恋姫無双〜天の御使いの守護者〜 第4話
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それは、狂骨が雛里のところへ着く数分前 蜀と反乱軍の戦いを上空から見ている存在があった

 

 

「ありゃ〜……蜀軍押されているな まあ、北郷君……というか、蜀の将はからめ手に弱い印象があったからね」

 

 

それは、最強の神仙とも呼ばれている男

 

 

「しっかし……狂骨君も頑張るね〜」

 

 

その男の眼下では崖に落ちた雛里を抱きかかえ、岩に左手を突き刺し宙吊りの状態の狂骨が居た

 

 

「まあ、惚れた女に一直線っていうのは好感が持てるよね〜 さて、鳳統ちゃんがどのような選択をするか見てみますか」

 

 

男は地面に向かい降りていった 男の名前は太公望 貂蝉が一刀に肩入れしているのと同じように狂骨に肩入れしている神仙

 

 

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「雛里―!」

 

 

詠の叫びと共に雛里が崖に落ちる だが、後ろからものすごい威圧を放つ影が走ってきた その影は雛里を斬り付けた男を二つに斬り裂き、雛里の後を追うように崖に落ちていった

 

 

「ご主人様……ご主人様―!」

 

 

「雛里―!」

 

 

互いに伸ばされた手 それは、しっかりと繋がれた

 

 

「しっかり掴まっていろ!」

 

 

「はい!」

 

 

雛里は二度と離さないと狂骨の服をしっかりと掴んだ 狂骨は岩肌に左腕を突き刺し、無理やり落下を止めた そして、一気に岩を蹴りつけ跳躍をした そして、戦闘が行われている場所まで戻ってきた

 

 

「雛里! 無事だったか!」

 

 

桔梗が自分に群がっていた反乱軍を切り伏せ、狂骨に抱えられている雛里に近寄ってきた 星たちも合流した そして、狂骨に頭を下げ礼を言う

 

 

「すまぬ おぬしには仲間を助けてもらったな」

 

 

「構わん……俺は、雛里を守りに来た……もう迷わん 俺は―――」

 

 

雛里たちを背中に援軍を呼んだのか先ほどより大量の反乱軍に向かい、不退転の意思を表すように大地を踏みしめる

 

 

「俺は……俺の全てを持って雛里を守る!」

 

 

その宣言と共に童子切を抜き放った すると上空から声が聞こえてきた

 

 

「素晴らしい! その退かぬ、媚びぬ、省みぬの精神……実にブラボー!」

 

 

狂骨以上の存在感を纏ってやってきたのはテンションが振り切れている太公望

 

 

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「……何しに来た?」

 

 

狂骨が無表情で質問する 他の面子はただボケーと見ている まあ、当然だろう

 

 

「いや、さすがにヘタレているのを見ているのもいい加減飽きたので、ちょっと鳳統ちゃんに選択肢を与えに来たのさ……まあ、その前にこの反乱軍を潰そうか?」

 

 

「……ああ」

 

 

童子切を構え、体に氣を纏わせる 隣に立つ太公望も、懐から何かを取り出した

 

 

「……お前も戦うのか?」

 

 

「ん? いや、久しぶりに体を動かそうとね〜 パパラッパラ〜♪ 打神鞭〜♪」

 

 

某青いネコ型ロボットのように懐から効果音つきで打神鞭を取り出した太公望 元ネタがわかる狂骨は崩れ落ちた

 

 

「おま……というか……神仙が干渉するのはまずい「ここまでやってりゃ今更でしょ?」……もういい何も言わん」

 

 

こいつなら太極図(偽)を使ってでも干渉してきそうなので考えるのを止める

 

 

「とりあえず……行くぞ!」

 

 

そういい残し、反乱軍に突貫し次々と反乱軍を切り伏せていく

 

 

「あら〜気合入っちゃってま〜……一途な男ってのもいいもんだね〜」

 

 

そういいながら自分を取り囲む男たちを見据える

 

 

「さてと……それじゃあ、踊ってもらおうか?」

 

 

その言葉と共に打神鞭を構え動き出した

 

 

「さすがに、真の能力を使うのはかわいそうだから勘弁してあげるよ!」

 

 

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狂骨と太公望が無双している時、別の場所でも無双をしている男が居た

 

 

「チェストォー!」

 

 

大剣餓虎を振り回し、反乱軍の兵士を文字通り薙ぎ払っている刑天である

 

 

「「「……あれ? 私たちの出番は?」」」

 

 

愛紗や翠、焔耶といった面子が呟くのも無理は無い 聖は遠くから弓でマイペースに敵を狙撃している 一刀たちにいたっては、刑天を見るのを放棄している

 

 

「しかし……本当に助けてくれるなんて」

 

 

一刀は刑天を頑張って視界に入れる 先ほど近辺の盗賊たちも巻き込み、圧倒的な物量差で迫ってきてもう駄目かと思ったときに、刑天が現れたった一人で戦況をひっくり返した

 

 

『何をぼさっとしている! 戦場で動きを止めるな!』

 

 

そう叫び、一回部隊を下がらせ体勢を立て直すように言うと敵陣に突貫していった そして始まったのは刑天による剣舞 その光景に刑天に敵意を持っていた愛紗ですら見惚れた

 

 

「まあいい……皆! 行くよ!」

 

 

一刀の号令に愛紗たちも気を持ち直し、敵に向かっていく 

 

 

「でも、なんだろう……これが終わったら何か大変な事が起こりそうな気がする」

 

 

それがいい事か悪いことは分からない でも、何かが起こることは確信していた

 

 

『あら〜ん……意外と勘がいいのね♪』

 

 

何か野太い声が聞こえた気がするが、スルーする一刀 結構逞しくなったようである

 

 

「ご主人様! 反乱軍も大分減ってきました!」

 

 

横で桃香が戦況の解説みたいなものをしている それが示すように反乱軍は逃げている者も居た そして、首謀者でもある張翼が刑天に向かっていった どう見てもやけくそなのだろう 何を口走っているのか分からない

 

 

「所詮は、小者か!」

 

 

その言葉と共に張翼を真っ二つに斬る刑天 そして、いまだに残っている反乱軍に殺気をのせた視線を向け

 

 

「ここで退き、二度と変な気を起こさなければよし」

 

 

そう宣言すると残っていた反乱軍は我先にと逃げていった

 

 

「さて……北郷一刀 二面展開をしているのだろう? そっちの連中と合流しようじゃないか」

 

 

「え? あ、ああ」

 

 

刑天がいつの間にか自分の傍にいてそんな事を言うので、思わず返事をしてしまった 愛紗などはまだ警戒しているようだが

 

 

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刑天と一刀には友情が芽生えていた 理由は―――

 

 

「……すまん、北郷よ このお茶は……砂糖など入れていないよな?」

 

 

「うん……入れてない というか、めっちゃ茶葉を入れているんだけど……甘い」

 

 

この際なので互いに腹を割って話そうということで刑天たちを城に招待した一刀 そして、協力関係を取り付けることに成功したのだが―――

 

 

「ご主人様……美味しいですか?」

 

 

「お前の作ったものなら何でも美味いさ」

 

 

狂骨と雛里が発生させている甘い空気に、一部の者を除いてグロッキー状態になっていた

 

 

「あらあら♪」

 

 

「ふむ……こうして他人の恋模様を見るのも一興じゃな」

 

 

紫苑や桔梗といった『そのような事に慣れている』面子は微笑ましいものとして捉えている 桃香や月、聖といった面子は雛里が嬉しそうな姿を見て笑顔 それ以外は―――

 

 

「甘い……甘すぎる」

 

 

「刑天……俺もう駄目だ」

 

 

砂糖を口から大量に吐き、渋すぎるお茶を飲みまくっている刑天と一刀

 

 

「私には耐えられない……」

 

 

「愛紗! しっかりしろ! アタシだって無理だよ!」

 

 

「翠こそ落ち着け!」

 

 

混乱の極みにいる愛紗、翠、白蓮

 

 

「わ〜……」

 

 

「ぬぅ……」

 

 

「幸せそうですね〜」

 

 

顔を赤くして二人を見ている朱里と華雄 少し羨ましそうに見ているのは蒲公英

 

 

「それで? どうなってんの?」

 

 

「フッフッフ いや〜初々しいね〜」

 

 

太公望にいろいろ聞いている詠が居た 実は、数時間前にこのようなことがあった

 

 

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「これで最後!」

 

 

狂骨は自分の前にいた反乱軍の兵を切り伏せ周りを見た 

 

 

「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! 遅い! 遅いすぎるわぁ!」

 

 

別のところで何かを積み重ねて山を造っている高笑いしている男がいるが無視

 

 

「ご主人様―!」

 

 

そして、敵を全て倒すと雛里が駆け寄って抱きついてきた 狂骨はその体をしっかりと抱きしめた

 

 

「雛里……俺は……」

 

 

「何も言わないでいいです 全部思い出しました……ご主人様は勝手です」

 

 

「……ごめん」

 

 

二人の会話を星たちはただ聞いていた いろいろ聞きたいことは山ほどあるが、今は邪魔をしてはいけないような気がしたから しかし、なんだかとっても甘い空気が流れてきた

 

 

「……なあ……」

 

 

「言うな星……」

 

 

「でも……」

 

 

ただ会話をしているだけなのに狂骨と雛里の周りが甘い すると、太公望が顔に赤い斑点をつけたまま星たちのところにやってきた

 

 

「いや〜久しぶりにいい運動した〜♪ やっぱ、体を動かすのは大事だよね〜」

 

 

蒲公英は太公望が持っているナニカを見て半泣き状態 それに気付いた太公望がナニカを放り投げて、狂骨たちの元へ歩いていった

 

 

「……太公望」

 

 

「おや〜? 随分いい顔になったね」

 

 

太公望の言うとおり、ここに来るまでの顔とは違い明るい顔になっていた 太公望はそれを確認すると雛里の方に向き直り、あることを告げた

 

 

「さて鳳統たん……噛んだ 気を取り直して、鳳統ちゃん……まあ、思い出したんだから大体言いたい事は分かるかな? 」

 

 

雛里は頷いた まだ自分たちが狂骨の事を忘れる前に聞かされたこと 仙人となった狂骨は不老不死となる つまり、太公望が言いたい事とは―――

 

 

「私もご主人様と一緒にいられるのですか?」

 

 

「そうなるね……ただ、その代わりに友人や今の仲間と別れなければならない時が来るね」

 

 

雛里は、太公望の言葉をしっかりと聞いている その胸中は様々な考えがあった 親友でもある朱里から離れるのか? 自分の理想をかなえる手伝いをして欲しいといった一刀や桃香たちから離れるのか? 水鏡先生に教えてもらったことを無にするのか? そのような言葉が聞こえてくる でも、それらを押しのけているのは「ご主人様とずっと一緒にいたい」という思い

 

 

(それに……あの時自分自身に誓ったはず ご主人様にもう悲しい思いはさせないって!)

 

 

雛里が出した結論は―――

 

 

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「構いません」

 

 

その言葉に狂骨は驚愕した 確かに、雛里が自分とずっといてくれるのは嬉しい でも、そのために人ではなくなるのは、と思っていたから だが、雛里は狂骨に優しい笑みを向け

 

 

「私、決めたんです もう二度とご主人様と離れないって……二度とご主人様に悲しい思いをさせないって」

 

 

それは、自分を包み込んでくれるような母性や慈愛に満ちた笑み 狂骨は目の前の雛里がとても大きい存在に見えた

 

 

「女は強し! って所かな? いや〜羨ましいね……それじゃ、鳳統ちゃん? これを食べてみよう」

 

 

そう言って、桃を懐から取り出し雛里に渡した それは、崑崙山の自分や貂蝉や卑弥呼、華佗と言った太上老君側の神仙たちの領域に生えている「不老不死の桃」 本来なら持ち出すことは禁じられているもの 

 

 

しかし、狂骨たちを自分たち側に引き込むために太上老君に無理を言って二つのみ使用の許可をしてもらったもの そのうち一つは既に刑天経由で聖に渡している 直接見ていないが、恐らく食べただろう そして、刑天には自分たちに付くように契約を結んだ

 

 

「これを食べるだけでいいんですか?」

 

 

「YES!……ってこの言葉は分からないね そうだよ〜ただし、一欠けらも残さずに食べてね」

 

 

そして、雛里は桃を食べ始めた 狂骨はその光景をただ呆然と見ている そして、それを楽しそうに眺める太公望 そして、何がなんだか分からず置いてきぼりの星たち

 

 

「ご馳走様でした……何か変わったっていう感じがしないんですが……」

 

 

雛里が桃を食べ終え、自分の体をペタペタと触りながら聞いてくる

 

 

「少女が、自分の体を触りながら見つめる……なかなか……ゴメン 真面目にするから童子切を首から離して」

 

 

これ以上ふざけるとヤバイと感じた太公望 特に雛里をダシにふざけると真面目にヤバイと思った……賢明だ

 

 

「まあ、食べたばかりはね……でも、少し時間がたてば感じるはずさ」

 

 

こういうのは「ああ、こういうことか」ってやつさ、と言い刑天たちと合流しようと言い出した太公望 そして、いまだに理解が追いついていない星たちを再起動させ歩き出した

 

 

「行きましょう……ご主人様!」

 

 

雛里は、狂骨の手を握りその体の横に寄り添うように歩き出した 狂骨は雛里の手をしっかりと握り、一緒に歩き出した

 

 

「……ありがとう」

 

 

自分のことを思い出してくれて、自分と共に居てくれて そんな思いを乗せて呟く

 

 

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「とまあ、こんな事があったのさ」

 

 

話し終え、お茶を一気に飲み干す太公望 桃香や月といった面子は顔を赤くして「雛里ちゃんカッコイイ!」とか「狂骨さんも幸せ者だな〜」とか言っている 紫苑や桔梗、星は雛里の決断に感心している いろいろ言いたい事はある だが、自分たちも愛する男とずっと一緒にいたいと思っている その為なら何でもという訳には行かないが、ある程度の手段は取りたいと思っている

 

 

「好きな男性と一緒にいたい……女なら誰でも思っている事です」

 

 

聖がそう締めくくった その言葉に全員が頷いた

 

 

「ところで……太公望殿? 何故、貴方がこちらに混ざっているのです?」

 

 

愛紗が気になった事を言ってみた 自分たちは言ってしまえば「ガールズトーク」をしているのに、何故男である太公望が混ざっているのか しかも、結構的を得ている発言をしている

 

 

「フッ 伊達に長生きしていないからね」

 

 

何か納得した そして全員で件の二人を見てみると―――

 

 

「ご主人様〜♪」

 

 

「雛里……」

 

 

二人とも幸せそうに肩を寄せ合っていた その光景を見て聖以外は「いいな〜 自分も」と思っていた 聖? 彼女は甘えようと思えば甘えられますから なんせ、競争相手が居ませんので そして、桃香たちが甘えたいな〜と思っている男は―――

 

 

 

 

「刑天……俺、何かお花畑が見えてきた……あ、死んだはずの婆ちゃんだ」

 

 

「しっかりしろ! そっちに行くな! 婆ちゃんについて行くな!」

 

 

何か、いろいろやばかった 刑天は自分も似たような空気を出した事もあるので、慣れたらそこまでなくなったが一刀には狂骨と雛里の甘々な空気は耐えられなかったようだ

 

 

「雛里……」

 

 

「ご主人様……」

 

 

「お前ら! 嬉しいのはわかるが、少しは自重しろ!」

 

 

刑天の叫びは絶対聞こえていない

 

説明
第4話です


次回は狂骨と雛里の甘い話を書いてみようと思っています

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コメント
ブックマン様:ブラックコーヒーが進みそうです^^;(鴉丸)
jackry様:自重するかは、本人たちしだいです……(鴉丸)
アツアツな二人の絶対領域・・・甘すぎて胸やけしそうです。(ブックマン)
クォーツ様:頑張ります!(鴉丸)
韻様:それは……頭です(鴉丸)
次はって言うより、既に充分甘いような・・・。 次作期待(クォーツ)
グハァッ!・・・・ちょっ、狂骨、自重しろ。。  太公望の持ってたナニカって何?(笑)(韻)
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