英雄伝説〜黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達〜 |
〜新市街〜
「霧……いえ靄(しも)でしょうか……」
「ええ……でもどうしていきなり。」
(こいつは―――――!)
「ハッ……何だか知らねえが――――――!」
突然の出来事にアニエスとエレインが困惑している中ヴァンは真剣な表情を浮かべ、アーロンは真剣な表情を浮かべた後その場から東方人街目掛けて走り去った。
「あっ……!」
「待ちなさい、危険よ!」
「チッ、追いかけるぞ!」
「了解(ウーラ)!」
そしてヴァン達もアーロンの後を追い始めた。
〜東方人街〜
「な、なにこれ!?」
一方その頃外の異変に気づいたハルは不安そうな表情で呟き
「よくわからんがヤバそうだが……店に入っとけ!」
ジャックは真剣な表情でハルに忠告した。
「か、海霧……!?でもそんな季節じゃ……」
「ああ……しかも濃さが尋常ではない。―――――各家に連絡を!二番、三番街にも人を出せ!」
「ハ……!」
同じ頃異変に気付いて外に出たアシェンは困惑の表情で呟き、アシェンの言葉に頷いたファンは黒月の構成員達に指示を出した。
「――――40年ぶりか。」
するとその時老人の声が聞こえ、声を聞いた二人が振り向くとヴァンの車のワックスがけを申し出た下働きの老人が二人に近づいた。
「??(おじいちゃん)!」
「父上、それは一体……!?」
老人の登場と言葉に二人はそれぞれ驚きの声を上げた。
「お前はまだ幼かったからな。―――――”凶手”どもを集めよ。守りを固めるぞ。」
ファンの疑問に答えた老人はファンにある指示を出した。
〜2番街〜
「これは………」
「何が起こっているのかはわからねぇが、少なくてもヤバイ事になっているのは間違いないな……」
「ええ……自然に起きたのか、人為的に起こされたのかわかりませんが……」
「ま、状況を考えたら後者の可能性の方が高そうだな。――――――それでこの状況で俺達はどうする、少佐殿?」
ヴァン達が活動している東方人街とは別の東方人街で活動していたアンゼリカとクロウは周囲の異変に警戒の表情を浮かべ、タリオンの疑問に真剣な表情で答えたマーティンはクレアに視線を向けて判断を訊ね
「……どうやらまずは迎撃をする必要があるようです。」
「”迎撃”、ですか……?」
静かな表情で呟いた後得物である軍用導力銃を構えたクレアの言葉を聞いたタリオンが眉を顰めたその時人形兵器達が現れてクレア達の前を阻んだ。
「人形兵器だとっ!?」
「現れたタイミングといい、間違いなくこの霧と関係しているんだろうね。」
「チッ……とっとと片づけるしかねぇようだな……!」
人形兵器の登場に驚いたクロウは双銃を構え、手甲をつけた両腕で格闘の構えをしたアンゼリカは厳しい表情で呟き、ブレードライフルを構えたマーティンは舌打ちをしてクレア達と共に戦闘を開始した。
〜東方人街〜
「早く家や店の中に入れ!」
「危険だから今夜はもう外出しないでくれ!」
同じ頃、アーロンの仲間達が街の住人達に避難勧告を行っていた。
「アーロンはどうしたんだ?早く合流しねえと!」
「あのヨソ者を見張って新市街に行ったみてぇだが。」
「だ、だがこんな霧、今まで一度も――――――ぐあっ!?」
アーロンの事を仲間に訊ねてその答えを聞いて不安そうな表情で話を続けたアーロンの仲間の一人―――――シドは突如背後から頭を何かで殴られて地面に倒れて気絶した。
「お、おい!ウソだろ、しっかりしろ!」
「てめえら!!」
シドが突然奇襲を受けた事に仲間達が驚いている中仲間の一人は自分達と対峙した人物達――――――マスクを被った半グレ達を睨んだ。
「ジャストタイミングじゃねえか、探す手間も省けたぜ!」
「連中のオーダー通り、全員血祭りにあげんぞ!」
「クハハハハハハ――――――!」
半グレ達は好戦的な笑みを浮かべてアーロンの仲間達に襲い掛かった!
「セイ!ホアン!?クソがああああああっ!!」
東方人街から聞こえてきた仲間達の悲鳴を聞いたアーロンは怒りの表情で声を上げながら急行した。
〜ウェイ家〜
「この霧は………それに、街から感じる複数の悪しき魂の気配は一体――――――!」
同じ頃外の異変に気づいたマルティーナは家を出て周囲を見回したが側面から自分目掛けて放たれた爆弾付きのダガーに気づくと前に跳躍して回避した。するとマルティーナがいた場所にダガーが刺さった後爆弾によって爆発を起こした。
「いや〜、凄い凄い。”火喰鳥”ですら気づけなかった僕の奇襲に気づいた上、回避するなんてねぇ。今回の計画に関係している標的(ターゲット)よりも戦闘能力が高いとは聞いていたけど、予想以上の強さじゃないか。」
するとそこにメルキオルが拍手をしながら現れてマルティーナを見つめて感心の言葉を口にした。
「貴方は………最近アーロンが叩きのめした”メッセルダム商事”の半グレ達の報復に来た上層部………という所かしら。」
メルキオルと対峙したマルティーナは警戒の表情を浮かべて自身の得物の一つである聖剣を取り出した後構えた。
「ふふっ、当たらずも遠からずって所かな?―――――僕達の計画の為に、君もここで死んでもらうよ!!」
マルティーナの言葉に不敵な笑みを浮かべて答えたメルキオルはマルティーナに襲い掛かり
「ハッ!!」
マルティーナは聖剣を振るってメルキオルの攻撃を弾き
「光よ!!」
「おっと!」
続けて片手から瞬時に発生させた衝撃力のある光の魔力弾を怒涛の勢いで連続で放ち、次々と襲い掛かってくる光の魔力弾をメルキオルは回避し続けていた。
「ザイファ駆動―――――瞬雷!!」
「うぐっ!?」
魔術を放ち終えたマルティーナはアーツの駆動を始めた後瞬時に武器に魔力による雷の力を乗せて敵の背後へとかけぬく移動攻撃のクラフトをメルキオルに叩き込んでメルキオルにダメージを与え
「カタラクトウェイヴ!!」
「!!」
マルティーナがクラフトを放ち終えるとアーツの駆動も終わり、マルティーナは水の竜巻を襲い掛かるアーツをメルキオル目掛けて放ち、メルキオルは側面に跳躍して回避した。
「光よ、煌めけ――――――昇閃!!」
「あぐっ!?」
回避の瞬間を狙っていたマルティーナはメルキオルが回避を終えた直後に光の魔力を纏った聖剣による逆袈裟斬りを繰り出して更なるダメージを与えた。
「貴方が何者かは知らないけど………悪しき魂の人である以上、私の大切な弟や街の人達の為にもここで滅させてもらうわ。」
「やれやれ、参ったな…………これ程の戦闘能力の高さはさすがに想定外かな。」
マルティーナは厳しい表情で聖剣をメルキオルに向けて宣言してメルキオルへの攻撃を再開し、メルキオルはマルティーナの予想外の強さに内心焦りながら冷や汗をかいて呟いた後マルティーナとの戦闘を再開した。
〜東方人街〜
マルティーナとメルキオルが戦闘を始めたその頃アーロンを追っていたヴァン達だったが霧の中から現れた人形兵達によって前を阻まれた。
「チッ……人形兵器だと!?」
「片づけましょう!」
人形兵器達の登場に舌打ちをしたヴァンはエレインと連携して電光石火の早さで人形兵器達を撃破した。
「すごい……!」
「見事な連携です……!」
そこにヴァン達に追いついたアニエスは二人の連携に驚き、フェリは感心した。
「まだ来るぞ!」
「数が多い……連携するわよ!」
新手に気づいたヴァンとエレインが警戒すると10体近くの人形兵器達がヴァン達の前に現れた。
「っ……こんな街中で……!」
「撃破しますっ!」
そしてヴァン達はエレインと連携して人形兵器達との戦闘を開始した。
「どきやがれっ!!」
ヴァン達が人形兵器達と戦っているその頃、アーロンは自分の前を阻む人形兵器達を切り伏せながら仲間達の元へと急行していた。
「ッ、邪魔だあああああッ――――――!!待ってろよお前ら!今加勢に――――――」
自分の邪魔をする最後の一体を片付けたアーロンは血相を変えて声を上げた後再び仲間達の元へと急行し始めたが
「……………ぁ?」
ある光景を目にすると立ち止まって呆然とした表情で呆けた声を出した。
一方その頃、エレインが最後の一体を撃破し終えた。
「今のが最後ですっ!」
「はあはあ……霧の中にまだ潜んでいたりは……?」
エレインによる最後の一体の撃破を確認したフェリは報告し、アニエスは戦闘による疲労によって息を切らせながら新手の警戒をした。
「その心配は無さそうだ。……晴れるぞ。」
アニエスの懸念に対してヴァンが答えると霧が晴れると共に複数人の何者かが走り去る足音が聞こえてきた。
「今のは……!」
「十数名が戦域を離脱していきます!」
「とにかく急ぐぞ!」
そしてヴァン達はアーロンの元へと急行し始めた。
〜同時刻・ウェイ家〜
「はあ……はあ………参ったね……まさか、僕が追い詰められるとはね……こんな事なら、君の始末はあの二人に任せるべきだったかな……」
同じ頃、マルティーナとの戦闘によってできた数ヵ所の深い傷から血を流し続けるメルキオルは疲弊した様子で一人でマルティーナの相手をしたことを後悔していた。
「……その口ぶりだと、まだ二人いるようね。なら、新手が来る前に先に貴方を滅するまで―――――」
メルキオルの言葉を聞いて敵がまだいる事を悟ったマルティーナはメルキオルに止めを刺す為にSクラフトを発動しようとしたが
「ハッ、アンタがそんなザマになるとか、いい気味だねぇ!!」
「!!」
突如女性の声が聞こえた後マルティーナの頭上から小型の金属製の矢が怒涛に襲い掛かり、頭上からの奇襲に気づいたマルティーナは側面に跳躍して回避し
「ムウウンッ!!」
「結界よ!」
更に建物の屋上から巨漢がマルティーナ目掛けて落下速度も利用した拳による一撃で叩き潰そうとしたがマルティーナが瞬時に自身の目の前で展開した簡易結界によって防がれるとすぐにマルティーナから離れてメルキオルと共にマルティーナと対峙し、更にそこに短針銃(ニードルガン)を得物とする妖艶な女性が巨漢がいた同じ屋上から跳躍してメルキオルの傍に着地した。
「いや〜、二人とも助かったよ。持つべきは仲間だねぇ♪」
「気色悪い事を言うんじゃないよ!なんなら、先にアンタを殺してもいいんだよ!?」
「無駄口はそこまでにしておけ。メルキオルを一人でそこまで追い詰めた上、俺達の奇襲にも対処したあの女…………こちらの想定を遥かに上回る使い手だ。霧も晴れてしまった以上、3人で連携して速やかに始末するぞ。」
口元に笑みを浮かべて答えたメルキオルに女性は怒りの表情で指摘し、二人に指摘した巨漢はマルティーナを睨みながら二人に提案した。
「チッ………」
「フフ、形勢逆転だねぇ?」
巨漢の提案に反論がない女性は舌打ちをし、メルキオルは不敵な笑みを浮かべてマルティーナを見つめた。
「あら……”そのセリフを口にするのはまだ早いと思うわよ?”―――――ハッ!」
対するマルティーナは3対1という劣勢でありながらも一切動じず、メルキオルの言葉に対して微笑みを浮かべて答えた後”真の姿”を現した。
「へ。」
「”その姿”は………」
「ハン、まさか”人間ですら無かった”とはなねぇ……!だが、姿が変わった所で無駄さ!」
マルティーナの”真の姿”を目にしたメルキオルは呆けた声を出し、巨漢は真剣な表情で呟き、女性は鼻を鳴らして厳しい表情でマルティーナを見つめた後マルティーナ目掛けてニードルガンを連射したが、マルティーナに襲い掛かる金属製の矢は全てマルティーナを中心に発生した光の結界によって防がれた。
「何!?」
「ならばこれはどうだ!?」
自分の攻撃が全て防がれた事に女性が驚くと巨漢は強烈な一撃をマルティーナに叩きつけようとしたが女性の時のように結界に阻まれ
「この一撃をも容易に防ぐとは厄介な……!」
「あれだと僕の攻撃も同じだろうね。参ったねぇ……こっちの攻撃が全く効かないとか、完全に手詰まりじゃないか……」
攻撃が結界に阻まれた巨漢は反撃を警戒してすぐにマルティーナから離れて厳しい表情でマルティーナを護る結界を睨み、メルキオル溜息を吐いた後厳しい表情でマルティーナを見つめた。
「吹き飛びなさい!!」
「ぐっ!?」
「ガッ!?」
「かはっ!?」
そしてマルティーナが片手から無詠唱で放った聖光の衝撃波を放つ魔術――――――神界の波動を受けたメルキオル達は吹き飛ばされて建物に叩きつけられ
「浄化してあげるわ――――――」
魔術を放ち終えたマルティーナは”背中の翼を羽ばたかせて空高くへと舞い上がる”と、得物である聖剣の切っ先に凄まじい光の魔力を集束させ
「ディヴァインストライク!!」
「くっ………」
集束を終えた球体になった光の魔力の塊を聖剣を振るってメルキオル達目掛けて放つと、メルキオルはフラッシュグレネードを地面に叩きつけた。すると閃光がメルキオル達を包むと同時に光の魔力の塊はメルキオル達を襲って光の大爆発を起こし、閃光と爆発による煙が消えるとメルキオル達の姿は無かった!
「………どうやら退いたようね。」
メルキオル達が撤退した事を悟ったマルティーナは地上に降り立つと人間の姿に変身し直した。
「アーロンが心配ね………無茶をしていないといいのだけど……!」
そしてマルティーナはアーロンの心配をした後家に戻った。
〜東方人街〜
ヴァン達がアーロンの元へと追いつくと、そこには呆然とした表情で地面に膝をついたアーロンが血だまりの中で絶命している変わり果てた姿の仲間達の遺体を見つめていた。
「……こ、これって………」
「っ……戦場でもこんな……」
変わり果てた姿のアーロンの仲間達の遺体を目にしたアニエスは悲痛そうな表情を浮かべ、フェリは辛そうな表情で呟き
「……お前らは下がってろ。」
ヴァンは重々しい口調で二人に指示をし
「……ヴァン、手伝って!」
「ああ……無駄そうだがな――――――いや………アニエス!”切り札”を呼べ!」
「え…………は、はい!来て――――――メイヴィスレイン!!」
エレインはヴァンにアーロンの仲間達の遺体の手当ての手伝いを頼み、エレインの頼みに重々しい様子を纏って頷きかけたヴァンだったがある事に気づくとアニエスに視線を向けて指示をし、指示をされたアニエスはメイヴィスレインを召喚した。
「”天使”!?アニエスさん、まさか貴女……!」
「悪いが今は説明している時間はねぇ――――――メイヴィスレイン、単刀直入に聞く。―――――”蘇生魔術は使えるか?”高位の天使は治癒系だけでなく、蘇生魔術も習得しているという話は聞いている。その話を考えると天使の中でも高位の位階の”力天使(ヴァーチャーズ)”であるお前さんなら使えると思うんだが。」
メイヴィスレインを目にしたエレインが驚いている中ヴァンは真剣な表情でメイヴィスレインにある事を訊ねた。
「え……そ、”蘇生魔術”って……」
「まさか……メイヴィスレインさんは死んだ人を生き返らせる事ができるのですか……!?」
ヴァンの質問内容を聞いたアニエスが呆けている中、フェリは信じられない表情でメイヴィスレインを見つめ
「……ええ、確かに私は蘇生魔術も修めています。ですが遺体がこれ程損傷しているとなると、例え死亡してからそれ程時間が経ってないとはいえ効果はほとんど見込めないでしょう。」
「”ほとんど”って事は、例え僅かでも”蘇生できる可能性”が残っている事にもなるじゃねぇか!?ダメ元でいいからやってくれ!!」
遺体の損傷具合から蘇生魔術でアーロンの仲間達を蘇生させる事も厳しい事をメイヴィスレインは静かな表情で答えたが、ヴァンはダメ元でも蘇生魔術を使うように頼んだ。
「…………――――――わかりました。でしたら、可能な限り損傷がマシな遺体を選び、致命傷となっている部分の手当てをしてください。蘇生できる可能性を僅かとはいえ上げる事ができます。」
「ある種の”トリアージ”か………了解した!エレインも聞いたな!?」
「ええ!」
メイヴィスレインはアニエスに一瞬視線を向けて視線を向けられたアニエスが懇願するかのような表情を浮かべて頷くのを確認するとヴァンの頼みに頷いて指示をし、メイヴィスレインの指示を聞いてメイヴィスレインの考えが医者による”トリアージ”と同じである事と悟ったヴァンはすぐに気を取り直してメイヴィスレインの指示に頷き、エレインに声をかけて呆然と地面に膝をついているアーロンの横を抜けてアーロンの仲間達の遺体の損傷具合を確かめたり手当をし始め、メイヴィスレインはその場で集中して詠唱をしながら蘇生魔術の発動準備を始めた。そこに騒ぎを聞きつけた住人達やアシェン達、ジャック達がその場に現れた。
「……アーロン……」
呆然とした様子で何かを呟いているアーロンを心配そうな表情で見つめたアシェンはアーロンに近づいて声をかけようとしたがファンが制止して首を横に振った。
「………るさねぇ………ゆるさねぇゆるさねぇゆるさねぇゆるさねぇ―――――オオオオオオオオオオオッッッ!!赦さなねえ!絶対に、赦さねぇぞおおおおおお!!!!!」
そしてアーロンは憎しみの言葉を口にした後咆哮を上げて夜空を睨んで憎しみと怒りに満ちた表情で声を上げた。
こうして……ヴァン達のラングポートでの出張の1日目を終えた。なお、アーロンの仲間達の遺体の中で最初に奇襲されて地面に倒れて気絶した事で奇蹟的に生き残っていたシドを除いた殺されたアーロンの仲間達の中でヴァンとエレインの手当てとメイヴィスレインの蘇生魔術によって二人だけとはいえ、蘇生させることができたという―――――
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