真・恋姫?無双 仙人で御遣い 2話 |
豪臣は、少女の膝を枕に気を失ったままでいた。
そんな豪臣は、朧げな意識の中、子供のころ陳老人から言われた言葉を思い出していた。
【回想・始】
〜豪臣10歳の夏休み 陳老人宅〜
夏休みも残すところ後2日。
明日、実家に帰る豪臣は、と陳老人と夕食を取っていた時のこと。
「のう、ヒデ」
と、陳老人が声を掛けてきた。
「はい、老師!」
「お前は、何のために仙人になりたいんじゃ?」
豪臣は、予想外の問いに、驚きながらも
「もちろん、老師の様に強くなりたいからです!」
と、即答する。
「強く、か・・・」
陳老人は一度口を閉じ、そして、また問う。
「何故、強くなりたいんじゃ?」
「護らなければならないモノがあるからです」
「そのモノとは、なんじゃ?」
「大切なモノです」
「何故、護りたいんじゃ?」
「そうお爺ちゃんが言っていたからです」
「お爺ちゃん・・・辰臣(タツオミ)が、か?」
「はい」
豪臣は、祖父、辰臣に言われたことを陳老人に聞かせる。
『ヒデ、強く成れ。そして、強く在れ。
将来、大切なモノが出来たとき、それを護れるだけの力を持つんだ』
『モノとは、人であろうと物であろうと構わない。
お前が失いたくないと思うものだ』
陳老人は、この言葉の意味を読み取り
(この子は、まだ、十になったばかりじゃ。この言葉を額面通りに受け取っているのではないかの?)
と、思い、問う。
「して、その“強く”という言葉の意味は分かるか?」
「はい、老師!強くとは、力と心を意味しています!」
(ふむ、分かってはいるようじゃの。しかし、それと理解しているかは別じゃ)
陳老人は、内心そう思いながら、この問答で、一番答えを聞きたかったことを問う。
「では、最後じゃ。お前は、人の死を背負う“覚悟”はあるかの?」
「・・・・・・え?」
さっきまで即答していた豪臣は、“死”という言葉で、動きが止まった。
「おそらくじゃが、お前は“力”で護る場合、精々、暴漢やらチンピラから護ると思っておるのではないかの?」
「・・・はい、そうです」
何か、間違えてしまったのかと、豪臣は肩を落とす。
「辰臣の言う強さも、お前と同じ考えの下から出た言葉じゃろう」
祖父と同じと言われ、豪臣が顔を上げる。
しかし、陳老人は厳しい眼で豪臣を見据える。
「・・・だが、わしの言う強さは違う。仙人じゃからな」
「仙人だから・・・ですか?」
「そうじゃ。仙人は不老不死。気さえ失わなければ永遠に生きて行ける」
豪臣には、それが何を意味するのかが分からない。
「どう・・・違うのですか?」
「可能性の問題じゃ。
今は、この国は戦争も無く、凶悪犯罪も少ない。
しかしの、未来は分からん。
戦争に巻き込まれることもあるかもしれんじゃろ?
そうなったとき、お前は大事なモノをどうやって護る?
お前の言うとる“心”は人を殴る覚悟じゃ。
もちろん、その覚悟も大事じゃが
わしが言っておるのは、誰かの心を傷つける覚悟や、死を受け止め、背負う覚悟じゃ」
「・・・・・・」
陳老人の言葉は、豪臣の頭を混乱させる。
「まあ、焦るな。すぐに答えを聞こうとは思わん。今回の修行の宿題どでも思っておれ」
「・・・・・・はい」
こうして、この晩の問答は終わった。
この夜、豪臣は眠ることが出来ず、次の日は隈を作って帰って行った。
陳老人は、そんな姿を眺めながら思う。
(この話は、十の子供には分かりづらく、重いものじゃったな。
しかし、これを言わねばならん程に成長してしまったしの。
間違って、誰かを危めてからでは遅い。仕方がないんじゃ。
許せ、ヒデ)
陳老人は、そう心の中だけで頭を下げた。
【回想・終】
(そうだった。俺は、この答えをずっと出せないままで、修行を続けてきたんだったな)
そう、豪臣は次に陳老人宅に訪れた冬、こう言った。
『老師。僕には、老師の言う覚悟がどういうものか、あまり分かりませんでした。
本当に、そんなことになるかも分かりませんし・・・
でも、老師の言う“その時”が来たら、僕は、いえ、俺は“覚悟”を決めてみせます!』
幼き日の豪臣は、陳老人の眼を見据え、はっきりとそう言ったのだ。
案の定、それから10年以上、死に触れることはなく、武力を行使したのは、友人たちを護るために不良を何度か懲らしめたときくらいだった。
(やっぱり、俺は死を背負う覚悟なんて出来てなかったんだな)
そして、もう一度、自分の言葉を思い出す。幼き日の言葉を
『“覚悟”を決めてみせます!』
その言葉で、折れかかっていた心に力が戻ってくる。
(ああ、そうだったよな。“覚悟”決めるって言ったんだよな。
自分で吐いた言葉には責任を持て!
俺は、こんなことで心が折れるやつじゃない!
決める暇が無かった?
そんなの言い訳だ!
俺は、護るために、強く成るために、強く在るために頑張ってきたんだ!
“覚悟”を決めろ、俺!)
そして、豪臣は、自分の意識がはっきりしていくことを感じた。
豪臣が眼を開けると、目の前に先程の少女の顔があった。
そして、眼が合うと
「あ!気がついたんですね?良かったです」
少女は嬉しそうに笑顔を作る。
(ああ、俺は、この笑顔を護れたんだ)
豪臣は、あの男たちの頭を危めてしまったけれど、少女のこの笑顔を護れたことが嬉しくて、一筋の涙を流した。
「え!?だ、大丈夫ですか?」
その涙を見て慌てる少女。
豪臣は、そんな少女の顔に手を伸ばし、頬を撫でた。
「あの、え〜と///」
少女は、恥ずかしそうに頬を染める。
そんな少女に、豪臣は微笑んで
「ありがとう。護らせてくれて」
そう言った。
少女は、キョトンとした後、自分の頬にある豪臣の手を握り
「どういたしまして」
そう、優しく微笑んだ。
あとがき
どうも、虎子です。
今回で、どうにか三本目。見習い卒業です。
そして、お気に入り登録が10人になりました。
本当に、ありがとうございます。
では、作品の話ですが・・・
ホンッッットにすいません!
作中での時間が、全く進んでおりません(私も困っております)。
前回登場したあの少女ですが、今回名前を出す予定でいたんです。
皆さんにも、 やっぱり! と言わせよう、そう思っていたんです。
でも、進まずに、あろうことか、かなり大きなフラグを押っ立ててしまった様な気がしてなりません。
3話とどうやって繋げよう、と思い悩んでいる次第。
まあ、愚痴はこのくらいにして、序章と1話にコメントを下さった皆様のQ&Aをば
Q.虎の朔夜(さくや)が居るのに呉√じゃないの?
A.勘違いさせてしまい、すみません。私の名前を見て分かる通り、ただ単に虎が好きなだけです。
Q.どのルートになるの?
A.すみません。私にも分かりません。
Q.種馬スキル持ってるの?
A.まあ、顔が良く、女子供に優しいとしているので、『種馬(偽)』みたいな感じですね。
Q.新月(しんげつ)って、某死神さんの斬月に似てない?
A.似てます。ただ、元ネタはこれじゃありません。
Q.豪臣、強すぎじゃない?
A.強いですね。どれ程のものかは、今後の作中で
こんな感じです。
2,3話毎にお答えしていこうと思います。
文章中に誤字脱字等ありましたら、コメントにガンガン書いてやって下さい。
次のページに、陳老人のプロフィールを載せました。よろしかったらどうぞ。
最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。本当にありがとうございました。
ではでは、虎子でした。
オリキャラ
陳(チン) ♂
身長150p 年齢(自称)468歳
生立ち
戦国時代に生まれ10歳のときに事故に遭い生死の境をさ迷う。そこを仙人に助けられそのまま修行し仙人となる。紫堂辰臣とは大戦中に知り合う。現在は、なんでも修理屋(機械やら家具やら衣服やら)を営んでいる。豪臣を恋姫の世界に送った張本人。
外見
白髪で短髪。常に柔和な表情の好々爺。80歳くらいに見える。
服装
茜色の甚平を愛用。
口調
自分をわし、豪臣のことをヒデ、朔夜のことをサクと呼ぶ。
性格
修理屋の仕事は丁寧だがそれ以外は無頓着で無責任。行き当たりばったりの出たとこ勝負な性格。
豪臣のことは、孫の様に思っている。
説明 | ||
拙い文章ですが、よろしくお願いいます。 今回は短めです。 |
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コメント | ||
呉√ではないんですね。少女の正体がわかればおのずと見えてくるかな。(ブックマン) 覚悟を決めた豪臣、決意を新たにさぁどの陣営に入るのか、そしてこの少女は誰?戦えるらしいが全然分かりません!気になって仕方がない!(自由人) |
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