精鋭なる横須賀艦隊
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演習当日。翔鶴は朝早くから弓道場にいた。吐く息は白く、空気はキンっと冷えている。翔鶴は寒さなど気にせずに鋭い視線で的を見つめ矢を射る。まだまだ、安定して的の中心に矢を当てる事はできていないが最近は、中心に当たる本数が増えてきていた。

 

「翔鶴姉、今日は演習だよ?翔鶴姉も艦隊旗艦として出るんだからあまり無理しちゃダメだよ?」

 

瑞鶴が心配になって覗きに来たようだ。翔鶴と瑞鶴を含めた演習に参加する12人はパーティー以降赤城による地獄のような鍛錬を繰り返し受けていた。お風呂でその疲れは取れるものの、やはり次の日は来て欲しくないと思うほどである。こうして迎えた演習当日。演習開始まで時間があるが、泰治郎になって初の演習という事もあり横須賀鎮守府全体がピリピリしていた。

 

「あら瑞鶴。おはよう。もう、ご飯の時間?」

 

「え、えぇ?そうだけど。てっきり緊張でガチガチになってると思ったら・・・」

 

「私は大丈夫よ。迎えに来てくれてありがとう。」

 

「翔鶴姉・・・」

 

「やれる事は、全てやったわ。あとは、演習でそれをいかせるかどうかよね。」

 

「え、あ、うん。そうだね。」

 

いつも以上に緊張していない翔鶴に瑞鶴は、呆気に取られたが、この演習で翔鶴は何か変わろうとしている事だけは、瑞鶴にも理解出来た。

 

・・・・

 

朝食を終えてすぐに、永田司令長官とその横を歩く艦娘がやってきた。泰治郎が、出迎えるやいなや艦娘が走ってくる

 

「泰治郎君ー!」

 

「うごふっ!」

 

暴走機関車の如く突っ込んできた艦娘に抱きしめられた衝撃で変な声が出た泰治郎。しきりに頬擦りをする艦娘に横須賀に所属してい艦娘からものすごい殺気が出る。

 

「泰治郎君会いたかったー!ハァー久しぶりのこの感触、最高だわ。レロンから帰って来てしばらくはそばにいたけどまた、提督として着任したから離れ離れになってお姉ちゃん、もう寂しくて、寂しくて・・・」

 

「ちょ!?待て待て、背骨が折れる!!・・・あがががが・・・」

 

「ちょ、ちょっと!やめてください!私達の提督に何なさるんですか!?」

 

「やめんか、愛宕。戸村提督を殺すつもりかね」

 

「え?あ、あらやだ・・・ごめんなさい・・・」

 

「て、提督、ご無事ですか?」

 

「あぁ、助かった。」

 

「申し訳ない。うちの愛宕が迷惑をかけた。久しぶりだね、大淀君」

 

「ご無沙汰しております、司令長官。戸村提督のおかげで私達は立ち直れています。戸村提督を派遣してくださった事に感謝いたします。」

 

大淀の丁寧なお辞儀とその目には光が戻りキラキラしていた。その姿を見て永田も笑みがこぼれる。

 

「うむ。しっかり傷を癒しなさい。そこは、誰にも口出しさせないからね。君たちには本当に申し訳なかった。何か困った事があれば何でも言ってくれ、出来る限り力をかそう。」

 

「司令長官、ありがとうこざいます。いざという時は、ぜひ」

 

「うむ。」

 

「司令長官、1つのよろしいでしょうか?」

 

「戸村提督、何かね?」

 

「はっ!ご存知の通り、我が鎮守府はしばらく遠征を含め出撃等などもしてきておらず、戦力が心許ない状況です。そこで、他の鎮守府でここの子達と同じような扱いを受けている子がいれば喜んで、受け入れます。」

 

「そうか。いや、まさか君からその話をしてくれるとは思っていなかった。今はまだ、見つかっていないがそういう子達が出てきたら君に任せよう。」

 

「はっ!お任せ下さい!」

 

「うむ。ところで、後ろの2人が今回、君に演習を申し込んできた提督達だ。」

 

永田がそういうと、後ろから2人の若い青年が前に進み出た。左側にいた朗らかな笑顔で泰治郎に話しかけた。

 

「初めまして、戸村提督。淡島泊地の広瀬武正(ひろせ たけまさ)と申します。階級は中佐です。本日はよろしくお願いします!突然の申し込みになってしまい申し訳ございませんでした。ですが、第1線を退いたと言われていた名将、戸村提督にどうしてもお会いしたかったのですが、このような方法しか思いつかず・・・大変失礼しました。」

 

「初めまして、戸村少将。佐久島泊地の上村正彦(かみむら まさひこ)と申します。階級は大佐です。本日はよろしくお願いします!」

 

2人して頭を下げたのを見た泰治郎は気を悪くするどこら2人の肩に手を置いて言葉を発した。

 

「2人がそうまでして、俺に会いたいと思ってくれた事はすごく嬉しく思う。そして、2人ともそんなにかしこまる必要もない。確かに、階級だけで見れば俺の方が上だが俺には5年のブランクがある。それ故に、実力は拮抗してるとも考えている。2人とも、今日は双方に利益ある演習にしよう」

 

「「はっ!」」

 

2人がそう言ったの確認すると準備があるからと執務室へ戻って行った。

 

 

・・・・

 

横須賀鎮守府非公式演習

1回戦

 

横須賀 淡島

 

翔鶴(旗艦) 蒼龍(旗艦)

 

摩耶 高雄

 

北上 鈴谷

 

神通 川内

 

時雨 龍田

 

村雨 吹雪

 

 

2回戦

 

横須賀 佐久島

 

瑞鶴(旗艦) 翔鶴(旗艦)

 

扶桑 山城

 

最上 熊野

 

五十鈴 長良

 

夕立 白露

 

如月 睦月

 

となったが、1回戦はともかく・・・この2回戦は狙ったのか・・・偶然なのか分からないが横須賀と佐久島双方の艦娘の姉妹対決いう構図が出来上がっていた。

 

「・・・・佐久島との演習に参加するメンバーは、姉妹対決となる訳だが、いつも通りに演習に挑め。」

 

「「「・・・」」」

 

あまりの構図に永田司令長官や淡島の広瀬提督、佐久島の上村提督は言葉を失っていた。

 

(まぁ、そうなるよな・・・俺だって激励で何を言うつもりでいたのか忘れるぐらい驚いているし・・・)

 

「お、大淀さん・・・こんな事は、よく起きるのでしょうか?」

 

「分かりませんが、そんなに起きないと思いますよ。一部姉妹対決になる事はあるでしょうが・・・全員が姉妹対決になるのは、初めての事ではないでしょうか」

 

この事態に横須賀の参加しない艦娘達も動揺していた。

 

まだ混乱はあったが、時間になった為1回戦が始まった。

 

 

横須賀の艦隊が海に立つ姿を見ていた蒼龍達。

 

「何あれ?蒼龍さん、あれなら楽勝じゃない?」

 

「鈴谷さん、・・・ダメですよ」

 

「うふふ。だけど、練度か高いのは北上さんぐらいでそれ以外の練度が低いってのも事実よねー」

 

「・・・提督の話を聞いてましたか?絶対に油断するなと言われたでしょ?」

 

「そうだけどね・・・あの様子だと、手加減も出来そうもないし。」

 

「これなら、目指すは完全勝利でしょ。」

 

鈴谷は完全勝利を目指すつもりのようだ。

 

「ねぇ、蒼龍。あの神通だけど、嫌な予感がするわ」

 

「えぇ、私もそう思っています。」

 

「さすがですね。・・・提督の油断するなって言葉は当たりそうです。」

 

こうして、横須賀と淡島両艦隊は持ち場へ着いた。

 

 

「各艦準備はよろしいですか?それでは演習始め!」

 

大淀の掛け声と共に、神通、北上が左右から敵艦隊に接近する。翔鶴は2本の矢を空へ向けて相次いで放つ。蒼龍との制空戦と急降下の為にそしてもう1本をやや遠くの水面を目掛けて放つ。その行動に摩耶と時雨、村雨は目を丸くする。しかし、放たれた矢は水面ギリギリで編隊を組むとものすごい勢いで敵艦隊に向かっていく。

 

「敵機確認!高射砲撃ち方始め!」

 

「ボク達も負けてられないよ」

 

「もちろん!」

 

翔鶴の直衛戦闘機隊との交戦で数を減らしているとはいえ、それなりの数の蒼龍艦載機「流星」が二手に別れると急降下と魚雷を投下する準備に入った。

 

(翔鶴さんを狙ってる!)

 

村雨が翔鶴の前に入ると蒼龍雷撃隊に高射砲の浴びせる。しかし、急降下と雷撃隊両方の相手は厳しく遂に魚雷が投下され同時に爆弾も投下させる

 

「全艦!回避運動!」

 

翔鶴達がバラけた事により直撃弾はなかった。

 

「時雨!危ない!」

 

時雨のそばで魚雷が爆発。爆発に巻き込まれた時雨は、小破していた。

 

「大丈夫?」

 

「これぐらい、平気さ。」

 

(しばらく、動いていなかったからな・・・ここまで鈍っているなんてね・・・)

 

悔しげに唇を噛むが・・・本来なら中破していても良い爆発で小破で済んだのは、直前で少しでも離れようと動いていたからである。

 

「敵艦載機を抜けて翔鶴に狙いを絞っていたけど、艦戦しか飛んでいなかったわ。」

 

「攻撃はしないって事かしら?」

 

「分からないです。でも嫌な予感がするので対空警戒を厳としてください。」

 

「来たら全て私達が撃ち落としてあげるわ」

 

「はい!私がみんなを守るんだから!」

 

そう言い鈴谷達は、上空に対空砲を向けて待ち構えていたが、予想外の攻撃を受けた。

 

「!!、左右より雷撃!数4!」

 

「「「「!?」」」」

 

「か、回避運動!!」

 

淡島艦隊は回避運動に入るが1歩間に合わず雷撃を受けた結果、鈴谷、高雄が中破。吹雪が大破。川内は小破となった。

 

吹雪、戦闘不能

 

1番左にいた龍田と中央の蒼龍は回避が間に合ったようだが。安心したのも束の間水平線が輝いて見え、その正体に気づいた蒼龍は顔を少し青くした。

 

「正面!敵艦攻接近!」

 

「嘘!」

 

再び上空警戒に戻っていた川内達も慌てて前を見る。そこに見えたのは、魚雷を抱えて水面ギリギリを艦攻とは思えない速さで真っ直ぐに突っ込んで来る「天山」であった。

 

「嘘でしょ!?こんな速さの艦攻があるはずないわ!!」

 

普段は冷静な高雄が大声をあげる。1つの間違えれば海面に落ちてバラバラになる危険な飛行。それを気にしない真剣な表情の妖精達に高雄は戦慄した。恐ろしい集中力で真っ直ぐこちらに飛んでくる「天山」恐ろしいのはその速度。本来の天山の倍近い速度が出ていた。

 

「調律師」明石がチューニングした特別な天山に淡島艦隊の集中力が向いた時、少し空を向いた鈴谷が叫んだ。

 

「う、そ・・・敵機直上!急降下!!」

 

叫んだ時は既に遅し。嘲笑うかのように急降下してきた「彗星」は、爆弾を投下して引き上げて行った。

同時に天山も魚雷を落とし引き上げて行った。

 

「回避!!」

 

全員が慌てて回避運動に入るが魚雷と爆弾両方を避ける事はできず鈴谷、川内が大破。

 

鈴谷、川内戦闘不能

 

これに負けじと高雄が左方に撃った砲弾は神通に直撃し、神通が大破。これにより北上が本隊へ撤退しようとしたが高雄の第2射と龍田の雷撃によって中破。

 

神通戦闘不能

 

両艦隊は空母守りながらの接近戦となり上空では制空権を巡って両航空隊が乱戦状態となっていた。まさに激戦となっていた。龍田の放った雷撃により時雨が、大破。

 

時雨、戦闘不能

 

負けじと横須賀の北上の雷撃により龍田中破。

 

高雄の砲撃の直撃と龍田の魚雷により村雨大破。

 

村雨、戦闘不能

 

両艦隊は確実に相手を戦闘不能に追い込んでいく

 

ここまでの状況

 

横須賀鎮守府

 

○ 翔鶴(旗艦)

○ 摩耶

○ 北上(中破)

??? 神通

????? 時雨

??? 村雨

 

淡島泊地

 

○ 蒼龍(旗艦)

○ 高雄(中破)

○ 龍田(中破)

??? 鈴谷

??? 川内

??? 吹雪

 

説明
対淡島戦

艦娘の口癖や提督の呼び方が曖昧だったり、分からない艦娘がいるので間違っていてもご容赦ください
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タグ
艦これ

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