愛を知る
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「余の妃、ペルセポネよ。こちらへ来い」

「ハーデス…仰せのままに」

 我が愛する夫、ハーデスは愛を信じぬ冥界の王であり神。私を冥界へ連れ去り我が父ゼウスのお陰で、契りを結んだ。

私はそれを望んではいなかった。

しかし、冥界ではそれは丁重に扱われザクロを食べてしまった事でこの冥界に住まねばならなかった。その時、私はハーデスを愛してしまうなど、予想もしていなかった。

 この私が夫を愛していると気付いたのは、ほんの小さき事。

「美しき余の妻よ、その鳥のように可憐な声で鳴いてみせよ」

「ハーデス…貴方の好きな歌を?」

「うむ」

 ハーデスが座るベッドの隣へ座り、私は歌う。すると冥界のありとあらゆる植物が少しずつ成長していく。大地を司る神である私にとって、植物を成長させるなど容易い事。

 歌い終えるとハーデスは微笑むけれど、夫のその表情は珍しい。

「余は昼寝をする。ペルセポネよ」

「分かっているわ、ハーデス」

 仰向けに寝る夫に添うように横になると不意に抱かれ、私は慌ててハーデスの肩を掴む。

「ハー、デス!」

「怖がるでない。余がこうしたいだけだ」

「……」

 ハーデスは、実は甘えたがりな子どものような神。私に触れているだけで良いのだと言う。

「愛を知らぬ、信じぬ余が…愛するなど、この冥界が崩れ失くなるやも知れぬ」

「…ハーデス…」

「ペルセポネよ。そなたを愛している。連れ去り、こうしていられる幸福は余にしかわかるまい」

 私は夫を愛しいと思った。その背に腕を回す。こうしていてほしい。本当は戦など望まぬ優しい神よ。どうか傍に。その思いで胸が苦しかった。

これが愛ならば、私はハーデスを――

 

「ハーデス、私は貴方を愛しているわ」

 冥界下りから一ヶ月、私と夫は初めて口付けを交わし互いに想い合うようになった。

 

 しかし我が愛する夫がアテナに敗北しその命を失うと、私は怒りのあまり封印していた大鎌を手にして、一振りした。

 

憎き姉よ――いや、最早姉ではない。

アテナよ。私は貴様を許さぬ。

 

この私の怒りを思い知らせてやるわ。

説明
ハーデス×ペルセポネです。ペルセポネはゲームライコス仕様で、捏造があります。
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