連載小説136?140 |
香奈ちゃんと加藤君が付き合う事になった経緯を説明し始めた二人。
香奈ちゃん、一体何を語ってくれるんだろう…
「ま、今清隆が説明したようにやな、最初はうちの一方的な片思いやったんや」
「ほうほう」
私と楓は香奈ちゃんの話を聞く。加藤君は耳を真っ赤にしている。おもしれー。
「せやけどな、このままやったら前に進まへん。そう考えたうちは、
方向転換に走ったんや」
「方向転換ねぇ」
一体どういう方向に転換したんだ? 猪突猛進から…
「まず、清隆にもうちの事を好いてもらわなあかん。そう思ったうちは、
うちの魅力を伝える事にしたんや」
「なるほど、香奈ちゃんの魅力を伝えて、好きになってもらおうとしたんだ」
「で、どういうやり方をとったの?」
その辺の、具体的な手法っちゅうのが気になるよね。私も楓も、
ついつい目が輝いちゃうじゃん。
「まず、うちが家庭的な女の子やっちゅう事を伝えよ思て、でぃなーに
招待したんや!」
「ディ、ディナーに招待?」
「こりゃまた…随分一足飛びな…」
「ったく…あんま話すなよ、その辺の事…」
お、恥ずかしがってる。やっぱ、恥ずかしいわなぁ。
「なんであかんの。うちと清隆の事やん。うちがええ思たらええやんか」
おお、尻に敷いてる。やっぱり、生で見ると強さが伝わって来るなぁ。
「で、どうだったの?」
「うんうん。気になる気になる」
「それがな、清隆の奴、誰が行くか! 言うて、断って来たんや」
あはは〜。そりゃ、普通断るよなあ。いきなり気のない相手に誘われちゃ。
「じゃ、次なる手は?」
「次も何もないわ。まずは家庭的な所をアピールせな注ぎに進めへん。
そやから、ディナーはやめて、土曜日のランチにしたんや」
「あっはっは! ディナーで断られたからランチにした、ていう所、
香奈ちんらしーわ!」
「〜〜〜〜〜〜っ!」
ランチ作戦は一体どうなったんだ? 私は気になって気になって、加藤君を制止したい気持ちになった。
〜つづく〜
香奈ちゃんを制止したい加藤君を制止して、
私たちは香奈ちゃんの話に聞き入った。
「ランチ作戦はどうだったの?」
「ふっふっふ、大成功や!」
「何が大成功だ! 強引に俺の家に押し掛けてきやがって!」
え。
「そーだったの?」
「ま、まぁ…あれや。結果オーライっちゅうん? それやで」
「あれで俺がさらに引いたの、忘れたのかよ」
逆効果だとは…予想通りだけど…
「なんか、おつきあいとはまだまだ遠そうだね」
「幸せな恋愛っちゅうもんは、道のりが険しいゆう事や」
いー感じに、上手い言葉ではぐらかされたぞ? でも、それが香奈ちゃん流なんだろうな。
「んで、んで、それはそーと、その、香奈ちゃんランチはどうだったのさ」
「そりゃまぁ、美味かったけどな。つっても、大事なのはそこじゃねーだろ?」
「家に押し掛けて来るなんてのは、確かにびっくりだけどさ、香奈ちん、
インターフォンは押したの?」
か、楓の奴…なんて的外れな質問を…
「当然や! うちは、常識をわきまえとる関西人やで!」
「女の子じゃなくて、関西人なんだ…自分の分類。で、ランチ作戦は、
香奈ちゃん的には成功で、加藤君的には失敗だったと」
「つーか、普通引かね? いきなりだぜ?」
ふむ、そこは加藤君の言葉に正当性があるか。
「なんやその言い方。誘っても来てくれへんからやんか」
「俺は気のない相手に誘われても行かないっつの」
それがどうしてこうなったのか…長い道のりをのぼるかんじだなぁ。
「とりあえず、話を整理させて。香奈ちゃんは、家庭的な部分を知ってもらおうと、
ランチ作戦を敢行して、成功したと。加藤君的には、ドン引きだったと」
「ああ」
真逆の結果なのがおもろいね。さて、それで…
「香奈ちゃんの、次の作戦は?」
「次の作戦はこれや。尽くす女作戦や!」
「ほほう」
「はぁ…」
約一名、ため息が聴こえる。
「どんな作戦なの?」
「うちが清隆に尽くすっちゅう…モガモガ! …ぷはぁ。何すんねん!」
「そんないいもんじゃなかっただろ。毎朝うちにやって来て、一緒に学校に行こうとか言いやがって…」
つまり、またしても押し掛け作戦なのか。恐るべし関西人。
「そやけど、あれが成功のきっかけやったんやん!」
「結果論だろ…」
「何々? 事態は急転?」
「楽しみだねぇ」
〜つづく〜
自体は急展開! らしい。
一体どうなったんだろう…ドキドキ。
「急展開って、どんな感じに?」
「あんな、それはやな…」
「俺が話すよ。つまり、諦めたって事」
へ?
「諦めた? どゆこと?」
「あんまりしつこいから、逃げるのに疲れて、距離を置く事を諦めたんだよ」
「で、付き合うてくれる事になったんや」
お、押し切られたって事じゃないか…つまり。
「楓さんや、この流れをどう見ます?」
「どうも何も、根負けしたんなら、香奈ちんの勝ちでしょ」
うぅ〜ん…どうもどっちにも軍配を上げがたい…
「だけど、そんなきっかけで付き合い始めたって事は、嫌々だったんでしょ?」
「まぁな」
「では、なんでそれが今みたいになったのだい?」
「幸せそやろ〜? うちら。大変身や」
確かに、この変わり用は気になる。コレは是非インタビューせねば。
「加藤君。この辺の経緯、教えてくれる…よね?」
「…話したくない」
「ひどっ!」
なんて返答だ。一刀両断だな、私ら。…と、ちょと待てよ?
「今、間があったよね。間が。それ、何?」
「清隆、照れとんねんな。そやろ?」
「〜〜っ! うるさい!」
「図星か…」
楓、突き刺したね、今。
「ま、今更照れないでもいいっしょ」
「うんうん。話しておくれ」
「やって。清隆、ここは自慢するトコちゃうの? 話したってーな」
「…し、仕方ねぇな…くそぅ…」
おぉぅ、楽しみだ!
〜つづく〜
二人が今みたいに仲良くなった経緯を話したくないという加藤君。
しかし、怪しい。ここは語ってもらわねば。
「さ、話してもらおうか」
「や、やっぱ香奈が話してくれ。俺は無理だ!」
「しゃあないなぁ。ほなうちが語ったるわ。言うても単純な話やけどな」
「いいよいいよ。話してよ」
私達は興味津々だった。
「なんぼ清隆が嫌々や言うても、付き合う事になったらデートに行くやろ?
デート!」
「うん、確かにそうかも」
「本っ当〜〜に、当時は嫌々だったけどな」
強調する辺り、加藤君的には本当に嫌だったんだろうなぁ。香奈ちゃんには気の毒だけど。
でも、語る香奈ちゃんの表情が明るいから、きっと気にしてないんだろうなぁ。
加藤君も「当時は」て言ってるし。
「で、デートへ行って、どんな感じだったの?」
「ふっふっふ、よくぞ訊いてくれた。デート言うたらまずはあれや、
手を繋がなデートらしゅうない。そやから、うちは清隆の手を握ったんや。
こないな風にな!」
「お、おい! いきなり…」
いきなり加藤君の手を握る香奈ちゃん。なるほど、こうするとカップルっぽいな。
そして、照れまくってる様がいい。初々しさがいまだにあるのか。
「あの時のうち、こんな感じに手を繋いだやろ?」
「そうだったか? あんま覚えてない…」
ひど!
「清隆、そらひどいわ。うちは清隆のなんやねん! 彼女やろ? ひどいわ!」
「そこまで言わなくても…」
なんか、いかにもな展開になって来たぞ? これはこれで面白い。
「ま、安い芝居はええとして、こないな風に手を繋いだんや」
「ふむふむ。て、さっきのはお芝居だったのか…」
うさんくささはそれが原因だったんだな。納得。
「そんでやな、手を繋いだら清隆、顔を真っ赤にさせよってな」
「〜〜っ!」
逐一恥ずかしがる加藤君がいいなぁ。
「そこからや、もうめろめろやで」
「め、めろめろ…」
久しぶりに聞いた単語だよ、めろめろって。
「めろめろにさせたら勝ちや。せやからこっからやな、態度が変わりよったんは」
「ほうほう」
香奈ちゃんの語りは、まだまだ続くらしい。そういえば、服は…
〜つづく〜
香奈ちゃんの話は続く。
それ自体は面白いからいつまでも聞いていたいし、聞いていられるんだけど…
「ね、ねえ香奈ちゃん」
「ん? なんや? えりか」
ちょいとここらで話の腰を折らないと、私が前に進めない。
「お話中ですっごい申し訳ないんだけど、歩きながら聞かせてもらっていいかな」
「??? あぁ、そういう事か。えぇよ。うちの方こそ悪かったな。
ここで話とったら、いつまでも店に行けへんもんな」
香奈ちゃんは私の目的を理解して、快く賛同してくれた。
それは、さっきの剣幕が嘘みたいな快い態度。
「でも、香奈ちんの話は面白いから、最後まで聞かせてね」
「ちょ! 何言ってんだよ」
という加藤君の言葉はスルーする。
「私も楓に賛同だからさ、この話は続けてね」
「任せとき。うちと清隆のなれそめは、最後まで話したるからな!」
ぽふっ! と胸を叩く香奈ちゃん。いや、そこまで張り切らなくても…
「倉橋、お前〜〜〜!」
「何、いいじゃん。これは、私と楓が将来恋愛する時の参考にするんだから。
それとも何? 加藤君は自分の都合で乙女の恋愛ロードを邪魔する気?」
本当は恋愛なんて全く興味ないけど、これも一種の女の武器、とでも言わんばかりに持ち出してみた。
「ちっ。都合いい時だけ乙女面しやがって…」
「都合いい時だけじゃないんだけど…いつでも乙女面してるんだけど」
「えりかはそうだよねー。私はどっちかって言うと、乙女よりアスリーテスだから」
ア、アスリーテス? 初めて聞く…て、アスリートの女性形か! 楓の奴、面倒な言い回しを。
「楓は運動好きなんやったな。それやったらしゃーないかもな。うちはジャージ好きやけど、女の子捨てとらんで」
「ははは、分かるよ。じゃなきゃ、そんなかわいい格好で出かけないでしょ」
「うんうん」
とすると、フリフリ好きの楓も、別に女の子は捨ててない気がする…
「さて、それはそうと、話の続きをお願いします」
「うむ」
こうして話は再開した。ただし、今回は歩きながら。向かうお店は…
「!」
げ! フリフリ系じゃんか!
「ん? どないしたんや?」
「あぁ、いや、なんでもないなんでもない。それより、話を続けて」
一抹の「いや〜な予感」を振り切るように、話を促した。
「手を繋いだ後から、清隆がうちを扱う態度が一変した、ちゅうとこからやね」
「そうそう」
さて、どんな話が飛び出すのか。次のお店ではどんな出来事が待っているのか。
〜つづく〜
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第136回から第140回 | ||
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