Sky Fantasia(スカイ・ファンタジア)三巻の4
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四章 幻獣

 

 

 森の一画では先頭の跡があった。

 そこでは二匹のガゼルが無残な姿で地面に倒れている。

 一匹は、切り刻まれて血の水溜りができるほど血を噴出しており、もう一匹は、潰れていて原型を留めていない。

「……にしても、ひでぇ光景だな。

動物愛護団体が見たら卒倒するぜ」

「正当防衛だろ。

こいつらがワリー」

リョウとリリからだいぶ離れたこの位置でサブとリニアは、戦闘が終わり一段らくしていた。

 サブは角を採取しようと立ち上がると、いきなり持っていた無線機から通信が入った。

 サブはポケットから無線機を取り出した。

『・・・サブ・・ん』

「リリか?

そっちも終わったのか?」

少し距離があるのか、途切れ途切れ聞こえてくる。

『う・・・こっち・・・今おわ―――え?

キャァァァ!』

 すると突然、無線機からリリの悲鳴が聞こえ、突如通信が消えた

「おい! どうした?

リリ! リリ!」

サブは呼びかけるが、手元の無線機からはノイズしか聞こえてこない。

「おい! どうかしたのか?」

サブの態度が急に変わったことに対して、リニアは険しい表情で問う。

「……ダメだ!

急に切れた」

「なに?

あいつらしくじったのか?」

「いや、ガゼルは倒したって言っていた……まさか、新手?

こっちもすぐに向かうぞ!」

そう言うと、サブはすばやくガゼルの角を採取し、リニアと共に駆け出した。

「……で、あいつらの場所わかんのか?」

「大体の場所は魔力反応で判る。大丈夫だ」

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「へー。さすが天才」

「当たり前だ」

リニアの皮肉にもサブはさらりと答え、二人は全力で向かう。

 

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「なんだ、あれ?」

「おおきい」

リョウとリリは各々の感想を述べながら目の前にいる、大きな生き物に見入っていた。

 二人の前に現れたのは、ライオンのような姿に一回り大きく、尻尾は二本生やし、額にルビーのような赤い粒がついていた。

 獣は咆哮を上げる。

 その瞬間、この場の空気が震える。

 すると、獣はこちらを睨みつけると口を開いた。

「お前らか?

罪のない者たちを手にかけているという人間というのは?」

獣の声色は若い青年のようだったが、なぜか威厳のようなもの感じられた。

 まあ、獣がしゃべるのも驚きだが……

 リョウは身の危険を感じているが、なぜか会ったこのないこの獣に懐かしさを感じ、笑みを漏らした。

「だったら?」

「リョウ君!」

挑発するかのようなセリフに、リリは驚気の表情を浮かべていた。

 獣は表情を変えることなく、こちらを睨みつけてくる。

「知れたこと。

お前たちを排除だけだ」

言うが早いか、動くのが早いか、獣はこちらに向かって飛びかかってきた。

 リョウはすぐさまリリの前に出て刀を前へ突き出すと、横に寝かせ、刃を下にして刃の腹を相手に向けた。そして、もう片方の手を刃にあて、防御の体制をとる。獣の鋭い爪を刃で受け止めるが、あまりの衝撃に吹き飛ばされ後ろにあった大木に背中を打ちつけた。

 リリがこちらに向かって叫んだが、すぐに魔法の詠唱をおこなった。すると、足元に魔方陣が表われると同時に、周りに光の玉が五つ表れる。

 そして、攻撃魔法ホーリーショット≠獣に向かって放った。

 五つの玉は一直線に獣に向かって飛んでいが、獣は当たる直前に真上に飛び上がり、あっさりかわされた。

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 目標がなくなった玉は木にぶつかると爆発する。

 飛び上がった獣は空中で大きな口を開けると、口の中から放電する玉を具現化した。

 そして、その玉に力を加え、大きくするとリリに向かって放った。

 リリはその攻撃にすぐさま両手を突き出すと、光の盾聖(アイ)盾(ギス)≠フを出現させる。

 獣の攻撃と光の盾がぶつかる。その衝撃で、光の盾にひびが入ると、爆発によって割れた。リリは爆風で吹き飛ばされ、地面に投げ出される。

 差がありすぎる。

 リリは朦朧とする意識の中、立ちはだかる獣をただぼんやりと見るしかなかった。

 獣はゆっくりとした足取りで、リリのいるところへと近づいていく。

「いつの世も人間とは争いしか生まないんだね」

そう漏らす獣は、リリの前まで来ると片足をリリの頭上まで上げた。そして、腹部を踏みつけた。

リリは激痛で叫ぶぼうとするが肺が圧迫され、空気が抜けたような声にしかならない。

「こんなにも脆いくせに」

獣はリリを見下しながら呟くと、さらに体重を掛けていく。

 リリの腹部からは脆い音を鳴らしながら、どんどん圧迫していく。

 すると、獣は横から飛んできた斬撃に反応し、飛び引くとその斬撃をした。

 銀色に燃え上がる斬撃はそのまま対象をなくし、木にぶつかりなぎ倒した。

 獣は攻撃の飛んできた方に視線を向ける。

 そこにはリョウが頭から血を流しながら立っていた。

 だが、その赤い目は獣をしっかりと睨みつける。

「てめぇ、ただの魔物じゃないな?

一体何もんだ?」

その言葉に、獣はますます険しい目つきになった。

「魔物? 人間。ボクは魔物じゃない。

幻獣の王。幻獣王<Kノンだ」

と、ガノンは言ってきた。

 その言葉に、リョウは驚いた。

「幻獣? じゃあ、あの狼の同類か?」

 その言葉に、ガノンは興味を持ってきた。

「ほう。人間、幻獣を見たことがあるらしいな」

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と言うと、体制を低くして戦闘体制に戻った。

 リョウも正眼に構え直す。

「知ってる……というよりは飼ってる」

その言葉にガノンは「ふざけるな」と怒鳴りつけると、リョウに向かって飛び出した。

 そのスピードはこの図体とは思えないほど速く。5メートル近くあった距離も一瞬で縮まった。そこから右前足の鋭い爪を振り下ろしてきた。

 リョウはそれを刀で受け止める。だが、ガノンの攻撃止まることはなく、刀を叩き落された。そして、がら空きになったところへ、ガノンは口から電撃の砲弾が放たれた。

 リョウはすぐさま体をひねりかわしたが、かわしきれず右頬かすめた。

 リョウは攻撃の終わった隙をつき、下ろしていた刀をおもいっきり振り上げた。

 だが、それは読まれていた。

 ガノンの左前足で刀を止められたのだ。

 そして、ガノンはそのまま、もう一度電撃の砲弾を放ってきた。

 リョウは今度こそかわすことができず吹き飛ばされると、地面に投げ出された。

 地面に転がるリョウはすぐに立ち上がった。

 だが、そこには追い討ちをかけてきたガノンの放った二発の砲弾が飛んできた。

 リョウはすぐさま何もない空間を刀で叩くと、風の壁天風≠ェ作りあげた。その壁は砲弾の一つを受け止めることができたが、二つ目は受け止めきれず割れ、突き破られた。

 リョウは刀でそれを受け止めるが、爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされた。

 今度こそ立ち上がることができなかった。

 地面に伏しているリョウの傍らに折れた刃が突き刺さる。

 そんなリョウをガノンは、冷ややかな目で見つめる。

「……トドメはさしておくよ。

お前は危険すぎるからね」

と言うと、ガノンはリョウに向かって一歩踏み出した。

 そして、ガノンがもう一歩踏み出したそのとき、横から氷の針がガノンの足元に突き刺ささった。

 ガノンは魔法を飛んできたを方向に視線を向けた。

 そこには上半身だけを起こしたリリが、左手をガノンに向けていた。

 その左手はやっとのことで上げているので小刻みに震える。

「まだ動けたんだ?

案外タフなんだね、君も」

そう呟くとガノンは口を開けると、放電する球体を具現化させた。

 リリは上げていた左手を力なく地面に落ちた。もう魔力は底を尽き、疲労とダメージでもう動くことができない状態だった。

 一方、ガノンの口の中ではバチバチと放電する球体がどんどん膨れ上がっていく。

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 リリは最後の力を振り絞るが、体は言う事をきかない。

(もうダメだ)

 リリは覚悟を決め、目をつぶった。

 その時、

 ガノンに向けてものすごいスピードでなにかが飛んでいった。

 それは刃が折れた刀だ。

 それをガノンはとっさに反応し、かわそうとしたが、頬かすめる。

 ガノンはすぐに飛んできた方向に向かって、電撃の砲弾を放った。

 その方向にいたのはボロボロの姿のリョウが立っていた。

 リリは「リョウ君!」と悲鳴のような声で叫んだ。

 すると、下を向いていたリョウは、右腕を上げると前に突き出した。

 飛んできた砲弾は、リョウの目の前で爆発した。

 だが、リョウにはダメージはないようだ。

「小僧……寝ていればいいのに、なぜそこまでして立つのだ?」

と、ガノンはリョウに問いかけた。

 すると、リョウが肩を震わせると、いきなり大声で笑い出した。

「小僧?

お前も偉くなったものだな。

いつからわしにそのような事が言えるほどになったのだ?」

その瞬間、リョウから膨大な魔力が溢れ出てきた。

説明
リョウとリリの前に現れた者は・・・?
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