深い闇 12
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「おや?まだ行動されてなかったのですかマルコシアス殿」

 

「今向かう所だ。貴様に言われんでも出る」

 

「期待していますよ?貴方様ほどの魔族なら人間なぞ一捻りでしょうしね」

 

「お前は人間を侮っている、彼等は貴様が思っているほど弱くも脆くもない。

やるからには全力で出るさ…」

 

「くくっ、結構結構。流石マルコシアス殿。その力存分に振るってください」

 

「貴様はっ!……悪霊軍団出るぞ!!」

 

氷のような瞳で俺を見つめるマルコシアスはそのまま出て行った。

くくっ、せいぜい頑張ってくれよ?

お前が頑張ってくれれば俺の復讐が叶うんだからな。

 

「よぅ、あいつはそろそろ行ったのか?」

 

「あぁ、色々時間稼ぎをしていたようだが甘い。

人質はこっちの意思一つで殺せるんだ、なぁ?ベルゼブブ」

 

其処にいたのは自称蝿の王・ベルゼブブ。

一応は相棒だったが俺はこいつを仲間とも認めていない。

まぁ、こういう作戦の時は使える駒だがな。

 

「ひっひ。既にいつでも孵化できる卵を植え込んであるぜ。

後は俺が一つ命じれば、ボン!だ、幾ら強くても内部から爆破されれば

どんな奴でもひとたまりもねぇな!げひゃひゃひゃひゃ!」

 

頭が悪くて助かるぜ。

こいつが下手に知恵なんてつければ面倒だからな。

馬鹿なままおだてて扱うのが一番だよ貴様は。

 

「穏健派随一の魔族、侯爵マルコシアス殿も大事な身内が人質に取られれば

其方をとるか、結構、結構だよ」

 

「けけっ、ソロモンごときに引き連れられてた魔族だからな

仲間意識が強い強い。特にアイツは忠誠心が強かったからなぁ

で、どうするんだデミアン?あいつらにそのまま殺させちまうのか?」

 

耳障りな笑い声で聞いてくるハエ。

ぶんぶん五月蠅いハエごときが俺と対等だと思っているのかね。

まぁいいさ、精々利用させてもらうよ俺の復讐の為にな。

 

「美神令子なんぞどうでもいい。俺達が用があるのはあの男だ。

マルコシアスが美神令子を殺しにかかればあいつは必ず来る」

 

「のこのこ来た所をぶち殺すって訳だな!ひゃっひゃっひゃ!!」

 

馬鹿かこいつ?

 

「そうしたいのは山々だがあの小僧はかなりやりやがる。

なら最善手を打つべきだろう?

マルコシアスには横島忠夫を生かさず殺さず連れて来いと言ってある。

人間ごときがあの魔族に勝てるわけも無い、後は此方で自由にさせてもらうさ。

殺すなんてもんじゃない、引き裂いて砕いてすり潰し、絶望のどん底に追いやり

魂を永久に滅ぶ事の無い呪いをかけて永遠に苦しませてやる。

それだけでも飽き足らぬ、そうだ痛覚を数百倍に上げてやろう!

塩の柱になってしまうほどの激痛を!いや…あいつの知り合いを目の前で甚振り

精神的に破壊してから殺してやるのも面白い。はっはっは!夢が膨らむな!」

 

「けっけっけ!違いねぇ!!あの小僧には辛酸を舐めさせられたんだ

ここらで借りを返させてもらわないとなぁ!」

 

今は好きに言わせておくさ。

アイツを殺すのは俺の俺だけの特権だ。

貴様のようなハエごときにくれてやるものか。

 

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私はまたこの手を血で染めなければならないのか…

ソロモン王…愚かな私を許して欲しい。

 

「いくのですか…マルコ」

 

「ゴ、ゴモリー様!?お体に触りますお戻りを!」

 

出陣の前、人間界に向うゲートで私達が最後の点検をしていると。

我が最愛の主人がここに来ていた。

ソロモン72柱の人柱、吟詠公爵ゴモリー様。

私の初めての主人であり、敬愛すべき魔族である。

魔族とは思えないほどの優しさと慈悲に溢れているこのお方が、

何故このような目に合わなければならないのだ…

あの美しい容姿の内部にあの下劣な魔族の卵が植えつけられているなど…

誰が想像できようか。

 

「良いのです…どうせ下劣な魔族に蝕まれた身体どうなろうと…

今からでも遅くはありません、このような真似はやめなさい。

今デタントを崩せばこの世界は確実に崩壊するのですよ」

 

判っています…

判っているのです。

 

「承服できかねます。

私は貴女に死んでほしくありません。

我々ソロモン72柱は魔王であったアシュタロス様以外、

転生すれば同じ力を持つ[別人]になって蘇る…

それは貴女が貴女で無くなってしまうと言う事」

 

そのような事耐えられるものか!!

アシュタロス様が消え、他の72柱も少しずつ代替わりし、原点なのはもう私達を残し数名。

我が忠誠を捧げた方が死ぬのを黙って見ていられはしない。

例え、これが最低の悪手だとしても。

 

「もう暫くのご辛抱を、必ずや貴女を下賎な魔族の呪縛から解き放って見せましょう。

貴女様に頂いたこの[炎の氷柱]に誓って」

 

出来る限りの手は打った。

私が英雄を殺すのが早いか、奇跡の1手が早いか。

私としては後者が望ましいな…

 

「やめなさい!自分の信念を捻じ曲げてまで私を救う必要なんて無いのです!」

 

「お言葉ですがゴモリー様。私は魔族、魔族が人間を陥れ殺すのは

ごくごく当たり前の事でしょう?今回その対象がたまたま人間の英雄だったという事だけです」

 

「マルコ…貴方は…」

 

「失礼を、時間がそろそろありません。行って参ります」

 

ゴモリー様が私を引きとめようとするが其れを無視して私は進む。

不義理な私をお許し下さい、ゴモリー様。

ですがこの命に代えても貴女だけはお救いして見せます。

たとえこの身が行く千の刃に切り刻まれようとも、

裏切り者の烙印を押されたとしても、

貴女様が貴女さえ無事ならば…

私は昔の悪逆を尽くすだけの魔族に変わってしまっても悔いは無い。

 

「デミアン、ベルゼブブ。ゴモリー様に行った罪必ずや償わせてやろう…」

 

その為には生き残るしかないな。

人間はとても強い、其れも相手はアシュタロス様さえ下した英雄達。

ままならぬものだ。本来なら手を取り合いデタントを進めていくはずの相手が今回の敵とはな…

こんな事がなければ、よき友人になれるかもしれなかったのにな。

 

説明
12話のupです。
何時ぞやと同じように、短めの閑話となっています。

少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。
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