真・恋姫?無双 仙人で御遣い 4話
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豪臣は、たった一人で村唯一の入口に居る。

彼の視線の先には120を超える賊が、突撃を掛けようと、武器を手に村に向かって来る。

 

(俺は壁だ。

 村の外敵を、誰一人通さない壁だ。)

 

賊は、もうそこまで来ていた。

豪臣は新月(しんげつ)を握り直す。

 

(さあ、来い。俺の覚悟、見せてやる!)

 

 

 

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豪臣と朔夜(さくや)、そして流琉は、村に足を踏み入れた。

すると

「あぁぁ!流琉ぅ!」

一人の少女が流琉の名を叫びながら走り寄って来る。

「え!季衣!?」

「僕、すっごく!心配したんだよ!」

流琉の眼の前で急停止して言う。

「ご、ごめんね、季衣。でも、何で帰って来てるの?

 二つ向こうの村に行ってたはずでしょ?」

「ん?え〜とね。賊は村の近くに来ただけで、すぐに居なくなったっておじさんが言いに来たから、途中で引き返した」

季衣と呼ばれた少女は笑顔で言う。

そして、今度は頬を膨らませ

「で、流琉は、いったい今まで何してたの?

 みんな心配して、探しに行こう、って話してたんだよ!」

と、グイっと顔を寄せる。

「が、崖から岩が落ちてきて、怪我をしちゃったの。そしたら、賊に囲まれて兄様に助けて頂いたの」

「?・・・兄様?」

流琉が慌てて答えると、兄様、という単語に季衣は首を傾げる。

豪臣が

(いや、そこは兄様じゃなくて“岩が落ちてきた”とか“怪我”ってところに反応しないか?普通は)

「この兄ちゃんのこと?」

と、思っていると、季衣が見上げて問う。

「・・・うん///」

季衣の問いに流琉は頬を染めて答える。

「えっと、流琉を助けてくれて、ありがとうございました」

「気にしないでくれ。勝手にやったことだから」

豪臣がそう答える。

すると、そこに別の声が掛る。

「話は、聞かせてもらいました。村の者を救って頂き、ありがとうございました」

そう言って前に出てきたのは髪の薄い老人だった。

「わしは、この村の長をやっておる者。

 村の者が世話になったこと、礼をさせていただきたい。

 よろしければ、あなたのお名前を聞かせて頂けぬか?」

そう聞かれた豪臣は、居住まいを正し

「これはどうも。俺の名は、紫堂豪臣。紫堂とお呼び下さい。

 他国から来た旅の者です」

そう答える。

「わかりました。では、こちらへどうぞ、紫堂殿。旅人であるなら、この村にゆっくり滞在なさるがよろしかろう」

「ありが「待ってください!」・・・流琉?」

「村長、兄様を私の家に泊まって頂いてはいけませんか?

助けてもらったのは私ですし」

流琉がそう言うと、村長は

「・・・そうじゃの。真名も預けとる様じゃし。流琉がお世話させてもらいなさい。

 紫堂殿もよろしいですかな?」

「ええ、構いません。流琉、お世話になるね」

(朔夜も居るし、事情を知ってる流琉の家の方が助かる)

そう言って頭を撫でてやる。

 

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流琉に案内され、家に入った。

流琉と、豪臣と・・・季衣が

「え?流琉、何でこの子が一緒に居るんだ?」

「あ、忘れてました。季衣とは一緒に住んでるんです。

 季衣?」

「うん。僕は許?って言うんだ。真名は季衣。季衣って呼んで良いよ!」

「ありがとう。俺のことは豪臣で良いよ」

「あ、僕は兄ちゃんって呼ぶね!流琉の兄ちゃんなら僕にとっても兄ちゃんだもん!」

「ああ、わかったよ、季衣」

そう言って頭を撫でてやり

(一緒に住んでるのか。これじゃ朔夜は喋れないな。

朔夜には肩身の狭い思いをさせてしまう)

心の中で朔夜に謝った。

しかし、そんな豪臣の考えを打ち砕く者が居た。

 

「季衣。私は朔夜と言います。このロリコン兼シスコンの式神をしています」

 

やっぱり、朔夜だった。

 

その後、豪臣は朔夜と口論(豪臣の文句を朔夜が聞き流すだけ)して、その間、流琉は季衣に朔夜の説明をしてくれた。

そして、肩を落とす豪臣を流琉が慰め、「朔夜」と呼んだ季衣を朔夜が怒った。

その後はご飯を食べ、この漢という国の現状を豪臣が聞き、豪臣の国の話を二人は楽しそうに聞いた。

そして寝る時間になり

「「三人で寝たい(です)!」」

と言う二人に押し切られ、三人で川の字に寝ることになった。

 

(ああ、とんでもない一日になったな。

 これから、どうしよう)

などと思いながら、左右で豪臣の腕を枕に穏やかに眠る二人を見る。

(可愛いし、柔らけぇなぁ。俺、これからこんな感じで大丈夫かな///?)

などと思いながら眠りに落ちていく。

そして、その時

 

「変態ですね」

 

という声が、聞こえた気がしたとか、しなかったとか。

 

こんな感じで、この世界での初日を終えた。

 

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〜二ヶ月がたったある日〜

豪臣は、村人たちと農作業に精を出していた。

(あれから、二ヶ月か。いろいろあったな)

 

村人が歓迎の宴を開いてくれた。

字が読めないことが分かり、流琉に教えてもらうことになった。

季衣と流琉と手合わせをしてやった。

季衣と一緒に狩りに行った。

流琉と一緒に料理をつくった。

村人たちと野良仕事や家の修理などをした。

 

(慌ただしかったなぁ。・・・そろそろ考えないとな)

などと考えていると

「ヒデ坊!悪いが家の戸が壊れちまった。見に来てくれ」

「わかりました!」

村のおじさんに言われ、笑顔でついていく豪臣。

(慌ただしいのは今もか)

 

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昼になる頃、戸の修理を終え、畑に戻ろうとした時だった。

「大変だよ!豪臣さん、村長のとこに来て頂戴」

おばさんが、走って来てそう告げる。

「わかりました」

嫌な予感がして、走って村長宅へ急いだ。

 

〜村長宅〜

「おお、来たか豪臣。こっちに座ってくれ」

村長がそう言って、自分の隣を勧める。

村長の周りには、村の中心となる者が3人と季衣と流琉、季衣の頭の上に朔夜が居た。

「どうされたんです?この面子では只事ではなさそうですが?」

豪臣が、そう尋ねると

「うむ。どうやら賊がこの村に向かって来ておるらしい」

「賊・・・ですか」

「おそらく、豪臣に殺された頭の代わりが出来たんじゃろう。

 今まで、内輪揉めしておったらしいが、今回、村の近くに来ている賊の数は、前に居た賊と数が変わらん」

“殺された”という言葉に、少しだけばつの悪い顔をする。

そんな豪臣を心配そうに見つめる流琉。

「早ければ明日の昼には来る。数は120を超えておるらしい。」

続ける村長に豪臣が問う。

「こちらの数は?」

「・・・戦える者は、季衣と流琉を除けて64人だ」

村人の一人が答えた。

「ほぼ倍、ですか」

「そうじゃ、そこでお主を呼んだのじゃ。

 お主は、この子たちよりも強く、そして、頭も良い。

 わしらは、どうすればどうすれば良いと思う?」

村長に、そう聞かる。

「そう、ですね・・・」

豪臣は、すぐに考えをまとめる。

「この村の選択肢は三つ。

 まず、一つ目。村を捨て、太守に助けを求める。

 これは、みんなが無傷でいられます。

 しかし、これの危険性は、見捨てられる可能性が高いということ。今まで賊の取り締まりをしてこなかった者なのですから」

この意見に、村人は、同意を示す。

「次に、最低限の糧食と金品を残し、賊に譲渡し示談をする。

 これも、みんなで貧しさを補うことを前提に考えれば、全員無傷で居られます。

 しかし、これの危険性は、賊が味を占め、収穫等の度に襲いに来る可能性、飢えた賊が、満足せず、そのまま襲われる可能性があるということ。

 最後の一つは・・・」

ここで、一度間を置く。

(護る覚悟を決めたはずだ。俺は、護りたいと)

 

「・・・村を護るために戦うことです!」

 

豪臣の言葉に、場がざわつく。

「静まれ静まれ。まだ、豪臣の話は終わっとらん。

 ・・・豪臣」

「はい。戦って賊を倒せば、賊の恐怖が無くなります。

 ・・・これは、確実に村人に死傷者が出て、人殺しも出ます。

 ・・・しかし、俺は、この戦うことを勧めます」

「「「・・・・・・」」」

場に沈黙が訪れる。

倍もの数に挑むことは、自殺行為にも等しい、そう思ったからだ。

その沈黙の中、季衣と流琉は頷き合い言う。

「「僕(私)も賛成(です)」」

「お前たち・・・」

賛同する二人に、大人たちが声を掛けようとするが

「みんな!僕たちは、いつまで賊の襲撃に我慢しないといけないの!?」

「む・・・」

季衣の言葉に一瞬黙ってしまう。

「・・・気持は分かる。しかし、相手の数がのぉ」

「村長。そのことについて、俺に考えがあります」

肩を落とす村長に、豪臣が声を掛ける。

「どのような?」

「はい。まず、64人を二つ、季衣の班と流琉の班を作ります。

 そして、村に続く道の左右の茂みに潜んでもらいます」

「村はどうなるんじゃ?この村には門なんて物は無いんじゃぞ?」

「村の入口は一つだけ。ですので、俺が一人で護ります。

 俺が賊を止めたところに左右から横撃して下さい」

「兄様!いくら兄様でも危険です!ただ戦うことと護ることは違うんですよ!」

豪臣の言葉に、大人たちは驚いて黙り、流琉はそう訴えてきた。

「大丈夫だよ、流琉。俺はやられたりなんかしない。絶対に護ってみせるさ」

「で、でも!兄様だけが「本当に、良いんじゃな?」・・・村長!」

それでも、喰い下がろうとする流琉に、村長が割り込む。

「はい。俺はみんなに世話になりましたし、そろそろこの辺りで、恩を返しておかないといけません」

「・・・・・・わかった。その案を採用しよう。みな分かったな!」

「「「はい」」」

その後、3人の大人たちは準備の為に出て行き、豪臣は明日に備えて季衣、流琉と一緒に家に戻った。

 

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その夜。豪臣は、家に帰った切り、口を聞いてくれない流琉に正座して謝っていた。

そして、ようやく口を開いて出た言葉は

「納得できません」

だった。

「でもな、流琉?これが一番勝率が高い方法なんだよ?」

「・・・季衣も朔夜様も、なんとか言って下さい!」

季衣と、その膝の上で丸くなっている朔夜に言う。

「大丈夫だよ、流琉。兄ちゃん強いし」

「ええ、良いじゃありませんか。流琉も知っての通り、賊程度の100や200では、豪臣を殺すどころか傷つけることすら出来ませんよ。

 それでも、みんなで戦うことを提案した豪臣の真意くらい、季衣はともかくあなたなら気づいているのでしょう?」

そう、豪臣が本気を出せば、村人は誰一人死なずに済む。しかし、守られてばかりの者は、次に同じ状況になった時に、また、助けてもらおうとしてしまう。今の時代、それでは、いつかみな死んでしまう。今回の作戦は、そうならないためのものなのだ。

(そんなこと分かってます。でも・・・でも!)

それでも喰い下がろうとする流琉。しかし

「もちろん。あなたが豪臣の心の方を心配していることは分かっていますよ」

「え!?」

朔夜の言葉で流琉が止まる。

「出会った時のことを心配しているのでしょう。違いますか?」

「・・・はい」

流琉はそう答えて眼を伏せる。季衣は分からず首を傾げる。

「確かに、豪臣はヘタレです。二月も一緒に寝ている女に、手を出すことも出来ないヘタレ野郎です。しかし、それでも、自分の言った言葉にだけは責任を持つ男でもあります」

朔夜は豪臣を見る。

「と、いうことです。豪臣、あなたを心配して止まない妹に、何か言ってあげて下さい」

「・・・・・・」

そう言われた豪臣は、流琉の前まで行き

「ひゃっ!に、兄様///!?」

流琉を抱きしめた。

「大丈夫だから」

「兄様?」

抱きしめたまま、耳元で囁く豪臣。

「ありがとう、流琉。でも、俺は大丈夫だよ。

 確かに、人を殺すことは恐い。

 でも、あの時、流琉が見せてくれた微笑みが、俺に覚悟をくれた。

 その気持ち(覚悟)は、今も俺の中にちゃんと在る」

流琉を離し、その瞳を見詰める。

「だから、信じてくれ。流琉」

「・・・ずるいです、兄様。そんな風に言われたら、駄目、って言えません」

流琉は、そう言って豪臣の胸に寄りかかった。

「絶対に無事でいて下さい」

「ああ、こんな可愛い妹残して死ねるか」

そう言って笑い合う二人。

そこに

「うぅ〜!流琉だけずるい!兄ちゃん、僕も〜!」

季衣が飛びかかって来る。

「ハハハ!そうだな、可愛い妹たちだな」

そう言って二人を抱きしめる豪臣だった。

 

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時間が過ぎ、もう少しで寝る時間、というところで朔夜が居ないことに気づいた。

そして、豪臣が辺りを探そうとした時だった。

「!!」

急に部屋の灯が消えた。

辺りの気を探ると、季衣と流琉の気が近づいてきた。

「どうしたんだ、二人とも。急に灯りを消したらビックリするだろう?」

「「・・・・・・」」

しかし、二人は喋らない。

「・・・?どうかしたのか?」

その問いに、流琉が答える。

「に、兄様///!今日は、私と季衣と寝て下さい///!」

「・・・?いや、いつも一緒だろ?」

「違うんです!その・・・寝ると言うのは・・・///」

恥ずかしそうに受け答えする流琉。

その様子を見て

(まさか、そういうことか///?・・・いや、でも///)

などと赤面して想像してしまう豪臣。

「あのね、朔夜様が『そろそろ“あたっく”したら?』って、言ってた///」

と、季衣は、少しだけ恥ずかしそうに告げてくる。

(あんの、莫迦虎!それで部屋に居なかったのか!いや、その前に、二人になんてこと言うんだ!)

豪臣がそんな悪態を吐いていると、二人が寄ってきて

「兄様、嫌なんですか///?」

「兄ちゃん、嫌なの///?」

そう、上目遣いで聞いてくる。

暗さに眼が成れてきていた豪臣は

(グッ!可愛い過ぎだろ///!)

しかし、それでも堪える。

そんな豪臣に、さらに寄る二人。

「「兄ちゃん(兄様)。駄目(ですか)///?」」

(グフッ!・・・・・・もう、・・・どうにでもなれ///!)

 

 

豪臣は、二人を抱き上げて布団へと向かって行った・・・///

 

 

 

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深夜になり、二人がすっかり寝てしまってから、豪臣は村の外に来て空を見ていた。

「明日ですか?」

そんな豪臣の肩に飛び乗りながら、朔夜が言う。

「・・・ああ」

「本当に酷い男ですね。二人の顔を見てきましたよ。本当に幸せそうでした」

「それが分かっていながら、けしかけたお前は、もっと酷い女だ」

「・・・そうですね。でも、女ですもの。初めては愛する者と・・・ね」

「そんなもんか」

「はい。そんなもんです」

そう言って、二人は星を見上げた。

 

 

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あとがき

 

どうも、虎子です。

今回で、5日連続投稿完了です!

不測の事態になりながらも、かなり予定通りです。

 

さて、作品の話ですが・・・

出だしのことです。予告っぽい事を書いてみたかったんです。

でも、今回の最後は、どうしてもこうしたかったので始めに持っていきました。

読み難くてすみません。

次に、3話のことです。

アンケートの答え少なっ!! と思ってしまいました。

まあ、たった1日で、そんなに書き込まれる訳はなかったのですが・・・

閲覧者が三桁超えてるから、もう少し書き込まれると思っていた愚かなる作者です。

反省します。

 

文章中に誤字脱字等ありましたら、コメントにガンガン書いてやって下さい。

 

最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。本当にありがとうございました。

 

ではでは、虎子でした。

 

 

説明
ちょっとだけ進みました。
後、3話のアンケートもよろしくお願いします。

拙い文章ですが、読んでやって下さい。
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コメント
季衣がいるゆうことは√は魏かな?(杉崎 鍵)
なんというか……戦闘が控えてるのにそんな男の体力を使うようなことをもt;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン(もちら真央)
初めては愛する人と、その気持ちを軽んじる最近の女の気が知れん(ヒトヤ)
朔夜が煽ったとはいえ早かったですね〜wこれは魏√確定かな?アンケートは3話にも書きましたが呉陣営で!決めかねているのであれば比率でいうと呉陣営となりますが虎子様が納得して書かれる事が重要なので『我が道を行け』という案も有りでは?と思います。(自由人)
アンケは3話に書いてあります。季衣と流琉がメインヒロインなのかな。(ブックマン)
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オリキャラ 真・恋姫?無双 流琉 季衣 

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