英雄伝説〜黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達〜 |
18:02――――――
〜サルバッド・伝統地区〜
「いいねぇ、いいねぇ。やっぱ夜の街はアガるぜ!こうなったらネーちゃんのいる店とか片っ端から冷やかすしかねぇな!」
「アーロンさん…………」
「ネーちゃん…………?わたしはお腹が空きましたっ。」
夜のサルバッドに繰り出してテンションが上がっている様子のアーロンをアニエスはジト目で見つめ、フェリは首を傾げた後空腹を伝えた。
「ま、クソガキの妄言はともかく、まだ待ち合わせまで時間はある。晩メシの場所も捜しながら色々探ってみるのもいいだろう。――――――効率は悪いかもしれんがこれが”裏解決屋(スプリガン)”のやり方だ。悪いが呆れずに付き合ってくれや。」
「いえ、とても興味深いですし、以前から気になっていた所でした。――――――4spgのチェックも改めて行いつつ、必要に応じて対応、現地情報を”肌”で得る。頃合いを見てアルジュメイラホテルに報告に向かう――――――といった段取りでしょうか。」
今後の方針を口にしたヴァンはリゼットに視線を向け、視線を向けられたヴァンは今後の自分達の行動予定を口にしてヴァン達に確認した。
「オイオイ…………適応早すぎだろ。」
「うーん、なんだかずっとお手伝いをしていたような。」
「(な、なんとなく立場が…………)――――――そうですっ、シャヒーナさんに色紙の方をお渡ししないと!」
(フフ、彼女(リゼット)に自分の立場が奪われかねない事に焦っていて、可愛いわね、アニエスったら♪)
(学生の恋の様子を面白がるなんて、悪趣味よ、ユエファ…………)
自分達の活動に加わって早々に適応している様子のリゼットにアーロンとフェリが驚いている中、リゼットに自分の立場が奪われかねない危機感を抱いているアニエスはそれを振り払うかのように声を上げてあることをヴァン達に伝え、アニエスの様子を面白がって見守っているユエファにマルティーナは呆れた表情で指摘した。
「おっと、そいつがあったか。」
「そうでしたっ!えと…………もう家に帰ってる頃でしょうか?」
「いや、たしか興行帰りにハマムに寄るとか言ってなかったか?」
「ああ、無事再開できただろうし、折角だから寄ってもいいかもな。」
「そ、それでは夜の解決業務、再開ですね…………!」
「ふふ…………お付き合いさせていただきます。」
そしてリゼットを加えて夜の解決業務を再開したヴァン達はハマムを訪れ、受付の近くで会話をしているサァラ・シャヒーナ姉妹に近づいて声をかけた。
〜ハマム”マルジャーン”〜
「シャヒーナさん、サァラさん!」
「やっぱりここに寄ってたか。」
「あ…………皆さん!ふふっ、ちょうどご主人から皆さんの話を聞いてたところです。」
「地下の魔獣をやっつけてハマムを再開してくれたんだってね〜!うんうん、さっすがあたしが見込んだみんなだよ!」
「いや、昼間は本当に助かったよ、改めて礼を言わせてくれ。」
ヴァン達の登場にサァラとシャヒーナはそれぞれ微笑み、ハマムの支配人はヴァン達に礼を言った。
「ま、これも仕事ってヤツさ。おかげで色々収穫もあったしな。」
「ふふ、それは何よりでしたね。そういえばそちらの方は?昼間はお見掛けしませんでしたが。」
リゼットの事が気になったサァラはヴァン達にリゼットの事を尋ねた。
「遅ればせながら、急遽”出向”で参加することとなったリゼットと申します。サァラ様にシャヒーナ様でしたか、滞在中はよろしくお願いいたします。」
「はい、これはご丁寧に…………」
「その衣装、メイドさんってやつ?あたし初めて見たかも!」
頭を下げて丁寧に自己紹介をするリゼットにサァラも頭を下げ、シャヒーナは興味ありげな様子でリゼットが身にまとっている服について指摘した。
「ふふ、正確には”出向元”の制服となります。顧客を最大限にサポートするための戦闘服のようなものでしょうか。」
「よくわかんないけどカッコイー!そうだ、せっかくだからみんなも一緒に入っていったら?色々話も聞きたいし!」
「ふふ、それはいいわね。よかったら夕食もご一緒にどうですか?この近くに行きつけの店があるんです。」
「そうだな…………せっかくだからご相伴にあずかるか。依頼人に会う前に汗を流しとくのも当然のマナーだろうしな。」
シャヒーナとサァラの提案にヴァンは頷いた。
「ハッ、てめぇが入りてぇだけだろ…………と言いたいところだが。」
「お腹も空いていますけど…………その前にサッパリもしたいですっ!」
「ふふっ、それではぜひご一緒させてください。」
「やったぁ、決まりだねー!ほら、女の子はこっちこっち!」
「シャヒーナ、はしゃがないの。」
「はは、ごゆっくりどうぞ。」
そしてヴァン達はそれぞれハマムに入り始めた。
〜男性側〜
「考えてみりゃてめぇと二人きりかよ…………チッ、面白くもなんともねぇ。」
「ウダウダうるせえな、静かにしてろ。いいか、目を瞑って心を落ち着けるんだ。やがて来る”その瞬間”を見極めて――――――」
文句を言うアーロンにヴァンは指摘をした。
「ハッ、向こうじゃさぞ姦しく、キャッキャウフフしてんだろうなァ。小娘どもはどうでもいいが、メイドや姉、小娘の天使の方は中々そそる身体を――――ぶっ!?」
「神聖な儀式(セッション)を乱すんじゃねえ。てめぇのその邪念、肌が赤くなるまで垢スリでこそぎ落してやろうか?」
女性側のハマムでの状況を推測した後邪念を口に仕掛けたアーロンの口を片手で塞いだヴァンは真剣な表情でアーロンに忠告し
「わ、わーったっつの…………つかマジトーンになんじゃねえよ!?」
忠告されたアーロンは困惑の表情で答えた。
〜女性側〜
「ふふ…………盛り上がってっらしゃいますね。」
「もう、聞こえてるのわかってるんでしょうか…………」
「…………マルティーナ、ユエファ。貴女達は何故今まであの男(アーロン)のああいう下品な部分を矯正しなかったのですか。」
「うーん、仮に私達が矯正しようとしてもアーロンの場合、矯正できなかったと思うわ…………」
「それに男ってのはあれくらいが普通だから、むしろメイヴィスレインの方が気にし過ぎよ。」
男性側の会話が聞こえていたリゼットは微笑み、アニエスは頬を赤らめてジト目で呟き、顔に青筋を立てたメイヴィスレインの問いかけにマルティーナとユエファはそれぞれ苦笑しながら答えた。
「うーん、でも確かにみんなサァラ姉にも負けないくらい綺麗だよね〜。リゼットさんは髪サラサラ、肌もスベスベでまるでお人形みたいだし。ユエファさんはとてもアーロンさんみたいな大きな子供がいる母親には見えなくらい若くて綺麗だし、メイヴィスレインさんとマルティーナさんはまさに”天使”のように綺麗な人達だし。アニエスさんも――――――っていうかホントにまだ16歳なのっ?」
周囲の女性達を見回して感想を口にしたシャヒーナはアニエスに視線を向けてある疑問を口にした。
「えっ…………」
「あと1年ちょっとでそこまでなれる気がしないよ〜!何食べてたらそんなになるの〜!?」
「…………わたしも気になってました。ぜひ今後の参考にしたいですっ。」
アニエスの豊満な胸を見つめて羨ましそうに呟いたシャヒーナの言葉に続くようにフェリは興味ありげな様子でアニエスに訊ねた。
「べ、別に普通ですからっ…………フェリちゃんまで、そんなにまじまじ見ないでくださいっ。」
訊ねられたアニエスは恥ずかしそうに両手で胸を隠して答えた。
「もう、シャヒーナもそのくらいにね。」
「ふふ、フェリ様もシャヒーナ様も十分以上にお綺麗かと思いますが。サァラ様は絹のように艶やかな肌………何か特別なケアをされていますね?」
苦笑を浮かべたサァラと共に微笑みながら指摘したリゼットはサァラに肌の事について確認した。
「いえいえ、シアバターくらいです。サルバッド産は質が良くて――――――」
その後ハマムを堪能したヴァン達はシャヒーナにサインを渡した。
〜伝統地区〜
「ええええっ、ニナだけじゃなくてジュディス・ランスターのサインまで…………!ありがとね〜、一生の宝物にするっ!」
「えへへ、喜んでもらえてよかったです。」
「今をときめくナンバー1,2女優のサインとなりゃ、さぞ高く売れそうだなァ?」
サインを手に取って喜んでいる様子のシャヒーナを見たフェリは無邪気な笑みを浮かべ、アーロンはからかいの表情で指摘した。
「売らないよ〜!大事にするもん!えへへ、でもなんだか夢みたいだな〜。そんな大スターたちとお姉が同じ舞台に立つことになるなんてさ。」
「ふふ、そんな大したものじゃないわ。ちょっとした端役だと思うし。」
「それでも十分スゴイってば〜!」
「そいつはもしかして…………”フォクシーパレード”ってヤツか?」
姉妹の会話が気になったヴァンは二人に確認した。
「はい、ゴッチ監督という方に参加しないかと誘われまして。」
「なんか身なりのいいお兄さんと一緒にスカウトに来たんだよね〜。『サァラちゃんこそフォクシーパレードの最後のピースじゃ、間違いなぁい!』なーんて、熱烈アプローチについにお姉も折れちゃったわけ!」
「シャ、シャヒーナ…………さすがに恥ずかしいから。」
当時の出来事を口にしたシャヒーナにサァラは恥ずかしそうな様子で指摘した。
「フォクシーパレード…………映画祭の演出の一つなのでしょうか?」
「あー、開幕時の出し物らしいな。」
「えっと、色々凄そうですけど名だたる女優の方々も出るそうですし。」
「えへへ、サァラさんなら納得ですっ。」
「あの監督、確かにエロ親父だが見る目と情熱だけは本物だろうからな。アンタなら十分イケるだろ――――――頑張りな。」
リゼットの疑問にアーロンとアニエスがそれぞれ答え、フェリは興味ありげな様子でサァラを見つめ、ヴァンは納得した後サァラに応援の言葉を贈った。
「は、はい……!」
「あれれ〜、お姉ちょっと赤い〜?」
「そ、そんなことありません!」
「サァラねーちゃん、シャヒーナ〜!やっと見つけたよー。どこに行ってたんだー?」
シャヒーナのからかいにサァラが反論したその時街の子供が姉妹に声をかけた。
「えへへ、さっきまでハマムに行ってて。てゆーかあたしもシャヒーナ姉ちゃんって呼べー!」
「にしし、シャヒーナはシャヒーナだし。」
「知り合いか?」
「ええ、近所の子で。ティムル、こんな時間にどうしたの?」
「さっき、これをサァラ姉ちゃんに渡してくれってたのまれてさー。」
「手紙…………?ありがとう、何かしら。…………!!これって…………」
子供から受け取った手紙の内容を確認したサァラは血相を変えた。
「サァラさん?」
「どうしたのさ、お姉…………――――――って、なにこれ…………!?」
サァラの様子にアニエスは不思議そうな表情を浮かべ、アニエスのように姉の様子に不思議そうな表情を浮かべたシャヒーナは横から手紙の内容を覗くと困惑の声を上げた。
パレードへの参加を辞退せよ――――――さもなくば災いが降りかかるだろう。
「おいおい、コイツは…………」
「……………………」
シャヒーナが口にした手紙の内容を耳にしたアーロンとヴァンはそれぞれ真剣な表情を浮かべた。その後姉妹と別れたヴァン達はサァラが受け取った脅迫状について話し合っていた。
「まさか、サァラさんの所にまで脅迫状が届くなんて…………」
「さっきの子は、通りがかった中東系の運送会社の人に渡されたそうですが…………」
「―――――そいつ自体は多分、シロだろう。女優たちに届いたもの同様、出所をわからなくするために複数箇所を介しているはずだ。そっちから尻尾を掴むのは厳しいな。」
「チッ、狡(ずる)い手を使いやがる。」
フェリは複雑そうな表情で呟き、真剣な表情で呟いたアニエスの話にヴァンは自身の推測を指摘し、アーロンは脅迫状を出した相手の用意周到さに舌打ちをした。
「サァラさんたち、大丈夫でしょうか…………」
アニエスは複雑そうな表情で脅迫状を受け取った姉妹の事を思い返した。
〜10分前〜
「その…………さすがにギルドに相談した方がいいんじゃないでしょうか?」
「ええ、民間人に危機が及ぶ場合、最優先で対処してくれる筈です。恐らく費用も格安だと思われますが。」
「………それは…………」
「…………?」
アニエスとリゼットの助言に対して答えを戸惑っているサァラの様子が気になったヴァンは眉を顰めた。
「そ、そうだよお姉、なんか気持ち悪いし!その…………何だったらいっそのことパレードの件も断ったっていいんだよ?」
「―――――ううん、それはダメよ。もうパレードも詰めの段階に入っているって言っていたもの。今辞退なんかしたら監督さんだけじゃない、映画祭そのものに迷惑をかけることになる…………ギルドに依頼するということはそういうことですよね?」
シャヒーナの意見を否定したサァラは真剣な表情でヴァン達に確認した。
「ま、下手したらパレードそのものを中止させる方向で動くかもなァ。」
サァラの確認に対してアーロンが溜息を吐いて自身の推測を答えた。
「で、でもお姉…………」
「…………ヴァンさん。図々しいお願いなのはわかっています。”裏解決屋”としての皆さんにこの件を依頼できないでしょうか?もちろんお礼はさせていただきますので――――――」
シャヒーナが不安そうな表情を浮かべている中、サァラは真剣な表情でヴァン達に依頼をした。
〜現在〜
「―――――女優どもの依頼の延長で格安で引き受けたのはともかく…………あの女、なんか隠してたっぽいがそれはいいのかよ?」
「え…………!?」
「…………そんな雰囲気はありましたが何か事情があるんだと思います。」
アーロンが口にしたある懸念にフェリが驚いている中アニエスは複雑そうな表情で答えた。
「ま、力になるって約束したしな。新たな手掛かりに繋がる可能性もあんだろう。」
「一応、該当する運送会社の特定だけはしておきましょうか?」
「念のためたのむ。――――――そろそろ歓楽街に向かうぞ。ホテルで依頼人が待ってる。この件も含めて報告しとかねえとな。」
そしてホテルへと向かい始めたヴァン達は話し合っている様子のマリエルとディンゴを見つけ、二人に近づいた。
〜歓楽街〜
「ひどいですよディンゴさん!今日はまだ旧首都にいるって言ったのに一人こっそりサルバッドに来てたなんて!」
「だからってお前がサルバッドまで来ることはないだろう…………タイレルはウチほどフリーダムじゃないと思うが?」
文句を言うマリエルに対して呆れた表情で溜息を吐いたディンゴはマリエルにある指摘をした。
「フフン、そこは抜かりありません!ちゃんと編集長から映画祭を取材してくる許可を取ったんですから。ちょうど映画祭を担当する予定の人が別件が入ったみたいで。」
「本当に運がいいなお前は…………」
「なんだ、わざわざ二日早く来たのはそういうことだったのか。」
胸を張って自慢げに答えたマリエルの話にディンゴが苦笑しているとヴァンが仲間達と共に近づいて声をかけた。
「ああっ、裏解決屋の…………貴方達まで!?」
「”私用”のために来たのも本当だ。まだロクな成果もないがな。…………また人手が増えたのか。それも只者じゃない感じだな。」
「”マルドゥック社”の出向SC,リゼット・トワイニングと申します。今後もお見知りおきを。」
ディンゴに視線を向けられたリゼットは自己紹介をした。
「マルドゥックというとあの…………?」
「ディンゴさんっ、話は終わっていません!ですからその”私用”が一体何なのか教えてください!私も手伝いますから!」
「それには及ばないといったはずだ。」
「どうしてですか!私も少しは成長したはずです!」
「そもそも他社の人間に手伝わせるわけにもいかないからな。」
「関係ありません!前にディンゴさんも私を助けてくれたじゃないですか!」
「そこまで隠すってことはあれか、私用ってのはいかがわしい店の体験レポートだな?」
ディンゴとマリエルの会話に入ってきたアーロンは口元に笑みを浮かべて自身の推測を指摘した。
「ええええっ…………!?そ、そういうのはちょっと…………」
「いかがわしい店というと…………?」
「ちょっとアーロンさん…………」
アーロンの指摘にマリエルが声を上げて驚いている中、興味を抱いている様子のフェリを見たアニエスは困った表情でアーロンを見つめた。
「そんな取材をするなんて…………やっぱり私がディンゴさんを矯正しなきゃ…………!」
一方アーロンの指摘を本気で受け取ったマリエルはある決意をした。
「まあ、話がまとまった所で、俺達はもう行くぜ。」
(全然まとまってないような…………)
(逃げるつもりだなこいつ?)
「やれやれ、かき回しておいて…………まあいい、何かあったら連絡する。」
「そんじゃ二人共、取材頑張ってな。」
そして二人と別れたヴァン達はホテルを訪ねると、ホテルマンから依頼人の二人はプールで待っているという伝言を受け取ったので、プールに向かった。
〜アルジュメイラホテル・ナイトプール〜
「わぁ…………これがナイトプールですか…………!」
「オアシス湖の眺めもいいですね。静かで落ち着きます。」
「ハン、若いので集まってドンチャン騒ぐ雰囲気じゃねぇか。」
「そういう客層じゃねえだろう。さて、依頼人は…………」
「あら、ヴァンちゃんたちじゃない。良い夜ね♪今日のお仕事は終わりかしら?」
ヴァン達が依頼人の二人を探し始めるとベルモッティがヴァン達に近づいて声をかけた。
「ああ、一応な。」
「ふふ、こちらでも働いてらしたんですね。」
「ええ、例の大会の前にしばらくヘルプに呼ばれてね。ってアラ、そっちの子は――――――」
アニエスの言葉に答えたベルモッティは初対面であるリゼットに気づいた。
「リゼット・トワイニングと申します。お見知りおきを、ベルモッティ様。」
「!もしかしてヴァンちゃんと契約を結んでいるっていう…………」
「ま、色々あってな。それより女優たちが来てねぇか?」
「ああ、あの二人ね。それなら――――――」
ヴァンの問いかけに答えたベルモッティは水着姿のジュディスとニナがいる場所へと視線を向けた。
「ヒュウ、トップスターが水着姿でお出迎えかよ。」
二人の水着姿を目にしたアーロンは思わず口笛を吹いた。
「あ…………皆さん。こんな格好で失礼します。」
アーロンの声に気づいてジュディスと共にヴァン達へと振り返ったニナはヴァン達に挨拶をした。
「人が駆けずりまわってる時にいいご身分だなと言いたい所だが…………ある意味サービス良すぎかもな。」
「別にアンタたちのためじゃないわよ。こっちだって一日中お偉いさんに挨拶周りでヘトヘトだったんだから。」
ヴァンの指摘に対してジュディスは腕を組んで若干不堪そうな様子で反論した。
「おっと、そいつは失礼。」
「ふふ、確かに神経をすり減らしそうですね。」
「お互いお疲れ様、ですねっ。」
「ふふ、貴女たちも――――――ってなんかまた女の子が増えてない!?」
「ジュディス・ランスター様にニナ・フェンリィ様ですね。お会いできて光栄です、臨時スタッフのリゼット・トワイニングと申します。」
「ええっと…………?よろしくお願いします。」
「…………訳がわからないんだけど今日の報告、聞かせてくれるのよね?」
リゼットの自己紹介にニナが戸惑いながら答えた後、ジュディスは真剣な表情でヴァン達に報告を要求した。
「ああ――――――かいつまんで説明する。」
そしてヴァン達は二人に今日のサルバッドでの活動で気になった部分について二人に説明した。
「地下水路に怪しげな危険人物――――――…………それに新しい脅迫状ですって!?」
「せ、先輩っ…………」
ヴァン達の報告を聞いて思わず声を上げたジュディスにニナが周囲の客達を気にしながらジュディスに声をかけた。
「コホン、いいじゃないニナ!なかなか盛り上がりそうな展開ね!」
ニナに声をかけられて周囲の客達が自分の大声で自分達に注目し始めたことに気づいて我に返ったジュディスは咄嗟に嘘をついて客達の興味を逸らした。
「今日一日でそこまでのことが…………思ったより複雑な状況になってきましたね。」
「しかも中止になったメッセルダムの映画祭とも関係があるかもしれない、か…………」
「はい――――――あくまで可能性ですが。」
「一つ一つの関係性はわからねえが、”何か”が起きているのは確かだろう。――――――特に気になるのは、地下水路に現れた正体不明の娘…………脅迫状を出した犯人かまでは断定できねぇがな。」
ニナとジュディスの言葉にアニエスは頷き、ヴァンは真剣な表情で推測を口にした。
「でも見過ごせませんね…………私の事情抜きにしても。」
「はい…………”A"ならば特に。」
「…………?」
「…………ま、要するにまだ何もわからずじまいってことね?ずいぶん優秀じゃない、裏解決屋さんっていうのも。」
アニエスとフェリの意味深な会話が気になったニナが不思議そうな表情を浮かべている中ジュディスは意味ありげな笑みを浮かべてヴァンに皮肉の言葉をかけた。
「ま、確かに言葉もねぇな。」
「もう…………初日にここまでの成果があっただけでも期待以上でしょう。依頼していなかったら何の備えもなく映画祭を向かえていたでしょうし。」
ジュディスの皮肉に対してヴァンが苦笑している中、ニナは困った表情でジュディスに指摘した。
「…………わかってるわよ、そんなことは。あたしが言いたいのは一刻も早くなんとかしなきゃいけないってこと。スカウトされたばかりの現地の子にまで脅迫状を送るなんてふざけてる…………!」
「ハン…………?ま、その通りだがよ。」
「絶対に許せませんっ。」
ジュディスの憤りにアーロンとフェリはそれぞれ同意し
「それに今このサルバッドには”中央”でも有名な刑事達まで来ているようだし………彼らの耳に今回の件が入れば、下手したらサルバッドの映画祭まで中止になりかねない可能性も考えられるわ。」
「”中央”っていうと…………”帝都クロスベル”の事だよな?」
「それに”有名な刑事達”って仰っていましたが…………一体どのような方達なんでしょうか、その方達は。」
「話に出たその例の刑事達だが、恐らく”A"の調査の為に”中央”と”本国”が結成した”例の合同捜査隊”のメンバーとして活動している刑事達だろう。」
ジュディスの話を聞いてそれぞれ疑問を抱いているアーロンとフェリにヴァンは自身の推測を答えた。
「そいつは…………」
「”例の合同捜査隊”のメンバーでもある刑事の方達がこのサルバッドで活動しているということは…………」
ヴァンの推測を聞き、それぞれの疑問を抱いている人物たちが何者であり、その人物達がサルバッドで活動している事よってアルマータが関わっている事を察したアーロンとフェリはそれぞれ真剣な表情を浮かべた。
「……………………でも結局のところ…………”犯人”は何がしたいんでしょう?」
その時真剣な表情で目を伏せて考え込んでいたアニエスはある疑問を口にした。
「え…………?」
「ああ――――――どうにも目的が見えてこねぇ。映画祭を中止させいたいだけなら、それこそテロ予告を出して”事件”にするのが早いはずだ。なのに出演者の女優や踊り子にチマチマと脅迫状を出すなんざ、余りにも回りくどすぎる。」
アニエスの疑問を聞いたジュディスが呆けた声を出した後ヴァンは自身が気になった事を答えた。
「あ………」
「…………確かに…………」
ヴァンの意見を聞いたニナは呆けた声を出し、ジュディスは納得した様子で頷いた。
「成程…………目的と手段が一致していないような印象ですね。かといって妨害行為であることには変わりませんが。」
「ああ、そのあたりの食い違いが”鍵”になるかもしれねぇな。」
「―――――フフ、何やら面白い話をしているみたいだね?」
ヴァン達が話し合っていると中東系の身なりのいい青年がヴァン達に声をかけた。
「アン、なんだアンタ…………」
「って――――――殿下っ!?」
「いらしていたんですね。すみません、このような恰好で。」
青年の登場にアーロンが眉を顰めている中ジュディスは驚き、ニナは青年に謝罪した。
「いやいや、気にする必要はない。砂漠に咲いた二輪の花――――――映画界の、いやゼムリアの至宝とすら言えるだろう。どうかその美を存分に振りまいて我ら凡欲の渇きを潤してくれたまえっ。
「あはは………………」
「ふう、相変わらずですねぇ…………」
(へえ…………?)
(ひょっとして…………)
(……………………)
青年の言葉にニナが苦笑し、ジュディスが呆れている中青年の背後に控えているスーツ姿の女性の腕前に気づいたアーロンは興味ありげな表情を浮かべ、青年の正体に気づいたアニエスは目を丸くし、リゼットは真剣な表情で黙って青年を見つめていた。
「――――――殿下、お戯れはそのくらいに。」
「フフ…………わかっているさ、ナージェ。エルザイムの公王サルマンが一子、シェリド・アスヴァールだ。こちらは秘書のナージェ。」
女性の指摘に頷いた青年――――――シェリド公太子はヴァン達に自分と女性――――――ナージェの自己紹介をし、シェリド公太子の自己紹介に続くようにナージェは頭を軽く下げた。
「ジュディス君たちから聞いている。”プライベートな依頼”を受けているそうだね?ついでに私の相談にも乗ってもらいたいんだが、――――――構わないかな?」
「…………!」
「…………なるほどね。」
シェリド公太子が取り出した手紙――――――脅迫状を目にしたアニエスは驚き、ヴァンは真剣な表情で呟いた。そしてヴァン達はプールからは若干離れた休憩所で話し合いを始めた。
「まずは改めて――――――お目にかかれて光栄ですよ、公太子殿下。北カルバード州のしがない便利屋風情に声をかけて下さるとは思いませんでしたが。」
「なに、随分優秀という話だったから相談させてもらおうと思っただけさ。それに君の事を少し調べさせてもらったが、中々興味深い”経歴”まであるじゃないか。――――――3年前の大戦では”かの大英雄殿が直々に率いていた部隊にして、今ではもはや現代の伝説として語られているかの部隊の一員”でもあった君からすれば”かの部隊に所属していた豪華な面々”と比べれば小国の跡継ぎである私等大した存在ではないのじゃないかい?」
ヴァンの謙遜した言葉に答えたシェリド公太子は意味ありげな笑みを浮かべてヴァンに問いかけ
「ハアッ!?」
「「え…………」」
「3年前の”大戦”――――――それも”かの大英雄殿が直々に率いていた部隊”ってまさか…………」
「オイオイ、さり気なくオレ様たちにも黙っていたとんでもない経歴が判明したじゃねぇか、オッサン。」
「……………………」
シェリド公太子の問いかけを聞いてヴァンの3年前の”経歴”を察したジュディスは困惑の表情で声を上げ、アニエスとニナは呆けた声を出し、フェリは驚きの表情を浮かべ、アーロンは興味ありげな様子でヴァンを見つめて指摘し、リゼットは静かな表情で目を伏せて黙り込んでいた。
「それ以上は勘弁して下さい、殿下。それに”かの部隊の一員”とは言ってもあくまで”当時の業務”の関係上臨時的にそうなってしまっただけの話で、所属していた期間も僅かな日数でしたから、そんな俺が英雄達の威を借りるみたいな三国のお偉いさん達から睨まれそうな命知らずなことはできませんよ。」
一方ヴァンは肩をすくめた後疲れた表情でシェリド公太子に指摘した。
「フフ、そうかい?しかし…………なるほど噂通りの面々のようだ――――――そちらの臨時スタッフも含めてね。」
ヴァンの答えを聞いたシェリド公太子は興味ありげな様子でアニエス達を見回した。
「恐れ入ります。」
「…………?」
「ハッ、一国の跡継ぎとこんな所で出くわすとはな。」
「映画祭のスポンサーという話は聞いていましたけど…………まさか、そのような方にまで脅迫状が届けられていたなんて。」
「…………間違いありません、私達に届いたものと同じ文面です。」
アニエスは信じられない表情で机に置かれた脅迫状を見つめ、ニナは真剣な表情で脅迫状を見つめながら答えた。
「殿下の宿泊するグランスイートに届いたのは5日前――――――あたしたちとほぼ同時期ね。すると旧首都とサルバッドに同時に送り付けたことになるのか…………」
「すぐさま調査を手配しましたが、郵送でのルートも未だ辿れていません。巧妙な偽装が施されているようです。」
「サァラさんの時と同じみたいですね…………」
ナージェの話を聞いたフェリはサァラに届いた脅迫状の事を思い返した。
「私が監督に推薦した、踊り子の彼女だね。そちらにも先ほど届いたそうだが…………昼間スカウトした直後に届くというのはいくらなんでも早すぎるし、入念すぎる。やはりただの悪戯とは考えにくいと思うんだが…………どうかな?」
「ええ、それについては同感です。そもそも殿下に届いている時点でただの悪戯の線はあり得ないでしょう。」
「クク、でなけりゃよっぽど、肝が据わってるか馬鹿のどちらかだな。しかし、そんなのが送り付けられた割にずいぶん余裕そうだな、アンタ?俺らみたいなのに近づくのも含めて――――――よっぽどその姉さんを信頼してんのか?」
シェリド公太子の意見にヴァンは頷いて同意し、不敵な笑みを浮かべて冗談半分の推測をしたアーロンはナージェに視線を向けながらシェリド公太子に訊ねた。
「ふふ、それはもう。彼女は私の秘書だが護衛も兼任していて剣術ともなれば公国一、二を争う腕前――――――アークライド氏やそちらのSC殿も恐らく上回るほどの使い手だからね。」
「…………へえ…………?」
「ふふ、元より足元にも及ばぬかと。」
シェリド公太子が語ったナージェの腕前ににアーロンは興味ありげな表情を浮かべ、リゼットは苦笑を浮かべ
「……………………」
対するナージェは何も語らず、黙り込んでいた。
「ま、お世継ぎの護衛役と比べられちゃあさすがに分が悪いですね。ああ、自分は呼び捨てで結構ですよ。」
「ふふ、ならばヴァン君で――――――24だったか?3つ年上なのでね。ゴッチ監督から聞いた通り中々見所があるようじゃないか。『ゴールデンブラッド』も深いテーマまで見抜いたようだし。――――――するとやはり限定公開の『完全版(R17)』の方も…………?」
「ええ、マストでしょう。むしろそっちで見るつもりでしたが。助手たち連れだったもんで仕方なく――――――まあたまには新鮮ですがね。」
「わかる、わかるぞヴァン君!私も妹に一度『完全版』を見られてしばらくのあいだ氷のような目で…………」
「そいつは災難でしたねぇ。」
シェリド公太子とある映画について盛り上がっている様子のヴァンを目にしたアニエス達はそれぞれ冷や汗をかいて脱力した。
「盛り上がってますね〜。」
「もう、ヴァンさんも…………」
「ヴァン様の年齢まで把握されていたのも流石ですが…………」
「クク、素だなありゃ。面白い跡継ぎじゃねえか。」
「…………貴女も大変ねぇ?」
「いえ…………慣れておりますので。」
ジュディスに同情の視線を向けられて声をかけられたナージェは静かな表情で答えた。
「お、ジュディス・ランスターにニナ・フェンリィじゃね!?」
「ヒュウ、スターが水着でお出迎えとはさすがアルジュメイラだねぇ!」
「おお、サインしてもらおうぜ!つーかオレたちと一緒に遊ばねーか?って――――――」
するとその時昼間踊り子の姉妹を連れ去ろうとしたガラの悪い裕福な観光客達が護衛の黒服の男達を連れてジュディスとニナに声をかけてきたがヴァン達に気づくと表情を歪ませた。
「…………また貴方たちですか。」
「まさかこちらに宿泊を…………?」
「ハッ、こんなのを泊めるとは品格も何もあったもんじゃねぇな。」
裕福な観光客達の登場にフェリは呆れた表情を浮かべ、アニエスは複雑そうな表情を浮かべ、アーロンは鼻を鳴らした。
「て、てめぇらは昼間の…………!」
「な、なんでこんな所に…………!?」
「ほう…………お友達かい?」
ヴァン達と観光客達が知り合いの様子であることが気になったシェリド公太子はヴァン達に訊ね
「昼間ちょいとね。すみません、静かにさせますよ。」
訊ねられたヴァンは苦笑しながら答えた。
「ふざけんな…………!ここで会ったが百年目ってヤツだ!」
「君達、そっちの男共をまとめて――――――」
そして観光客達がスーツ姿の男達に指示をしかけたその時シェリド公太子がナージェに視線を向けて頷くとナージェは自身の得物である中東系の剣を抜くと同時に一瞬の早業で観光客達やスーツ姿の男達のズボンを切り裂いた!
「へ…………」
「なあああああああっ!?」
目にも止まらに速さでズボンが切り裂かれた観光客達は呆けたり驚きの声を上げ
「ッ…………!」
(今の動きは…………)
「あらヤダ、若い柔肌♪アナタたち、エルザイムの公太子様に絡むなんて度胸があるわねぇ。せっかくのいい夜、大人しく楽しんだ方がいいんじゃなくて?それ・れ・と・も、アタシが遊んであげましょうか♪」
ナージェが見せた強さにアーロンとフェリが驚いている中ベルモッティが現れて観光客達に忠告し
「し、失礼しました〜ッ!
忠告されたその場から観光客達は逃げ去り、それを確認したベルモッティもその場から立ち去った。
「さすがは殿下の懐刀。鮮やかな手並みだねぇ?」
「…………いえ。この程度は児戯でしょう。」
「フフ、言うだけはあるだろう?」
ヴァンの称賛に対してナージェは謙遜の言葉を口にし、シェリド公太子は自慢げに語った。
「…………ハッ。」
(エレインさんや”妖精”以上の…………世の中は広いですね。)
アーロンは鼻を鳴らして真剣な表情でナージェを見つめ、フェリは世界の広さを感じていた。
「―――――さて、水も差された事だし今宵はこれくらいにしておこうか。ささやかだが私からも彼女達と同額の報酬を用意させてもらうつもりだ。ご婦人方を優先して構わないので何かわかったら情報を回してくれたまえ。良き出会いに感謝を――――臨時スタッフ殿にも期待させてもらうよ。」
そしてシェリド公太子はナージェと共にその場から去って行った。
その後、女優たちとも別れてサルバッドの1日目の活動は終了――――――ヴァン達はまっすぐ宿酒場へと戻った。長距離移動と一日の活動でそれぞれ疲れがたまっており…………明後日の映画祭までの調査に備え、身体を早々に休めるのだった。
〜伝統地区・宿酒場”三日月亭”〜
「―――――は?夜はこれからだろ。小娘どももとっとと寝付きそうだし、大人の時間と洒落こまねぇでどうすんだ?」
部屋に戻ったアーロンはクもとに笑みを浮かべてヴァンにある提案をした。
「カジノの近くにあったナイトクラブか…………元気だねぇ、お前。ま、勝手に行ってこいと言う所だが。どんな騒動を起こすかわからねえし保護者として付き添ってやるよ。」
アーロンの提案に苦笑したヴァンは立ち上がって同行を申し出た。
「クク、そう来なくっちゃな。言い訳としちゃセコすぎるが。」
「るせぇ、大人には建前が必要なんだよ。」
(ハア…………大人なら、アーロンが今から行く所を止めて欲しいわ…………)
(フフ、アーロンも成人したのだし、ナイトクラブくらいで一々目くじらを立てなくていいと思うわよ、マティ。)
アーロンの指摘に対してヴァンは答え、二人の様子を見守っていて頭を抱えて溜息を吐いたマルティーナにユエファは苦笑しながら指摘した。
「お戻りはどのくらいでしょうか?」
ヴァン達が宿から出ようとしたその時リゼットが二人を呼び止めた。
「うおっ………!?って、いつの間に――――――」
「…………午前様にはならんようにする。あいつらに心配かけねぇよう頼むわ。」
気配もなくいつの間にか自分達の背後にいたリゼットにアーロンは驚き、ヴァンは苦笑しながらアニエスとフェリへのフォローを頼んだ。
「お任せくださいませ。――――――どうぞ楽しい夜を。」
そしてリゼットに見送られながらヴァン達は宿を出た。
〜歓楽街〜
「…………ほんと何モンだ、あのメイド?あの公太子どもも妙に気にしてたみたいだが。」
「…………気づいてたか。ま、出向元の”背景”を考えりゃ色々あんだろ。」
宿からある程度離れて訊ねてきたアーロンの疑問にヴァンは腕を組んで答えた。
「ハン…………?つーか怪しげな契約だけの関係でてめぇもよく信用できるモンだぜ。会ったのも初めてなんだろ?」
「ま、通信だけだったが3年近くの付き合いになるからな。――――――とっとと覗いてサッと帰るぞ。女子どもに心配かけねぇうちにな。」
「ハッ、思春期の娘がいるオヤジかっつの。」
「そんな歳じゃねぇよ!」
アーロンと共にナイトクラブへと向かい始めたヴァンだったがふとあることを思い出して立ち止まり、ザイファを取り出して操作した。
「…………そういや、今のうちに仕込んどくか。」
「アン…………?いいからとっとと行こうぜ。」
そしてヴァンとアーロンはナイトクラブへと向かった――――――
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第43話 | ||
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