ギリシア神話においての普通のスフィンクスは、女の顔と獅子(しし)の身体に翼(つばさ)をもつ怪物として描かれている。本来はエジプト神話の生物であるが、非常に古くからギリシア神話にも取り入れられていた。エジプトのスフィンクスは王家のシンボルで、ギザの大スフィンクスは王の偉大さを現す神聖な存在である。対してメソポタミアやギリシアのスフィンクスは怪物として扱われていたのだ。古くは、子供をさらい 戦士が倒れるのを待ち受ける死霊のごときものとされていた。が反面、魔除けの護符の図像ともされている。その後スフィンクスは 土地の害獣であると考えられた。系譜上ではエキドナ(蛇女)とティフォンの子、あるいはキマイラとオルトスの子とされ、兄弟であるネメアの獅子がネメアの地を荒らしたように、スフィンクスはヘラ女神によりテバイ(テーベ)に送り込まれ、その地の人々を苦しめた。これは、テバイ王家が犯した罪に対する罰であったという。 さらにスフィンクスは、単なる土地の害獣から 謎かけをする怪物へと進化する。「一つの声をもち、朝は四つ足、昼は二つ足、夜には三つ足となるものは何か」「生まれ出るときもっとも大きく、盛りのとき小さく、老いてふたたび最大になるものは何か」など。スフィンクスは、人々にこれらの謎をかけては解けない者を食い殺していた。やがてオイディプスが現れて、第一の謎の答えは「人間。幼時には四つ足で這い、長じては両足で歩き、老いては杖(つえ)を引くから」と解くと、スフィンクスは恥じて身を投げて死んでしまった。残りの答えは影である。 現代日本には、どうやらエジプト神話とメソポタミアやギリシア神話などのスフィンクスの特徴や逸話が混ぜ合わさって伝わったようだ。 |