スバル360
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説明
『スバル360』という660ccの軽自動車が発売される。660ccなのに360という名を付けた理由は良く分からないが、スバル社の方々にとってスバル360という車は特別な思い入れがあるのだろう。ゼロ戦と並ぶ「隼」を開発した中島飛行機の技術者たちが作った車だからプライドがあるのだと思う。 僕のスバル360の思い出は、幼い頃にドライブに連れて行ってもらった時の事だ。うちの車はマツダのキャロルだった。未舗装の山道を360ccの小さなエンジンで砂埃を巻き上げながら走って行くと、前方で見事にひっくり返っている車があった。それが俗称 てんとう虫というスバル360だった。フォルクスワーゲンかぶと虫を小さくしたような形で、小さな丸っこい形は坂道でたやすく くるんとひっくり返ったのだろう。虫は死ぬとひっくり返るが、あんな感じだった。父が手を貸すと 大人二人だけで簡単に元に戻った。「父があれっ、軽いなぁ。」と呟いたのを思い出した。 富士重工の技術者達は、自分たちの航空機の技術をもってすれば、360ccのエンジンなら14馬力出せて、重量を350kgに抑えれば最高速度は80km/hになるという結論を出していたそうだ。軽量化のために省ける部品は省かなくてはならない。そうすると駆動方式は 重たいプロペラシャフトのあるFRよりも エンジンと駆動系が一体になっているFFかRRとなるが、当時の日本の技術力では、必然的にリアエンジンになったそうだ。プロペラシャフトが無いから室内スペースに余裕が出来て軽量化できただけではなく コストダウンにもつながったという。軽量化、スペース確保のためには当然サスペンションもシンプルに作る必要があるから重たいリーフスプリングもコイルスプリングも採用せず、トーションバーサスペンションにしたそうだ。ボディはフレームシャシーにボディを載せると重量がかさむため、先進的なフルモノコックボディとなっている。さらに徹底した軽量化のためには 当時一般的な0.8mm鋼鈑ではなく更に薄い0.6mm鋼鈑でボディを作る必要があり、薄い鋼板で強度を確保するため曲面にして応力を分散した。その結果、丸いボディにリアエンジンという組み合わせにならざるを得なくなったそうだ。スバル360のボディデザイナーは富士重工からデザインを引き受けるまでは 自動車デザインの実績も経験も無かったそうだが、見た目よりもコストと合理性を最優先にし 必要のない要素を省いていったらあのデザインが出来上がったらしい。「てんとう虫」はフォルクスワーゲン「かぶと虫」の物まねではなく、試行錯誤の行き着く先の結果だったわけだ。「かぶと虫」もポルシェがヒトラーの出した厳しい条件を達成しようとして完成したと聞く。生物では収斂進化ということがあるが、もの作りも同じらしい。
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