連載小説131?135 |
いきなり「ジャージが好きだ」と言い出した香奈ちゃん。
おやおや? なんか、話が思わぬ方向へ進みだしたぞ?
「か、香奈ちゃん? ジャージはどうかと思うんだけど…」
「何言うてんねん。人の好みはそれぞれやろ。なんも言わんと、
ジャージの店案内してぇな。友達やろ?」
「だとさ。知ってたら案内してやってくれよ」
「えぇと、えりか…私に一任してくれていいけど…どうする?」
楓はお店をしってる様子。でも、私は知らないぞ?
「ちょっと…」
「何?」
私は楓を引っ張って、少し離れる。
「あのさ、楓はお店知ってるんだよね?」
「そりゃ、ね」
よし、それは確認OKだ。
「でさ、それはさ、このフロア?」
「いやいや、さすがにそれは」
て事は…
「別フロア? それとも、他の場所?」
「他の場所に決まってんじゃん。さすがにこの中にはないよ〜」
やはりそうか!
「じゃあ、わたしの話に合わせてね」
「いいよ。自信ないけどやってみる」
私は楓を連れて二人の元へ戻った。
「お待たせ〜」
「で、どうなん?」
私はもったいつけて咳払いをすると、説明を始めた。
「結論から言うと、ここにはないって」
「え〜〜? なんやそれ。がっかりや…」
その様子は、あまりにがっかりして見える。そんなに…
「でね? 他の場所にはあるって言うから、一旦ここ全部見終わったら、
みーちゃん達とも合流して、一緒に行こうと思うんだ。どうかな」
「ま、まぁ、他に場所があるんやったら、それでええし、案内してくれるんやったら、それでええけど」
ほ。よかった〜。
「じゃあ、そういう事だから、今しばらくは私達に付き合ってね」
「ええよ。別に、ジャージ以外興味ないっちゅうんともちゃうしな」
ほ。よかった〜。
「じゃ、そういう事で、私の判断でお見せ回るけど、いいかな」
「ええよ」
よし、なんとか軌道修正完了だ。
「じゃ、しゅっぱつ!」
〜つづく〜
ジャージ要求を無事乗り切った私達は、
六階のお店を回っていた。
「ねええりか、これよくない?」
「げ。楓、またフリル…」
「ん? 楓、こういうの好きなんか?」
おや? 香奈ちゃんが食いついて来たぞ?
「そうなの。スポーツ少女なのに意外でしょ?」
「そこ、意外って言わない」
「せやけど、そういう服やったらうちもぎょうさん持っとるよ?」
え?
「え、本当?」
「ホンマや」
楓…目が輝きだしてる…
「じゃあじゃあ! 今度見せてもらっていい?」
「当然や」
ジャージにフリフリ…共通点が二つも。こりゃ…私疎外感だわ。
「えっと…関東在住だよね?」
「当然や。もう十年以上住んどるよ。せやから、遠慮なく遊びに来たらええよ」
ぎゃーーー!
「ぎゃーーー!」
「ぎゃーーー!」
ん?
「加藤君、なんで叫ぶの?」
「お、俺の彼女が浸蝕されつつある…」
新色? あぁ、浸蝕か…
「なんかさぁ、浸蝕っていうか…ものすごい共通項があったみたいだね…」
「ぐあぁぁぁ!」
叫び続ける加藤君を、私はただただ乾いた目で見つめる事しかできなかった…
〜つづく〜
叫び続ける加藤君。
彼女が浸食されつつある。て事らしいけど…
「加藤君。これさ、浸蝕じゃないから。明らかに仲間だから」
「認めたくないんだよ! 認めたく!」
とは言っても、これじゃあねぇ。ジャージにフリフリ…センスはともかく、
女の子同士だもん、服のセンスが一致したら、それはもう同志だよ。
「認めちゃいなよ」
「嫌だぁぁ!」
あ〜ぁ。
「嫌っていうけど、なんか理由でもあるの?」
「理由? そうだなぁ…理由かぁ…」
加藤君…もしや…
「理由、特にねえ。ただ、あいつが俺以外の奴と仲良くなるのが嫌なだけで…」
「そ、それだけかい!」
私はもう、開いた口が塞がらなかった…
〜つづく〜
加藤君が叫び続ける理由。
それを聞いた私は、唖然としていた。
「あのさ…私彼氏いないし、今は欲しくもないけど、そこまで独占するのは、
どうかと思うよ?」
「だ、だけど!」
だけどと言われても、やっぱ納得できない。それとも、男の子って、こんなもの?
私には理解できない独占欲だけど、それが普通なの?
「それに、独占欲自体も理解できないけど、それを考慮しても、楓は女の子なんだし、よくない?」
「むむむ…それは一応分かってるんだが…どうしてもな…」
なんだろう。なんか事情でもあるのかな。
「えーっと、加藤君。何か事情でもあるの?」
「事情? なんのだ?」
げ。それくらい察してくれよ…
「なんのって…そこまでの独占欲を発揮する理由だよ。なにか事情があれば、
だけどさ」
「あぁ、その事か。それは、俺が香奈と付き合う事になった理由に遡るんだ…」
げ。語り始めたよ。でも、面白そうだ。私は耳を傾けてやる事にした。
〜つづく〜
香奈ちゃんとの出会いから話し始めた加藤君。
長くなるのかなぁ。どうかなぁ。
「あれは何年も昔の事だ…」
「む、昔話なの?」
昔話だと、長くなりそうだ…
「関西から転向して来た香奈は、あの性格と言葉遣いで、いじめられてたんだ…」
「ありがちだけど、そうだったんだ…」
今の姿からは想像できない元気さ加減だけど、確かにいじめられそうだ。
特に、言葉の違う子はいじめの標的になりやすいからなぁ…
「そこでだ。俺は正義の味方のごとく助けに入ったんだ」
「ほうほう。じゃ、それがきっかけで付き合うようになったんだ」
これもきっかけとしてはありがちだけど、いい話だねぇ。
「そんなあっさりじゃねーって」
「え。そこで付き合い始めたんじゃないの?」
なんか、拍子抜け。というべきか、もっと紆余曲折あった方が面白いと思うべきか。
「そこでだ、俺は香奈に惚れられちまったんだが、俺はその時香奈の事を
特別どうとも思ってなかったんだ」
「うわ、ひっど〜」
なんとも思ってないなんて、まじひどいわー。
「ひどいって言うなよ。あの時は付きまとわれて大変だったんだ!」
「大変ねぇ。で、今にして思えば?」
そりゃ、気がない相手に付きまとわれたら大変だろうけど…
「今にして思えば…あんなおいしい事はなかったな…と」
「変態…付きまとわれて嬉しいなんて、変態じゃん」
キヒヒ。いじるネタ一個ゲット。
「言うなよ」
「それより、付きまとわれて大変だったのが、なんで付き合う事になったのさ」
「それはだな…」
「うちが話したる!」
え。
「か、香奈ちゃん?」
「香奈ちん、乗り乗りだね〜」
「はぁ…俺が話すっつってんのに」
話がどう転ぶのか、楽しみじゃ楽しみじゃ!
〜つづく〜
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第131回から第135回 | ||
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