追憶 5
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追憶 5

 

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苛烈な運命は

またも少女を地獄へと招き入れた。

 

新たな主人の名は総長テロパス。

 

彼は

赤きマリーン 

ブラッドエンジェル

その分隊の指揮を任されていた。

 

敵は 恐るべき外宇宙からの侵略者

ティラニッド。

 

テロパスの部隊は追い詰められていた。

 

先の戦いで失われた戦士たち

その補充が間に合っていなかった。

 

このままでは敵を食い止めるどころか

地上に降ろした部隊の全滅は必死。

 

崇高なる教え

偉大な聖典

誉れ高きマリーンの心得 

 

されど 従っている余裕は もはやない。

 

彼らは

散っていった同胞の肉体から鎧をはぎ取ると

人型の捕虜にそれを装着し戦わせ始めた。

 

背徳を極めた行いである。

 

偉大なる皇帝陛下よりの授かりものを

下賤な犯罪者や変質者 

下等極まるゼノなどに与えるというのだ。

 

だが

新たなマリーンの成長と

到着を待っている猶予はなかった。

 

地球人の

それも超人の身体に合わせて作られたパワーアーマーに

無理やり外星人をねじ込む有様は

さながら簡易様式のペニテントエンジンである。

 

生身で銃火器を持たせるよりはよっぽど{持ち}は良かったが

ただの肉壁に過ぎない点は変わらなかった。

 

しまいには アーマーが頑丈なのをいいことに

その場に突っ立って建造物のふりをし

1秒でも

命を長く繋ぎとめようとする者まで現れる始末である。

 

捕虜を見張るマリーンたちの胸中たるや

むなしみそのものが ため息を吐き伏せる様相だ。

 

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ゴーントの津波をかいくぐり

せっかく回収した同胞の亡骸も

こんな捨て石扱いではあんまりである。

 

どうせ背徳を犯すなら

戦う気概がある者 

 

いいや そこまで贅沢は言わない

せめてもう少しばかり頑丈な者。

 

いた。

 

手に入れた。

 

なんと都合の良き ぼた餅。

 

サングィヌスの御加護か?

 

皇帝陛下の思し召しか? 

 

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言葉が分かるのは幸いだった。

 

少女は 自身の記憶は飛んでいると決め込んだ。

そしてそれ以外は素直に従う事にした。

 

この世界がどのようなものかは分からないが

見るも聞くも凄惨な有様。

 

私もすぐに死ぬのだろう。

 

部屋の外から絶えず聞こえる絶叫に耳を傾けながら

少女はその時を待つことにした。

 

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ここの隊員たちは少女を怪しみこそしたが

理不尽を与える事はしなかった。

 

毎日食事が提供され

身体も清潔に保たれた。

 

浮遊能力や火炎の発射を披露したが

「理由も原理も分からない。」で

乗り切れた。

 

未来を読み解く力は

忘れたのだと自分に言い聞かせた。

 

ただ一つ 苦痛が残った。

 

姉を奪った 体の疼きである。

 

ここでは常に監視の目がひかり

少女の一挙手一投足に隊員たちは反応を示した。

 

加えて ここの者たちは皆

異様なまでに狂信的で排欲主義であった。

 

悟られればろくなことにならない

 

少女は耐え続けた。 が

 

疼きが限界に達した少女は

もはやままよと 試しに足裏をまさぐった。

 

慣れた様子で

ベッドと右脚の間に左足を挟み込み体を揺らす

 

最初は隊員たちも

少女が何をしているのか分からなかったが

快楽を得ようとしている事を察知すると

阿鼻叫喚の大騒ぎをし始めた。

 

直ちに行為は妨げられ 仰々しい集会が執り行われた。

 

テクノロジーひしめく宇宙船舶の中に

不似合いなほど荘厳巨大な寺院がきらめいている。

 

宝飾品で飾り立てられた司祭が なにやら大声で喚き散らす。

 

理解するのも億劫な古めかしい説教が鳴りやむと

今度は何らかの植物で出来ているであろう冠を振り下ろす。

 

冠がほどけると 鞭のようにそれをしならせ

少女の足裏に打ち付けた。

 

たまらず悲鳴を上げる幼きエルフ。

 

壮麗な讃美歌の中 幾度となく鞭が振り下ろされ

少女が失禁したところでようやく悪夢はお開きとされた。

 

少女は 痛みの中に快楽の絶頂を得ていたが

当然だんまりを決め込んだ。

 

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悪夢の中に絶頂を得てからというもの

少女の疼きはますますひどくなり

監視の目もさらに厳しくなった。

 

カギ付きのシューズを履かされ

少女が一人 焦燥感と戦っている間にも

勝手に話は進み続けた。

 

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ガッシュン!ガッシュン! ザシッ!!

重々しいパワーアーマーの足取りが響く。

 

ガラス張りの部屋に 総長テロパスが立ち入った。

少女は自らの疼きを胡麻化すのに必死で 

彼の存在に気付いていない。

 

「今日から貴様の名はデコイ ワンだっ!!!」

テロパスの怒号が響き 

少女はベッドから転がり落ちる。

 

目をチカつかせながら 少女は

ついに自分の番が来た

と ある意味期待を膨らませた。

 

拘束ベッドに縛られると

別の部屋へと運ばれる。

 

赤いレフテナントアーマー。

 

幾人もの外星人同様

私は今日アレに詰め込まれて死に放り込まれるのだ。

 

アレに入れられるのは痛いのだろうか 

動くたびに肉が擦り切れるなんてのは勘弁願いたい

 

等 いろいろな思いが頭をめぐるが

予想外にもベッドはパワーアーマーの部屋を通り過ぎる。

 

・・・今の苦痛は ピークではないのか?

 

かつてファラオにされたことを思い出しながら

少女は今一度 青ざめた。

 

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「きおっつけぇぃ!!!」

ザカッ!!

 

ぽてっ・・・

「足一本といえど残されておるのだっ!!

 しっかりと立てぃっ!!」

 

「・・・っつ! すみませんっ・・・!!」

{足の裏・・・ズクンズクンして くるしぃ・・・。}

 

「本日!!特例をここに認めるっ!!

 汚らわしきゼノの子に

 誉れ高きパワーアーマーを授けるっ!!

 

 されど前例の役立たず共とは違い!

 この子供にはっ!!魔力が宿っている!!!

 

 臆病者はケイオスの手先と恐れ!!

 愚か者は試しもせずに廃棄せよとのたまうっ!!

 

 我らはどちらでもないっ!!」ガツンッ!!

 

「諸君。

 我ら父なる皇帝陛下の家に訪れしは

 厄災にあらず。

 

 今ここに下り立ちし子供は

 我らが父 皇帝 その使者に他ならぬ。

 

 ゼノの姿を借りるは

 我らの思慮と知恵をお試しになられている証なのだ。

 

 デコイワン その場でよい 浮遊して見せよ。」

 フ オッ・・・・キチンッ!

 {足の鎖 邪魔だなぁ・・・。}

 

 ウオォォォォーーーー!!!

 あの娘 自力で飛べるのか? 

 なんと強力な異能だ・・・

 

スッ・・・

 「これはこの子供が持つ力のほんの一端に過ぎぬ!!

  かの者鍛え上げっ!!

  我らに与えられしと同じ施しもたらせばっ!!

  忌々しき虫どもことごとく焼き払われんっ!!」

 

 ウワァァアァアアーーーー!!!!

 皇帝陛下万歳ぃ!! 

 テラの祝福ここにぃ!!!

 ゼノの死骸で大地を染めよぉ!!!!!

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