真・恋姫無双another 風ストーリーその12 |
白蓮さんを先頭に、私達は洛陽の王宮へと来ました。
入り口の門番さんに事情を説明して、中へと入りました。
そこで待っていた従者の人に案内されて玉座の間へと足を踏み入れると、そこには私達以外の皆さんが既に集まっていました。
「あ〜ら、伯珪さん。ずいぶんと遅い到着ですのね」
私達が玉座に入った途端、袁紹さんがわざわざ立ち上がって皮肉を言ってきました。
「本初の兵士が呼びに来るのが遅かったからな」
「あら、自分の不出来を私の兵士のせいにするの?」
「そんなつもりはないけどな……」
「そんなつもりもなにも、明らかに私の兵士のせいにしているではないの!!」
「……」
どうも白蓮さんはもう相手にしたくないようで、やっつけ気味に言いました。
「本初……、どうでもいいが、従者が困っているぞ」
白蓮さんがあごで促すとそこには従者さんがどうしていいやら困っていました。
袁紹さんは、その様子を見ると白蓮さんに何か言いたそうにしながらも渋々座りました。
私達は一番後ろ、桃香さん達の隣に座りました。
桃香さんからは笑顔が来ました。
先ほどのやり取りの事でしょうか。
白蓮さんもそれに笑顔で返してました。
そんな中、私は一人気になる人物を捜していました。
そう、稟ちゃんです。
曹操さんの元を見るといました。
曹操さんの後ろ側、夏候惇さんのそばにひかえています。
入ったばかりなのにあの場所にいると言うことは、かなり優遇されているのでしょう。
そんな稟ちゃんを見て、私は安心しました。
しばらくして、従者さんに連れられ現皇帝献帝が来ました。
それぞれにねぎらいの言葉と、今回の事に際し位を授けていきます。
結果、袁紹さんは一番高い位、そうあの何進大将軍と同じ地位になりました。
その下に袁術さんと曹操さん。
白蓮さんや西涼の皆さんなんかはその下位でしょうか。
そんな中、一番躍進したのは、桃香さんです。
なんと徐州の州牧に任命されました。
州牧は、その州の代表。
つまり州の王様みたいなものです。
最初戸惑っていた桃香さんですが、諸葛亮さんや鳳統さんの進言で受けることにしたようです。
こうしてつつがなく話は終わるかに見えましたが、最後にちょっとした事件がありました。
「この中に、天の御遣いと呼ばれている者がいると聞いたが?」
献帝が突然こんな事を言いました。
天の御遣いと言えばお兄さんの事です。
何となく隠すのがいいように思えたのですが、あのお兄さんがそうするはずがありません。
献帝の言葉に合わせて立ち上がりました。
「俺がそうですが?」
「そうか……」
献帝はお兄さんの姿を確認すると、少しだけ考え込みました。
そして、皆さんが驚く事を言ったのです。
「おぬし、私と共にここに住まぬか?」
「えっ!?」
お兄さんは思わず聞き返しました。
それと同時に、玉座の間が凍り付くのを感じました。
「皇帝陛下、それはどういう意味ですか?」
「うむ……。民達は、天の御遣いを崇拝しておるようだ。それは予以上にな」
そういう献帝の表情は少し寂しげに見えました。
仮にも皇帝を名乗る以上、民からの信頼は得ていないといけません。
ですが、先の朝廷内での権力争い、そして今回の争いと正直献帝に対する民の心象は悪いです。
どうも、献帝はその状況を良く理解しているようです。
「しかし、私は皇帝だ!! 民達にどう言われようと、民のため、大陸のために尽くさねばならない!! そこで天の御遣いだ」
「はい?」
「おぬしと共になら、民のため大陸のために尽くせそうな気がするのだ!! もちろんただでとは言わん!! 司徒の地位を与えよう!!」
「何ですって!!」
献帝の言葉に、袁紹さんが立ち上がりました。
司徒と言えば、三公のうちのひとつで人民に関する役職の最高位です。
大将軍となった袁紹さんほどではないですが、曹操さんや袁術さんとは同じくらいの地位です。
思わず声を出してしまったのは袁紹さんですが、曹操さんも声には出していませんがかなり驚いているようです。
袁術さんは事の重大さを認識していないのかのほほんとしています。
「どうした、袁紹? 何か問題でもあるのか?」
「失礼ながら皇帝陛下。確かに天の御遣いの名が轟いているのは私も聞き及んでいますわ。ですが、この者は素性が分かりません。そのような者に司徒の地位など……」
「それは違うぞ、袁紹。今の世に必要なのは民からの信頼なのだ。それがこの者にはある。それだけで司徒の地位を与える価値があるという者だ」
「ですが……」
「しつこいぞ!!」
献帝の言葉に袁紹さんは黙ってしまいました。
さすがに皇帝に対しそこまで反論は出来ません。
「さて、どうだ。私からの願いだ。受け入れてくれるな?」
献帝は改めてお兄さんに問いかけます。
お兄さんは周りを見て、私達を見た後、献帝に話しました。
「……すみません。皇帝陛下には申し訳ないのですが、その申し出を受けることは出来ません」
「なっ、なんだと!!」
「俺の事をそんな風に思ってくれるのはありがたく思います。ですが、俺はここにいる公孫賛とその仲間達に助けられてここにいられる。これからもこのみんなと歩んでいきたいと思っているんです!!」
お兄さんの言葉に嬉しさと同時に恥ずかしさを感じました。
白蓮さんや星ちゃんもそうなんでしょう。
何やらバツの悪そうな表情をしています。
「それは、私からの申し出を断ってまでする事なのか?」
「はい!!」
お兄さんの言葉は力強くそして、気持ちよく聞けました。
献帝もそれを感じたのでしょう。
少し考えると言いました。
「――あい分かった。お主の気持ちは……。元は私のワガママだ。この話はなかったことにしてくれ」
「分かりました」
そう言ってお兄さんは座りました。
その瞬間、鋭い視線を感じました。
袁紹さんでしょうか、曹操さんでしょうか、それとも別の誰か……。
周りを見渡してもこちらに視線を向けているのは桃香さんくらいです。
しばらくして、その視線を感じなくなりました。
一体何だったのか、今となっては分かりません。
なんだか変な雰囲気になってしまいましたが、献帝は立ち上がって言いました。
「此度の件、皆大儀であった。下がって良いぞ」
献帝の言葉に、皆さんお辞儀をして玉座の間を出ていきます。
私達も、貂蝉さんの家に戻って帰り支度しないといけません。
一悶着のあった、献帝への謁見はこうして終わりました。
貂蝉さんの家に戻った私は、帰り支度をしながら王宮であった事を詠さんに話しました。
詠さんには、これから裏方の軍師として頑張ってもらわねばなりません。
その為には、事実の共有が必要になってきます。
「分かったけど、それって結構危ないんじゃない?」
「風もそう思いますよ〜。近いうちに動きがあると思いますから、幽州に戻ったら準備をしないといけませんね〜」
「その時は、ボクも意見を言わせてもらうよ」
「もちろんですよ〜。その為の軍師ですから〜」
「このお姉ちゃん、案外天然なんじゃねえのか?」
「こらっ、宝ャ!! 事実でも言っていい事と悪い事があるんですよ〜」
「ボクは天然じゃないぞ!!」
反論してくる詠さんは面白いです。
そんな詠さんの様子に気付いた月さんが来ました。
「詠ちゃん、どうしたの?」
「ゆ……月!! なんでもないよ!!」
「何でもありませんから、月さんは皆さんと準備お願いします〜」
「そう?」
首を傾げながら、月さんは再び出発の準備へと戻りました。
「びっくりしたー!! と……とにかく、幽州に行く間にも色々万策を考えなくちゃね!!」
「そうですね〜」
詠さんは思っていた以上に面白い人なんだなと思いました。
そうこうしているうちに、帰り支度が済み洛陽を発ちました。
ここに来た時とは違い、稟ちゃんがいなくなりました。
でも、月さん、詠さん、霞さん、華雄さんが加わり賑やかさが増しました。
さらにはこの人も付いてきました。
「あらぁ、私がいちゃダメなの?」
「いや、ダメじゃないけどさ……。もうちょっと離れてくれないか」
そう、貂蝉さんです。
一緒に来た理由は不明ですが、おそらく例の白装束軍団が絡んでいると思います。
もっとも、貂蝉さんは何も言わないので私の想像でしかないのですが。
賑やかさを増した私達公孫賛軍は、洛陽を後にしました。
道中は非常に穏やかでした。
洛陽から幽州の拠点遼東まではそこそこ距離があるので、所々に点在する村で休憩を取りながらの帰郷です。
行く先々の村で、今回の戦いの評判かはたまた天の御遣いの評判か分かりませんが、公孫賛軍に加わりたいという者が多数いました。
特に断る理由もなかったので、白蓮さんに確認してもらい次々と加えていきました。
そのようなわけで、反董卓連合に参加するときより多くの兵士を引き連れて遼東へと戻りました。
遼東へと戻った私達は、まずは現状の確認と、連合での報告を行いました。
領内は特に目立った動きもなく、非常に順調だったようです。
そして、連合での報告になるのですが、献帝とのやり取りで袁紹さんに怪しい動きがありそうとの報告をしました。
「献帝とお兄さんとのやり取り……。風は、袁紹さんは何か仕掛けてくると思っていますよ〜」
「ボクも直接見たわけじゃないけど、あの目立ちたがり屋で嫉妬深そうな袁紹は間違いなく攻めてくると思う」
私と詠さんの意見を述べると、白蓮さんは笑いました。
「それはないな。確かに本初はあんな性格だが、今まで友好な関係を築いてきたんだ。あれくらいの事で攻めてくるなどありえないよ」
「いえ〜。風がみるに白蓮さんがあれくらいと呼ぶあの事は袁紹さんに相当利いていると思いますよ〜」
「確かに、袁紹殿なら立場がない位に思うかもしれんな。あの時、曹操殿も相当きていたようだが、声に出したのは袁紹殿だけだった」
私の言葉に星ちゃんも賛同します。
最初笑っていた白蓮さんも星ちゃんが賛同したとなると、真剣な表情に変わりました。
そして、今度はお兄さんに聞いてきます。
「北郷は……、どう思う?」
お兄さんは何やら難しい表情をしていて、白蓮さんの言葉が耳に入っていなかったようです。
「おい、北郷!!」
「えっ!? ぱ……白蓮……、何?」
「何じゃない。本初の事、北郷はどう思うか聞いたんだ?」
「袁紹ね……、うーん……」
お兄さんは少し黙ると口を開きました。
「あんまり言わない方がいいのかもしれないけど、俺の知っている三国志……、この時代の歴史だと公孫賛は袁紹に滅ぼされるんだよ」
「な……なに……」
お兄さんの言葉にその場にいたみんなが絶句します。
「この世界が俺の知っている歴史と同じかどうかは分からない。けど、俺の知っている歴史だとそうなるんだ」
「そうなのか……」
「だから、風や詠がそう思っているのなら、ひょっとすると袁紹は攻めてくるかもしれない」
お兄さんのこの言葉が決定打となったようです。
袁紹さんが攻めてくるだろうという考えで行動する事になりました。
「それで、実際にどうするのだ?」
「風の考えでは、まず領の境付近の村人達を避難させます〜。そして、最低限の兵士さんだけを置いていきます〜」
「なんで、最低限なんや?守るんやったらそれこそ大勢で待ちかまえた方が有利やで」
今まで黙っていた霞さんから意見が出ました。
その言葉に合わせるように、他の方々からも同じような意見が出ました。
しかし、この反論は想定済みです。
「袁紹さんが攻めてくるとしたらかなりの人数でしょう。それこそ風達では太刀打ちできないくらいの数のはずです〜。」
「だったらなおさらこちらも大勢で受けて少しでも相手を減らすべきではないのか?」
「華雄さんの意見ももっともですが、それではこちらの被害が大きすぎます〜。それよりは少ない人数で回数戦うのがいいでしょう」
「しかしなぁ……」
「また、相手の武将は文醜さんと顔良さんです。文醜さんはかなりの派手好きと聞きます。こっちの人数が少ないと感じたらやる気をなくすかもしれません〜。顔良さんは冷静に分析すると思いますが、袁紹さんや文醜さんに言われたら反論できない性格です〜。」
私の意見に皆さんが黙ってしまいました。
ただ一人、詠さんだけは私の言葉に頷いています。
「それに最低人数だといざというときに逃げられます〜。その際に兵糧に火を付けて残さないようにすれば、ただでさえ人数の多い袁紹軍の動きは鈍くなるはずです〜」
「兵糧は必要な量を持ってくるものではないか?」
「用意しますね〜。ですが、人数が多ければそれだけ兵糧の量も多くなります〜。それを運ぶというだけでかなりの労力を必要となります〜」
「現地調達を見越した量にするわけか……」
「そうなのですよ〜」
私の意見にみなさん頷いてくれました。
「私はまだ半信半疑なのだが、風の意見を元に準備を行う!!」
こうして白蓮さんの言葉で、対袁紹さんの準備を行うことになりました。
風ストーリーの第12話です。
なんとか、今月中にアップできてよかった…。
献帝の件…
実際にこうやって皇帝から色々褒美があったかどうかは分かりません。
ですが、まあこういうやりとりも悪くはないと思います。
一刀を取り込もうとする件、そしてあっさりと諦める、献帝の心情も色々考えてはいたのですが、それを書くだけの気力がなかったです。
なので、機会があればそのあたりを補完する話もかけたらと思います。
地位ですが、一応ネットで調べてこの時代のものというものを使ってみたのですが、歴史に疎いため違っているかも…。
間違っていたらごめんなさい。
次からは、群雄割拠して争いの時代になっていくわけですが、ちゃんと書けるかなぁ。
でも、頑張って書いていこうと思ってますので気長に応援お願いしますね。
今回もご覧いただきありがとうございました。
説明 | ||
真・恋姫無双の二次小説です。 風の視点で物語が進行していきます。 今回も期間があいてしまいすみません。 最近この作品の方向性を見失いつつあるような気がします…… でも、頑張って書いていこうと思ってますので見捨てないでくださいね。 誤字脱字報告、感想、叱咤激励お待ちしております。 |
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コメント | ||
2p 献帝の一人称 「予」→「余」。皇帝だから「朕」のほうが一般的ですが。(秋-aki-) 呂布はどうなったのでしょうか?まぁあまり劉備陣営の武将を引き抜くのも可哀想なので、おとなしく桃香の元に行くのがいいと思いますが…。(マフェリア) 一刀君は、ここでもフラグを強固に(以下略)私的には痛い、稟さん離脱を補うほどの収穫を得た白蓮さん陣ですが、袁紹軍との衝突は歴史上でも地理上でも避けられそうにありませんね。兵力の差は覆しようがありませんので。反董卓連合前後で大きく充実した白蓮さん陣が『上手く』巻き返せるといいのですが…(レイン) いまごろ周りに当たり散らしているだろうなw(ブックマン) まあ帝にしても「天の御使い」という肩書きのある一刀を側に置いて置きたい位窮していたでしょうしw何だかんだ言っても知識・能力的にもですがwさていよいよ次章から金髪ドリルとの決戦に入る・・・のでしょうか 人材的には圧勝なんですが果たしてどんな展開になるか楽しみです(村主7) |
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