私がやる事はただ一つ |
そいつが大翔達を裏切ったと知るや否や、私達琉球エージェントは緊急会議に入った。
もちろん、その内容はそいつに関する処遇である。
結果、私はそいつの討伐を決め、すぐさま私達はそいつを追いかけた。
そいつの名は結城光哉。
桜ヶ島中学校に通う、私より7歳年下の少年だ。
私がそいつを討伐すると決めたのは、あの事件がきっかけだ。
そいつは土御門美術館で青髭男爵のゲームに参加して……いや、させられたが正解だろう。
当然、私も仲間を連れてその美術館に移動し、鬼を倒しに向かった。
そこで出会った奴が、青髭男爵。
そいつはゲームに命を懸けていて、そのせいで鬼になってしまったらしい。
だが戦いに特化した私達の敵ではなく、難なくゲームを突破し、青髭男爵にダメージを与えて退けた。
……だが、本当の地獄はそこからだった。
大翔達を信用していたと思っていたそいつが、大翔達を裏切ったのだ。
奴は紫鬼を親のように慕っていたらしく、彼の言葉なら何でも信頼していたという。
当然、私は許すはずがなかった。
いや、琉球エージェントはそういう考えしか持てなかったのだろう。
(オレはお前の友達じゃない。大っ嫌いだったんだよ!)
それを聞いた瞬間から、私の気持ちは抑えられなくなった。
そしてそいつを追いかけて、ついにそいつを((人気|ひとけ))のしない場所で見つけた。
今まさに、手にナイフを創造しようとするような態勢で。
そいつの命を奪わんとするために。
「君には……いや、お前には死相が見えているぞ。私達の誰かの手にかかってな」
私は冷たい声でそいつにそう言った。
鬼も、鬼に付き従う奴も、琉球エージェントは全員、自分の手で討たなければならない。
その気持ちはどうしても抑えられない、ここでぶつけたかった。
……こうしなければ任務を果たせないと思ったからだ。
「お姉ちゃん……ホントに、オレを殺すの?」
そいつはいつもと違って、怯えたような声色で言った。
私が命を奪おうとしているからだろうか。
「そうだな。お前があいつを裏切ったのは、事実だからな」
そいつは討伐対象の紫鬼に従っているから、そいつを殺せばきっとショックを受けるだろう。
だからそうなる前に、そいつを殺さなければ、みんなを守れない……と私は思った。
子は親に守られる存在だが、琉球エージェントは親がいないし、鬼に近づきつつある身を絆で保つ儚い存在だ。
はっきり言って土俵が違う……だが、それでも、こうしなければならないんだ。
「鬼に従ったまま死ぬか、親を捨ててから死ぬか、どちらか選べ」
私はなおも冷たい声でそいつに言った。
裏切り者に生きる価値などないとでも言うかのように。
そいつの過去など、悪事の免罪符にはならないからな。
「……選べないよ! お姉ちゃん!」
「ふん、裏切り者の癖に親に守られるしかない弱者め。だったら今ここで、お前を殺す!」
私は「創造」の能力でナイフを創造すると、そいつ目掛けて振りかざさんとした。
現代でこんな事をすれば逮捕されるだろうが、琉球エージェントはその法律を無視できる。
私が創造したナイフが、そいつの首に突き刺さろうとした……ところで、突然、ナイフが何者かに防がれた。
「子供を殺そうとする人間がいるなんて、最低だよ」
「お父さん……!」
そいつをナイフから守ったのは、紫鬼だった。
分かっていたよ、親は子を守るために存在すると聞いていたからな。
私はぐっと歯を食いしばると、なおもナイフを構えたまま紫鬼を睨みつける。
「もし光哉を殺そうとするなら、私が相手になるよ。……能力者一人だけで色鬼の相手になると思うな」
私は鋭い目で紫鬼を睨んだ後、その場を立ち去った。
一人で色鬼に挑むほど愚かではないからな。
「大丈夫か? 光哉。まったく、世の中は物騒だね」
「お父さん……オレ……お姉ちゃん……怖いけど……」
「気にする必要はない。あいつは殺人者以外の何者でもないからな」
「そうだね……お父さん……。お姉ちゃんは……殺人者だよね……」
「……紫鬼め、絶対に殺してやる。そして、光哉も殺してやる……!」
今はそいつを殺す事はしなかった。
だが、いずれそいつが紫鬼の手を離れてあいつらのところに戻った時、私はそいつを殺す。
そうすればそいつはそいつのまま、私だけのものにできる……と思った。
それが私達、琉球エージェントのやるべき事だと思ったからな。
説明 | ||
光哉→理々庵のような564Iショートショート。 実は光哉が理々庵をそう呼んでるのは彼女が名前を他人に明かさないだけです。 だからこう呼べばいいのかな、とテキトーに決めたのです。 |
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絶望鬼ごっこ オリキャラ 結城光哉 比嘉理々庵 紫鬼 NL | ||
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