恋姫異聞録4 |
「次!李通、報告を」
春蘭の声が会議室に響く、刺史としては十分すぎる広さがあるこの部屋に隅々まで響くような声
慣れない者には威圧としか受け取れないな
「はっ、報告します、今回の討伐で生き残った劉封からの事情聴取と季衣からの報告を纏めたところ、共通点としてみな黄色い布を身に付けていたことそして暴徒は農民や賊くずれ、特に若者を
中心に集まっているようです」
おそらく黄布党だろう、俺の知識の黄布党と同じかどうかは分からないがもしかしたら桂花のように崇拝する対象が違うのかもしれない、若者を中心なんて、あれは確か餓えた農民や不満を持つ
大衆の集まりだったよな?たしか蒼天已に死す 黄天當に立つべし 歳は甲子に在り 天下大吉?
「なるほどね、前回も黄色い布を巻いた暴徒だったわね、規模が徐々に広がっている、か」
「華琳様、こうなるともはや賊ではなく一つの勢力としての規模になりつつあります」
秋蘭が言うのももっともだ、この広がりは早く大きい、黙って見ていては一つの国として独立してしまうほどだ、まあ肝心の土地がないか
「ええ、そろそろ都から軍令が届くでしょう、今は情報が少ないわ当面は情報収集を中心に隊をうごかしましょう」
遅いな、これが今の漢朝の力か、知ってはいるがこれほどとは思わなかったな、州朴の任命はもう少しかかるか?中央には桂花と働きかけたし、張魯も討伐したのだがな、大部隊を動かせないなら俺はその間に部隊をより強固に、そして多くの将を集めるだけだ
「ここまでで何かあるかしら?」
「はい!華琳さま、一つ伺いたいことがあります」
「何かしら、桂花?」
「われらの糧食なのですが、あまりにも多くあります。この陳留だけの収穫量を考えてもどうしても計算が合わなくて私の知の及ばないような方法をとっていらっしゃると思うのですが、お教えください」
曹操様はその言葉を聞くとこちらに目を向けて、「貴方、桂花の智謀に勝っているらしいわよ」とからっておられるやれやれ、俺は智謀なんてものではないですよ、知識ですと頬をひと掻き
「張魯、と言う人物を知っているかしら?彼は五斗米道と言う名の下に漢中の地に独立国家を
30年も維持した」
「はい・・・・まさかっ!」
桂花の顔が驚に染まる、まあそうだよなそんなこと歴史をしっていなきゃ誰もできないよ、でもな多くなる人材それにともなう部隊の兵数、それを維持するにはうってつけの相手だっただけだ
しかしずいぶんと早くに出てきたな、東に移動していたのも不思議だ、まあ江東の虎がいたら
こちらに移動するのも分からなくは無い
「ええ、そうよ昭の提案でね張魯ならば容易捕らえ仲間にも出来る、それどころか五斗米道はお布施に五斗の米を供出させていた土地は朝廷に解体されたけど、糧食は丸ごと手に入ったわ、なにせ抵抗もせず降伏してしまうんですもの」
あのときのことを思い出したのか少し不満げな顔を浮かべている、まあそうでしょうね、あんなにあっさりと降伏されてしまっては肩透かしもいいところ、不満がたまってしょうがないでしょうね、やれやれ
「ぐぅぅっ!またしてもあの変態男っ!!!!」
まただ、また俺を視線で殺そうとしている、カンベンしてくれよ一応仲間なんだしそう睨まれると何かあったとき絡みずらいじゃないかそう思っていると会議は終了、春蘭の声が響く
「では解散っ!」
春蘭が会議終了の声を上げる、俺は部屋から皆が出るのを待ちながら木管を取り出して記憶を整理する「なんであの男だけっ!」と言うこえと、その声の主を引きずっていく春蘭が見えたような気がするが深く考えないようにした
「さて、皆出て行ったし貴方の報告を聞きたいわ」
そう、これはいつもの報告、幼いときから自分の見た夢を毎日木管に記録し一週間単位で報告する、これは曹騰様に拾われてから欠かすことなく続けている習慣だ、理由は毎日見る俺の夢と記憶にあるからで、どうやら俺は大きくなるにつれてそれに準じた天の記憶、そう昔いた俺の世界の記憶を思い出していくらしい、だから張魯なんて名前は数年前は知らなかった記憶だが今は知っている、三国志が好きで何度も読み漁った小説、そしていろんな漫画、テレビ、ネットなんかの知識がここ最近は多い、つまり俺は天の世界ではインドア派の人間って奴だったんだな、それで言えることは夢の記憶の最後がこの世界に来た原因ってことだ
「今日はどんな天の話を聞かせてくれるのかしら?前回はクレオパトラだったわね?」
新しい玩具をまえにした子供のようなキラキラとした目をしていらっしゃいますよ曹操様、俺が話をするとそれでそれで?といった感じで曹操様は話を促す、貴方は相変わらず新しいものがお好きですね、そのお顔は実にほほえましい
「ふうっ、実に面白い話だったわ、天の話はいつ聞いても興味深い、そういえば木管もそろそろ纏めないとだめね書庫一つが埋まってしまうわ」
「ありがとうございます、お気に召されたようで話す側としても楽しませていただいております」
曹操様は満足したといった顔で先ほどの話を頭の中で反芻していおられる、俺はこの先どれだけこの愛らしい顔を見ていけるのだろうかフフッ桂花のことは言えないな、俺も随分と曹操様を崇拝しているようだ
「昭、これから時間は空いているかしら?ちょっと付き合って欲しいのだけれど」
「ええ、空いております。ただ涼風も一緒によろしいでしょうか?」
もちろんかまわないわ、と言われ特に疑問も持たず俺は涼風と共に待ち合わせの場所に移動する
「お待たせしました、華琳さま」
「おまたせしあしたぁ〜」
舌足らずなこえで俺のまねをする涼風、そんな娘を見て曹操様から「えらいわね涼風」とお言葉をいただく、親として俺もうれしくなり、涼風の頭を撫でるとそれを見た秋蘭が近づいて涼風の襟を直しながら「お待たせしました、だ」という、それを聞いた涼風は「うんと、おまたせしましたぁ〜」と言いなおしにへぇ〜と笑い今度は春蘭に頭を撫でられる
「それでは今から警邏をするわよ、春蘭は東、秋蘭は西、昭は私と共に中央を城門で集合、涼風はお父さんとお母さんどちらと行きたいかしら?」
「う〜んと、そうそうさまぁ〜」
曹操様はフフフッと優しい笑顔をうかべるが、父としては悲しい、凄く悲しい、娘が曹操様を好きでいることは大変うれしいがなんだろう、やっぱり「おとうさん〜」なんていってくれることを
期待していたんだよううぅ
いくわよ、と曹操様に言われ涼風を抱きながらとぼとぼとついていく、すると秋蘭がトトトッと近づいてきて背中にピトッとくっつくと無言で頭を撫でてくる、おいおい、子供じゃ無いぞなんて考えるがそれで喜んでしまう俺はやっぱり子供なんだな〜と思ってしまう
「しかし曹操さま、警邏とは随分といきなりですね私の率いる警備隊に何か問題でも?」
ふとした疑問を伺いながら3人で町を巡回する
「問題はないわ、信頼してるもの」
いきなり言われた信頼してる、その様な言葉はめったにもらえるものではない、一瞬で頭の中がいっぱいになる、そんなこと言われたら・・・
「おとうさん、おかおまっかぁ〜」とぺたぺた顔はさまれて、はははははっ!と照れ隠しに頭を撫でる、そんな俺を見て曹操様はクスクス笑ってらっしゃる、意地悪な方だ
「あら?あれは何かしら?」
「はい、寄ってらっしゃい見てらっしゃーい!」
露天商らしき女の子が籠を並べているが、曹操様は何に興味を示されたのだろう、まさか籠ではあるまい?もしかしてあれか?歯車やらなにやらがぎっしり詰まった箱がおいてある、これは何かの装置か?そんな目線に気がついたのかうれしそうに女の子は話しかけてきた
「お二人さん、お目が高い!コイツはウチが発明した全自動籠編み装置や!」
「全自動籠網装置?」
曹操様が顎に手を当てて首をかしげる、俺も良く見てみるがどこら辺が全自動なのだかわからない
そんな顔を見て女の子は一生懸命にこの装置を説明するが、それで終わらず「試しにやらせたる」
といわれ俺が装置に竹をセットし涼風がハンドルをぐるぐる回す
「へぇ、編まれた竹が出てくるわね、それで?底と枠の部分は?」
「あ、そこは手動です」
「・・・・・・・・・そう、便利と言えば便利ね、ん?どうしたの昭」
涼風の手を離させてじっくりと装置と、女の子の顔を見る・・・・・・・・・この能力は使えるな
「なぁ、これ以外にカラクリってやつを作れるか?」
いきなり話を振られた女の子はちょっとびっくりした顔をするが自信満々に「できるで!」と答えたならばこの子も力になる
しかも大きい力だ、一人でこの規模の物が作れるなら手伝いを足せば・・・・・・
「俺の名は夏侯昭、名を教えてはくれないか?」
「あ!もしかして噂の御使いさま?え、えっとウチはですね李典といいます」
李典っ!!!そうか、李典ならばうなずけるがまた女の子か、どうやら将は女性が多いようだな
そう思い曹操様のほうに目を向けると
「人物を見つけたのね?この子も私の力になるのかしら?」
「ええ、李典、どうだろうか俺たちに力を貸してくれないか?ここに居られる曹操様は今の世を憂いておられるぜひとも貴方の力が必要なのだ」
え?え?っといきなりのことで混乱しているようだ、こういうとき自分の語彙の少なさになんとも悲しくなる
「李典いきなりでごめんなさい、昭、貴方の人物評を聞かせて頂戴」
「は、一言で言うならば歯車、ひとつでは何も出来ないが多種多様なものと組み合わさることにより無限の形を成すことが出来ます」
「なるほど、彼女の技術は私の元であらゆる力に化けるのね?兵科から治安まで」
それを聞いた李典はいきなり俺の手をつかみ、目をウルウルさせて「ありがとう、ありがとう、ウチそんなん言われたの始めてや、そんなにウチのカラクリを認めてくれるやなんて」と
それを見ながら曹操様は、あなたの人物評は登用にもつかえるのよといわんばかりにこちらに目を向けるこれは私ではなくて曹操様、貴方のお力ですよまったく頭が下がる
「あ、すんませんウチ連れがおるんですよ、ウチの力をそこまで評価してくれる曹操様に使えたいんですが良かったらつれの二人にも会ってもらえませんですか?ウチらいっつも三人一緒だったんで・・・・・・」
「フフフッわかったわ、他の二人も一緒に私の所に迎えましょう」
ありがとうございます、と李典は頭を下げると連れを迎えにいってきます!と走り出す
「これでまた私の元に有能な将が増えたわね、私は貴方にどれだけ期待をされているのかしら?」
そうおっしゃると歩を進めていってしまう、俺は急いで涼風を抱き上げ早足で追いかける
「期待をされるのは御嫌ですか?」
そうこたえると、口の端をあげて「私をだれだと思っているの」とわらう、それを見て俺も顔がほころぶ
そうでしょうとも、貴方は覇王なのですから!だからこそ共にあることが面白い!
「そこの、若いの・・・・・・・・・・・・・」
集合地点に差し掛かろうというときに目深に布を被った何者かに声を掛けられた
「・・・・・・・誰?」
曹操様は眉根を寄せる、見た感じはお爺さん?いやお婆さんなのか?よくわからないが涼風が首に手を回して抱きついてくる、あまり良いものではなさそうだな、まあ占い師なんだろうが
「強い相が見える、お主の力、今の弱った国の器に治まりきらぬ。その野心、国を犯し、野を侵しいずれこの国に名を残すほどの、類い希なる奸雄となるであろう。」
む?何だコイツ、曹操様を占っているのか?しかも奸雄の相を・・・頭にふと橋玄様が思い浮かぶ
「フフッ、悪いけど私がこの国に収まりきらないのも知っているし自分が乱世の奸雄であることも知っているわ、そうでなければこの大陸に覇を唱えることなど出来はしないでしょう?」
占い師はしゃがれた声でくつくつとのどの奥で笑う、そして俺のほうを見るや否や手を震わせその隠れた顔からでも十分に分かるほど青ざめ俺をみる
「お、おまえは・・・・・・く、くくくくく!くはぁははははははははっ!!!!面白いっ!面白いぞっ!貴様は天の御使いなどではないっ!!!そのくせ目だけで私を測るかっ!!!!!」
なんだコイツはいきなり、コイツも許子将と同じか?まあ自分でも天の御使いなどと思っちゃいないけどな
「天の御使いではないが、お前は御使いに成り代われる、面白いぞっ!実に面白いっ!この私が相を見れないとは、くくくくく私はお前の行く末が見たい、お前たちのいるこの土地に居つくとしよう、つまらない死に方はするな、この私を楽しませてくれっ!」
なに言ってんだこのおっさん、一人で笑い出しやがってなどと思っていると占い師は背後の路地の影に溶け込むように姿を消す、曹操様お下がりください!そういって涼風を曹操様に預け背中の六尺棍を構え辺りを警戒する
「大丈夫よ、気配は消えたしそれに貴方じゃ私のこと守れないでしょう?」
盾ぐらいにはなりますよ、と言ったらバカといって頬をたたかれ曹操様は先に行ってしまう、
ああ、涼風ちゃん今日お父さんは良いとこなしです、なぐさめてください、といったらたたかれた頬に口付けしてくれたので少しは気が晴れた、後で聞いたことだがどうやらあの占い師は橋玄様の紹介だったようだ、どうりで曹操様がおとなしく占い師の言葉に耳を傾けていたわけだ
その後合流し、屋敷に戻ったところで曹操様にたたかれた場所とまったく同じところを秋蘭にたたかれ怒られた、華琳様の盾になることは良い、だが命を投げるな!と、ゴメンと一言あやまると抱きつかれ涙ぐまれてしまった
大丈夫、命を投げるようなことはしない、死にはしないよ約束を果たすまでは
説明 | ||
続きです、言い忘れたのですが主人公のことは 少しずつ出来ることや特徴を出していきたいと思いますので 中盤くらいからどんな主人公なのかわかるとおもいます 今回は彼の人物評以外のことを書きました |
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コメント | ||
今さらながら誤字・・・州朴の任命はもう少しかかるか?>ではなく州牧の任命はもう少しかかるか? だと思われます。(DAIKN) そういや異聞録を読み始めたのってここからだったなぁ…あと100話か(ねこじゃらし) フラットノイズ様、コメありがとうございます^^私の小説での秋蘭は原作の秋蘭の性格開放となっていますので可愛くなっております^^(絶影) ブックマン様、秋蘭の可愛いところを堪能してください^^(絶影) どうしよう。この話の秋蘭めちゃくちゃ可愛いんですけど(フラットノイズ) 秋蘭の可愛いところが見れますね。(ブックマン) |
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