なんてことない日常 自警団第三部隊編 |
それは、微笑ましい恋人達の、平和で暖かな、ほんのひとときの安らぎの時。
なんてことない日常 自警団第三部隊編
本日は朝からあいにくの曇り空。
もしかしたら晴れるかも。もしかしたら降り出すかも。
そんな、どっちつかずな曖昧な天気。
自警団寮の一室でも、普段は第三部隊の若き隊長として仲間たちを引っ張る彼も、イマイチ出かけるような気分になれず、自室でゴロゴロと休日を過していた。
いつもは五月蝿い使い魔のヘキサも、いつの間にやら出掛けてしまっていた。
「退屈だなぁ……」
かといって、特にやりたい事ややるべき事がある訳でもなく、逆にこんな日に限って部屋の中は片付いており――数日前にトリーシャがやってくれた――、下手にいじると逆に散らかってしまいそうなので出来ない。むしろ、するわけにはいかない。
「まぁ、たまにはこんな日もいいんだろうけど……」
そう思いながら窓の外を見ると、雲間から日光が差し込み、徐々にそれが広がっていた。
「どうやら晴れてくるみたいだなぁ。なら、折角だし出掛けてみるか」
決めたとなると彼の行動は早い。
サッと着替えると、先ほどまでゴロゴロしていた部屋を飛び出した。
昼食をさくら亭で食べた後、特に目的も無くぷらぷらと散歩をしていると、夜鳴鳥雑貨店の前をさしかかった所でトリーシャに出会った。
偶然の出会いに驚きながらも、二人はこの偶然に感謝し、楽しい時間を二人っきりで楽しんだ。
トリーシャが夕食をご馳走してくれると言うので、夕食の買い出しをして彼女の家に行く。と、居間ではリカルドがゴロゴロとしていた。そして、それを見て恥ずかしそうに文句を言うトリーシャ。
最初の頃は驚いたものの、フォスター親娘と親しく付き合い始めた昨今では、既に見慣れてしまった光景だ。むしろ、たった二人の親娘の微笑ましいやり取りに、思わず笑みを浮かべてしまう。
それを笑われていると勘違いしたトリーシャは、真っ赤になりながら「お父さんのせいだよっ!!」と言い、夕飯の準備をするべくキッチンと消えて行った。
「いやはや、みっともないところを見せてしまったね」
「いえ、仲が良さそうで安心しました」
「そう言ってくれるとありがたい。これも全て君のお蔭だと、感謝しているよ」
「気にしないで下さい。オレも、トリーシャの悲しい顔を見たくなかっただけですから」
「……ところで、今日は一体どうしたのかね?」
「えっと……街を散歩していたら偶然トリーシャに遭って、何故か荷物持ちをさせられて、気が付いたらここでこうしていました、はは」
乾いた笑いを浮べながら、妙な威圧感に、背中を冷たい汗が伝うのを感じた。
居心地の悪い空気が流れる中、ダイニングからトリーシャの、二人を呼ぶ声が聞こえてきた。
食卓では、幸せいっぱいの笑顔が眩しいトリーシャが隣に座って、アレコレと甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
その度に――正確には、二人の手や肩が触れ、恥ずかしそうに俯く度に――正面に座ったリカルドは眉を震わせ、苦虫を噛み潰しまくったような表情をしていたのだが、幸いにも、もはや視界にはお互いしか映っていなかった若い二人は、目の前の修羅の様子に気がつく事は無かった。
後日、自警団の訓練にて。
「なんで俺だけ、通常の3倍のメニューなんですかぁっ!?」
「ん? なんだ、足りなかったか? なら、5倍……いや、10倍でどうだ?」
「いやいやいや、死んじゃいますから、それっ!!」
「……むしろ、そうなってしまえば(ボソッ)」
「はっ? い、今、何か……」
「なんでもない。さぁ、早く訓練に入りたまえ」
「うぅ…、はい、わかりました」
「うむ。それから、今から1時間以内に終わらなかったら、また最初からだから、頑張りたまえ」
「ちょ、ま、自重!!」
合掌www
説明 | ||
前回に続けて、『悠久幻想曲 2nd Album』より、トリーシャ・フォスター。 無印の頃に、「ヒロインエンドを迎えなければ、もしかして」と思い、(ネタバレと心の傷により自主規制)。 主人公の名前は、決まってはいるのですが、あえて伏せてます。 ちなみに『2』では他に、アルベルトの妹・クレアもお気に入りで、いずれは3角関係モノでも書いてみたいです。 |
||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
1049 | 1022 | 2 |
タグ | ||
悠久幻想曲2ndAlbum トリーシャ・フォスター 自警団第三部隊 | ||
鳴海 匡さんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |