追憶 1 |
追憶 1
「星読み」
そう呼ばれた ある姉妹がいた。
星々の瞬きに声を拾うことで
物を浮かせる
火炎を放つ
近い未来を垣間見る事が出来たという。
星々の機嫌に左右されるところが大きかったが
その力は 並みの魔法使いや覚者をはるかに凌駕した。
姉妹は
予言者の卵 英霊の加護授かりし子供
などと呼ばれ
しばし もてはやされたが
ある日を境に
国を追われ放浪者となる。
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騒乱が支配する荒れ果てた世界に
邪悪な神々の虜となった 一人のファラオがいた。
魔道に堕ちたトゥームキングは
星読みが国を追われた噂を聞きつけると
直ちに 姉妹の捕獲に乗り出した。
間もなく姉妹は ファラオの手に落ち
彼の邪悪な願いを叶えるために
その力を行使し始める。
良く働けば自由を与える その言葉を信じて。
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姉妹は王の慈悲を得るため
懸命に一日一日を生き延びた。
ミイラの王も
けなげに働く姉妹をいたく気に入り
しばし良き待遇をもたらした。
しかし 彼女たちの運命に暗雲が立ち込める。
姉が病に伏し
永遠に近いはずの命が大きく削れることとなった。
時の呪いから解き放たれし自身の人生に
姉が添い遂げることが出来ないと知った王は
激しく落胆した。
さまざまな加護をもたらす星読みの能力の中でも
未来を見通す力は姉の方がはるかに優れていたためだ。
昨今の功績を
星読みの力に頼り切っていた王は焦り始めた。
書物庫をひっくり返し 打開策を求める王は
残酷な方法にたどり着く。
「心得移し」
詠唱の最後に 対象者に同意の言葉を唱えさせ
直後に才者の命を奪うことで
その者の才能を移し与えるというものだった。
当初は
王自身が 姉から星読みの力を得ようと考えたが
この秘術は対象同士の想いが強いほど
成功の確率も 精度も高まる
それを知った王は
妹を より強力な星読みとするべく準備を進めた。
何をされるかを既に知っていた姉妹は
星読みの力を使って 秘密の抜け穴を作り出し
この窮地を脱した。
かに見えた。
王が酔狂する邪悪な神々は
姉妹を見過ごさなかったのだ。
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違和感はあった。
あれほど強力な魔力をふるえた星読みの力が
抜け穴一つ作るに苦労を重ねるほど 弱体化していた。
姉の病魔も 今回の危機も
姉であれば本来もっと早く読み解いていたはずだった。
ファラオに捕まる事すらなかったろう。
国を追われる事が想定内であったように。
邪神の片方が その力で星読みの力を濁し
姉妹の危機察知を遅らせていたのだ。
宮殿に引きずり戻された姉妹は
凄絶な責め苦を与えられることとなる。
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妹に与えられる邪教の拷問は 凄惨を極めた。
幾度も幾度も秘術は試みられた。
拒絶の度に
幼い身体を冷たい切先がなぞり
怒号と鉄拳が降り注ぐ。
鮮血がほとばしり 肉がことごとくそぎ落されても
妹は決して「はい」の一言を口にしなかった。
そして
拷問の果てに 右目は潰れ
少女の両腕と右脚は
腐り落ちた。
が
体が取り返しのつかないものになり果てても
妹はかたくなに 拒み続けた。
姉妹は家族愛のみでなく
一対一の 恋慕の情によって結ばれていた。
魔女のレッテルを張られ
国を追われた直接の原因だった。
王は焦っていなかった。
ヒトを屈服させるすべが
激痛だけでない事を 王は知っていた。
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身体の傷がふさがると
妹の下半身に 鉄のおしめが施された。
「次の秘術の日を乗り越えれば
姉共々 自由にしてやる。」
王はそうささやくと
妖しい輝きを放つ薬湯に彼女の半身を沈めた。
ほどなくして
妹の身体は耐えがたい劣情に支配された。
一日をかけて 薬湯につけられる。
これまでのどんな拷問よりもたやすく見えるが
実際はそのどれよりも苛烈を極めていた。
独居房に戻されると
妹は下半身を締め上げる強烈な疼きにのたうち回る。
腕を奪われ まさぐる事さえかなわない少女は
寝具や便器に 自身を打ちつけるが
金属に阻まれた体は
暴れ狂う疼きを鎮めることができない。
眠れぬ夜が明けると またも薬湯に一日漬けられ
独房でもだえるという日々が一か月間続いた。
王は妹の衰弱を察すると
次なる手に乗り出した。
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