恋姫異聞録6
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「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・以上です。」

 

「次、経理部門っ」

 

春蘭の声が響く、俺たちは黄巾党を討伐後、城に戻り朝廷からの使者より曹操様が西園八校尉に命ぜられたことを伝えられた、そして元黄巾党に職や土地を与え自分の領土に受け入れることで大忙しとなっているわけだ

 

「では次、警備隊と新兵訓練の報告をっ」

 

「は、治安なのですが鳳の法により黄巾の民が争うことなく溶け込んでいます、おかげで特に悪くなっていることはありません。それと前に、割れ窓理論をお話したと思いますが、更に色彩心理学を合わせ、より犯罪率を下げようと思うのですが」

 

「色彩心理学?何かしらそれは」

 

曹操様の促す声に従い俺は二つの板を箱から取り出し差し出した。

 

「論より証拠ではないですが、ここに赤い板と青い板があります。どちらかを先ほど少し暖めておきました、触ってみてください」

 

曹操様は少し怪訝な顔をして二つの板を交互に触ると「赤ね、こっちのが少しだけ暖かい気がするわ」との言葉を確認しその板を箱に戻して今度は真っ白い板を二枚差し出す

 

「?これは・・・・・・変わらないわね、どちらも同じ暖かさよ?」

 

その言葉を聴き、目の前で板をひっくり返す

 

「あ、これはさっきと同じ板?どうして?」

 

「色は人に与える影響が大きいのです、赤なら火や情熱、青なら水や冷静、紫は死と高貴な物を表す。」

 

そこで合点がいったのか曹操様は顔を子供のように笑顔にして満足げに「それは使えるわね」とおっしゃった

 

「ですから、酒家などの内装に青を使わせて、治安の悪い箇所に青で塗装といったようにしたいのですがよろしいですか?」

 

「フフフッいいわね、かまわないわ、それと我が軍の旗も青を基調としましょう、戦場では冷静さがもっとも大事よ、桂花、そのように手配なさい」

 

なかなかやるじゃないのっ!といった感じで睨んでくる、褒めてくれるのは良いんだけど睨みながらなんだよな、あれはどうにかならないものなのか?

 

「では解散っ!」

 

春蘭の会議終了の声が響き、いつものように一人残っていると凪たち三人が寄ってくる

 

「何や隊長?いかへんの?」

 

ここ数日、警備の仕事に彼女らを加えてから呼び名が隊長に定着してしまった。

まあ気分の悪いものではないのだけれど、隊の人間は男が多かったから変な気分だ

 

「ああ、俺は曹操様に違う報告をするときがあるんだ、結構重要な話で人払いをしてから話すんだよ」

 

「ええ〜!そうなの〜?じゃあ沙和達も出なきゃなの!」

 

「隊長、それは長くなるものですか?よろしければ昼食を一緒にと思ったのですが」

 

「ああ、それはうれしい誘いだな!だったら屋敷に行って涼風と一馬を呼んできてくれないか?皆で食べに行こう」

 

そういうと真桜は「親馬鹿やな〜」などとからかってわかりましたと三人は部屋を出て行った。

親が子供を好きで何が悪いんだ?というかやっぱり俺は親馬鹿なのか??

 

「さて、今日はどんな話を?」

 

曹操様は相変わらずだ、さて何を話そうかな?

 

「そうですね、先ほどの色彩心理学に似た話を、絵画心理学などどうでしょうか?これは色だけでなく書いたもので相手の病気箇所や、精神的な問題点などが見えてくるんですが・・・・・・・」

 

話し終えると、いつものように満足顔と内容の反芻、このときの顔が一番いい顔をされている

私の一番好きな顔、戦が無くなりこの顔が続くようにしなければ

 

「ふぅ、ところで昭、一馬との契りは今日だったかしら? 」

 

「ええ、皆時間が取れないようなので待たせてしまいましたがようやくです。」

 

「私たちにも席に出て欲しいなんて貴方らしいわ、秋蘭と貴方の料理を楽しみにしてるわね。」

 

そういうと「あの子たちがお腹をすかせて待っているわ早く行きなさい」と言われた

どうやら期待されてるようだ、緊張してきたな、後で秋蘭と相談しないと、そう考えながら部屋を後にした

 

 

 

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ー中庭ー

 

 

「なんや?隊長、さっきまで一緒に飯くってたと思ったらどこいったんや?」

 

「ああ〜!あそこの木のとこで寝てるの隊長なのっ!」

 

「本当だ、どうしようか」

 

そう中庭の木の下で寝る一人の男性を見る、その姿は両手に包帯を指先まで綺麗に巻き

薄手の黒い外套を羽織っている

 

「三人してどうしたの?あ、昭様寝てるね?」

 

そう後ろから話しかけてくるのは頭に鉢巻をつけ緑色の軽装の鎧を身に付ける青年一馬

 

「お?劉君やないか、いやな〜隊長がねとってん!だから仕事どうしよかな〜って話しとったとこ。」

 

「そうなの〜!一馬も隊長に用事?」

 

「ええ、私も今日から警備隊の一員になるので、皆さんよろしくおねがいします。」

 

そういって三人にぺこりと頭を下げた

 

「こちらもよろしく頼む、て真桜っ何をしてるんだっ!」

 

呼ばれた真桜は、寝ている昭の綺麗に巻かれた包帯を取ろうとしている

 

「いやな、気になるやん!あの秋蘭様があそこまで敏感に反応してるんやで」

 

「沙和も気になるの!それに傷つけるわけじゃないから大丈夫なの〜!」

 

そういって沙和までもが包帯をはがそうとする

 

「ちょっと待ってください、いけませんよ!そんなことしたら秋蘭様が悲しまれます!」

 

「そうだぞ!沙和、真桜!やめないかっ!」

 

二人ははがそうとする二人を止めに入るが

 

「凪だって、気になるやろ?ええやん、ちょっとだけやって!ばれへんよ!!」

 

うう、といいながら強く説得され凪の手はとまってしまう

 

「凪さん、だめですよ!昭様も悲しまれますよ!」

 

一馬が二人の強引さに負けそうになるその時、後ろから綺麗で落ち着いた声が掛かる

「お前たち何をやってるんだ?・・・・・・・・・む?昭ではないか」

 

その声に四人は驚き汗をたらたらと流している、真桜に至ってはゆっくり隠しながら昭の手を元に戻している

 

すると「んんんん・・・・・・っ」という声が聞こえそちらに秋蘭が目線を向ける

 

「すまないな、起こしてしまったか」

 

そういうと昭の頭の近くに正座し膝をポンポンと叩き「こっちだ」というと、もそもそと動き膝に頭を乗せまた眠ってしまう、昭を優しい目で見ながら秋蘭は膝に乗った頭を撫で前髪で遊ぶ

 

「悪いがお前たち用があるようなら後にしてもらえるか?昭は三日寝てないんだ、真桜に作ってもらいたいものを夜中に書庫へ入って纏めていたようなのでな」

 

「「「三日もっ!!」」」四人の声が同時に発せられる、かなり大きな声になったのだが起きる様子は無い

 

「すいませんっ!て、あれ?全然おきませんね?」

 

「ああ起きんよ、昭は眠りが深くてな、一度寝たら華琳様か姉者、私か涼風で無いと起こせない、後は自然に起きるのを待つかだ」

 

「ええっ!それって寝てるところ襲撃されたら終わりなの〜!」

 

だから普段は華琳様に閨に呼ばれない限り一緒に寝てるのさ、と答えられ顔を赤くする四人

 

「ところでさっきは何をしていたんだ?起こそうとしていたわけではないようだったが」

 

急にあたふたし始め、思いついたように真桜が話を振る

 

「あ、あのですね書庫ってあの天の知識の書庫ですよね?あそこいっつも親衛隊が交代で見張ってるんですよね?うち一回入ってみたいんやけど」

 

「フフッそれは無理だ、あそこはさっきと同じ華琳様か姉者、私か涼風で無いと入れない、それに入ったところでお前たちには読むことが出来んよ、天の国の言葉で書かれているからな」

 

それを聞くと残念そうにうなだれる

 

「真桜ちゃん残念だったの〜!あ、それなら秋蘭さまは天の国の字が読めるの?もしかしてっ!!!まさか春蘭さまむぐゅっ!」

 

まずいことを言ったと思った真桜は沙和の口をふさぐ、それを見た秋蘭は笑いながら

 

「かまわんよ、姉者があまり頭がよくないことは皆知ってるからな、だが天の字は読める、昭が教えたからな」

 

「?隊長が教えると春蘭様は覚えるんか?なんでですか?」

 

「昭は教え方がうまいのだよ、教えるとき決して馬鹿にしたり怒ったりはしない、わかるように何度も噛み砕いて教えるのだ、姉者はすぐに頭に血が上るがあれなら最後まで聞くだろう」

 

そういうと四人は感心したように目線を昭に集める

 

「だから姉者は昭を師のように思っていてな、頭が上がらんし、言うことを聞くのさ」

 

「なんとなくわかるような気がするな〜、隊長へんに落ちついとるし歳が凄く上に感じるときあるわ」

 

「そういえば春蘭様が会議のときに、隊長に説明を受けていたところを何度か見かけましたね」

 

凪と真桜の言葉を聴くと、少し誇らしげに秋蘭がはにかむ

 

「姉者は一度聞いたことがあるらしい、何故お前は馬鹿にしないのかと」

 

「隊長は何と答えたのでしょうか秋蘭様?」

 

「馬鹿?誰がだ?春蘭が?何故だろう、俺には解らないよ春蘭を馬鹿だという奴が、だって春蘭は解らなければ解らないままにせず俺に聞いてくるじゃないか、一番愚かなのは解らないことを知ったふうにしているものを言うんだよ、だから春蘭はとても賢い人間だよ、とな」

 

「へぇ〜!なんか凄いの隊長〜!!じゃあじゃあ、そんなところを秋蘭様は好きになったの〜?」

 

「そうやな〜、悪いけど顔は普通やし見た目も普通、ぱっとせんし秋蘭様とつりあうかって言うと力不足って感じやで」

 

沙和と真桜、凪がものすごく興味に満ちた目で秋蘭を見る、それを少し驚き苦笑し、また膝の上の頭をなでる

 

「私は、私は最初そうでもなかったさ、ただ華琳様と一緒にいる男としか思ってなかった、多分・・・・涼風も、華琳様の言いつけで閨を共にしたときに出来た子だからな・・・・・・・・」

 

「え?それって・・・・・・」

 

そう真桜が言った瞬間、遠くから大きな泣き声が耳の届き、その声に反応するように寝ていた昭が跳ね起きる

 

「涼風っ!どこだっ!お父さんはここだぞっ!」

 

「うあああああ〜!おとうさ〜んっ!」

 

遠くから聞こえる声に向かい全速力で駆け出す、それを見て四人は呆れ顔になり、秋蘭一人が笑い出す

 

「クックックックッまったくあやつは、そうそう一馬、夜は酒宴だから少し早く来てくれ、お前たちも今日は遅れずに来てくれよ」

 

「はい、わざわざありがとうございます、凪さん沙和さん真桜さん今日はよろしくおねがいします。」

 

三人はうなずき、一馬を引き連れ昭の元へ走って行く、それを目で送りながら残された秋蘭はつぶやく

 

「・・・・・そう、最初は何とも思っていなかったのにな、今では私の方が・・・・・」

 

 

 

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ー夏侯邸ー

 

 

 

「あちちちちっ!一馬っ!皿っ!皿とってくれ!」

 

「はいっ!昭様!これでしょうか!?」

 

「よしっ!これをのせてっと、後は飾り付けを・・・・って一馬、違うだろ?」

 

一馬は少し恥ずかしそうに頭をかきながら言ってくる、まあすぐにはなれないだろうがな

 

「はい、あ、兄者、すみません」

 

よしっ!と俺は言うとガシガシと頭を撫でる、とりあえずは呼びなれないとだめだからな、これも練習だ!

 

「二人とも、そちらは出来たか?皆待っているぞ」

 

「出来たぞ〜!涼風も手伝ってくれたからな、運ぶの手伝ってくれ秋蘭」

 

涼風はそれを聞いて胸を張って得意げになっている、まったくなんでこんなに可愛いのだろう

と涼風の頭を撫でていると、お前も運ぶのだろ?と秋蘭に額を指ではじかれた、これが結構痛いっ!

 

屋敷に集まってもらったのは警備隊の皆や古参の兵士達、それに曹操様を初めとする将の皆が着てくれた。料理足りるかな?などと思っていると秋蘭から始めるぞという声が掛かる

 

「皆さん、今日はお集まりいただきありがとうございます!今日より俺の義弟となる劉封です!

俺の家族となりますのでこれからよろしくおねがいしますっ!」

 

一馬の紹介をすると今度は一馬が前に出て

 

「私は劉封と申します、このような席を設けていただきありがとうございます、あの、私はこれより昭様の義弟にしていただくわけなのですが、その前に私の話を少し聞いていただけないでしょうか?」

 

突然そんなことを言い出したが、俺は何も疑問も不安も抱かず「続けて」と促す

 

「私は、元々は寇封という名でした。寇家はそれなりに栄えた家だったのですが、、周りで五斗米道が広まり私の家に働いていたものが次々とその教えに感化され衰退していきました。」

 

家の者全員が供物を差し出していればいくら五斗米道が人から多量のお布施を搾取しない教えだとしても

衰退する、ぽつぽつと話す一馬の声に皆耳を傾ける

 

「それに目を付けた盗賊に家族を皆殺され、幼少の私は命からがら逃げ出しこの陳留の村人に拾われました。それが二番目の家族、そこで私は劉の名を頂、養子にまで迎えていただきました。」

 

一馬は幸せそうに目を細め笑う

 

「そこではとても幸で、友もでき、家族も私に優しくしてくれました。だけどそれも賊によって失いました。私は、賊に堕ちるのことが理解できないわけではありません。その人たちはきっとそれしかとる道が無かったのかもしれません」

 

彼の目は涙が滲み出し、頬を伝い、流れ落ちる

 

「ですが今、私に三度目の家族が出来ようとしています。今度は、今度こそは家族を失いたくないっ!賊に堕ちる気持ちを解ると言いましたが私はっ、私はもうあんな思いはもう二度としたくないっ!・・・・だからっ私は戦います、兄者とともにっ!私と同じ思いをする者を一人でも減らすためにっ!家族を失わないためにっ!」

 

そこまで話すと一馬は涙で顔をくしゃくしゃにする、そうだな、また死ねない理由が増えた。

そう思いながら、俺は義弟の頭をゆっくりと撫でた

 

「一馬、泣くなっ!今から泣かれては兄はこれからが心配で簡単には死んでいられん!」

 

そういうと周りの兵士達や警備兵が笑い出し、隊長は俺たちがしっかり守るから心配するなという声が上がる

 

「さあ、義兄弟の契りを交わすぞっ!」

 

俺は杯に酒を満たし一馬に渡す。一馬もまた酒を満たした杯を俺に渡してくる。

 

「「我ら二人、生まれた時は違えども、願わくば同年、同日、同時刻に死ぬ事を」」

    「「そして曹操様の為、民のためこの身を捧げることを誓う!!」」

 

まっすぐに視線を交わし、一気に酒を煽り、そして周りから声が上がる

 

「隊長っ!こっちこっち!!酒、浴びるほど飲ませていただきますよ!なんせ全部隊長もちですからねっ!」

 

「おまえらっ!人の金だと思っていい度胸だなっ!明日仕事できなくなるまで飲ませてやるっ!」

 

俺は兵士たちの輪に引きづられながら、こいつらしょうがない奴らだと近くの兵士の口に酒瓶ごと突っ込んでやった。明日は酔っ払っていようがみっちりしごいてやるぞー!と叫び皆からはブーイングの嵐を受け、もみくちゃにされる

 

 

「一馬、今日から私のことは姉者と呼べ、それと、ありがとう」

 

「は、はい秋蘭さ・・・・・・すいません姉者、でも、ありがとうとは何でしょうか?」

 

「フフフッ、一番喜んでいるのは昭だよ、あやつは涼風以外に血の繋がった家族がいない、だから

わざわざこんな席をもうけて、家族が増えるのがうれしくて仕方が無いのさ。」

 

「それは私もです、姉者、兄者のことはお任せください、必ず守ります。」

 

 

 

 

「ああ、ありがとう頼りにしているよ。弟よ・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

説明
今回は拠点フェーズ的な話です
義兄弟の契りの言葉が少し追加されてますが
そこは暖かく見守る感じでお願いしますw
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コメント
ブックマン 様コメント有り難うございます^^懐かしいですね幽遊白書!!(絶影)
某邪眼師を思い出しますね。(ブックマン)
南華老仙様、申し訳ない!包帯は秘密ですwちなみに布槍術は私の中でマスタークロスですw(絶影)
ああっ、包帯が気になる!!特殊能力ではないみたいですがそうなると・・・・・・まさか布槍術!?(南華老仙「再生(リボーン)」)
pomuo 様、包帯は結構先になりますのでしばらく明かされません^^;膝枕いいですよね〜!きっとこんな感じになるはずです秋蘭はっ!!(絶影)
うーん、包帯の謎、気になりますね・・・ しかし、私の興味は秋蘭の膝枕の一択だだだだ!!!(pomuo)
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