英雄伝説〜黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達〜 |
カルバードの東の果ての山脈であるイシュガル山脈にて猟兵団同士による戦闘が繰り広げられていた。
〜イシュガル山脈〜
「ここが分け目だ――――総員、戦形を”双槍騎兵(ドッペルランツィレイター)”へ!」
「Ja(ヤー!!)」
片方の猟兵団の隊長格の男は号令をかけ、号令に力強く答えた猟兵達は戦形を変化させ
「我らも行くぞ――――!赫(かがや)け、”太陽の鷹(エル=アルコン)”の戦翼!」
「 応(ウーラ)!!」
対するもう片方の猟兵団の頭目格の男も号令をかけ、号令に力強く答えた戦士達は戦形を変化させた。
それぞれの猟兵団がぶつかり合っている中、やや離れた場所でそれぞれの猟兵団に所属している少年兵と女猟兵が一騎打ちを行っていた。
「くっ……まだまだっ!」
「ハッ、甘いね――――!」
少年兵の銃撃を回避しながら女猟兵は少年兵の頭上に爆弾を放ち
「ああっ!?」
頭上に放たれた爆弾に少年兵が驚いた瞬間女猟兵が放った短剣が爆弾に命中し、爆発を起こした。
「――もらった!」
咄嗟に側面へと回避した少年兵に女猟兵はライフルを構えて少年兵に狙いをつけて銃撃を放とうとした。
「ッ……焔よ―――――我が息吹となれ!!」
「っ!?」
対する少年兵はその場で祈りを捧げた後全身に闘気を纏うと共に身体能力を上昇させて女猟兵が放った銃撃を次々と回避した後跳躍して自身の得物で女猟兵が咄嗟に構えたライフルごと女猟兵を地面に押し倒した後背中にある大型のナイフを取り出そうとし、対する女猟兵も腰にあるナイフを取り出そうとしたその時笛の音が鳴った。
「ぁ………」
「……やれやれ。アタシらの負け、か。」
笛の音を聞いてそれぞれの猟兵団の戦いの結果を悟った少年兵は呆けた声を出し、女猟兵は苦笑しながら溜息を吐いた。
それぞれの猟兵団が戦闘を止めると隊長格の男が白旗を掲げた。
「”アイゼンシルト”連隊長、ゲラント・レイガー殿!停戦の申し出を受け入れる!7:3ならばどうだ!?」
隊長格の男が白旗を掲げると頭目格の男が問いかけた。
「”クルガ戦士団”副頭目、ハサン・アルファイド殿!6:4が条件だ!退かなければ続行する!」
「―――――いいだろう!6:4で我らの勝利だ!クルガに焔と翼の女神(アルージャ)の栄光あれ!!」
「おおおおおおっ……!」
隊長格の男の答えに応じた頭目格の男は勝利の宣言をし、男の宣言に戦士達は勝利の雄叫びを上げた。
「はあっ、はあっ……」
「やれやれ、相打ちに持ち込まれるかと思ったが……――――――さっきの反撃(カウンター)はよかったけど、ちょいと詰めが甘かったね?アタシの攪乱を想定しておけばここぞの選択肢も広げられただろう。」
戦闘終了後地面に倒れて息を切らせている少年兵の隣に座っている女猟兵は少年兵の先程の戦いについての評価をした。
「はあっ、はあっ…………やっぱり……そうですよね……」
女猟兵の評価に頷いた少年兵は立ち上がった女猟兵が差し出した手を握って立ち上がった。
「はあはあ……ありがとう……アイーダさん。」
「フフ、アンタはもっと伸びる。今は体力と手数を増やしときな。そうすりゃアタシの昔の妹分にだって届くだろうさ。」
「あ……”妖精”って人ですよね。……ちょっと気になる、かな。」
女猟兵の話を聞いてある人物に心当たりがある少年兵?は僅かに興味ありげな様子で呟いた。すると女猟兵は少年兵?の頭を撫でた。
「わわっ……くすぐったいよ、アイーダさん。」
「いや〜、相変わらずいい感触だねぇ。そうだね……また今度、戦場以外で会えたら話してあげるよ。アタシが前にいた団――――”西風”の事を。」
「うんっ、約束ですよ……!」
そして女猟兵の話に少年兵?は嬉しそうな表情で頷いた。
9月6日、9:30――――
〜アークライド解決事務所〜
一つ目の”ゲネシス”を入手してから約二週間後、ヴァンは自身の端末で”とあるサイト”にある情報を確認していた。
メッセルダム映画祭、テロ予告のため中止に。
イシュガル山脈南麓での小規模紛争、決着か。
某資本の商事会社、ラングポート新街区に進出。
「やだやだ、キナ臭いねぇ。ちょっと覗いただけでこれかよ。しっかしよくまとまったサイトだな。管理人のセンスなんだろうが……」
情報を確認し終えたヴァンは溜息を吐いた後自分が現在見ているサイトに感心し、そしてある事を思いつくとそのサイトに文字を打ち込んで検索した
GENRSIS/Antique Orbment/Claude Epstein………Holow System/Mysterious Phenomenon……Almata/Grendel
関連ワードの検索ヒット率、1,1%。別のワードでの関連検索をお勧めします。
「ま、そうなるわな。(アルマータの連中も音沙汰無し。旧首都から一旦手を引いたようだが……”ゲネシス”に”グレンデル”――――――どうやっても引っかかる気配がねぇ。完璧に隠蔽されてるのか……それともネットから消されたのか。)」
検索結果に溜息を吐いたヴァンは考え込んだ後ザイファを取り出して画面の部分を開いた。
「はいはい、なんなの?用件を言いなさいよね。」
「こっちも相変わらず、か。いっそマルドゥックに聞くか?――――いや、それこそヤブ蛇ってもんか。そういやそろそろ定期査定だったな……微妙にどやされそうな気もするが。」
しかし相変わらずいつもと同じ定形の反応だった為溜息を吐いた後疲れた表情で色々と考えていると扉から大きな音のノックが聞こえて来た。
「ユメ坊、ノックはお淑やかにしろ。」
「もう起きてたんだー、めずらし〜!おっはよ〜、ヴァン!”まっとう”にかせいでる〜?女神さまとオテントさまにハジない生きかたしないとダメだぞ〜?」
そしてヴァンが扉に声をかけると扉が開かれ、ノックの主――――モンマルトの店主であるビクトルの孫娘――――――ユメがヴァンに飛びついた後無邪気な笑顔を浮かべてヴァンを見つめた。
「………ビクトルのおやっさん、孫娘になに吹き込んでやがる。真似するならポーレット――――――ママの真似をした方がいいぜ?ああいう素敵な美人になりたいならな。」
ユメの自分への指摘に苦笑を浮かべたヴァンはユメに指摘した。
「うんっ!ユメ、ママみたいになるー!あ、アニエスちゃんみたいにもなりたいかなぁ〜?」
ヴァンの言葉に嬉しそうに頷いたユメは出入口に視線を向け
「……っ?」
「ったく、いいから入って来いよ。何を遠慮してんだ?」
ユメの言葉に出入口の物陰に隠れているアニエスが驚いている中アニエスの気配に気づいていたヴァンは苦笑しながら指摘した。
「は、はい……それでは。」
すると物陰から現れたアニエスは私服姿でヴァンと対峙した。
「……………………」
「その、言われた通り私服で来ましたけど………ど、どうでしょうか?」
ヴァンに自身の私服姿を注目されたアニエスは緊張した様子で感想を訊ねた。
「いや……悪くないんじゃねえか?街巡りにはちっと小綺麗すぎるが、地味目だと逆に目立つだろうしな。ま、制服よりはマシだと思うぜ。」
「そ、そうですか………」
「ヴァン、わかってなーい!すっごくカワイイかっこうなのにー!こんなダメダメなオトコほっといて朝ゴハンたべよ〜、アニエスちゃんっ!きょうのモーニングはベーコンキッシュにカボチャのスープだよ〜!」
ヴァンの感想にアニエスが僅かに嬉しそうにしている中ユメは不満げな様子で答えた後アニエスに抱きついて無邪気な笑顔を浮かべながらモーニングのメニューを答えた。
「わっ、美味しそう。それじゃあ行きましょう、ユメちゃん。」
ユメの言葉に微笑みながら頷いたアニエスはユメと共に事務所の下にあるモンマルトへと向かい
「……ったく。あっという間に馴染みやがって。」
その様子を見守っていたヴァンは苦笑した後二人の後を追っていった。
〜モンマルト〜
「さて――――――今日がお前のバイト初日になるわけだが……”裏解決屋(スプリガン)”についてまずは表向きの仕事の概要を説明する。」
「”表向き”……―――――はい、よろしくお願いします。」
モーニングを終えた後説明を始めたヴァンの言葉にアニエスは表情を引き締めて頷いた。
「基本、大型の依頼が入らない限り、旧首都での細かい依頼をこなしてゆく。この依頼だが、ネット以外ではちょいと特殊な受け方をしていてな。今日のところは、研修がてら一通り付き合ってもらうつもりだ。」
「それが制服だと目立つ、”街巡り”に繋がるんですね?」
「そういうことだ。――――――そしてここが肝心だが。”裏”が付く以上、受けるのは真っ当な依頼ばかりじゃない。裏社会の人間からの依頼もあれば、違法スレスレの相談案件もある。全てを受けるわけじゃない。受けるかどうかは俺が決める。だが――――――真っ当なお嬢様には受け入れがたい依頼なんかもあるかもしれねぇ。何度も言ったが、”本当にいいんだな?”」
「…………はい。世の中の”表”と”裏”――――――綺麗事だけではないのは知っています。もちろん知識としてだけですが、………学校のみんなよりはずっと……一応、16年は生きているのでそれなりに、程度ですけれど。あ、そういえば――――――ヴァンさんってお幾つなんですか?」
真剣な表情を浮かべたヴァンの確認に対してアニエスは決意の表情で答えた後ふとヴァンの年齢が気になり、訊ねた。
「なんだ急に……24だが。」
「そうなんですか!もう少しお若いのかと……!でも人生経験も豊富そうですし服や部屋の趣味も渋めですよね。うーん、8歳差ですか。…………………………」
(……?アニエスから今感じたこの感情は………アニエス、まさかとは思いますが………)
ヴァンの年齢を知ったアニエスは驚いた後興味ありげな様子でヴァンに視線を向け、天使である事から”人”の感情に敏感であるメイヴィスレインはアニエスのヴァンに向ける感情にもすぐに気づくと表情を引き攣らせた。
「あー、お前くらいからすりゃオッサンっつうのはわかってるよ。ハッ、せいぜい今のうちに悔いなく青春を謳歌しておきな。卒業まで長いつもりかもしれんが、ハタチ超えたらあっという間だからな?」
一方アニエスの感想を予測していたヴァンは疲れた表情で答えた後アニエスに忠告した。
「あはは……別におじさんなんて思ってもいませんけど。――――――とにかく大丈夫です。遠慮なくこき使ってください。」
「まあ、使えるかどうかも含めて見定めさせてもらうつもりだ。とりあえず今日は……3エリアくらいが関の山か。――――――まずはこの8区、旧市街を一通り案内してやる。仕事で利用する店なんかもあるから覚えておいて損はねえだろう。」
「わかりました、どうかよろしくお願いします。」
「ふふっ、アルバイト、いよいよ本格始動みたいね。」
アニエスとヴァンの会話が一旦途切れるとモンマルトの看板娘にしてユメの母親――――――ポーレットが二人に近づいてきて声をかけて空になっている二人のカップにそれぞれコーヒーを入れた。
「ポーレットさん、はいっ。――――――あ、ありがとうございます。」
「とりあえず試用期間だがな。」
「だったら尚更ヴァンさんがアニエスちゃんをフォローしないと。――――――今日は二人とも無茶しないで夕食もちゃんとウチで食べること。ヴァンさんの分はもちろんだけどアニエスちゃんの分も用意しておくわ。無駄にしたらメッ、だからね?」
「メッて……オフクロじゃねえんだから。」
「あはは……はいっ、楽しみにしています!」
二人に無茶しないように注意した後ウインクをしたポーレットにヴァンが呆れた表情で答えている中アニエスは苦笑した後力強く答えた。
「ポーレットさんにユメちゃん、マスターのビクトルさん……事務所の大家さんでもあるそうですけど、すごく良い方々みたいですね?」
(性格もそうですが、”器”も広い家族です。客観的に見れば”表”の人間達はあまり関わらない方がいいヴァンを信用している事もそうですが、家族のような付き合いもしているのですから。)
ポーレットが離れた後アニエスはヴァンにポーレット達の事についての感想を口にし、メイヴィスレインも静かな表情でポーレット達を評価していた。
「ま、おやっさんがどやしつけてくるのは玉に瑕だが。コーヒーを飲んじまったら行くぞ。……そういや、あれは持っているな?」
「あ、はい。……盗難対策なども兼ねてしばらくは肌身離さず、ですね?」
ヴァンの確認の言葉に頷いたアニエスは身に着けている小さなポーチの口を開けてヴァンにポーチの中に入っている”ゲネシス”を見せながらヴァンに確認した。
「ああ、また何かのきっかけに作動するかもしれねえが……俺が近くにいる限りはフォローするから安心しとけ。”助手見習い”の指導がてらな。」
「ふふっ、お手柔らかにお願いします。えっと、それでは……?」
「ああ――――アークライド解決事務所、(”裏”解決業務)を始めるぞ。」
そして二人は街を周りながらの”裏”解決業務、4spgを開始した――――――
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第6話 | ||
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