剣帝?夢想 第十一話 |
平原に戻ってきてからしばらくして、既に死に体となっている漢王朝の使者から桃香に先の戦いでの功績によって徐州の州牧に任命するという書簡を受け取った。
「桃香もとうとう太守か。おめでとう」
「私が太守様…。それで街はどうすればいいんだろう?」
「恐らく後任の方が来られるかと」
「せっかく頑張って内政したのにね」
雛里の残念そうな言葉に星や愛紗たちも似たようなことを思っているようだった。だが、愛紗はすぐに思考を切り替えたのかレーヴェの方を見て口を開く。
「そうは言ってもこれが大きな前進となる。ご主人様、すぐに徐州へ移りましょう」
「そうだな、この街で学んだことを次に生かしていけばいい。それにこの街はもう大丈夫だろう」
「うん、じゃあみんな、早速お引越しの準備しましょう」
「新しい街はどんなところなのかなぁ」
鈴々は新しくいく街がどんなところなのか楽しみでしかたないらしい。その顔は期待で溢れていた。
「徐州は高祖劉邦の故郷でもあります。桃香様にとっては、ある意味御里帰りかもしれませんね」
「私って中山靖王劉勝の末裔だもんね。嘘かほんとかわからないけど」
「大切なことはどういった行動をとり、その行動に対して責任が持てるかどうかだ。気にすることはない。さて、名残惜しいだろうが、早めに荷物を纏めて徐州へ向かおう。向こうでもやるべきことは山積みだろう」
レーヴェの言葉に皆は一様に頷き、それぞれがやるべき準備を開始した。
徐州に移ってから一月、ようやく政策を本格的に練るための下調べがあらかた終わっていた。そして赴任する前に袁術のところへ隠密として迎えていた影があまりうれしくない情報を持ちかえってきていた。
「袁術は近いうちに我々の元へと攻めてくる動きが見られます。それとどこの誰というところまでは特定できませんでしたが、どこかの武将に連絡を送っていたようです」
「やはりお前を送っておいて正解だったか。どうせあの袁術のことだからこちらが赴任すると同時に攻めて来るとは思っていたが…予想通りだったな」
「レーヴェ様、どうしますか?こちらから打って出ますか?」
華苑が険しい顔つきでレーヴェへと判断を求めてくる。だが、レーヴェは首を横に振った。
「いや、向こうから来てくれた方がこちらとしてはありがたい。オレたちは赴任してきたばかりで兵も兵糧もそう多くは用意できない。ならば向こうにこっちへ来る分の食料は勝手に消費してもらった方がいいだろう。だが、いつでも出られるように準備をしておいてくれ。やつらのことだ、ろくなことはしないだろう。それで、朱里、この国についての報告を頼む」
レーヴェの言葉に朱里は真剣な顔で大きく頷くと、報告を開始した。
「えっとですね、この国の生産力は平原よりもかなり高く、鉄や銅などを産出することが可能です。それに加えて人口も多く、交通の便もいいことから商業も盛んで力を蓄えるにはいい土地だと思われます」
「そうか、だが、その分治世が難しいというわけか。よし、朱里、桃香は内政を、雛里、愛紗、鈴々、華苑は軍備の方を。オレと星はどちらもだ。手が足りないと思われるところを手助けする。当面は内政だな。だが、袁術との戦いがあるということ前提で進めてくれ。時間はそうあまりない。影は袁術の動きを探ってくれ。そろそろアレの訓練も終わっているだろう?」
「はい、もう実用可能なまでになっています」
皆が顔を引き締めて一様に頷いた。そのとき、レーヴェは外から慌てて近づいてくる気配を感じ、部屋から出る扉へと視線を向けた。そしてすぐに一人の兵士が駆けこんできた。
「も、申し上げます!」
「何だ!」
兵士の慌てように愛紗が何かまずいことでもあったのか思い、表情を引き締めて口を開いた。兵士は一度息をついてから背筋を再度伸ばして報告を始めた。
「ただいま公孫賛様が多数の兵を引き連れて城門の前まで来られ、劉備様、レオンハルト様に保護を求めていらっしゃいます!」
「え…保護!?」
桃香が素っ頓狂な声を上げ、他の皆も顔色を変えた。保護というからには公孫賛は自身の領地を失ったのだろう。
「すぐに通してくれ。手荒な扱いはせず、丁重にもてなせ」
「はっ!」
レーヴェの言葉に兵士は即座に行動を開始する。それを桃香は心配そうな顔で見送った。
「白蓮ちゃん、どうしちゃったんだろ?」
「答えは一つしかないだろう。密偵の報告にあった白蓮と袁紹の戦いに白蓮が敗れた。そういうことだろう」
「でしょうな」
レーヴェの言葉に星が厳しい顔で同意する。表面上は冷静を装っているが、レーヴェから見れば動揺して心が揺れているのが分かった。そして、兵士に先導された白蓮がレーヴェたちの前へとやってきた。白と金で飾られた鎧のところどころに、黒く乾いた返り血と煤を認め、桃香が白蓮へと駆け寄った。かなり疲労がたまっているようで、その顔は青白く、そして少しやつれたように感じる。
「すまん、桃香、レーヴェ。いきなり転がりこんできて」
「そんなこと良いってば!それより何があったのか教えて?」
「桃香、落ち着け。白蓮、まずは無事でよかった。それで、やはり袁紹に敗れたのか」
白蓮の様子に興奮している桃香を宥め、レーヴェは白蓮へと問いかけた。
「ああ、袁紹の奴が奇襲を掛けてきて、遼東の城を全て落とされたんだ。反董卓連合の後に本国に戻って内政に取り掛かっていたんだ。だけど、宣戦布告の使者が来ると同時に、国境の城が次々と落とされてしまって…気付いたころには領土の大半が制圧されていて反撃しようにも肝心の兵力が足りずに…」
「落ち延びてきたというわけですな」
「恥ずかしながら、そういうことだよ」
「だが、命あっての、という言葉もある。オレたちは白蓮のことを歓迎しよう。気が済むまでいてくれればいい」
「そうそう、今の私たちがあるのも白蓮ちゃんのおかげなんだから。今度は私たちが白蓮ちゃんを助ける番だよ」
桃香とレーヴェの言葉に白蓮は僅かに目を潤ませる。だが、すぐに頭を振って真剣な表情に戻る。
「しかし、北方に袁紹さんの国ができた以上、これからは諸侯同士の争いが激化するでしょうね」
「そうですね、今まで袁紹さんの北方を押さえていたのが公孫賛さんです。しかし、今回の戦でその公孫賛さんの領土は袁紹さんのものになりました。これは袁紹さんの背後を脅かすものがなくなったということです」
「そうだな。袁紹の周りを考えれば最もやりやすい白蓮を攻めるのも当然のことだな」
朱里と雛里の言葉にレーヴェは袁紹の周りの地図を頭の中に描きながら頷いた。
「甘かった。麗羽がそんなことするはず無いって思ってたんだが」
「確かにそうですな。すでに乱世の兆しは見えていたのですから、太守としては不用心としかいいようがないでしょうな」
「星ちゃん!」
星の追い打ちをかけるような言葉に桃香が厳しい口調で星の名を呼ぶが、そんなことを言っておきながらも星は無事な姿の白蓮に安心したように、レーヴェには見えていた。
「いや、星の言うことは尤もだ。私が甘かったんだ」
「だが、その甘さは悪くはない。この乱世では良くないものだとは思うが、オレはそんな白蓮を気に入っている。他の皆もそうだろう」
レーヴェの軽く笑みを浮かべて言った言葉に皆が頷いた。それに白蓮は驚いたようになり、そして顔を赤らめた。
「今はとにかく伯珪殿の今後のことを考えましょう。伯珪殿は今後奪われた領地を取り返すために行動するのか?」
「いや、もう私では太刀打ちできない。レーヴェたちさえよければ私をお前たちの下に置いてほしい」
「それって、鈴々たちの仲間になるってことか〜?」
「いや、私はレーヴェたちに臣下の礼を…」
「そんなのいいよ!私たちは白蓮ちゃんを仲間として迎えたいの」
「それで良いのか?」
鈴々と桃香の言葉に困惑した白蓮がレーヴェに視線を向けてくる。
「桃香がそういうのならいいんだろう。そういうところはもう少しきっちりとすべきだとは思うが、そういうところがあってもいいだろう。まぁ、変だとは思うが」
「我らはもっと主らしくしていただきたいのだが、主様はともかく、桃香様はそういうのがお嫌いなようでな。もっとも、主様も戦場で戦闘に立って戦うのを自重していただきたくはあるのですが」
「それはできない相談だな。オレがオレであるためにも」
「でも、鈴々は今のが好きなのだ!」
「だよねだよね。それじゃ問題なし!」
「だそうだ」
「ふ、ふふふ、はははははっ!良いな、こういうの。久しぶりに笑えた気がするよ。なら、私もその仲間にいれてもらってもいいか?」
「歓迎しよう」
「ありがとう…これから、よろ…」
そのとき、白蓮の体が崩れ落ちる。レーヴェは一瞬で白蓮との距離を詰め、彼女の体を受け止めるとゆっくりと地面に横たえた。そして首筋にそっと手を当て、脈を確かめた。
「…気を失っただけのようだ。ここまで逃げ切っていたのだ、疲れるのも当然だ。朱里、すぐに使える部屋に案内してくれ。白蓮を運ぼう」
そう言ってレーヴェは白蓮の体を抱き上げた。そして朱里に案内されて空き部屋に連れていった。
そしてしばらくして白蓮が目を覚ました後、彼女にどの方面を担当してもらうかを話そうとしていた。そのとき、兵士が慌てて駆けこんできた。
「申し上げます!」
「どうした!」
「袁術の軍勢が国境を突破し、我が国に侵攻してきました!」
「予想通りか。雛里、準備の方は?」
「はい、影さんの情報のおかげですぐに出発できるようになっています」
「白蓮、お前の隊をこちらに組み込ませてもらってもいいな?」
「ああ、もちろんだ。すぐに私から通達しておく」
レーヴェは白蓮へ確認を取り、白蓮が了承すると頷き、皆を見渡した。
「では、各自すぐに準備を。それが済み次第出陣する」
「はい!」
レーヴェの言葉に愛紗たちは力強く返事を返した。
しばらくしてレーヴェたちは袁術軍へと向かい行軍していた。
「斥候の情報と影さんの情報を照らし合わせると、袁術さんの兵力はかなりの規模だそうです。そのなかに影さんの言っていたどこかの武将らしき部隊もあるそうなんですが、客将である孫策さんの部隊ではないようです。しかし、その部隊だけ段違いに練度が高いそうです」
「どこの部隊か考えても仕方がない。今は袁術をどうするかだ」
「そうなのだ!今は袁術をぶっ飛ばす方法を考えるのだ!」
「うむ、我が軍より多い袁術の軍にどうやって当たるか…やはり策が必要か」
「そうだな。雛里、会敵予想地点はどこになる?」
愛紗の問いに雛里はその小さな手を顎に当てて考え、そして顔を上げる。
「ここよる東方、東海地方曲陽辺りになるかと」
「遠いな。奇襲を仕掛けるにしても遠すぎる。…その謎の部隊というのが怪しいな。そこ辺りにいた有力な武将は?」
「…特に有名な人はいなかったと思うんですけど」
「…無駄に想像だけ広げても仕方がない。斥候の数を増やし、更に詳しい情報を集める事にする」
レーヴェはそう決断するとさらに軍をすすめた。そしてそろそろ袁術との会敵地点近くになったところで、一羽の鳩が空からレーヴェの元へ舞い降りてきた。その鳩の胸元には小さな筒が括りつけてあった。レーヴェはその中から紙を取り出すとそこには袁術の軍は食事の準備をしているということが書いてあった。
「………」
レーヴェは無言でその紙を雛里に渡した。雛里はそのレーヴェの様子に首を傾げながらもその紙を見て…嘆息した。
「私たちが接近しているというのにのんびりと食事中ですか」
「なんと非常識な…。一体何を考えているのか」
「そんなの簡単なのだ。袁術は袁紹の従姉妹なのだ」
その瞬間、皆の顔が無表情になった。そして次の瞬間には皆が納得した顔になって頷いた。
「ともかく、これは好機だ。これが奇襲といえるのかは知らないがこのまま敵陣を急襲する」
「主の意見に同意です。このまま痛恨の一撃を与えておけば有利に進めることができるかと」
「では先陣は…」
「はいはいはーい!鈴々が先陣なのだ!」
「わかったわかった。鈴々が先陣だ。華苑も付いていってくれ。それで右翼は愛紗、左翼は星。中軍に白蓮と雛里、それにオレ。本隊は後曲に配置し桃香と朱里を配置する」
「御意です」
レーヴェの指示に皆が頷いた。それをレーヴェは確認すると進軍命令を出し、行動を開始した。
その頃、袁術軍
「七乃、蜂蜜水を持ってくるのじゃ」
「だ〜めで〜す。あんまり飲みすぎると虫歯になっちゃいますからね。それにまだ大丈夫だとはおもいますけど〜、レオンハルトさんの軍が来るんですから我慢しましょ〜」
「わかったのじゃ。しかし呂布もレオンハルトの軍がもう来るとかボケボケなのじゃ」
「ほんとですよね〜。そんなに早く来るはずないですもんね〜」
実際はもうすでにレーヴェの軍は静かに突撃を開始しているのだが、そんなことなど露知らず、袁術と張勳は途中で合流し、レーヴェたちが来ると警告した呂布を馬鹿にした。
「七乃〜、妾は眠たくなってきたのじゃ」
「もう少し休憩してからお昼寝しましょうね〜」
「た、た、大変でーす!れ、レオンハルトの軍が我が軍の前方に忽然と姿を現し、こちらに向かい突撃を開始しています!」
いきなり駆けこんできた兵士は袁術たちの前に来るなり焦った顔と口調で報告をしてくる。それを聞いた袁術は顔を真っ青にして張勳を見た。
「え、えっと、とにかく迎撃しないとまずいことになりますね〜。みんな迎撃するよ〜!さっさと準備しなさーい!」
「はっ!」
張勳の声に兵士たちは大きく応えながら
(やっぱり駄目だ、こいつら。早く何とかするべきだった)
と後悔していたという。
同じく呂布軍
「…来た。ねね、準備は?」
「臨戦態勢を整えているのは我が軍のみで袁術軍は未だ態勢整わず。どこまでも足を引っ張るやつらなのです」
「元からアテにしてない。どうせ壁にしかならない」
「そうですな。そうなってもらいましょう!」
呂布は陳宮の言葉に頷き、武器を担いだ。
「皆の者!これより方形陣を敷いて敵の攻撃を受け止めたあと、後退して袁術軍に敵を押し付けるのすぞ!」
「応!!」
「…抜刀。迎撃開始」
呂布の声に兵士たちは皆大きく声を上げ、行動を開始した。
「愛紗!敵の迎撃部隊だ!」
「こちらでも確認した!しかしどこの部隊だ?孫策ではないのだろう?」
「ああ、旗印は…なに!?深紅の呂旗だと!?」
「呂布なのだ!」
「恋か」
愛紗、星、鈴々、華苑は敵の迎撃部隊に掲げられた旗を見て驚愕する。影が掴めなかった謎の部隊の正体。それは天下無双と謳われる飛将軍呂布の部隊だった。レーヴェと戦い落ち延びてからこの近辺に潜伏しており、袁術はそれと合流するためにここまで遠回りしたのだろう。愛紗はすぐに伝令を出し、レーヴェたちにその情報を伝えさせる。
「呂布と合流するために曲陽に入ったというわけか…見通しが甘かったか!」
「仕方がないだろう。影ですら時間がたちすぎていたことと袁術の下にいたことで掴めていなかった情報だ。我らでは掴むことはできなかっただろう」
「今は呂布の部隊をぶっ飛ばすのが先なのだ!」
「確かに。だが、僅かとはいえ、主に傷を負わせるほどの武の持ち主だ。それに主も我ら三人でかかっても敵わぬかもしれぬと言っていた。気を引き締めてかからねばな」
「ああ、恋の武は私もよく知っている。気を抜けば地に転がるのは我らぞ」
元々は呂布の仲間であった華苑の言葉に愛紗たちは顔を引き締めて頷いた。そして兵士に号令をかけ、呂布の軍へと突撃を開始した。
「…正体不明の部隊の正体は呂布か」
レーヴェは伝令からの情報を聞いて呟いた。彼女が理に至ったとしても自分と同じ場所に来るかは分からない。だが、あの武から見ればかなり近づいてくるだろう。だが、自分もまだ極限まで鍛えたわけではない。自分は彼を超えるつもりなのだから。だが、今でも愛紗たちにはまだ呂布を倒すということはできないだろう。文字通り命がけでかからない限りは。
「白蓮、オレは呂布のところへ行ってくる。愛紗たちを失うわけにはいかない。オレの部隊はここに置いていく。有効活用してくれ」
「分かった。こっちは雛里と何とかしてみるよ。でも気をつけてな」
レーヴェは白蓮の言葉に頷くと、即座に馬を操り呂布がいると思しき方向へと向かっていった。
「陳宮様!前線がレオンハルト、劉備軍に突破されました!敵はそのまま追撃態勢に入っています!」
「ううー、調子にのりおって−!」
「…ちんきゅ。一度退く」
陳宮は呂布の言葉に顔を曇らせる。
「この状況で退却してしまえば、部隊が離散してしまいますぞ!」
「命の方が大事」
「それは、そうですが…」
「見つけたぞ、呂布!」
そのとき、足音と共に声が響いた。
「っ!?お前たちは」
「我が名は関雲長!」
「趙子龍とは私のことだ」
「鈴々は張飛なのだ!」
「私は…言わずともわかるか」
呂布と愛紗たちはこれが初対面であるが、呂布のことを知っている華苑が来るので意外にあっさりと呂布の下へたどり着いていた。
「華苑…」
「久しぶり、というべきか恋よ」
「なんだ、生きていたのですか」
「ああ、レオンハルト様の温情でな。ところで恋よ、我らに降るつもりはないか?」
「華苑、何を言っている!?」
華苑の言葉に愛紗は驚き、厳しい顔で詰め寄った。だが、華苑は愛紗を制して呂布に声をかける。
「この戦、もはやお前たちの負けだ。このまま戦ってもお互い被害が増すだけだ。そこでどうだ。我らに降れ、見たところお前たちの部隊の動きは私が知っているものと比べ鈍かった。恐らく糧食が不足しているのではないか?私たちの仲間になればレオンハルト様はそれを必ず解消して下さるだろう」
「…お前、本当に華苑?」
「どういう意味だそれは!!」
呂布のいきなりの言葉に華苑は顔を真っ赤にして叫ぶ。それに陳宮が笑って答えた。
「華雄がそんな頭を使うようなことをするはずがないのです。いつもいつも猪突猛進に突き進んでいただけの人間が」
「わ、私だって少しは成長位するさ!」
華苑は思い当たる節が大量にあるのか顔を真っ赤にしながら少しどもり気味の声で返した。
「…レオンハルトは月たちを殺した」
「そうですぞ!そんな相手に降るなど真っ平です!」
「…月たちなら生きている。レオンハルト様がお命を救ってくださった」
華苑の言葉に愛紗たちが頭を抱えた。董卓と賈駆が生きているということは絶対の秘密だったからだ。
「なんですと!?董卓殿も賈駆殿も討ち取られたと聞いておりましたぞ!?」
「それはオレたちが流した嘘の情報だ」
そのとき、男の声が響いた。皆一斉にその声が下方向へと振り向いた。
「ご主人様!?なぜここへ!?」
「呂布が相手だと聞いたからな、オレが相手をするために来たのだが…まさか華苑が説得という方法を取るとは思っていなかった。さて、久しぶりだな、呂布」
「…『剣帝』レオンハルト」
呂布はゆっくりとレーヴェの名前を口にした。それにレーヴェは頷くと再度口を開いた。ちなみのその後ろではレーヴェにも説得していたのが意外だと言われた華苑が肩を落として地に膝をつき、鈴々に肩を叩かれていた。
「月と詠は城で平穏に暮らしている。偽の情報は二人の安全を確保するために必要なことだ。それでどうする?投降するならば兵と命は保証しよう。それに糧食もすぐに提供しよう。だが、抵抗するというのなら…」
レーヴェは剣を呂布に向けた。
「この場でその命、刈り取らせてもらう。今度は逃がしはしない」
そのとき、桃香が息を切らして走ってきた。
「待って待って〜!」
「桃香か、袁術はどうした?」
桃香は立ち止り、息を整えると口を開いた。
「袁術さんの軍はすでに崩壊してちりぢりになっちゃってる。袁術さんたちは逃がしちゃったけど」
「構わない、どうせ奴らに帰る場所はない。今頃孫策が袁術の居城を落としているだろう。さて、こんな状況だが、どうする?お前もオレから逃げられるとは思っていないだろう?」
「むむむ、呂布殿ならお前なんかに負けないのです!!」
陳宮は悔しそうにしながら、レーヴェよりも呂布が強いということを言い張る。彼女にとって呂布というのは特別なのだろう。
「ホントに、ご飯を皆に分けてくれる?」
「約束しよう」
「…分かった、降参する。ちんきゅ、通達」
「うう、無念ですのー」
陳宮はそう言って伝令に指示を出し、そしてすぐに呂布の部隊の兵士はすぐに動きを止めた。
「ではよろしく頼む。レーヴェと呼んでくれたんで構わない」
「…恋。…真名。ねねも」
「…わかったのです。私は姓じゃ陳、名は宮。字は公台。真名はねねね!」
「そうか、その名、確かに預かった。戦は終わった、これより撤収する!…っ!?」
レーヴェは真名を受け取ったあと、戦の終りと戦場からの撤収を宣言した。だが、そのとき、いきなりレーヴェは表情を緊張したものに変え、剣を構えていた。そして油断なく辺りを見回した後、剣を下ろした。
「ご主人様、いきなりどうしたのですか!?」
いきなりのレーヴェの行動に愛紗たちも緊張した様子で武器を構えていた。
「いや、オレの勘違いのようだ」
レーヴェはそう言いながら剣をしまう。愛紗たちも不思議そうな顔をしながら武器を収める。だが、レーヴェは内心冷や汗を止められないでいた。
(あの殺気…何者だ。このオレが一瞬とはいえ気圧された。いや、以前一度だけ感じたことはあるが、彼がここにいるわけが…)
レーヴェは疑問を感じながらもすぐに兵を纏め、その場を後にした。
「…貴方が死んだと聞いた時には落胆しましたが、まさかまた会えるとは思いませんでした」
戦場から離れた場所で一人の男が桃香たちに囲まれ、笑みを浮かべるレーヴェの姿を見ていた。細身ではあるが、鍛えられた肉体をしているのは武を嗜むものならすぐにわかっただろう。そして彼は全く隙がない。
「貴方が良い環境に恵まれたのは喜ばしいことですが…貴方には私の最後の望みを叶えていただきましょう。貴方の幸せを壊すようなことはしませんが」
それだけ男は呟くとその場から霧のように消え去った。
あとがき
今回またオリキャラ?のようなものをだしました。しかし、名前が全く思いつきません!思いついたとしても別のゲームとかでみたような名前ばかり…。
ネーミングセンスのなさが恨めしいです。
説明 | ||
お久しぶりです、へたれ雷電です。 全く関係のない話ですが、最近ファンタシースターポータブル2にはまっております。キャラは空の軌跡に近付けたキャラメイキングしてたりします。 |
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コメント | ||
なっとぅ様>これは言い回しの違いとかなので誤字とかではないです(へたれ雷電) 8pレーヴェと呼んでくれたんで構わない→呼んでくれて構わない(なっとぅ) 狩人様>ありがとうございます(へたれ雷電) 面白いですね〜次も期待してます^^(狩人) ニシ様>白面ではないです。出そうとは思いましたが、あのキャラは色々とめんどくさいので(へたれ雷電) akaituki様>ふふふ、どうでしょう?(へたれ雷電) 蒼様>ビビるというか、威圧感を感じるだろう人物は最低でも一人はいます(へたれ雷電) あり? 白面じゃなかったの?(ニシ) 《蛇の使徒》の第七柱であってほしい(akaituki) 剣帝がビビるほどのやつなんかいたっけ?w(蒼) 自由人様>オリキャラっぽいだけで空の軌跡では一応出てきてます(へたれ雷電) 森番長様>あくまでオリキャラっぽいというだけです(へたれ雷電) 更新お疲れ様です。袁術を破って恋とねねを仲間に引き入れましたか。霞以外の董卓軍が全員傘下に…はたしてこのオリキャラの正体とは!?(自由人) オリキャラでしたか、てっきり執行者の誰かかと思いましたが。あとがきに進まず真剣に考えてしまったwwworz(森番長) |
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