英雄伝説〜黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達〜 |
〜旧首都イーディス一区・ヴァンタイユ地区・総督情報省統合分析室〜
「――――――ラングポートの報告、読ませてもらったわ。複雑な状況だったようだけど分かりやすくまとまっていたわ。さすがの遠隔(リモート)管理(マネジメント)ね、キンケイド君。」
北カルバード州の総督府のある一角で黒髪の女性は自分の目の前に立つキンケイドを称賛していた。
「いえ、本当なら私自身が出向くつもりだったのですが。さすがに黒月のお膝元でA級に”鉄血の(アイアン)子供達(ブリード)”、更には”起動者(ライザー)”もいるとなると困難でした。」
「だからこそ”かき回し役”を当て込んで効率的に状況をコントロールしたと。良い判断ね――――――おかげで現地の秘匿職員(スリーパー)も助かったことでしょう。A級さん共々、君の昔馴染みだったかしら?」
「…………ただの腐れ縁ですよ。それに”かき回し役”の方はメンフィル帝国にとってもそうですが、”我々”にとっても余計な事をしでかしてくれたようですし。」
黒髪の女性の指摘に対して眼鏡を指で押し上げて答えたキンケイドはヴァンを思い浮かべて呆れた表情で溜息を吐いて呟いた。
「まあ、それについては仕方ないわよ。むしろ”槍の聖女”という”生ける伝説”を相手に交渉を成功させたその手腕を称賛すべきでしょうけど…………ふむ。『アークライド解決事務所』――――――最新のレポートを貰えるかしら?ここ最近の”従業員”やその”協力者”である異種族も含めて。」
キンケイドの言葉に対して苦笑しながら指摘した黒髪の女性は少しの間考えた後キンケイドにある指示を出した。
「了解しました。後ほど部下に提出させます。自分はこれで――――――失礼します、ロウラン室長。」
「ええ、よろしくね。」
黒髪の女性の指示に答えたキンケイドは退出した。
「フフ、有り余る優秀さと隠そうともしない野心…………少し独断専行が過ぎるけれど若いうちはそれもいいでしょう。…………しかしかの元結社の関係者にかつてのクロスベルの古参のマフィアの若頭まで交えた”エースキラー”に今のカルバード、そして”A”にどう絡んでくるのか…………”助っ人”も来るみたいだし、久しぶりに連絡してみようかしら?」
キンケイドが退出した後苦笑しながらキンケイドを評価した黒髪の女性はある人物を思い浮かべて静かな笑みを浮かべた。
〜遊撃士協会・イーディス支部〜
「ぶえっくしょい!!」
一方その頃イーディスにある遊撃士協会の支部でジンが大きなくしゃみをした。
「ジンさん、まさか風邪ですか?」
「ズズ…………いやぁ、大丈夫さ。どこぞのご婦人に噂でもされたかねぇ。」
「ふう、冗談はさておき。――――――報告を続けてちょうだい、アルヴィス君。」
「はい、それ以外に注意すべきは”エースキラー”の中にいる元結社メンバーや”キリングベア”ですが…………アイゼンシルトの中隊を全滅させた勢力も謎のままです。アルマータの構成員たちともやはり違っていそうですし。」
ジンとエレイン、アルヴィスは机にメルキオルやチョウ、ガルシアやリアンヌ、鉄機隊の写真を置いて話し合っていた。
「ええ、煌都に現れた幹部2名も恐るべき使い手だったみたいだけど。メルキオルという幹部の”古巣”―――――…………どうも複雑な背景がありそうね。”東”も含めて未確認勢力は多数いるし、何が入り込んでいてもおかしくないわ。GIDもそうだけど”中央”や”本国”から直接情報を貰っていると思われる”エースキラー”なら何か掴んでいそうだけど…………」
「あちらさんも最近、今まで以上に情報を寄こさなくなってるからなぁ。それも単なる縄張り争い以上の。それに”エースキラー”の方は遊撃士協会(おれたち)との協力関係を結ぶつもりは今の所ないようだからなぁ…………」
エレインの言葉に続くようにジンは腕を組んで呟いた。
「それにしても”中央”と”本国”は本当に一体どんな基準でエースキラーのメンバーを選定したんでしょうね?現在判明しているメンバーの中で”初代特務支援課リーダー”や”叡智”、”銀(イン)”や”氷の乙女”は捜査に適していると思いますけど、他のメンバーは到底捜査に向いているとは思えないメンバーばかりじゃないですか。」
「恐らくだけど”捜査する上で、Aの関係者との戦闘が発生することを前提とし、迎撃・制圧できる事”から戦闘能力を基準に選定しているのだと思うわ。」
「ああ。実際現在判明しているメンバーのほとんどは3年前の”大戦”に直接関わって生き抜いた猛者ばかりだからな。後は独自の”裏”の情報網を持っている事からも、元結社の連中もそうだが”ルバーチェ”の若頭まで選ばれたんだと思うぜ。」
アルヴィスの疑問にエレインとジンはそれぞれの推測を答え
「だからと言って、服役中の犯罪者もそうですが、元結社の連中に加えて猟兵まで捜査に加わらせるなんて間違っていますよ!ギルドの方からクロスベルの中央政府やメンフィルの本国政府に抗議とかした方がいいんじゃないんですか!?」
「アルヴィス君、その行為は協会規約第三項の『国家権力に対する不干渉』に触れることになってしまうから、絶対にできないわ。ただでさえ、トヴァルさんとアリオスさんの件でメンフィル帝国もそうだけど、クロスベル帝国とギルドとの関係はオズボーン宰相存命時のエレボニア程ではないにしても、距離が離れているのだから。それと当然わかっているとは思うけど幾ら元”結社”の一員だったとはいえ”槍の聖女”や”鉄機隊”はメンフィル帝国ではメンフィル帝国に所属する正式な騎士――――――軍人として認定されているのだから、一民間組織であるギルドが今の彼女達を取り締まる事は絶対に不可能よ。」
「服役中の”キリングベア”もそうだが”北の猟兵”にしても”中央”と”本国”の”政治的判断”によるものだろうから、どの道ギルド(おれたち)にエースキラーのメンバーについて文句を言う資格はないんだよな…………」
「それは…………」
真剣な表情で意見を口にしたアルヴィスだったが複雑そうな表情を浮かべたエレインと疲れた表情を浮かべたジンの指摘を受けると辛そうな表情で答えを濁した。
「しかし、服役中の”キリングベア”を捜査に加わらせている件を考えると、もしかしたら”キリングベア”と同じように服役中のアリオスもエースキラーのメンバーに加わらせているかもしれないな。」
「ええ。剥奪されたとはいえ、かつては何度もS級を打診されたA級でもトップクラスの遊撃士の上、”剣聖”でもあるアリオスさんでしたら、エースキラーのメンバーとして最適ですからね。」
「あ…………っ!それじゃあアリオスさん―――――ギルドに所属している遊撃士まで”中央”と”本国”に利用されているかもしれないって事じゃないですか!もし本当にアリオスさんもエースキラーのメンバーの一員であることが判明したら、せめてアリオスさんの件の抗議もそうですがアリオスさんにも俺達に協力してもらう為にアリオスさんの保釈中はアリオスさんの身柄をギルドで預かる交渉とかもした方がいいんじゃないんですか…………!?」
ジンとエレインの推測を聞いて厳しい表情で声を上げたアルヴィスは真剣な表情である提案をしたが
「残念ながら、仮にアリオスさんがエースキラーの一員だったとしても、ギルドは抗議もそうだけどアリオスさんの保釈中にギルドがアリオスさんの身柄を預かる交渉も”中央”と”本国”による”政治的判断”によるものを理由に断られるでしょうから、どちらも不可能よ。」
「しかもアリオスは”クロスベル独立国”の国防軍の長官に任命される前にギルドに”退職届”を出しちまったから、厳密に言えば今のアリオスは”ギルド所属の遊撃士”ではないんだよな。仮に退職届をミシェルが受け付けなかった事にしたとしても、レマンの本部の上層部達が既にアリオスの遊撃士の資格を剥奪しちまっているから、アリオスをギルド所属の遊撃士として主張する事すらも不可能なんだよなぁ…………」
「あ…………」
複雑そうな表情を浮かべたエレインと疲れた表情で答えたジンの話を聞くと呆けた声を出して複雑そうな表情で黙り込んだ。
「…………何にしてもやっぱり地道にギルドの情報網を当たっていくしかありませんね。」
「ああ、例の裏解決屋――――――お前さんの昔馴染みなんかも含めてな。」
エレインの意見に同意したジンはからかいの意味も含めて笑顔を浮かべてエレインに指摘した。
「じょ、冗談じゃないですよ!あんな胡散臭いヤツの手なんか…………!」
一方アルヴィスは血相を変えてジンの意見に反論した。
「そうかい?あの”槍の聖女”相手に交渉を成立させるという俺達にはできなかったその手腕は称賛すべきだし、それこそ”黒月(ヘイユエ)”のような遊撃士(おれたち)では作れない情報網がある点も評価すべき点だと思うがな。」
「そ、それは…………」
「そもそも”あの件”はジンさんもご存じの”二代目白蘭龍”が3年前から考えていた案を利用しただけの話ですし、怪しげな情報網についてはそれこそ信頼性がないじゃないですか。それよりいっそジンさんに切り込んでもらうのはどうでしょう?噂の妹弟子――――――いえ”姉”弟子の方をたとえばお食事に誘ってみたりとか。私方面のツテよりよほど有望では?」
ジンの意見に反論できないアルヴィスが言葉を濁している中エレインはジト目でジンに指摘した後笑顔を浮かべた。
「悪い、勘弁してくれ。ったく、お前さんも手強くなったなぁ。最初の頃はもっと可愛げがあったモンだが。」
エレインの指摘に冷や汗をかいたジンは苦笑しながらエレインを見つめて指摘した。
「伊達に何年も鍛えられていませんので。――――――それに先ほどの話はあくまで真面目な提案ですよ?かつてギルドに在籍し、前総督の信頼も篤かったというGID室長――――――私のもう一人の昔馴染みもそうですが、現在どのような思惑があるのかはわからない上”エースキラー”の一員でもあると思われるアラミスに在籍中の”彼女”よりよほど腹を割って話せそうですし。」
「…………エレインさん。」
「ふむ…………」
「たしか”飛燕紅児”だっけ。」
エレインの意見を聞いたアルヴィスが静かな表情を浮かべ、ジンが考え込んだその時娘の声が聞こえた後銀髪の女性遊撃士と大きなリボンを頭につけている女性遊撃士が階段を上がってその場に現れた。
「ハハ………お疲れさん、待ってたぜ。」
「ふふ、フィーさんは一年ぶりくらいかしら?また背が伸びたみたいね。」
二人の登場にジンは笑顔を浮かべて歓迎し、エレインは懐かしそうな表情を浮かべて銀髪の遊撃士に声をかけた。
「ん、さすがにこれ以上は打ち止めっぽいけど。」
「フフ、私達が最初に会った時と比べれば見違えるほど成長したのだから十分だよ。それに何よりも可愛いからね♪」
エレインの言葉に苦笑しながら答えた銀髪の女遊撃士に大きなリボンを頭につけている女性遊撃士は笑顔で指摘した。
「き、君があの………エレボニアの若きエースっていう。それにリボンをつけている君はあのアリオスさんや”灰の剣聖”の剣術の師匠の孫娘で、しかもアリオスさんや”灰の剣聖”と同じ剣術も修めているという…………」
一方アルヴィンは驚きの表情で二人に女性遊撃士達を見つめた。
「――――――遊撃士フィー・クラウゼル、本日をもってカルバード両州ギルドに着任する。よろしく、ジン、エレインたちも。」
「同じく遊撃士アネラス・エルフィード、本日をもってカルバード両州ギルドに着任します!よろしくお願いします、ジンさん、エレインさんたちも。」
すると銀髪の女性遊撃士――――――フィーとリボンの女性遊撃士――――――アネラスはそれぞれ着任の宣言をした。
10月3日、9:45――――――
〜旧市街〜
「待てやコラアアアアッ!」
「か、勘弁してくださああい!!」
旧市街のある一角で取立人が声をあげながら、悲鳴を上げながら逃げる中年を追い、そして追い詰めた。
「ハアハア…………!鬼ゴッコは終わりみてぇだなァ?」
「ひいっ、どうかお待ちを!!あ、あと3日――――――いえ!あと1日だけ待ってください〜!」
「とっくに時間切れだボケがッ!ここ数日、おちょくるみてぇに何度も姿を晦ましやがって…………!今、ここで耳揃えて払えねえならマジで沈めんぞ、アアッ!?」
「ひいいいい…………ッ!!」
「はーい、そこまで〜。」
取立人の脅しに中年が悲鳴を上げたその時アーロンが手を叩いて二人に近づいて声をかけた。
「朝っぱらからキャンキャン喚くなって。盛りのついた犬かっつーの。」
「な、なんだこのガキ…………?関係ねぇヤツは引っ込んでろや!!」
「関係あるんだなー、これが♪」
取立人の指摘に対して笑顔を浮かべて答えたアーロンはザイファに録音させた映像と音声を再生した。
「今、ここで耳揃えて払えねえならマジで沈めんぞ、アアッ!?」
「…………ッ!?」
「お、顔もバッチリ映ってやがるぜ。闇金だろうが出るところに出ちまったらさすがにヤベー物言いじゃねえか?」
アーロンが再生した自分の映像と音声に取立人が血相を変えている中アーロンは苦笑しながら取立人に忠告した。
「…………ま、まさかてめえっ!?」
アーロンの忠告を聞いた取立人は状況をすぐに察して中年を睨んだ。
「へ、へへ…………」
「――――チャラにしろとは言わねぇさ。そっちもメンツがあるんだろうしな。三大銀行の一般向け利息+αでお互い手を打つっつーのはどうだ?」
「…………へっ?」
睨まれた中年は口元に笑みを浮かべたがアーロンの提案を聞くと呆けた声を出した。
「こ、このガキ…………ふざけてんじゃねぇぞっ!!」
一方アーロンの提案に怒りを抱いた取立人はアーロンに殴りかかったがアーロンは余裕の動作で回避した後指一本で取立人の背中を突いて取立人の動きを封じ込めた。
「…………ッ…………かっ…………(い、息が…………!?)」
アーロンによって動きを封じ込められるとともに息がし辛くなった取立人は口をパクパクさせた。
「クク、モチロン荒っぽいのも嫌いじゃねぇが。”どっち”にする?」
「ッ…………!?わ、、わかった――――――それで手を打つ、打つからッ!!」
アーロンの問いかけに目を見開いた取立人はアーロンの提案を呑む答えを口にした。
「――――――オラ、とっとと払っちまいな。これで晴れて自由の身だぜ?」
アーロンが指を離すと取立人はその場で座り込み、アーロンは自分に近づいてきた自分の依頼者である中年に取立人にお金を払うように促した。
「え、ええっと…………さっきの証拠もあるし、どうせなら全額チャラにできないかな〜って…………」
「そいつは流石にムシが良すぎだろうが。俺様が間に入ってやってんだ――――――スジはきっちり通しておけよ、なあ?」
「ッ…………は、はいっ只今っ!」
そして中年に取立人への借金と利息を支払わさせると二人はその場から去り
「――――――とまあ、これにて一件落着だが、どうよ?」
二人が去るとアーロンは得意げな笑みを浮かべて背後へと視線を向けて声をかけた。
「…………ったく、ハラハラさせやがって。」
するとヴァンが溜息を吐きながらアニエスとフェリと共にアーロンに近づいた。
「でも、鮮やかな手並みかと。何だか上手くまとまりましたし。」
「はい、少し荒っぽかったですけど双方がぎりぎり納得していましたね。その、もしかして煌都でも似たような事をしてたんですか?」
フェリの意見に頷いたアニエスはアーロンの手際の良さが気になり、アーロンに確認した。
「まあな、ミラの貸し借りなんざ煌都も旧首都も変わるモンじゃねぇ。あっちはやり過ぎたら黒月に沈められるから弁えてるヤツは多いけどな、ククク。」
「うーん、なるほど。」
(どうコメントしていいのやら…………)
アーロンの説明を聞いたフェリが納得している中答えに困ったアニエスは苦笑を浮かべた。
「そんで所長サン。”採用試験”の結果はどうだい?」
「はあ…………仕方ねぇ。大マケにマケて合格にしてやる。だが忘れんな――――――調子に乗って下手打ったら即クビだからな?」
得意げな笑みを浮かべたアーロンに確認されたヴァンは大きな溜息を吐いて答えた後気を取り直してアーロンに忠告した。
「俺が下手を?クク、あり得ねぇっつーの。――――――つーわけで小娘どもも改めてよろしくしてやるよ。ああ、ガキには一リジュも興味はねぇ。惚れちまっても無駄だから気をつけろよ?」
「あはは……(うーん、本気で言ってるみたいですね。)それはともかくよろしくお願いしますね。」
(ハア…………予想はできていたとはいえ、ヴァンに続いて頭の痛くなる者が増えることになるとは…………アーロンの守護天使もそうですが使霊の母親の方にも調子に乗らせすぎない事もそうですが、色々と弁えさせる事を注意するように後で言い含めておく必要がありそうですね…………)
「惚れるとかはよくわかりませんが実戦での連携は高めたいですね。アーロンさんはマルティーナさんやユエファさんと違ってムラ気が多そうなので精度を高めていただければ。」
アーロンの忠告に苦笑しながら答えを誤魔化したアニエスは返事をし、メイヴィスレインは疲れた表情で頭を抱えた後マルティーナとユエファを思い浮かべて真剣な表情で呟き、フェリは静かな表情でアーロンに意見した。
「…………ほお…………?一丁前に言うじゃねえか、チビ。」
フェリの意見を聞いたアーロンは意味ありげな笑みを浮かべてフェリを見つめた。
「チビじゃなくてフェリーダです。フェリでも構いませんが。」
「わかった、考えといてやるよ、チビ。」
「むっ…………」
「ったく…………」
「ふふっ………事務所もますます賑やかになりそうですね。」
アーロンのからかいにムッとなったフェリがアーロンを睨んでいる光景を見て呆れた表情で溜息を吐いたヴァンにアニエスは二人の様子を微笑ましそうに見つめながらヴァンに指摘した。
「まったくもって不本意だがな。…………はぁ、ハードボイルドに過ごしていた日々が懐かしいぜ。」
「……………………」
溜息を吐いた後呟いたヴァンの呟きを聞いたアニエスはヴァンを見つめながら今までの出来事――――――特に好物であるスイーツを口にした時のヴァンの過剰なまでの反応を思い返した。
「”元々そこまでじゃ”とか思ってねぇか…………?」
アニエスの様子を見たヴァンはあることを察してアニエスに問いかけ
「い、いえ、そんなことは…………」
(ハッ、アニエスが言いたい事を察しているということは自分でもそんな生活を送っていない事を自覚している証拠ではありませんか。)
ヴァンの問いかけにアニエスが苦笑しながら答えを誤魔化している中メイヴィスレインは嘲笑していた。
「そろそろ10時か…………ちょっと早いが事務所に戻るか。」
「おお、帰ったらモンマルトで早めのランチと洒落込もうぜ。あそこの西方料理はまぁ悪くねぇ。身内のバイト二人はともかく、グラマーな出戻り看板娘もイカスしよ。」
気を取り直してザイファを取り出して時間を確認した後口にしたヴァンの案に同意したアーロンはモンマルトを思い浮かべながら呟いた。
「その言い方はどうかと…………でも賄いは本当に嬉しいですね。」
「えへへ、はいっ。昨夜のミルクシチューも絶品でした!」
その後ヴァン達は事務所に戻り、モンマルトでランチを取っていた。
〜モンマルト〜
「なあなあ、ポーレット。今夜あたりに飲みに行かねえ?」
「ふふっ、あんまりオバさんをからかうものじゃないわ、アーロン君。」
ランチを取っていたアーロンはポーレットをナンパしたが、ポーレットは微笑みながらアーロンのナンパを軽く流した。
「こらアーロン!ママにちょっかいかけんな!」
するとその時ユメが近づいてアーロンを睨んで忠告し
「フフ、子連れの母親を落としたかったら、まずは子供を落とすべきよ、アーロン〜。」
「その助言もどうかと思うわよ、ユエファ…………」
「大切な息子の人生を見守るんだったら、余計な口出しは勘弁してくれませんかね…………」
更にユエファがからかいの表情でアーロンに助言し、ユエファの助言にマルティーナが呆れた表情で指摘した後アーロンが疲れた表情で肩を落としてユエファに指摘した。
「まったくこのガキは……」
「モグモグ…………でもぜんぜん相手にされていないような。」
「あはは……」
一方その様子を見守っていたヴァンは呆れた表情で溜息を吐き、食べながら答えたフェリの意見を聞いたアニエスは苦笑しながら答えを誤魔化した。
〜アークライド解決事務所〜
「―――では、今日の午後からは手分けするんですね?」
「ああ、人手も増えたことだしな。俺が外回りするのは前提として、もう一人サポートについて来てもらう。それ以外の二人は事務所に待機、もしくは調べ物とか情報収集を割り振る感じだな。」
「そして手配魔獣だの厄介そうな案件は集合して一気に片付ける、と。まあ、ずっと仲良しこよしで団体行動とかありえねーしな。」
「む…………でも効率はよさそうです。」
アニエスの確認に対して答えたヴァンの話を聞いた後その続きを口にし、意見を口にしたアーロンの言葉に若干不満げな表情を浮かべたフェリだったがすぐに気を取り直した。
「現状、”下請け”の仕事は届いていないっぽいが………あとは”何か起きそう”な区画を見回りつつ4spgを回収する…………そんなノリだな。」
「何か起きそうって…………そんなことわかるんですか?」
「ハッ………なんとなくわかるぜ。庭同然に馴染んでる街なら、自然と鼻は利いてくるもんだからな。」
「そういうものですか…………」
ヴァンの話にアニエスが首を傾げている中納得した様子で呟いたアーロンの話を聞いたフェリは目を丸くした。
「まあ、それだけじゃ取りこぼすから結局は足を使うしかねぇんだがな。それに、予想外のことは起こるもんだ。こういう仕事をしてると特にな。」
「だからこそ役割分担して柔軟に対応していくんですね。私もフェリちゃんやアーロンさんに負けないように頑張らないと…………!」
「あー、肩肘張る必要はねぇ。分担以外は今まで通りだしな。と、そうこう言っている間に正午を回ったか。」
自分の話を聞いて意気込んでいる様子のアニエスにヴァンは苦笑しながら指摘した後ザイファを取り出して時間を確認した。
「そろそろ行動再開、ですね!」
「クク、今度はこっちがお手並み拝見させてもらうぜ。」
そしてヴァン達は二手に分かれての業務を開始した――――――
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第34話 | ||
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