真・恋姫†無双 金属の歯車 第二十話
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「久しぶりだな、兄弟!」

 緊張が続く昼下がりの楽成城城壁から張り上げられた声。その男は片手に小刀を、そしてもう片方には小さな子供が掴まれていた。

そして小刀が劉備軍のほうに向けられる。

「・・・まさか」

「どうした、兄弟!懐かしさで声もでないか!?」

 どうやらあちらは姿を捉えているらしい。

「アシッド・・・アシッド・スネーク!?」

 

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??/Acid・Snake 

ImageCV:小山剛志

 

 第二十話 The Twin Snake 〜二人乃蛇〜

 

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「実に久しぶりだ!!人工子宮ぶりか!?」

「・・・ご主人様?」

 今までついてきてくれた少女達が疑念の眼差しを向ける。

しかし事態はそんなことでよくなったりはしない。

「スネーク!いや、今は北郷一刀だったかな!?さあ問題だ!実に簡単な問題だ!」

 多くの観衆に向かって問題を読み上げた。

「この子供を・・・ここから放り落としたらどうなるかな!?」

「アシッドォ!貴様ぁ!!」

 言うが早いか、手綱を操り全速力で城壁に近づこうとする。少女達の声が聞こえるがかまっている暇はない。

城壁の上では黄忠がアシッドと呼ばれた男に矢を放たんとしている。しかしアシッドは動じずこう続けた。

「ヒントをやろう、兄弟!この子供はこの城主の娘だとさ!」

「貴様ぁ!!」

 馬上で全身全霊の恨み言を叫んだ。

「璃々を離しなさい!」

 黄忠は真剣そのものだがアシッドは明らかにこの状況を楽しんでいた。

「女!あそこにいる天の御遣いの首を取れ」

「なっ!」

「どうした!今すぐ号令しろ!天の御遣いに剣を突き立て!喉を抉り!皮を剥け!選択の余地は・・・」

「ある!」

 突如一刀が城壁下から姿を現す。壁を垂直に登るという常人には到底出来ない行動をやってのけたことになる。

城壁に躍り出た一刀は、子供を掴んでいた手に斬りつける。しかしアシッドの判断のほうが早く、そして正しかった。

「さすがだ!アトモス・スネーク!」

「ちぃ!」

「璃々!」

 そう、城下町に放り投げた。既に間に合わないかもしれないが一刀は再び空中に飛び上がり、子供の服を何とか掴んだ。

「アシッド!」

 懐から愛銃M9を取り出しアシッドに向かって数発発砲する。着弾は確認できないが今は空中に投げ出されている自分と子供の身が第一だ。

無意識のうちに右手に銃、左手には逆手で高周波ブレードと子供を抱え込んでいることになる。体を丸めれば子供は守れるが問題は自分の体だった。

(・・・くそっ!)

 

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「いっつう・・・」

 どうやら着地に成功したようだ。自分の体の無事を持って成功とするのが普通かも知れないが、今確認すべきは一つだ。

「大丈夫?」

 そう思っていると意外にも子供のほうから声が掛かる。

「ああ・・・大丈夫・・・だな、信じられないが」

 茅葺きの屋根に落下したおかげか、打撲はしているだろうが骨折はしていないようだ。まあそれでも奇跡だろう。家主には感謝してもしきれない。

「黄忠殿の娘さんだよね・・・お名前は?」

「うん、璃々だよ。お兄ちゃんでいいのかな?」

「合ってるよ」

 若干慣れたやりとりに心を落ち着かせ状況を整理する。

璃々をここで殺されでもしたら、黄忠率いる軍と劉備軍が激突する可能性が非常に高くなる。何せ兄弟だのなんだの叫びまくっていたのだ。アシッドは劉備軍の味方ではないということを証明しなくてはならない。

「璃々ちゃん、私が必ずお母様の元に送り届ける。だから静かに・・・私についてきてくれ」

 アシッドに襲撃される可能性は高いのはわかった。

この際、文化とか技術とかのプライドは抜きだ。左手には高周波ナイフを逆手に構え、右手には愛銃M9を構える。

(すぐにここから離れるべきか・・・それにできるだけ城壁の近くを移動すべきだな・・・)

 市街戦は随分慣れたものだ。一対一の市街戦が始まった。

 

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 角にさしかかればナイフの反射鏡で安全を確認し、今度は視認、屋根上を確認する。

誤射だけは絶対避けなくてはならない。その重圧の中、角ごとに姿の見えぬ敵に銃口を突きつける。

璃々も怖いかもしれないがその足取りはしっかりしていた。強い母親の子はこんなにも強いものかと感心していた。

どうやら住民は避難しているようで、大した障害もなく城壁下にたどり着く。

そんなときだった。

「璃々!」

声のしたほうから女性が駆けてくる。おそらく彼女が黄忠だろう。

「お母さん!」

 璃々も元気よく駆けていく。後ろが安全であることを確認し、一刀も傍へと駆けていく。

視界には黄忠に抱きつく璃々の姿が映った。その後ろにはこれはまた女性が二人確認できた。

ひとまずは安心・・・そう思ったときだ。

風を切る音。鍛えられた判断力は親子を守るように、そして鍛えられた体を呈して投げ小刀を受け止める。左肩から激痛が走る。

「必死だな!スネーク!守るものがあるとな!」

「ちっ!」

 左手は動かしにくいが利き腕である右手は十分動く。屋根の上に潜んでいたアシッドに向け発砲するがまるで踊っているような回避行動を行った。

「お前は北郷一刀になってから弱くなった!そうだ!お前は何も守れやしない!自分の身さえな!!」

そういってアシッドは姿を消す。付いてこいという意味か。

「ちっ」

 あちらの世界から持ち込んだスニーキングスーツと、厚手の羽織りが役に立ったようだ。刺さってはいるものの出血は少ない。それにスーツには傷を治癒を早める機能もついていたはずだ。手当の必要はない。

ナイフを引き抜き八つ当たりにアシッドが消えた方に投げつける。

「あの毒蛇・・・」

「貴方は・・・」

 黄忠の言葉に構わず立ち上がり、伝説から学んだ跳び方・・・紐で結んだ刀を踏み台にする方法・・・で毒蛇と再び相見えるのだった。

屋根の上でアシッドは狂気の笑みを浮かべている。なるほど、一刀によく似た顔だ。

だが一刀は中性的な雰囲気を漂わしているのに対し、アシッドは長い黒髪と無精ひげ、何よりも筋骨隆々だ。

自分のなれの果ての顔を睨みながら、腰の高周波ブレードを抜き放ち正眼に構える。

「待て、スネーク。ナイフで勝負だ」

「・・・いいだろう」

 高周波ブレードを鞘に戻し、腰と左胸のナイフを抜く。どちらかと言えば一刀もナイフでの戦闘が得意だ。

構え終わると合図も無しにアシッドがこちらに迫ってくる。手にはマチェットナイフ。左手のナイフでそれをいなし、右手の中型のナイフでアシッドの腹部を切りつける。アシッドはそれを気に留めず再び大降りで首を落とすが如く斬りつける。が、これを再び左手でいなした。

(・・・厄介だな)

 自身にきょうだいがいることは知っていた。

自分たちきょうだいは自己満足の塊に生み出され、離ればなれになっていた。自分を保護してくれた人間にアシッドの事を聞いていた。それ故にきょうだいがどんな能力を持っているのかも知っている。

 再び大きく体勢を崩したアシッドの背中を切りつけようとする。丁度左足を踏み込もうとしたその時だった。左肩に違和感を感じた。

それを感じ身をひこうと思った瞬間だった。左肩が大きく引き裂かれ大量の血しぶきが上がる。

「なっ・・・」

 距離を大きく開けるもアシッドは不敵かつ狂気の笑みで、弱った得物を見る肉食動物の目をしていた。

その手からきらきらと糸が見て取れる。

「ワイヤーか・・・」

 後ろに物干し用の棒が立っているのを恨んだ。どうやらこの屋根の上はアシッドの戦場と化しているようだ。棒を起点として、彼の都合のいいようにワイヤーが張り巡らされている。

 三度、アシッドがマチェットナイフを大きく振りかざすように突っ込んでくる。今度こそ仕留めるつもりか。

「ちぃ!」

 しかしその凶刃が彼に届く事がなかった。

突如アシッドの後ろに現れた影が、彼の後頭部を殴打した。

「!?」

「大丈夫か、北郷殿!?」

 大きな棍棒に殴打されたアシッドだがすぐに受け身をとり、叫び声の主に襲いかかる。

「焔耶、気をつけろ!」

 黄忠とは違う年上の女性だ。肩の装甲に大きく酔の字が書かれている。

「無茶されるお方だ」

 後ろから肩に包帯が巻かれる。

随分と手慣れた処置だったが、今はそれどころではない。

「気をつけろ!そいつは只では死なない!」

 そういった矢先にアシッドの脳天に矢が突き刺さる。どうやら黄忠が放ったものらしい。

しかしアシッドは矢が突き刺さったまま不気味に黄忠を睨み、対象を彼女に移す。

「ちぃ!」

 手当の手を振りほどき、突進してくるアシッドの手を掴み、勢いを利用して四人からもっとも遠い位置に投げ飛ばす。

その瞬間左肩に痛みが走るが今は構ってられなかった。

アシッドは受け身をとり、すぐに立ち上がっている。すぐに間を詰め彼の顎に一撃を加える。

「刃物がダメなら・・・脳を揺らすまでだ」

 続いて彼のこめかみに一撃、そして下から顎を再び打ち上げる。

次の瞬間アシッドの目に映ったのは一回転しながらの全力の裏拳を放とうとしている一刀の姿だった。

アシッドは大きく吹き飛ぶ。肩の痛みに思わず膝を付くがアシッドの執拗さは蛇並みだ。

「しぶといな・・・」

 アシッドが不気味に立ち上がった。その手にはハンドガン。

とっさに腹に刺したあった銃を引き抜き照準を彼に会わせる。同時に黄忠と女性二人を狙う射線を遮る。

「守るのか!?さっきまで戦おうと銃を突きつけ合った連中を!!」

「いちいちカンに障る奴だ!俺の敵はこの世界を焦土とする貴様らPMCだ!」

 双方脳天と心臓に向かって一発づつ発砲、そして二人とも同時に前に突っ込んだ。

弾丸は弾かれあいその危険性は皆無となり、二人はハンドガンを捨てる。

「俺に勝てるか!」

 両眼を隠すのは一刀が蛇になる瞬間だ。

「それは俺も使えるんだよ!兄弟!!」

 その瞬間、アシッドの眼も赤く染まる。

「承知!!」

 一刀の眼が紅く染まる。

両蛇がその牙をむき出し、相手の喉を抉るべく咆吼する。

「アシッドォ!!」

「スネェェク!!」

 僅かの差で一刀の拳がアシッドの顔面に直撃した。アシッドは再び吹っ飛ぶ。今度こそ動かなくなるだろう。

しかし一刀の左肩から限界だった。血が噴き出し、意識が遠のいていく。

「すまん・・・みんな」

 仲間の顔を浮かべ意識を失った。

 

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おまけ:

毒蛇「よう、首輪つき・・・付き合わないか?」

一刀「その声優ネタ(※)はわかりにくいな。作者的には大好きなんだが・・・」

毒蛇「なんだ?生まれたての三十歳といえばわかるのか?」

一刀「それは・・・色んな意味でのアウターヘイヴンだ」

愛紗「その作品では私は聖女だったり、お姉さんだったりするんですね」

一刀「愛紗はなんかそのまま出てきた感じだな」

※アーマード・コア4シリーズ

小山剛志さん:オールドキング役

黒河奈美さん:メノ・ルー、フランシスカ・ウォルコット役

 

追記:

先に書いたようにHDD吹っ飛びました。

バックアップとってたこの話は無事でしたが、拠点フェイズ玲二編が消えました。今一から書いていますが時間かかります。彼のファンの皆様申し訳ない。

 

説明
この作品について。
・真・恋姫†無双をベースにとある作品の設定を使用しています。クロスオーバーが苦手な方には本当におすすめできない。
・俺の◯GSを汚すんじゃねぇって方もリアルにお勧めできない。
・ちなみにその設定は知っていれば、にやりとできる程度のものです。
・この作品は随分と厨作品です
・過度な期待どころか、普通の期待もしないでください。

執筆について。
・リアルが忙しいので遅筆状態。FSS物語なんか目じゃない。
・ただし執筆スピードが尋常じゃなく遅いので、ねばり強い忍耐が必要です。
・要するに何も変わらないって事です。
・HDDが吹っ飛んだー。
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コメント
>BookWarmさん、うちのHDDもうそろそろ6歳だったので・・・。っていうかフラッシュメモリに変えようかなぁ(しがない書き手)
>ブックマンさん、それは死亡フラグだ!今すぐ換装するんだ!(しがない書き手)
>jackryさん、そろそろできます。っていうか本編も結構トンでて、全俺が泣いた。(しがない書き手)
私のHDDもそろそろ・・・(ブックマン)
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真・恋姫†無双 恋姫†無双 金属の歯車 恋姫無双 

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