英雄伝説〜黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達〜 |
その後村を回ってアイーダ達についての情報を集めつつ、村の人々の依頼をいくつかこなしたヴァン達は集めた情報を整理する為やヴァン特有の”匂い”がクレイユ村にもあった為一泊することを決め、宿酒場に部屋を取った後夕方時の情報収集の為に再び村を回って情報を収集していると口笛が聞こえてきて、それが気になったヴァン達はベンチに座って口笛を吹いているミント髪の青年に近づいた。
〜クレイユ村〜
青年が口笛を終えるとアニエスとフェリが拍手をした。
「あれ……君達。」
「すみません。つい聞き入ってしまって。(あれ、このメロディって……?)」
「その……とってもよかったですっ。」
拍手をされた青年が目を丸くしている中フェリと共に青年の口笛を称えたアニエスは青年が吹いていた口笛のメロディに聞き覚えがあった為不思議な想いを抱いていた。
「ハハ、恥ずかしいな。適当に吹いてただけなんだけど。って、君達バスを救ってくれた旧首都の何でも屋さんだっけ?」
「ああ――――――ってことはお前さんもバスの乗客みたいだな。」
「うん、君達の活躍は車内からバッチリ見せてもらったよ。僕はメルキオル、一身上の都合であちこち旅してる流離い人(ボヘミアン)でね。北のメッセルダムから旧首都を経由してあのバスに乗っていたんだ。」
ヴァンに確認された青年――――――メルキオルは自己紹介をしてバスに乗っていた経緯を説明した。
「メッセルダムというと北部の湾岸都市ですね。」
「流浪の旅……ちょっと憧れます。」
「気ままな貧乏旅だからバイトしながらではあるけどね。あのピックアップ、恰好いいよね。僕もミラを溜めてマイカーが欲しいなぁ。」
「フフん、まあ元は中古だが。――――――それより、昼に到着した後、村でお前さんを見かけなかったな。どこかブラついてたのか?」
メルキオルにマイカーを誉められたヴァンは得意げな表情を浮かべた後、昼間村を回っていた時はメルキオルを見かけなかった事を思い出して、メルキオルに確認した。
「ああ、ちょっと気になってね。この先の丘陵に行ってたんだ。」
「あんな所まで……」
「えと……魔獣とか大丈夫でした?」
丘陵方面へと視線を向けて答えたメルキオルの説明を聞いたアニエスとフェリはそれぞれ不安そうな表情を浮かべた。
「ああ、結構旅慣れしてるから危険な気配には敏感でね。幸いそっちの心配はなくておかげで良い物が見られたよ。」
「良い物……何かあんのか?」
「フフ、少し行った場所に大きな石柱の遺跡があるんだよ。古ゼムリア文明以前のものでノルドあたりの遺跡と同年代っていう。20年前には10アージュくらいの像なんかも出土したらしいけどね。――――――でもその像は結局、教会に回収されちゃったそうでさ。ホント勿体ないことするよね。残ってたら観光名所になるだろうに。」
「ふふ、そうですね。十分すぎるほど素敵な村ですけど。」
「はい……あの、それよりも。あちらの丘陵で他の人を見かけたりしませんでしたか?」
「いや、僕一人だったけど……この先は民家とかもないしね。」
「そう、ですか……」
自身の質問に不思議そうな表情で答えたメルキオルの答えを聞いたフェリは残念そうな表情を浮かべた。
「こっちの事だ、気にすんな。――――――それよりバスだが出発は明朝になりそうだぜ?」
ヴァンはメルキオルにバスやその乗客達の状況について説明した。
「………成程、村長さんの厚意で泊まる場所を用意してくれたのか。貧乏旅には助かるねぇ。ありがとう、これから訊ねてみるよ。」
「ああ、何か困ったら明日までなら相談に乗るぜ。」
「あはは、その時はよろしく。」
そしてメルキオルはヴァン達に手を振りながらその場から去って行った。
「うーん、不思議な人でしたね。流離い人(ボヘミアン)だなんて……」
「ま、見所はありそうだけどな。車の趣味も悪くないみたいだし。」
「そ、そこですか……」
メルキオルの車の趣味について高評価しているヴァンに呆れた表情を浮かべたアニエスは丘陵方面を見つめているフェリが気になり、フェリに声をかけた。
「フェリちゃん……?」
「あ……いえ。――――――あの丘陵、野営には絶好の地形だなって思って……」
「あ……」
「確かに”火喰鳥”たちが陣を張ってる可能性はあるか。そうだとしても、さっきの若いのが見てねぇのなら更に奥地だろうが。――――――あくまでの可能性の一つだ。もう日が暮れるし、明日にしとけ。」
「……はい。」
「アイーダさんたちがクレイユ周辺で野営地を築いている可能性……他の情報とも合わせていったん検討してみましょうか。」
その後ヴァン達は宿の部屋に戻って今まで集めた情報の整理を始めた。
18:20―――
〜宿酒場”リモージュ”〜
「―――――アイゼンシルトの中隊がここに泊まったのはちょうど10日前。翌朝には出発して他のメンバーは村に戻ってきていないが……隊長の”火喰鳥(アイーダ)”だけは一昨日を最後に何度か目的されている。しかもどれも夜のタイミングだ。」
「……はい……」
「他のメンバーの方と既に別行動を取っている可能性もありそうですが……その動きが全くわからないというのも不自然なんですよね?」
ヴァンが纏めた情報にフェリが不安そうな表情で頷いている中、アニエスは情報収集によってでてきた気になる点を確認した。
「……はい、作戦行動中でもない限り、隊をわける意味はないと思います。でも、他のメンバーがどこかに待機していると仮定して……アイーダさんだけが訪れているのもやっぱり不自然だと思うんです。」
「確かに、斥候っぽい行動だが隊長自らってのもおかしな話だ。それに――――――雑貨屋で買った品についてもあからさまに不自然だったな。」
フェリの話に同意したヴァンは情報収集の際にアイーダが雑貨屋で購入した気になる品について思い返した。
「かなりの量のワイヤー、でしたか。それ以上に不自然だったのが……」
「……10日前に村を発って以来、食料を補給していないこと、ですね。」
(”行動は決まって夜”……”人間であるにも関わらず、10日も食料を補給していない”………まだ、決めつけるのは早計ですね。)
「ああ、”火喰鳥”だけにしても村で食事をした形跡がねえ。それ以外に気になるとしたらバスを襲った狼型魔獣だが――――――最初戦った時もそうだったがあからさまに普通じゃなかったな。」
アニエスとフェリがそれぞれ口にした不自然な点を聞いてある可能性に気づいたメイヴィスレインは目を細めた後すぐに気を取り直し、二人の話にヴァンは頷いた後バスを襲った時と、村人の依頼である盗まれた自転車の捜索の際に自転車を盗んだ犯人を襲った時の魔獣の事について思い返した。
「……はい、2度目に戦った時にはっきりとわかりました。なんらかの混乱状態……ううん、怯えてるような感じでした。ものすごく怖い存在への恐れに突き動かされて暴れてたような……」
「た、確かに……言われてみればそんな気がします。そうなると――――――”恐れていた存在は何か”ですよね。」
フェリの推測に同意したアニエスは新たに判明した気になる点について口にした。
「ああ、他の土地から流れてきた強力な魔獣か、それとも……」
「あと、やっぱりアイーダさんたちは近くに野営地を築いていると思います。この村の周りのどこか――――――候補は幾つかありそうですけど。」
「あの丘陵に、蕎麦畑の向こうの林、小川の上流なんかも考えられそうだな。食料についてはわからねえが……農作物をくすねるとも思えねぇし。」
「そ、そんなことアイーダさんたちがするわけないです……!」
「確かに、それこそ村の方に売って貰えばいいんでしょうから。……ミラに困っているということもないんですよね?」
ヴァンが何気に呟いた推測にフェリは真剣な表情で否定し、アニエスも頷いた後ヴァンにある事を確認した。
「ああ、武器弾薬と比べたら食料なんざ大した金額じゃねえ。ぶっちゃけ10日くらいの宿代だって猟兵には端金みたいなもんだろう。――――――そうすると”何か”あるわけだ。トップクラスの猟兵部隊が人目を忍んで食料も確保せず10日も野営し……隊長だけが夜に村を訪れるような理由が。」
「……………………」
「うーん……何かが繋がりそうなんですけど。」
ヴァンの言葉にフェリは真剣な表情で黙り込み、アニエスは考え込みながら呟いた。
「ま、材料は揃ってきているが肝心のピースが足りてねえようだ。そうなると後は――――――」
そしてヴァンが話の続きをしようとしたが何かの気配に気づくを厳しい表情を浮かべて扉へと視線を向けた。すると扉がノックされた。
「あら……?夕食に呼びに来てくれた――――――」
「離れてろ!!」
「え―――――」
「っ……!?この気配――――――!」
扉のノックに首を傾げたアニエスが立ち上がって扉に近づいたその時ヴァンはアニエスに警告し、ヴァンの警告にアニエスが呆けている中フェリは自身の武装を構えた。
「ほう。相変わらず鼻が利くじゃねぇか、裏解決屋(スプリガン)。もう一人も見所がありそうじゃねえか?」
すると扉から獰猛な声が聞こえてきた。
「っ……!」
(男の人の声……?それに気のせいかな……?聞き覚えが……)
扉から聞こえてきた声にヴァンが厳しい表情を浮かべている中、声に聞き覚えがあるアニエスは困惑の表情を浮かべた。すると扉が開かれると、何とランドロスが部屋に入ってきた。
「え。」
「おいおい……冗談だろ。どうしてアンタが現れるんだ?」
ランドロスを目にしたアニエスは驚きの表情で呆けた声を出し、ヴァンはランドロスを睨みながら指摘した。
「クク……つれねえことを言うなよ。あのピックアップはお前のだろ?すっかり元通りで何よりじゃねえか。」
「くっ……どの口が。」
ランドロスの指摘にヴァンは怒りの表情で唇を噛み締めながら呟いた。
「よう、嬢ちゃんたち。オレ様はランドロスって名前で、人呼んで”仮面の紳士”だ!そこのアークライド先生には前に依頼した時に世話になってなァ。」
「え……ラ、”ランドロス”さん、ですか……?あの……もしかして、その名前と仮面は――――――」
ランドロスの自己紹介と説明を聞いたアニエスは困惑の表情を浮かべた後すぐにある事に気づいてランドロスに訊ねかけたが
「アニエスさん、下がって!」
「フェ、フェリちゃん……」
フェリが自身の武装を手に持ってアニエスの前に出てランドロスと対峙し、フェリの行動をアニエスは不安そうな表情で見つめた。
「ほう、クルガのヒヨッコか。面白いのを連れてるじゃねえか。筋肉や体力は足りねえが眼に天性のバネはあるじゃねえか。――――――ま、このオレ様相手にそんな豆鉄砲が通じると思い込んでるのはまだまだだがなぁ?」
「ひっ……」
「っ……」
ランドロスはフェリを評価した後不敵な笑みを浮かべて殺気をフェリに向け、ランドロスの殺気にフェリは思わず悲鳴を上げ、傍にいたアニエスも息を呑んだ。
「そのくらいにしとけや、自称”仮面の紳士”。人の部屋に無断で入ってオラつくのは止めてもらおうか。繰り返すが……一体、何をしに現れやがった?」
するとその時ヴァンが真剣な表情でランドロスに声をかけて、ランドロスの注意を自分に向けさせた。
「なに、ちょっとした野暮用でさっき村に着いたばかりなんだが。入口に見覚えのある車があったからあの時の詫びがてら挨拶に来ただけだ。ついでと言っちゃなんだが”依頼”でも頼もうと思ってなァ。」
「……アンタの依頼は二度と受けねえよ。野暮用ってのも興味はねえ。とっとと出て行ってもらおうか。」
ランドロスの話を聞いたヴァンは真剣な表情で答えた後退出を促した。
「やれやれ、嫌われたモンだねぇ。”暴君”以外の”銃士”にはたまに融通してるって聞いたんだがなぁ?」
ヴァンの答えを聞いたランドロスは苦笑しながら肩をすくめた後ヴァンにある指摘をした。
「ハッ……相手を選んでるってだけだ。あの時の詫びも必要ねえ。一応、”代わり”は受け取ったからな。だが許せる事と許せねえ事がある。――――――それだけのことさ。」
「クク、お前みてぇなのは貴重だ。気が変わるのを気長に待ってやるし、どうしてもという時は”他の連中を通して頼む”って手もあるからな。」
「……何?」
「おい、一応部屋は確保しといたぞ――――――って、何をやってんだ、アンタ。」
ランドロスが口にした意味ありげな言葉にヴァンが眉を顰めたその時、ガルシアがランドロスに近づいた。
「新手……!?」
「!テメェは……”キリングベア”。最近テメェの姿が旧首都で何度か目撃されたという情報は知っていたが……拘置所にいるはずのテメェが今そうやって娑婆にいられるのも、まさかとは思うがそこの自称”仮面の紳士”の仕業か?」
ガルシアの登場にフェリが警戒を強めている中ヴァンは目を見開いた後厳しい表情でランドロスとガルシアを見比べながら訊ねた。
「あん、誰だテメェ?」
「その男は以前何度か話してやった裏解決屋(スプリガン)だ。」
「ああ………その男がそうなのか。クク、刑期も終えてねえ俺がムショを出てシャバにいられる件についてはそっちの想像に任せるが……俺がかつて世話になっていた”古巣”の仲間が関係する件に関わっている礼に一つだけ良い事を教えといてやるよ。俺とそこの仮面のオッサンは”A”の件で、”中央から派遣されたメンバーの一部”だぜ?」
ヴァンと初対面のガルシアは眉を顰めたがランドロスの説明を聞くと納得し、そして不敵な笑みを浮かべてヴァンを見つめて声をかけた。
「え……『"A"の件で中央から派遣されたメンバー』という事は、まさか貴方達が――――――」
「おいおい………ったく、クロスベル側だけでそんな混沌としたメンバーであることを考えると、まさかとは思うがメンフィル側も相当混沌としたメンバーなんじゃねえだろうな?」
ガルシアの話を聞いてある事に気づいたアニエスは呆けた声を出し、ヴァンは真剣な表情で二人を見つめて訊ねた。
「クク、それについては”実際に会ってからのお楽しみ”ってヤツだな。ところで野暮用の話だが――――――若造を見なかったか?ナヨっとした、ミント髪の野郎だ。」
ランドロスの質問にアニエスとフェリはそれぞれメルキオルを思い浮かべて目を丸くした後不安そうな表情で互いの顔を見合わせた。
「なるほど、この村で見たわけか。」
「………っ……………………」
「……………………」
自分達の反応でメルキオルをクレイユ村で見かけたと断定したランドロスの様子にフェリは唇を噛み締めて真剣な表情でランドロスを見つめ、アニエスは複雑そうな表情で黙り込んだ。
「チッ…………答えるつもりはねえが――――――何者だ?」
「クク、ちょっとした”追いかけっこ”をしている最中でなぁ。――――――まあ急ぐ用でもねぇ、オレ様達も今夜はこの宿でゆっくりするか。お前達の邪魔をするつもりもねえ……何なら手を貸してやるぜ?」
ヴァンの質問に対して答えを誤魔化したランドロスはヴァン達に背を向けて話をした後ヴァンに確認し
「いらねえっつの!」
ヴァンが疲れた表情で否定の答えを口にすると扉を閉めてガルシアと共にその場を立ち去った。
「……はああああっ……………………」
「……っっ……」
「フェ、フェリちゃん……!?」
二人が立ち去るとヴァンは大きな溜息を吐き、フェリはその場で力が抜けたかのようにその場で崩れ落ち、フェリの様子を見たアニエスは慌ててフェリに声をかけた。
「だ、大丈夫です……ちょっと気が抜けただけで。あの、ヴァンさん。今の恐ろしい人達はいったい……?」
「あー………仮面のオッサンの方は”仮面の紳士”を自称しているが、あんなのでもこの北カルバードを含めた3年前の大戦で建国された新興の大国――――――クロスベル帝国の”皇帝”の一人だ。」
「や、やっぱりギュランドロス陛下でしたか……」
「ええっ!?こ、”皇帝”!?それもクロスベルという事はこの北カルバード州をも支配している大国ですよね……!?――――――って、アニエスさんも気づいていたんですか……!?」
ヴァンの説明を聞いてランドロスの正体を知ったアニエスが冷や汗をかいて納得している中、フェリは驚きの表情で声を上げた後アニエスの反応に気づくとアニエスに訊ねた。
「はい、新聞やテレビで顔を知っている程度ですが。もう一人の方は知りませんが……先程ヴァンさんはもう一人の方の事を”本来なら拘置所にいるはず”だと仰っていましたけど……」
「ああ。スーツ姿の巨漢の方はガルシア・ロッシという名前でな。元クロスベル最大のマフィア、”ルバーチェ商会”の若頭――――――つまり、事実上”ルバーチェ”のナンバー2を任されていた男だ。」
「クロスベルのマフィアの若頭さん……え?”ルバーチェ”って、確か地下遺跡で”A”の人が言っていた……」
ガルシアの事をヴァンに訊ねたアニエスはヴァンの説明を聞くと地下遺跡での出来事を思い返した。
即効性の薬物強化(ドラッグブースト)。まさかそっちにまで手を出しているとはな……それで破滅した外国の馬鹿共を知らねぇのか?
クロスベルのルバーチェだったか。そんな小物と一緒にするな。
「よく覚えているじゃねぇか。ルバーチェはクロスベルの古参にして最大のマフィアとしてクロスベルを裏から牛耳っていた上エレボニア・カルバードの二大国の議員や政治家達とも繋がりがあった事で、警察ですら手出しできないマフィアだったが……様々な要因が重なった事で追い詰められた事で二大国も厳重に取り締まっていた薬物(ドラッグ)に手を出した事で自滅した上クロスベル市全体を巻き込む大事件を起こした事で、事件後ルバーチェのトップも含めて全員逮捕されて今も拘置所にいるはずなんだが……どうやら、”中央”の上層部の連中は”A”の捜査には”A”と”同類”――――――つまり、”マフィアの関係者による協力”も必要と判断したのか、恐らく奴と司法取引をして奴を拘置所から出して捜査に協力させているんだろうな。」
「それは………そういえば、ガルシアさん?でしたか。ヴァンさんがガルシアさんが以前お世話になっていた”古巣”の仲間が関係している件に関わっているから、その御礼に、ご自身やギュランドロス陛下が中央とメンフィル帝国による”合同捜査隊”のメンバーである事を教えてくれましたけど……」
ヴァンの説明を聞いたアニエスは複雑そうな表情を浮かべた後ある事を思い出してヴァンを見つめた。
「”キリングベア”ガルシア・ロッシは元猟兵でもあるんだが………奴が所属していた猟兵団は”西風の旅団”だ。」
「え……”西風の旅団”という事は……」
「それじゃあ、あの人もアイーダさんが以前所属していた伝説の猟兵団の一員でもあった人なんですか……!?」
ガルシアが元猟兵であり、所属していた猟兵団を知ったアニエスは目を丸くし、フェリは驚きの表情でヴァンに確認した。
「奴がルバーチェにスカウトされて”西風の旅団”を抜けたのは割と前の話だが、少なくても古株の一人であった”火喰鳥”との面識があったのは確実だろう。――――――ま、本人も言っていたように最近まで拘置所にいただろうから、さすがに今の”火喰鳥”についての有力な情報は持ってねぇだろうがな。」
「そうですか………」
「フェリちゃん……」
ヴァンは説明をした後肩をすくめて答え、ヴァンの話を聞いて僅かに残念そうな表情を浮かべているフェリをアニエスは心配そうな表情で見つめた。
「……しかし、あの若造、何をしたか知らねえが”紅き暴君”と”キリングベア”に追われてるとは……今頃ケツまくって村から逃げてるかもしれねえな。」
「……かもしれません。死をもたらす獣が迫ってるなら。」
「あ、あはは……(そうなるとあの人の旅行者という肩書きも……?)」
ヴァンとフェリの推測に苦笑したアニエスはメルキオルの正体について考えていた。
「ま、危険なオッサン共だがとりあえずは放置しといていい。そろそろ7時だ。俺達は夕食にするぞ。下で奴等が飲んでそうだが構うもんか。厄払いにキャラメルソースがけのアイスクリームガレットもつけてやる!」
そして気を取り直したヴァンはいつもの調子で夕食を取る事を提案し、二人はヴァンの提案に冷や汗をかいて脱力した。
その後ヴァン達はランドロスとガルシアが酒を楽しんでいる中、それぞれ夕食を取り始めた――――――
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