今日から“覇”のつく自由業-今日から覇王-中と下の間の巻の1
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「う〜ん。随分と豪華な天井だ。・・・あの後、どうしたんだ?俺、確か、華琳に真名を許されて・・・ん?」

 

一刀は目が覚めると、しばらくはそのままでボーっとしたままで、自分が眠りにつく直前の事を振り返っていた。

そのボーっとした頭も幾分スッキリとしてきた頃に、自分のすぐ脇から只ならぬ違和感、もとい視線の感じた・・・

 

「・・・何よ。」

一刀が、その違和感の方向に顔を向けると、真っ赤な目をこすりながらも、今まで泣いて何かいませんでした、とでも言いたげな猫耳頭巾な少女が、じっと此方を睨みつけていた。

 

「・・・・美少女がいる。」

 

「へっ!?なななな何言ってんのよアンタ!ちょっと、え?何?ウソでしょ?いや、でもコイツは種馬で・・・」

そんな少女に向けての開口一番に飛び出したのは口説き文句。突然の事に桂花は口をパクパクと言わせ驚きながらも、顔を真っ赤に染めて慌てるしかなかった。

しかし、一刀にしてみれば、一番無防備な思考状態だった所に突然と視界に現れた、見目麗しい少女の姿に、何を考えるでなく口をついて出たのは最早、条件反射の様な感想だった。

 

「そ、そうねぇ!どうしてもって言うのなら、私の真n-------」

コンコン

「おい、何をそんなに騒いでいるのだ?」

そんな騒ぎを聞きつけてか、青い髪をしたスラリとした女性が少し心配したような顔をして入ってた。

表情をコロコロと変えて慌てている桂花に気を取られていた一刀は、先ほどと同様、突然と視界に現れた秋蘭を見るとまた、

 

「おお、美女だ、超絶美女だ。」

 

何とも間の抜けた反応を示す一刀だが、言われた本人は満更でも無いようで、桂花はぷしゅーっと顔から煙を出しており、秋蘭も僅かにその頬を染めていた。

しかし、そこからいち早く立ち直ったのは桂花であったのは軍師としてのプライドであったかどうかは、定かでは無い。

 

そして、そのやり取りから分かるように・・・

「・・・やっぱり、華琳様の仰った通り、記憶がないのね・・・」

「・・・ああ。その様だな。」

 

そう呟いて一転、二人の表情は苦々しいものへと変わってしまった。これをどう勘違いしたのか一刀が慌てて言い訳を始めたのだった。

「いや、ご、ゴメン!突然の事で、こっちも動転してって・・・えっ、いや、だからって二人がキレイじゃないとか、そう言う意味じゃなくて・・・」

 

「「ぷっ」」

 

二人は吹き出してしまった。

「ふふ、しかし、その様に慌てていては、まるで信用がないぞ。」

「そ、そんな事無いってば、そもそも、こんな美女が目の前に現れたら誰だって・・・」

「ほぉう、それでは桂花が何と呼ばれたのかも、気になるところだな?」

 

その慌てっぷりに、さっきまでも雰囲気もどこかへ、秋蘭もこれは面白いものを見つけたという視線を桂花に向ける。

「なっ何を言ってんのよ!ちょっと、アンタも言ってやりなさいよ!」

「・・・少女だな。」

「はっ?“美”はどこ行ったのよ!」

「いや、だから少女だな。」

「キ〜!!だから男なんてものは!ちょっと胸が有るからって!!!」

 

「そんな事より、華琳様が御呼びだ。この事を説明する。皆を集めろとのことだ。」

「わっ分かったわよ!すぐ行くわよ!こんな男に構っている暇なんて、コレっぽっちもないんだから。フン!」

「俺は、どうした方がいいのかな?」

「すまないが、他の者をよこす。その者と街の様子でも見てきてくれ。」

「ああ、わかったよ。」

「・・・それと、私の事は“秋蘭”と呼べ。お前にはその資格が有る。」

「えっ?」

 

呆けたような顔の一刀に優しい笑みを向けたあと、秋蘭は、さっきとは、また別の意味で顔を真っ赤にしていた桂花を連れて、部屋を後にした。その背中にほんの少しの優越感を漂わせて・・・。

残された一刀の心臓の鼓動は、いつもよりも激しく脈打っていた。

 

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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

全員が華琳から説明を受けた後に、一刀は全員との軽い顔合わせを済ませることになった。その後は、当初の予定通りに街を案内してもらうはずだったのだが。

しかし、不思議な事に全員と顔合わせた途端に、一刀の心臓は激しく脈打ちはじめ、一度は気を失ってしまった。

その結果、皆に、相当心配をかけたのか、外出を取り消されるところだったのだが、そこは拝みに拝み倒した結果・・・しぶしぶ、といった様子で許してもらえた。

そして、案内を買って出てくれたのも三人と、万全を期したものになった。

 

何でも三人は随分と一刀に近しい人間だったらしく、当時の事を交えながら各所を案内してくれた。

「ここは新しく出来た甘味所なの〜 阿蘇阿蘇でも取り上げられてるの〜」

「え?新しいって、俺に関係ないんじゃ・・・」

「あ〜 ただ沙和が来て見たかった、ちゅうだけちゃうの?」

「オイオイ・・・ 無理言って出て来たんだから、あんまりそう言うのは・・・」

「ぶぅ〜 違うの〜 ちゃんと関係有るの〜 このお店の店長さんは隊長に“天のお菓子”を教えてもらったからお店を出した人なの〜」

「でも、来たがっていたのは嘘ではないだろう、全く。」

 

三人の中の良いやり取りを見ているとまた、心臓の鼓動が強くなる気がする。そして、そんな会話をしていると、

「やや、これは御使い様ではないですか!!!」

「なんだって!?おい!来て見ろ!」

「ほ、本当に御使い様だ!これ、持ってってください!」

「ウチのも貰ってって下さいよ!ホラっ!」

 

あっと言うもに人だかりが出来て、あれよと言う間に前が目ないほどの色々な物を街の皆さんに頂いてしまった。

こんな言い方は変かもしれないが、北郷一刀という人間は、なかなか人々に好かれていたらしい・・・

しかし、今の自分がこうやって好意を受けることは、何だか他人の褌で相撲を取っているような、不思議な気分になる。・・・正直申し訳ない。

 

三人は、俺の色々な話をしてくれるのだが、そのどれもがキラキラと自慢話のように語られる為に、イマイチ自分の事の様には感じられなかった。

しかし、その会話が俺の交友関係に及んだ時は別だった・・・

 

「なぁ?俺は・・・もしかして、とんでもなく節操のない人間だったのか・・・?」

 

「「「・・・・・・・・。」」」

 

一瞬の沈黙の後、

「はぁ〜? 何を言うとるん、自分?」

「いや、だって、話を聞く限りだと・・・君たち全員と、その・・・」

「きゃ〜なの〜!そんな、改めて言われると照れちゃうの〜」

「ね、ねえ・・・うそだよね?」

「////////」

 

だめだ、取り合えず一番真面目そうな彼女に聞いてみたが反応はこれだ・・・クロだ。黒を通り越して真っ黒だ。しかも、何を言っているんだ?という目で見られた。・・・いっその事殺して下さい。

他の二人は、古道具やら服やらの店に興味を持っているのか、好き好きに見に行ったりしながらも傍に居てくれるのだが、一番真面目そうだと言った彼女は片時も離れようとしなかった。

まぁ、そんなものかと思いながらも一行は街の商店街を回る。

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そんなこんなで、今は真面目そうな彼女と、街のはずれにある清流まで来ている。途中、何かの店に引っかかっていた二人もそのうち合流するだろう。

 

ああ、それにしても、話を聞けば聞くほどに真実味が有る。記憶がないと言うのに、何故かシックリと来てしまった。しかし、そうなると、彼女たちだけでは無く、本当に、あの水色とピンクの髪の毛の少女達にも手を出していた事になる・・・

どんな鬼畜だったんだ俺は・・・ああ、急に逃げ出したくなった。

 

そんな事を考えていると、服の裾をギュっと掴まれた感触があった。振り向いて見ると、傷だらけの少女は少し震えながら俯いていた。

 

「・・・・・。」

 

「お、おい?どうした?大丈夫か?お腹でも痛いのか?」

 

何も言わず俯く彼女に慌てて様子を伺う一刀だが、ふと、彼女の足元を見るとポツポツと何かが地面を湿らせていることに気が付いた。

彼女は何も言わないが、裾を握りしめたその手には、相当の力が入っているのか真っ白になってる。

 

「・・・・せん。・・絶対に・・・・。」

「っえ?」

「・・・今度は ・・・今度は絶対に離しません!」

 

震える声ではあったが、その声には確りとした意志が有った。

「え?離さないって・・・あれ、俺、声に出てた?ってそうじゃ無い、そうじゃ無いんだ!」

 

俯いたまま顔を上げずに涙を堪えようとして震えている凪を見ていると、一刀の心臓がドクンと脈打った。その鼓動は激しさを増し、自分の耳でも聞こえるくらいだ。

それはまるで、体からの抗議の様だった。この体は何度となく彼女たちと触れ合ってきたのだ。愛を交わして来たのだ。例え、記憶など無くとも・・・

それからは自然と体が反応した、何千、何万と繰り返してきた型の様に、それは、填まるべきピースの様に、自然と凪の体は抱きしめられ、その頭は一刀に胸に納まっていた。

 

「・・・た、隊長?」

「・・・自分の名前もシックリこないのに、その呼ばれ方はちょっとな・・・」

驚いたように見上げる凪をしっかりと抱きしめたまま、ははは、と苦笑いして頬をかく

 

抱えた凪の頭を愛おしそうになでると、一刀は絞り出す様に呟いた。

「ああ・・・。大バカだ、俺は・・・ こんな・・・何が逃げ出したいだ。・・・本当に馬鹿だ。」

「・・・隊長?泣いているのですか?」

「うん。・・・でもな、ちょっとだけ思いだした。今頃になって思いだした。今まで求めてたものが分かった。嗚呼、あんなに狂いそうなほどの焦燥感はこれだったんだ、・・・当たり前だ、こんなにも愛しい。いくら忘れていたって、抑えられるわけがない。だから、居ても経っても居られなくなって探してたんだ。やっと分かった、俺、皆の事が大好きだったんだ。こんなも好きだったんだ。」

 

「それなのに、ゴメンな・・・こんなにも愛しいのに、何も思い出せない。大好きなのに・・・名前も分からない・・・」

「・・・良いんです。隊長は、隊長のままです。」

「・・・・・・ゴメンな。大切な思い出も・・・覚えてない・・・」

「・・・良いんです。全部、私たちが覚えています。」

「うう、ううぅ。」

「・・・良いんです。こんなにも優しくて、温かい。」

それ以上は、もう何も言えなくなってしまったのか、一刀はただ嗚咽を漏らし、ただ凪を抱きしめていた。

 

隊長は、やっぱり、私の好きな隊長でいてくれました。記憶の一切を失ったと言うけれど・・・、一番大切な事を思い出してくれました。だから、・・・良いんです。

 

遠くの方で、真桜と沙和の声が聞こえた気がする。

「何や!凪のヤツ抜けがけは無しやって言ってたやんか〜!」

「凪ちゃんだけずるいの〜 沙和も、ぎゅーってして欲しいの〜!」

 

でも、暫らくは聞こえない。聞こえないふりでも・・・

 

・・・良いんです。

 

 

 

 

 

いや〜、平日だとやっぱ筆が進まんね〜

どうだろうか?“上と中の間の巻”は自分でも、あ痛たた〜な感じに粗い出来だっただけに、今回は結構頑張ってみたんですが・・・

変わらないかな?次で決着付けようと思います!次は“中と下の間の巻2”です!もう、なんのこっちゃです!

ヨッシャ〜!次で終わらせで日常書くんじゃい!!! コメント頂けると喜びます。頑張ります。

 

 

 

説明
今日から“覇”のつく自由業-今日から覇王-中と下の間の巻の1です。ホントになんのこっちゃです。

意外とまじめじゃないかと思います。

我慢できずに、やっちゃったネタも冒頭に有りますが・・・
意外と真面目なはず・・・

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コメント
記憶喪失でも一刀の本質は変わりませんね。(ブックマン)
>>逢魔紫さん OK!ならば、修正だ!(pomuo)
「スマナイが、他の者をよこす。←細かいようですが「すまない」はひらがなのほうが・・・(トウガ・S・ローゼン)
このコメントばっかしてる気がする。凪めっちゃかわいい〜〜〜><(motomaru)
やっぱり凪は良い娘なんです。その想いは半端じゃないですからね。少しずつでも思い出してくれればそれで報われるんですね。なんか心温まる感じで好きです。(自由人)
>>yosiさん やった〜分かってもらえたwさて、次はどんなネタを仕込むか・・・(pomuo)
よつばとかよw 風香ポジションとはおいしいな桂花(yosi)
>>kamaraさん 私としては、桂花に優越感の少し黒い秋蘭も、良いんですw(pomuo)
>>田仁志さん 此方こそ有難うございます。要は、「おいおい、体は正直じゃねぇか?ぐっへっへ」というお話です。(pomuo)
凪、いい。良いんです。(kamara)
いやいやジーンときましたよ♪ ありがとうございます(ペンギン)
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