真・恋姫?無双 仙人で御遣い 19話
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〜森の中〜

 

女の子は1刻(30分)程して、やっと泣き止んだ。

女の子は、ゆっくりと豪臣から離れる。

「・・・その、取り乱したりしてすみません」

「いいよ。気にしなくて」

頭を下げる女の子に、豪臣は苦笑して返す。

「それに、俺も謝らないと」

「え?」

首を傾げる女の子。

「そこに居る奴なんだけど・・・」

「?・・・きゃっ!」

豪臣が指差した方を振り向くと、そこには朔夜が鎮座していた。

(ああ。やっぱ、気づいてなかったか)

豪臣は、後ろから怯える女の子の頭に手を乗せる。

「そんなに恐がらなくても大丈夫。こいつは俺の・・・ペット?みたいなものだから」

「ペット?」

女の子は、涙眼で豪臣を見上げてくる。

「あ〜・・・愛玩動物って言えビャッ!」

 

ズン!ヒューーーベチャ!

 

豪臣は、顔面に朔夜の虎パンチを喰らって後方に吹っ飛び、木の幹にブチ当たる。

「い、いってぇ〜」

鼻を押さえて蹲る豪臣。その眼の前に

「(ひ〜で〜み〜!)」

眼だけでそう言ってくる朔夜が立っていた。

豪臣は

「ヒィッ!!ご、ごめんなさい!俺の・・・え〜っと、相棒です!相棒!」

ビクッ、と仰け反った後、額を地面に擦り付けて土下座する。

朔夜は

「(次に言ったら、殺します)」

と、無言の圧力を加えた後、引き返して行った。

離れて行く気配を感じながら

(・・・死ぬかと思った)

と、豪臣は安堵の溜息を漏らした。

 

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「え〜、改めまして、こちらが俺の相棒の朔夜。んで、俺が紫堂豪臣だ」

改めて朔夜を紹介し、自分の名を名乗る豪臣。

しかし、女の子は

「は、は〜」

(何で、無事なんですか?)

豪臣の異常さに驚いていた。

「だから、こいつが悪戯したことについて謝るな。ごめん」

豪臣は、女の子の様子に気づかず、頭を下げる。

「は、はい。いえ、大丈夫です」

「そっか・・・で、君は誰かな?」

「っ!えと、その・・・」

(どうしよう。詠ちゃんには自分の名は名乗っちゃ駄目、って言われてるし・・・)

豪臣に訊かれて、どう答えるべきか考える女の子。

そんな様子を見た豪臣は

「無理には訊かないよ?」

(どっかの豪族のお姫さんか?)

気遣う様に声を掛ける。

(・・・この人なら大丈夫、だと思う。・・・でも、約束があるから。・・・あ!)

「・・・・・・月(ユエ)、です」

女の子は悩んだ末に、月と名乗った。

「ユエ?それって、真名じゃないのか?」

豪臣は、眉を寄せる。

「はい。事情があって、本名は名乗れませんが、命の恩人さんに偽名を使いたくありません。だから、私の真名を受け取って下さい」

月は、真剣な顔でそう言った。

(誠実な娘だな)

「分かった。俺には真名が無い。だから、俺のことは豪臣と呼んでくれ」

豪臣が、笑顔でそう言うと

「はい。豪臣さん」

月も笑顔を返した。

 

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豪臣は、月が何故一人きりで居たのかを聞いていた。

そして、分かったことは、月が迷子になっていたことと、朔夜が喋ったことには(恐怖のあまり)気づかなかったらしい、ということだった。

「・・・は?一人で森に入って、丸3日も迷子してた?」

「は、はい」

月が、少し項垂れながら答える。

(思っていたよりも、わんぱくお姫さん?てか、よく生きてたよな)

「で、その御供の人たちは?」

「分かりません」

さらに落ち込む月。

(おかしいな。此処から街道まで、ゆっくり歩いても2刻(1時間)掛らない。ローラー作戦?て言うか、人海戦術で探せば、一発で見つけ出せるんじゃないか?)

豪臣は、顎に手をやり考える。

(さらに、馬車を停めた開けた場所、ってのは、確かに街道にあった。けど、その場所に馬車は無く、人の気配も無かった。それに・・・)

豪臣は顔を上げ、月に訊く。

「なあ、何でこんな何も無い森に来たんだ?」

「え?・・・それは、私に仕えてくれている人が、この森なら安全に自然を堪能出来る、と言っていたからです」

「安全に堪能、ねぇ」

(虎の居る森が安全?護衛が居ても、万が一があったら、とか考えなかったのか?)

豪臣は、不審に思いながらも、月に訊く。

「月。君の住んでいた町は何処だ?天水か長安か漢中か。それとも、別の何処かか」

「えと、天水です」

「そっか。なら、俺が送って行ってやるよ」

豪臣は、頷いてから笑顔で言う。

「えっ!本当ですか!?」

月は、驚いたように豪臣を見上げる。

「おいおい。女の子一人を、こんな森の中に置いて行けるかよ。それに、俺たちは、天水に向かっていたんだ。丁度良いよ」

(ホント、丁度良い。月を此処に導いた人物が気になるしな)

「ありがとう、ござい、ます」

月は、本当は一番心配していたことが解決した安堵で、涙眼になった。

「おいおい。泣くなって」

そんな月を、苦笑して撫でてやる豪臣。

そして、撫でながら

(こんな良い娘。ほっとけないわな)

心の中で、そう呟いた。

 

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〜天水 城内廊下〜

 

豪臣が、月から話を聞いていたころ。

「李儒(リジュ)!あんた、どうしてくれんのよ!?」

天水の城内は、混乱していた。

「どう、とは?」

眼鏡を掛けた女の子に、李儒と呼ばれた文官の男が無表情で訊く。

「惚けるんじゃないわよ!月のことに決まってるじゃない!」

「ああ、太守様のことでしたか。しかし、賈駆(カク)殿。少しは落ち着いたらどうですかな。あなたは、参謀の筆頭でしょう?常に、冷静さを失ってはなりません」

李儒はそう言って、賈駆を諫める。

しかし、賈駆は収まらない怒りをぶつける。

「月が行方不明になってるのよ!しかも、護衛はあんたの親衛隊の兵よ!」

「そうですな。しかし・・・」

そこまで言って、初めて表情が変わる。相手を憐れむ眼だ。

「太守様の護衛隊隊長には、賈駆殿。わざわざあなたの意見を取り入れ、あなたの親衛隊副隊長を置いたのですよ?・・・それでも、わたしの責任ですかな?」

「ぐぅ・・・」

賈駆は、悔しそうに唇を噛む。

そんな賈駆を、呆れたように李儒は言う。

「私はその責任を、あなたに押し付けたりはしていませんよな?責任は、隊長の任に就いた者に負ってもらいましたから。これでも、まだ、責任問題を蒸し返しますかな?」

「・・・・・・」

もう、ぐうの音も出ない賈駆。

「終わったことを蒸し返す前に、太守様の捜索の責任者となったあなたには、やるべきことがあるでしょう?」

「・・・・・・」

「もう、よろしいですかな?では、失礼します、賈駆殿」

そう言って、李儒は去って行った。

その勝ち誇った李儒の背中を見ながら

「くそっ!」

賈駆は地団駄を踏んだ。

 

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〜天水 城内賈駆の政務室〜

 

賈駆が政務室に戻ると、賈駆親衛隊隊長が待っていた。

「賈駆様!」

「っ!・・・李?(リカク)隊長。どうだった?」

賈駆は、一瞬驚くも、すぐに本題に入る。

「ふざけています!何故、あいつがあんな風にならなければならないのですか!?」

李?が、あいつ、と呼んでいるのは賈駆親衛隊の副隊長のことである。

「あんなにも悲惨な亡骸を、あいつの嫁さん子供に見せられません」

李?は、悔しさのあまり、握った拳から血が流れ落ちる。

「そんなに酷かったの?」

賈駆は、沈痛な面持ちで訊く。

「はい。全身十数か所を刺されていました。李儒の親衛隊は、城に戻ってから処刑した、と言っていましたが、あの亡骸は死後2日は経っています!」

「・・・そう。これで、あの能面が死体の引き渡しに応じなかった理由が分かったわね」

「はい。我々が、力づくで見なければ、そのまま埋めるつもりだったのでしょう」

二人は、そこまで言って黙る。

(これは、あの能面の筋書きしたもの。そして、このままボクを城外に出させるつもり。・・・でも、何をするつもり?)

賈駆は、李儒の目的が分からないため、危機感を覚える。

(〜〜っ!考えても仕方ない。まずは、月を助けに行かないと!)

そう思い、賈駆は顔を上げる。

「隊長。親衛隊を集めて。月の捜索に行くから」

「は!準備は、終わっております。1刻後には出発出来ます」

「分かったわ」

李?は、敬礼をして出て行った。

そして、賈駆は

(月・・・どうか、無事で居て)

親友の無事を祈った。

 

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〜天水 城内李儒政務室〜

 

賈駆たちが出立してすぐのこと。

「政務中、失礼します。郭(カクシ)です」

「郭隊長ですか。どうぞ、入って下さい」

李儒がそう言うと、郭が入って来た。

「先程、賈駆参謀筆頭が、親衛隊を率いて御出立なさいました」

「そうですか。で、客人の方は?」

郭に、表情を崩さない李儒が問う。

「は。お客人は、城下の例の宿屋にてお待ち頂いております」

「わかりました。すぐに、向かいます」

そう言って立ち上がった。

そして

「ああ、彼女が残した鼠の処理は任せましたよ」

郭に命じる。

「お任せを」

それを聞き、李儒は政務室を出る。

「さて、賈駆殿。無事に太守を連れ帰って来て下さいよ。彼女も、そして、彼女という弱点を持つあなたも、まだまだ利用価値があるのですから」

李儒は、僅かに唇を釣り上げ、そう呟いた。

 

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〜森の中〜

 

一通りの話を聞いた豪臣は、天水に向けて出発することにした。

「じゃ、月は朔夜に乗ってくれ」

「え!朔夜さんに乗るんですか?」

「そだよ」

驚く月に、笑って返す豪臣。

月は、未だに恐怖が拭えていないため、朔夜に近寄れない。

その様子に

「仕方ないなぁ」

と、豪臣が溜息を吐く。

「よっ」

「きゃっ!」

豪臣は、月の脇に後ろから手を入れて持ち上げる。

そして、朔夜の背に乗せた。

「・・・・・・」

若干、放心する月。

しかし

「あの、朔夜さん。重くないですか?」

そう朔夜に訊く。

(言葉が通じないと思っているのに訊くか?・・・ばれてる?)

そう心配する豪臣。

しかし月は、豪臣さんの言葉に反応したのなら、きっとこの虎さんは賢いんだ、と思っていたので声を掛けたのだった。

朔夜は、月の言葉に頷く。

「本当に賢いんですね」

暴れたりせず、頷いてくれたことが嬉しくて、月は笑顔になる。

豪臣は、月の言葉に心配が杞憂であることに気づき、そして思う。

(この笑顔を護ってやらないとな)

「さ、行こう」

「はい。よろしくお願いします」

 

そして、二人と一匹は天水に向けて出発した。

 

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あとがき

 

どうも、虎子てす。

お気に入り登録140人突破!

皆様、ありがとうございます。

 

さて、作品の話ですが・・・

新キャラ登場です。李儒、李?、郭。

李儒の謀略は置いとくとしまして、李?と郭ですね。

読者の中にも、李?が賈駆の部下? 三國志と逆じゃね? と思う方もいらっしゃるでしょう。でも、仕方ないのです。詠を上の立場にしたいので。

そして、プロフに書いていることですが、李?と郭が不仲? それって、董卓が死んでからじゃん。と思う方もいらっしゃるでしょう。でも、親衛隊長には敵対する人物を入れたかったので。

まあ、外史だから、と思ってて下さい。

三人のプロフは、次のページです。

 

次回投稿は、早ければ4日。遅くとも5日終了までにと予定しています。

 

作品への要望・指摘・質問と共に、誤字脱字等ありましたら、どんどんコメント下さい。

 

最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。

本当にありがとうございました。

 

ではでは、虎子でした。

 

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プロフィールの能力値は、真・恋姫?無双のパーフェクトビジュアルブックでの能力値の5〜1をA〜E。恋達のEXをSと置き換え、それぞれに+・無印・−を(作者の独断と偏見によって)つけました。つまり、最強がS+で、最弱がE−となります。

補足T:SとS+の間には絶対的な壁があります(という設定です)。

補足U:一般兵はオールE(という設定)です。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

李儒 文優 (リジュ ブンユウ):?  ♂

身長 170前後  年齢 30半ば

 董卓軍の文官で参謀の一人。謀略に長けた人物で、文官の中では賈駆と並ぶ存在。文官は、賈駆派と李儒派に分かれていて、実は筆頭の賈駆よりも李儒派が四分の三を占めている。

謀略を巡らす時は、相手に「何かをしようとしている。でも、その何かが分からない」という、歯痒さを与えて、じわじわと追い詰めるやり方を好む。

 ある人物と会うために、月を森に置き去りにさせた人物。

外見

 常に無表情。眼は鋭く細いため、相手に自分の意図を読ませない。顎にちょこんと髭を生やしている。頬が少し?けているが、痩せている訳ではない。中肉中背。

性格

 非常に狡猾。外には出さないが、ほとんどの人間を見下し、駒として見ている。

口調

 自分を私と呼ぶ。基本的に敬語を使うが、上から目線の発言が多い。

武器

@なし

能力値

 統率C・武力E・知力C+・政治力B・魅力C―

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

李? 稚然 (リカク チゼン←読み方?):  ♂

身長 170後半  年齢 40前後

 賈駆親衛隊隊長。兵士の中では、賈駆に一番信頼されている男。公私でキャラが変わる。勤務中は真面目で、多くの部下から尊敬される存在。しかし、プライベートでは奥さんとイチャイチャしている。

幼馴染の郭とは、表面上仲良くしているが、実際は険悪な仲。これは、それぞれが賈駆・李儒の親衛隊長になってからである。

外見

 顔も身体も丸で出来ている。顎髭を揉み上げまで生やしている。勤務中はキリッ、とした目付きだが、プライベートでは穏やかで真ん丸な目付きに変わる。

性格

 真面目で正義感があるが、頑固な訳では無く、臨機応変な対応が出来る。

口調

 自分を私と呼ぶ。上司には敬語、部下には命令口調と徹底的に区別している。

武器

@剣

能力値

 統率D・武力D・知力E+・政治力E+・魅力D

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

郭 (カクシ):  ♂

身長 170後半  年齢 40前後

 李儒親衛隊隊長。李儒の手駒。

外見

 体格はガッチリとしていて、無駄な脂肪は無い。鼻の下のちょび髭が印象的。

性格

 無駄な事が嫌い。邪魔者はすぐに排除したがる。

口調

 自分を私と呼ぶ。基本的に上司にのみ敬語で、後は見下して話す。

武器

@剣

能力値

 統率D−・武力D+・知力E+・政治力E+・魅力D

 

説明
拙い文章ですが、よろしくお願いします。
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コメント
自由人さん。ご指摘ありがとうございます。添削しました(虎子)
ペットは・・・・・・・・・酷いわな。。(韻)
ペットはちょっと酷いですね。生涯の伴侶なんて言ったら朔夜どんな反応するかなw(ブックマン)
ペットだなんて…当然の報いですね!!李?も裏切り役かと思いきや好印象な人柄で好感が持てますね。月を森に置き去りにした李儒と郭はぜひ豪臣くんに成敗してもらいたいですな! 御報告 2p:どう答えるできか→どう答えるべきか 5p:あんな悲惨なにも亡骸→あんなにも悲惨な亡骸 このままあたしを城外に→ボク 7p:近寄るれない→近寄れない では?(自由人)
豪臣君、もし人間の身で毎回あんなの喰らってたら死んでましたよ…仙人目指していて良かったですね(そういう問題か?)事情とは言え、月ちゃんからすぐ真名を預かりフラグもしっかり立てたものの、天水で何やら不穏な動き。李儒の策謀に豪臣君達はどう関わっていくのか?次回更新を楽しみにお待ちしております。それにしても貂蝉さん遅いなぁ…(レイン)
思い出した、北斗の拳のフォックスの死に方にそっくりなんだ!(ヒトヤ)
ベチャッって無事じゃない音だぞW後身ごろが心配だWW(ヒトヤ)
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オリキャラ 真・恋姫?無双   李儒 李?  

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