タイムトラベルママ/フォーリンスター・チルドレン 03 |
「おかしいねー」
「うん、おかしいねー」
ちぃちゃんとみっちゃんは、薄暗い森の中を歩いていた。手を繋いで、さくさくさくさく、落ち葉の上を歩く。
心もとない月明かりの下。
ついさっきまでは麗かな昼下がりだったのだけれど、気がつけばとっぷりと陽は暮れ、夜へと時間は落ちていた。
時間震に彼女達は飲み込まれたのだ。
だから唐突に、不可思議に、その夜はやってきた。
さくさくさくさく。
二人は落ち葉を踏みしめて歩く。
「みっちゃん、おかしだよ」
「うん、ありがと」
ちぃちゃんはポシェットの中からチョコレート菓子を取り出し、みっちゃんに差し出した。二人でお菓子を食べながら、さくさくさくさく、森の中を歩く。
「森がおっきいね」
みっちゃんが言う。
「ううん、違うよ。森はちっちゃいんだよ」
ちぃちゃんが返す。
何を持ってして森の大きいちいさいを判断しているのかはわからない。
「夜が急に来たね」
きょろきょろと辺りを見回しながら、ちぃちゃんは言った。
ほんの数十分前。
ドスンという、音がした気がした。
それは多分、気のせいだった。
そしたら突然夜だった。
彼女達の体感を言葉にすれば、こんなところだろう。
ちぃちゃんはみっちゃんを見つけたところで、鬼ごっこの鬼が交代するところで、そこで勝負は終わってしまった。
数十分の探検で二人がわかったことは、昼が夜に変わったこと、森が大きくなったこと(小さくなったこと)、そして遊歩道が消えてなくなってることだった。
「のぶくんどこいったのかな?」
「知らないよ。お山の中だよ」
さくさくと、森の中を二人は歩く。
彼女達と、そしてのぶくんの住居はこの小さな山のふもとのマンションだ。だから安心できるのだろう、二人はありえない状況においても、恐れることがない。
もしかしたら恐れがないのは子供特有の自由さから来ているのであって、常識に捕らわれた大人のほうが恐怖にうろたえるのかもしれないが……。
「ねぇみっちゃん」
「なぁに?」
ちぃちゃんはポシェットの中から、震える小さな箱を取り出した。
「お電話」
マナーモードの携帯電話が、ちぃちゃんの小さな手の中でぶるぶると震えている。
説明 | ||
タイムトラベルSF小説 ノーテンキなママの第二話 今回も12分割だと思います(4/12) |
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