真・恋姫?無双 〜想定外の外史〜 1 |
「何か覚えてる事はないのか」
「……分からない」
男は少し悩み壁に飾ってあったやや太めの剣を指をさす。
「剣?」
「じゃあこれはどうだ」
次に男は卓の上に置いてある筆を持った。
「筆じゃないの?」
それからもいくつか男が物を指さしたり持ったりと確認を取った。
どうやら男は俺がどの程度の記憶を持っているか知りたかったらしい。
「じゃあお前が倒れてた時に落ちてたこれは何だ? 見たこともない言葉が使われてるんだが」
「これは……生徒手帳?」
「生徒手帳?」
「うん、書いてある事は読めるけど何に使うのかは……」
「覚えてないと」
「うん」
「じゃあ次は……あー、もういいや」
気が長い方ではないようだ。
「確認するぞ、自分が誰かも分からない。身分を証明するものもない、つまりお前が誰か誰も分からないわけだ」
「そうなるね」
「妙に落ち着いてやがるな」
「だって、何も覚えてないから」
何もかも分からないのだからも落ち着くしかないじゃないか。
「まあ記憶がないなんて俺が経験したことないから分からんが、最も、経験したくもないがな、それで? これからどうするつもりだ」
「え? いや、行くあてもないし、良かったらここに置いてくれたら嬉しいんだけど……」
見るからに嫌そうな顔をする男。
「はあ? 男と二人暮らしなんて御免こうむるぜ、何を好き好んでおま……あー、お前、名前も覚えてないのか、お前お前言われんのも嫌だろ」
「名前? 名前は……」
どこかに自分の名前を証明するものがないか服をあさってみる。最初の男とのやり取りでこれがこういうもの、例えば盾を見れば盾だとか剣は剣だとかは分かるのだが、昔の事を思い出そうとするとどうしても駄目だった。
ポケットを漁ったり生徒手帳のページを開いたりしていると生徒手帳の後ろの方に名前が書いてある事に気付いた。
「……北郷……一刀? うん、北郷一刀だ。俺は北郷一刀」
これが天の御遣いとアニキの外史の出会いだった。
男(アニキと言うらしい、名前は教えてくれない)に拾われてから数週間が経過した。最初は俺と同居する事を嫌がっていたアニキだが俺が文字の読み書きが出来る事を知ると一変して友好的な態度を取るようになった。
何でもアニキは金が無かったから俺の面倒を見るのが嫌だったようで自分で稼ぐ事ができるなら文句はなかったらしい。まあ知らない男と二人暮らしってのも嫌だったのは本当だったらしいが。
そんなこんなでアニキの代わりに仕事をこなすようになってから数か月が経った。
過去の記憶は相変わらずだったが知識については問題なくなってきた。時折アニキの知らない言葉を使ってしまうのだがもしかしたら別の国の言葉なのかもしれないなとアニキに言われた。
そんな中、ある日を境に、アニキはすっかり働かなくなってしまった。
「アニキは今日も天和達の所に行くのか、たまには俺の手伝いもしてくれよ」
「素性のわからない人間を拾って助けてやったんだからそれぐらい気にせずやれよ、それに天和じゃない、天和ちゃんだ!!」
「はあ」
最近、アニキはこの街にやってきた三人の歌手に一目ぼれし毎日歌を聴きに行っている。はじめはそんなことは知らず、楽しそうに仕事の為に家を出るアニキを不思議に思っていたが、偶然黄色の頭巾をかぶって『天和ちゃん愛してるよー!!』と言っているアニキの姿を見てもう駄目だこの人と悟ってしまった。
案の定アニキは仕事を辞めていて、その三人組にお金などを貢いでいた。
幸いにもこの数カ月で十分な蓄えを確保していたし、アニキの言うとおり命を助けてもらった身としては文句が言いづらい。
「おお、そうだ!!」
アニキは突然俺の肩に腕をまわしてきた。さっきまでやたらと鋭く気持ちが悪い踊りをしていたので非常に汗臭かった。
「今日は天和ちゃん達の打ち上げがあるんだ、お前も来いよ!! いいや、絶対に来い!!
来なかったら殺す」
目がマジです。殺さないでください。こうして俺もアニキに無理矢理打ち上げに参加する事になってしまった。
強制参加で参加した打ち上げでは俺は大変な目にあっていた。
「ねえ一刀聞いてよ〜」
「あ、ああ……」
「あー! お姉ちゃんずるい!! 一刀は私の物なんだから!!」
「そんなの決まってないも〜ん、ねえ一刀、あんなチンチクリンよりも私の方がいいよね〜」
「むきーっ!!」
「もう姉さん達、恥ずかしいよ」
「「「(あいつ殺す!!)」」」
打ち上げの会場に着くなり俺は三人の女の子、天和と地和、人和に興味を持たれてしまう。俺にとっては普通の制服だが初対面の人には不思議だったらしい。さらに
「お兄さんちょっと顔が好みかもー、私の事天和って真名で呼んでいいよ」
と爆弾発言。
「え〜こんな奴のどこがいいのさ」
「……」
と印象が良くなった二人とも、ファンクラブの話やサインの事を説明すると眼鏡の女の子に好感を与えたのか人和でいいと真名をもらうことになった。もう一人の子は私だけ真名あげてないのは何か嫌だという理由で真名をもらうことに。
それからも打ち上げは飲めや食えや、酒を飲み料理を食いのどんちゃん騒ぎが続き、今に至る。
ちなみに三人の真名はまだ誰も呼ぶ事が許されていなかったらしくアニキ含めファンクラブメンバーから殺意を感じるほど恨まれてしまった。
「ねえねえ一刀」
真っ先に真名を呼ぶ事を許した天和が腕を組み胸を押しつける。実にけしからん。
「一刀の国の『まねーじゃー』……だっけ? 一刀がなってから嬉しいなー」
「あ、それいい!! 顔もそこそこ良いし頭を良いみたいだし、ねえ人和」
「私も姉さんたちを管理してくれる人がいると助かる」
「いやいやいや!?」
魅力的だけども!? でもあなた達の後ろから物凄い殺意感じるんですけど!!
お気に入りの天和ちゃんと話す機会を失い真っ先にやけ酒に走っていたアニキがふらりとやってきて、誰にも聞こえない声でポツリ。
「分かってるな?」
「……(泣)」
首を縦に振る選択しか俺には残されていなかった。高速で何度も首を振る。
天和がいる方に振りかえりながら
「気持ちは嬉しいんだけど……うっ……」
断ろうと振り返った俺に対して天和は更に胸を押し付けてきた、地和は泣きそうな顔で上目遣い、そして人和はイヤイヤと首を横に振っていた。
アニキを見る。
天和を見る。
ファンクラブの人を見る。
地和を見る。
アニキを見る。
人和を見る。
「……やります」
ああっ!! 声が勝手に!!
「「「やったーー!!」」」
その瞬間天和達三人が一斉に飛びついてきた。
「うわっ!!」
柔らかくて大きなマシュマロ一つと発展途上のマシュマロ二つに押しつぶされ頭を打った俺は呆気なく気を失ってしまった。
後日、北郷一刀マネージャー命名「数え役萬☆姉妹」とアニキ率いる黄巾党が誕生した。
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プロローグの続きです。 下手の横好きで申し訳ないのですがこれから上手くなって行けたらいいなーと思います。 |
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コメント | ||
何だか哀れだな一刀(スターダスト) アニキはかませ犬ですね。(ブックマン) MiTi さん、ありがとうございます。これかも良い意味で期待を裏切れたらいいなと思います。(シャミセン) 森番長さん、デク……です……か? どうしよう……(シャミセン) 自由人さん、一応そんなこんなで数カ月がたった設定です。誤字の指摘ありがとうございます。訂正しておきました(シャミセン) ゲストさん。扱いが難しいんですよねあの二人、特にデクが(シャミセン) 村主さん、まあアニキも結局は良い人なんで大丈夫ですよ……多分(シャミセン) 黄布√とか…マジ想定外だな!?が、それが面白い!!(MiTi) アニキ√→黄巾√へwwwwチビとデb・・・デクは?(森番長) 恩人のアニキと対立してまで…記憶はなくとも種馬か!?まさかマネージャーから黄巾党の…ヤバイ〜、続きは気になるです! 御報告 2p:この数カ月で十分な蓄えを確保/拾われて数週間では? 文句が良いづらい/言いづらい 3p:印象がさほど良くなった二人とも/良くなかった二人とも ではないでしょうか? 意図的でしたらすみません。(自由人) チビとデクのがいないからこれからなのかな?出会いが楽しみですw(ゲストさん。) アニキ√決定なんすかwwwしかしながら微妙な立場になった一刀さんの行く末は!?そして殺意を持ったアニキ率いる黄巾党とのやり取りやいかにw(村主7) |
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