タイムトラベルママ/フォーリンスター・チルドレン 02
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 木々のあふれる山の中は、子供たちの格好の遊び場だ。いつの時代も、それは変わらない。

 子供たちは母親にどれだけきれいな洋服を着せてもらおうとも、汚れることを嫌わない。野の中を駆けずり回り、草木にまみれ、土に汚れる。

 遊歩道を設え、山の一部を芝生に植え替えた楠木山自然公園もまた例外ではなく、小さな子供たちの遊び場所になっていた。

 幼稚園児くらいか、それともまだ通う前か。小さな子供が三人、楠木山に入っていく。

 女の子が二人と、男の子が一人。

「待ってよ〜」

 ピンクのワンピースを着た女の子が、二人から少し遅れた。整えられていたはずの長い髪が揺れる。その表情は、世の中にこれ以上楽しいことはないといわんばかりの満面の笑み。子供はなぜこんなにも無邪気に楽しむことができるのだろう。

「遅いよ!」

「待たないからねー、最初はちぃちゃんが鬼!」

 きゃっきゃとはしゃぎながら、ポニーテイルの女の子と、半ズボンを穿いた男の子は木々にまぎれていった。

「もー!」

 ちぃちゃんと呼ばれた女子も、遅れて木々の群れに入り込む。

 出遅れてしまったばっかりに、かくれんぼの鬼になってしまった。ちぃちゃんは、自分の足が他の子たちよりも少し遅いことを、ちょっと悔しく思った。

 

 時刻は午後一時。

 近頃熱気を帯びてきた陽射しを避ける意味でも、山の中は遊び場としてちょうどよいように思える。

「ゆるさないからねぇ〜!」

 言葉とは裏腹に、楽しそうに、嬉しそうに、ちぃちゃんは草木を分け入る。

 せっかく整備されたレンガ敷きの遊歩道があるのだけど、三人ともそれを使うことはない。

「のぶくーん!みっちゃ〜ん!どこー?」

「こっちだよー」

「こっちこっち!」

 かくれんぼと追いかけっこを一緒にやるような鬼ごっこ。

 のぶくんの声は右から、みっちゃんの声は左から。

 二人は分散作戦に出たようだ。

 ちぃちゃんは少し迷って、みっちゃんのほうを追いかけることにした。ちぃちゃんはのぶくんのことも好きだけど、みっちゃんのほうが好きだから、だからみっちゃんを追いかけることにした。

「ゆるさないんだからねぇ〜」

 やや間延びしたように声を上げ、やっぱりちぃちゃんは草の中を走る。子供の手にかかっては、道なんてあってないようなものだ。

何事も自由に活発に。

大人にないルールを、子供たちは持っている。

 

 仲良し三人組の、いつもの風景。

 

 ほんのすぐあとに、これがちょっとふしぎなことになるだなんて、三人は知らない。

 

 本当は結構大変なことなのだけど、子供にしてみれば「面白かったね!」で済んでしまう小さな大事件。

 

 

 まもなくして時間震が起こり、突如として昼は夜へと裏返る。

 

説明
タイムトラベルSF小説

ノーテンキなママの第二話




今回も12分割だと思います(3/12)
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