追憶　３

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王のしもべ　ある時は妃を演じる事　数年。

ある日　空が割れた。

領地の町々が渦を巻いて空の亀裂へと飲み込まれる。

家臣が次々に意思なき骸に返り

城が砕け　

荘厳なピラミッドまでもが

その姿を消し始める。

だが

今まさに惨劇が繰り広げられる中

王も　妹も

無関心どころか　下劣な淫行に励んでいる。

快楽に心満たす方が重要なのだ　といわんばかりに。

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王は辟易としていた。

トゥームキングの力

異なる二つの神からの寵愛

そして　星読みの娘

考えられえぬ　いくつもの幸運

それらを手にしておきながらそれでも届かぬ場所がある。

「上には　上か・・・。」

妹が達するのを見つめながら

王はため息をついた。

これほどの力を得ても

格上のトゥームキング達には歯向かえなかった。

不滅なるセトラなどはその筆頭だった。

世界の支配どころか　同族の頂点にすら届かぬ。

王は

飽き飽きしていた。

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妹は疲れ切っていた。

何が起きても添い遂げると

誓ったはずの愛する人

下劣極まりない欲望を理由に

見殺しにしたのだ。

怒るべき対象が　目の前にいる。

恨むべき対象が　無防備をさらしている。

討つべき対象が　自身の身体をもてあそぶ。

にもかかわらず

妹は身体を委ね続けた。

吐き気催すべき状況。

恥ずべき自分。

だが　妹は疲れ果てていた。

仮に　王を討てても　

姉は帰っては来ない。

そのむなしさが

自殺の気力をも消失し

目先の欲望へと駆り立てた。

何もかもが

どうでもよかった。

妹は　疲れ果てた。

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いよいよ　暗黒の渦巻きが二人に迫ると

大地を割り裂くような　威圧に満ちた声が鳴り響いた。

暗黒の覇者　その２大柱が　王に選択を迫る。

「望みは叶えた　どちらの配下となるのか。」

傲慢なる王は食い下がる

「全てではない！！」　と。

稲妻が王の頬をかすめる。

「お前の口から出たものは全て与えた

　それを楽しむ猶予も。

　お前は選ばねばならぬ。

　己自身と配下の魂

　それらがひざまずく先を。」

王は　つまらなそうにひざまづくと

快楽の神にこうべを垂れた。

変化の神は

どこかわざとらしい怒りの声を上げた。

罰を与えるべく王に伸びる触手。

しかし　寸前にて快楽の神が王を拾い上げ

暗黒へとその姿を消した。

「待てっ！！その娘もっ！！」

言い終わるより前に　渦の一つは消え去った。

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置き去りにされた妹に　変化の神は問いかける

「お前の力　存分に我が役に立つであろう

　悪いようにはせぬぞ？」

妹は問う

「私や姉に語りかけていた　

　星の声の主はあなた方ですか？」

「我はさらに高貴なる存在だ。

　我がために働けば　姉を取り戻してやろう。」

その言葉に罪悪の念が沸き立った。

妹の胸中には　姉への贖罪

その渇望に溢れていた。

もはや妹であることを名乗る資格はない。

もはや姉の傍らに立つ資格はない。

少女は答えた。

「あなたに尽くすことはできません。

　せめて願わくば　我が魂を引き裂き

　二度と生まれ出ぬよう暗黒に捨て去りください。」

変化の神はその願いを聞き届けも拒絶もしなかった。

「それより　もっと面白い余興に立ってもらおう。」

邪神の触手が少女をつかむと

彼女をワープの渦へと放り込んだ。

「ヒトの想い　決意など　

　大いなる変化の渦中を前になんともろく脆弱か。

　幼子よ

　その身をもって思い知るがよい

　そして己の弱さをもって

　我が主ティーンチを楽しませるがよい。」

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嵐は過ぎ去り

黄金に彩られた都は

砂の平原と化した。

栄光　

惨劇

記憶　　

全てが消えゆきた　砂の丘に

風が吹きすさぶ。

むなしき虚空に

母を求める迷子のごとく

静寂だけが取り残された。

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