真・恋姫?無双 仙人で御遣い 18話 |
〜長安⇔天水の街道〜
「はあぁぁぁぁ」
森に隣接した街道に、大きな溜息の音が響く。
溜息の主は、豪臣だった。
豪臣は、たった一人で街道脇の岩に腰掛けている。洛陽を出立したときに一緒だった朔夜と、豪臣が乗っていた馬が居ない。
(何て言い訳しよう・・・)
豪臣はガックリと項垂れた。
【回想・始】
洛陽を出立し、長安を通過。天水まで、もう数日で到着する、といった距離まで来たときだった。
朔夜がキレた。
洛陽を出てから、豪臣と共に落馬した数6回、朔夜のみ振り落とされた回数8回の計14回。
乗馬が一向に上達しない豪臣の所為で、気持ちが悪くなったり地面に叩きつけられたりした。
朔夜は、我慢の限界を迎えようとしていた。
そして、決定的だったのが、朔夜15回目の落馬のときだった。
「・・・ヒデ、ミ・・・もう、無理、です・・・っ!!」
朔夜は、前回までの14回と同様に、豪臣の肩から落ちた。が、次の瞬間、今までと違うことが起きた。
ドス!!
「ぎゃぷっ!!!」
ゴロゴロゴロ・・・・・・
落ちた朔夜が、馬に蹴られてしまった。
「朔夜!!」
豪臣は、馬を飛び降りて、朔夜の下に走る。
「・・・・・・・・・」
朔夜は、動かない。
豪臣は、不審に思う。
朔夜の体は、そん所そこらの武人では、傷を付けることすら出来ない程に頑丈に出来ている。
馬に蹴られたくらいでは、どうということも無い。
しかし、動かない。
「・・・さーくーや?大丈ブホッ!!」
声を掛けていた豪臣が、吹っ飛んだ。
一瞬で巨大化した朔夜の前足に殴り飛ばされたのだ。
「さ・・・く、や?」
体に『剛』も何も掛けていなかった豪臣は、痛みで上手く動けなくなる。
そんな豪臣の眼の前で、朔夜は、その身に殺気を纏っていく。
その殺気に当てられ、豪臣も、少し離れた場所に居る馬も動けない。
「もう・・・もう、我慢出来ません。四神(シジン)である西方白虎。その一部を以て創られたこのあたしを・・・」
豪臣が恐怖する程の殺気を放ち、俯いたままで呟くようにして話す朔夜。
「馬畜生如きが・・・足蹴にするなんて・・・」
朔夜が顔を上げる。
「・・・殺す」
一瞬で終わった。
馬の居た場所に、真っ赤な返り血を浴びた朔夜が居た。
馬の姿などは、何処にも無い。
ただ、無理やり押し潰されたかの様な肉の塊があるだけだった。
(おいおい。馬を相手に本気にならなくても・・・)
豪臣は、冷や汗を流しながらも立ち上がった。
「ぐっ!・・・腹いてぇ」
朔夜に殴られた腹部を押さえながら、朔夜の下へ歩いて行く。
そんな豪臣を、朔夜が振り返る。
「やり過ぎました。謝ります」
頭を下げる朔夜。
「何だ?反省はしているんだな」
そう呟く豪臣。
しかし
「反省はしていますよ?後悔はしていませんが」
そう言う朔夜に、豪臣は呆れて
「・・・おい」
と、言うが、プイ、とそっぽを向く朔夜だった。
【回想・終】
それから朔夜は、血を洗い流すために、水の匂いする森の中に入って行った。
そして、豪臣はたった一人で此処に残っている。
「あ〜、圓(うぉん)さんに、何て言い訳するよ、これ?」
少し離れた所にある肉塊を見て言う。
「馬って高いはずなんだよな〜」
迷惑を掛けている衛(えい)親子に、さらに迷惑を掛けることになってしまい、豪臣は、また溜息を吐く。
そのとき
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!」
悲鳴が響き渡った。
「何だ!?」
豪臣は、森を振り返る。
(女性の悲鳴?こんな森の中から?・・・!!)
不審に思った豪臣だったが、流琉と最初に出会ったときを思い出す。
「賊か!?」
豪臣は、そう舌打ちをして駆けだした。
〜森の中〜
【視点・??】
驚きと恐怖で、私は、有らん限りの声を出した。
蹲っていた私のすぐ近くに、大きな虎が居たから。
「グルゥゥ・・・」
虎は、私を見据えたまま、少しずつ近づいて来る。
私は、トス、と腰が抜けてしまった。
「え、詠、ちゃん」
逃げられない私は、震えながら親友の名を呟く。
もう、すぐそこまで来た。
虎は、私に襲いかかろうと身を屈める。
私は、ギュッ、と眼を閉じた。
しかし
「・・・・・・・・・・・・」
虎は、いつまで経っても襲ってこない。
フッ、と虎の気配が遠のく。
恐る恐る眼を開けると、虎は居なくなっていた。
(な、何で・・・?)
疑問に思い周りを見渡す。
そこには
【視点・終】
〜森の中〜
「え?何だ、この鳴き声?」
豪臣が声の方へ走ってると、何処からともなく「へぅ〜・・・へぅ〜・・・」と言う鳴き声が聞こえてきた。
声の方にしばらく走ると、朔夜が居た。
朔夜は、此方に背を向けて座っており、右の前足で何かをしている様だった。
そして、朔夜の足が動く度に「へぅ〜」と言う声が聞こえる。
(何をしているんだ?)
豪臣は、朔夜の隣に立って覗き見る。当然、朔夜は豪臣の存在に気づいており、驚かない。
しかし
「・・・は?」
豪臣は、驚いた。
朔夜の眼の前には、頭を抱えて蹲り、此方に尻を向けている女の子が居たのだ。
そして、朔夜がその娘の尻を突っつく度に、女の子は「へぅ〜」と声を上げていた。
ツンツン←朔夜が突く
「へぅ〜」
ツンツン
「へぅ〜」
これの繰り返し。朔夜は満面の笑み。
(何だ、この感情!?)
豪臣は、その様子を見ながら、内から湧き出してくる変な感情に疑問を持った。
(何だ?・・・嗜虐心と言うか、何と言うか・・・苛めたくなるな)
そんな豪臣を、若干悦に浸っていた朔夜が振り向く。
「・・・やりたいですか?」
ニヤ、と笑う朔夜。
「やりたい!!」と言いそうになりながらも、思いとどまり
「止めてやれ」
と、豪臣は言った。
朔夜は、残念そうにしながら
「ホントは、やりたい癖に」
と、豪臣を横目で見ながら、そう呟く。
豪臣は溜息を吐き、女の子の背に手を置きながら
「もう大丈夫だよ」
そう声を掛けた。
「へぅ?」
涙眼の女の子が、ゆっくりと豪臣を見る。
豪臣は、頭を撫でてやり
「怖かったね。でも、もう大丈夫だ」
そう笑顔で言ってやった。
すると
「・・・っ!!」
「っとぉ!」
女の子は、いきなり抱きついて泣き出してしまった。
そんな女の子を抱き留めながら
「あ〜、参ったな、こりゃ・・・」
苦笑いをする豪臣だった。
おまけ
【視点・朔夜】
あたしは、虎に襲われそうになっていた女の子を発見した。
虎は2mくらいの大きさだった。が、あたしは、さらに大きい5mの巨体だ。
一睨みで、襲い掛かろうとしていた虎は逃げて行った。
女の子は、危機が去ったことに疑問を持ったのか、辺りを見回す。
眼が合った。
「ヒッ!!」
先程の虎よりも大きなあたしを見て、あまりの恐怖に震えだす。
(助けてあげたのに、その態度は頂けませんね)
あたしは、わざとゆっくり近寄っていく。
「た、助け・・・てぇ」
涙が、じわじわ、と眼に溜まっていく。
(もう少しだけ、懲らしめてあげます)
あたしは、足を振り上げる。
「っっ!!」
女の子は、此方にお尻を向けて頭を抱える。
あたしは、そのお尻を、ツンツン、と突いた。
すると
「へぅ〜」
と、声をあげ、いえ、鳴いた。
(・・・・・・)
あたしは、もう一度突く。
「へぅ〜」
女の子は、また鳴く。
(・・・ふふ、ふふふ、ふふふふふふふ!!)
あたしは、何だか気持ちが良くなってきた。
突く→鳴く 突く→鳴く 突く→鳴く
あたしは、それを繰り返す。
(ふふふ!さあ!鳴いて、泣いて、啼きなさい!ふふふふふ――――――――)
あたしは、止められなくなってしまった。
あとがき
どうも、虎子です。
いつの間にやら、お気に入り登録が三桁を超えてました。
皆様、ありがとうございます。
さて、作品の話ですが・・・
朔夜さんが、キレちゃいましたね。
彼女の言っていた四神ですが、知ってますよね? 青竜・朱雀・玄武と共に東西南北を守護するとされる獣です。
朔夜は「白虎の力の一部を借りて、豪臣の仙氣で創造された式神」という設定です。
まあ、仙術を使っていない豪臣をタコ殴りに出来るのは当たり前、ということです。
次回投稿は、早ければ2日。遅くとも3日終了までにと予定しています。
作品への要望・指摘・質問と共に、誤字脱字等ありましたら、どんどんコメント下さい。
最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。
本当にありがとうございました。
ではでは、虎子でした。
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拙い文章ですが、よろしくお願いします。 | ||
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コメント | ||
月ちゃん可愛いわ~♪わいもツンツンしたいわ~♪(杉崎 鍵) BookWarm さん。ご指摘ありがとうございます。添削しました(虎子) 解かりますよ〜、その気持ち♪ちょっと酷いけど…自分にもやらせてください♪後でどうなってもいいのでww 御報告 4p:迷惑を掛けていまっている/掛けまくっている ですか?(自由人) 青竜の竜はこっちの龍ではないでしょうか?朔夜さん、私にもやらせてくださいw(ブックマン) 朔夜さんが『色恋沙汰』以外で久しぶりにキレた〜!?それにしても彼女は白虎が元だったんですね(今更っ!?)強いのも納得。豪臣君、『気・持・ち』は分かりますし、月ちゃんに対して『嗜虐心』がわくのも………分からなくはないから否定できない…どうしよう?…まぁ、一つ言えることは、二人(?)ともほどほどにお願いしますね(笑)(レイン) こんな玩具昔あったW(ヒトヤ) |
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