちらも”鉄血の子供達”に見劣りしないメンバーを用意したから、GIDの連中もその内慣れるだろう。」
「い、いやいやいやいや……ッ!?何でそこで対抗するんですか!?というか、クロスベル側の”合同捜査隊”のメンバーは俺とルファ姉以外にはどんなメンバーを集めたんですか……?」
静かな笑みを浮かべて呟いたヴァイスの答えを聞いたロイドは疲れた表情で突っ込んだ後訊ねた。するとその時通信音が鳴り響いた。
「―――――ツェリンダーだ。……わかった、ちょうどロイドとルファディエルに説明し終えた所だからここに連れてきてくれ。――――――もうすぐ、他のメンバーがここに来るから少しだけ待っていてくれ。」
通信音に気づいたヴァイスは懐から最新式の戦術オーブメント――――――Xipha(ザイファ)を取り出して誰かと通話をした後懐に納めてロイドとルファディエルに通話内容について説明した。そして少し時間が経つと扉がノックされた。
「―――――入ってきてくれ。」
「失礼します。」
「へ。」
ヴァイスが入室の許可を出すと扉の外から女性の声が聞こえ、声を聞いたロイドはその声が自分が知る人物である為呆けた声を出した。そして扉が開かれると4人の人物――――――漆黒のスーツを身に纏った大男、豊満な胸の持ち主である紫髪の女性、黒髪の長髪の男性、黒いヴェールつきの帽子で顔を隠して全身も漆黒のドレスの女性が部屋に入ってきた――――――
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プロローグ 中編〜合同捜査隊『エースキラー』〜前篇 |
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