恋姫無双異聞録〜IFルート〜 第7話 |
「いい加減に目ぇ覚ませやぁ!」
二人の男により荒野の地形は変わっていた 剣をあわせる音が響くならまだいいほう 地面は陥没し、片方の男の腕や足は吹き飛びそこかしこに落ちている しかし、二人の男に四肢の欠損は見当たらない それは何故か?
「チッ……トカゲみたいに再生するからってポンポン吹き飛ばしやがって」
片方の男―――刑天―――にとっては腕を斬りおとされようが、足を吹き飛ばされようが意味を成さない 刑天の能力の「肉体再生」は以前のものとは違い、「体内の氣を乱されない限り、心臓を失わない限り不死」に変化していた 前者は以前と変わらないが、後者が新たに付加された それは太公望の仕業かそれとも正気に戻ったからか
「消えろ……消えろ!」
「どっちでもいい……オラァ!」
刑天にとっては自分の能力などはどうでもよかった 今優先させるのは狂骨を正気に戻す事 だが―――
「シャァ!」
「于吉か! ったくアイツは本当にいらんことを!」
全て狂骨に殺されたはずの白装束が再び現れた それはまるで自分たちを囲むように
「GAAAAAAAAAAA!」
白装束の姿を見て、先ほどの光景が再び脳裏に映ったのか狂骨の動きが激しさを増した 先ほどから狂骨は刑天に氣を流し込み、戦闘不能にしようとしている 白装束も氣を自分に流し込もうとしている その行動から導き出される答えは一つ
「目的は狂骨を暴走させて俺をしばらく戦闘不能にする気か? 陰険同性愛メガネが……」
迫ってくる狂骨や白装束を避けたり切り払ったりして対応している刑天 狂骨の攻撃を避けられないとわかると、左手か足で防御し氣を流し込まれる瞬間に自ら斬りおとす そして、斬りおとした部分はすぐに再生させる 刑天にしか出来ない対処法
「せめて……雛里が来てくれればな」
もし狂骨を速攻で止められるとすれば雛里のみ 自分では気絶させて正気にもどすぐらいしかできない
「だがやるしかない!」
未だに暴走を続けている狂骨を見据え、周りにいる白装束を片っ端から叩き斬りながら刑天は気合を入れなおした
本陣では白装束を全て退け、雛里の介抱が続いていた
「聖……雛里の様子はどうなんだ?」
一刀が聖に問いかける 聖は額に浮かんだ汗を拭いながら、笑顔を向ける
「今はまだ薬が効き始めている状態なので、熱に浮かされていますが大丈夫です ただ―――」
「何か拙いんですか!?」
親友でもある雛里が心配な朱里は声を上げる だが、聖は朱里を安心させるように首を振る
「出来れば雛里ちゃんには狂骨殿を止めてもらいたいの 今は旦那様が一人で足止めしているけど、正直に言って旦那様と狂骨殿の相性は悪すぎる」
氣の扱いに慣れている狂骨と、氣が乱されれば動く事すらままならないほどに依存している刑天の相性は悪すぎるのだ 現に刑天は氣を流し込まれる瞬間には腕や足を自ら斬りおとしている
「だが「大変です! 刑天様が白装束の連中に囲まれています!」何!?」
愛紗がそれでも苦しんでいる雛里を連れ出すのは躊躇していると部下の一人が走りこんできた そして、全員が外に出ると遠くのほうで確かに白装束が何かを囲んでいるように見える
「とにかく、愛紗たちは刑天の援護に向かって!」
一刀の叫びにすぐに頷き、走り出した愛紗たち 一刀は残っている紫苑や聖たちに雛里の介抱を任せた そして、自分が何をすべきかを必死に考え始めた
「(このままじゃダメだ……天の御使いなら……いや、そんな事関係無しに一人の俺として何かしないと)」
「ハァ……ハァ……クソが」
膝をついた刑天の足元には血溜まりが出来ていた それは全て刑天の血 刑天が膝をつく行為は本来ならありえない しかし、白装束の氣を流し込んでいた一撃は軽い だが、ちりも積もれば〜ということわざがある その言葉の通り、段々蓄積されていた一撃は重要なところでその効果を発揮した
「消えろ!」
狂骨がその道に心得がないものでも分かるほどの氣を込めた一撃を刑天に向かい振り下ろそうとした 刑天はすぐに避けようと動いたが、蓄積されていた一撃はこの瞬間に刑天の動きを邪魔した それにより、刑天は斬られると共に膨大な氣を体の中に流し込まれた
「グッ!?」
以前も書いたと思うが、刑天は行動などの全てを氣に依存している 氣が正常に体の中を流れなければ動く事はできないし、肉体再生などはもってのほかである 故に、刑天は氣の扱いに慣れている神仙を相手にする場合は、いろいろと下準備をしてから臨むのだが今回は事態が多すぎた 狂骨の暴走、于吉の暗躍、白装束が氣を使った事など
「今の俺は……多分雛里にも負けるか?」
既に狂骨により、自分の氣は乱され動く事すらままならない 傷も既に再生できない だが―――
「だが……お前を正気に戻すと決めたし……なにより―――」
囲んでいる白装束の後ろから愛紗を始めとした仲間の声が聞こえる 白装束は任せられる なら自分は―――自分には
「男としての……そしてお前らの親父としての面子があるんだよ!」
最初はショックを受けたが、何気に「父親」として接するのが楽しくなっていた だからこそ狂骨の暴走を止めたかった
「な!?」
刑天の気迫に動きを止めた狂骨 その一瞬をつき、既に動かないはずの体を動かし狂骨の懐に入り込んだ刑天は、餓虎を狂骨のわき腹に当てた 少し、皮膚を切りながら―――
「……このくらいの怪我は承知しろ? 喰え」
その言葉と共に餓虎が光った すると狂骨は今までの暴走が嘘のように落ち着き、先ほどとは違い自分のわき腹に餓虎を当てながら力なく笑っている刑天に焦点を合わせた
「……俺は……」
餓虎はその名の通り『餓えた虎』を意味する宝具 能力は『喰う』こと 刑天の意思一つで人だろうが、炎だろうが喰う 刑天はその能力を使い『狂骨の狂気』を餓虎に食わせた 本来ならありえない事 だが、神仙がもつ宝具は時に超常的な効果をもたらす
「やっと正気に戻ったか……次暴走したら…マジでお前を喰うぞ?……後は任せる」
刑天はその言葉と共にその場に崩れ落ちた 狂骨は自分が行った事を覚えていた だから悔やんだ
「だが、それはここを切り抜けてからだ!」
すでに愛紗たちにより数を減らされている白装束だが、まだ自分たちの後ろには結構な数が居る 狂骨は倒れている刑天を背に白装束を見据えた
「来い……刑天には火の粉一つかけん!」
白装束を退け、刑天を背負い餓虎を愛紗に持たせた狂骨は悔やんでいた 自分が未熟なせいでここまで被害を及ぼした事を だが―――
「狂骨殿……その……よく分からないが、誰だって愛している人がああなったら我を忘れてしまう あまり気にしないほうがいい」
愛紗や星が言葉をかける 狂骨は納得がいっていない様だった だが、今は刑天や雛里のことと決め、思考を切り替えた そして、本陣に戻ると一刀から蜀に撤退する事を知らされた
「こちらも被害が大きかった それに、白装束の連中が出てきたからそれの対応もしないといけないから」
一刀はすでに紫苑や聖たちに雛里を連れて先に戻らせてある 残るは本隊のみ
「狂骨も詳しい話は成都に戻ってから聞くからとにかく周囲に目を配ってくれ」
「…了解」
説明 | ||
インフルじゃないのに、39度の熱が出るってどんだけですか? テストも近いのに…でも、小説は書きますよ! | ||
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コメント | ||
ブックマン様:多分、これからも苦労は続く(オイ(鴉丸) jackry様:やだな〜そんなはずは……ニ・ゲ・ロ!(鴉丸) お父さん、お疲れ様ですw(ブックマン) |
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