真・恋姫?無双 仙人で御遣い 21話
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〜豪臣の部屋〜

 

「ただいま」

「お帰りなさい」

豪臣が帰ると、朔夜はお座りの状態で待っていた。

「どうしたんだ?何か言いたいことでもあんの?」

豪臣は、首を傾げてベッドに腰を下ろす。

「仙氣らしき氣を感じました」

「っ!」

豪臣は、勢い良く振り向いた。

「いつだ?」

「1時間ほど前です。二度感じました。おそらく同じ術者です」

豪臣は、淡々と答える朔夜の言葉の中から、気になる点を見つけた。

「仙氣を感じたんだろ?何で仙人じゃなくて術者なんだ?」

「豪臣や陳の仙氣とは、似て非なる物でしたから」

「・・・貂蝉のときも、仙氣に近い、って言ってたな?なら、貂蝉じゃないのか?」

豪臣の問いに、朔夜は首を振る。

「違います。貂蝉は変態ですが、氣に関しては澄んでいました。しかし、今回感じた氣は、濁りを感じましたから」

「澄んでいる、ねぇ・・・おぇ!」

(想像したら、気持ち悪くなってきた)

豪臣には、貂蝉が清らかな者である、とは言えなかった。

「うっぷ・・・ふぅ。で、1時間前だったっけ?その時間なら、丁度、李儒の様子を窺ってたか離れてすぐか、って時間だな」

「とりあえず、この天水に、善からぬ者が存在することを頭に入れて置いて下さい」

朔夜は、そう言って丸くなった。

(善からぬ、ね。それは、その術者なのか李儒なのか。はたまた両方か。キナ臭いことだな。ま、考えても仕方ない。そう言った頭を駆使することは、筆頭軍師様が何とかするだろ)

豪臣はそう考えて、床に就いた。

 

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〜賈駆政務室〜

 

次の日の朝。

「ハァ?筆頭の地位が欲しい?」

豪臣は、李儒たちの話を聞いたまま詠に話した。

「何?ホントに、そんなこと言っていたわけ?」

「ああ。昨日の晩に聞いたばかりの話さ。鮮度バッチリの情報」

「あんた、莫迦じゃないの!?そんなことのためだけに、こんなことやる訳無いじゃない!」

詠は、怒鳴りつけてくる。

「まあ、俺もそう思うけどな。ただし、話し半分で頭に入れとけよ」

「は?何言ってんのよ?」

詠は、不審げに見てくる。

「だ〜か〜ら。あいつらは、嘘か真か確かにそう言ったんだ。俺に気づいて無いなら、言ってたことが奴らの真意。気づいていたなら、しばらくは、そう見えるように振舞うはずだろ?」

「・・・だから半分、ね」

豪臣の説明に、詠は肩を落とす。

「すぐには、ことを起こさない。そう見ておくわ」

「そうしろ。ついでに、その期間で出来るだけ味方を作っとけよ」

(俺の知る歴史通りに進むと仮定するなら、李儒の野郎は董卓悪政の立役者?・・・いや、黒幕になりかねない)

「そんなこと、あんたに言われなくても分かってるわよ!」

詠は、そっぽを向く。

「・・・でも、時間があるかもしれない、って分かっただけでも助かったわ」

そう言って、詠は、チラッ、と豪臣を見る。

「で、その・・・ありが、とう」

「ん。どういたしまして」

(素直じゃないねぇ)

赤面する詠に、豪臣は苦笑して答えた。

 

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<月>

 

 

〜鍛錬場〜

 

豪臣が天水に着いて、2週間が経った朝。

豪臣はこの2週間。月に、乗馬を習っていた。

理由はもちろん、豪臣があまりにも下手過ぎるためだった。詠によって、後ろ暗い政務には、あまり参加させてもらえていなかった月。そのため、時間のある月が、ほぼ付きっ切りで指導をしていた。

豪臣は、その甲斐あってか人並み程度には乗れるようになっていた。

そして、朝の乗馬を終え、日課になっている練習後の話をしている。

 

「もう、一人で乗っても大丈夫ですよ」

月が、そう切り出してきた。

「そっか。いや〜、ありがとう月。ホント助かったよ。初め、詠に言われたときには、どうしようかと思ったからな」

豪臣は頭を掻きながら礼を言う。

豪臣が言っているのは、豪臣が天水に来て2日目の昼の話だ。

 

【回想・始】

豪臣は月に誘われて、月、詠の二人と昼食を取っていた。

「そう言えばあんた。馬を持って無いけど、あの朔夜って虎に乗って旅をしてるわけ?」

その昼食の途中、詠がそんなことを訊いてきた。

「いや。朔夜にはあまり乗らないな。単に、旅の連れ、って感じだよ」

「じゃあ、全部歩いて旅をしているんですか?」

と、今度は月が訊いてくる。

「ああ。元々、歩くことは好きだからな。あんまり苦にならないんだ。

 それに、乗馬が苦手でさ。洛陽から馬に乗って見たんだけど、落馬しまくって朔夜が怒って食べちゃった」

笑って答える豪臣。流石に、潰したから、とは言えない。

「馬にも乗れないなんて・・・情けないわね、あんた」

「いや、まぁ、そうなんだけどさ。苦手なものはしょうがないだろ?それに今まで、乗馬の経験なんて無かったんだから」

豪臣が、情けなさそうに言う。

すると、詠が少し考えた後で口を開く。

「ねぇ、月。月が、こいつに乗馬を教えてあげたら?」

【回想・終】

 

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もちろん、このときの詠の意図を、豪臣は理解していた。

自分が政務をしているとき。李儒派の人間にちょっかいを出させないために豪臣の傍に置く、と言うものだ。

そのことについて、豪臣に文句は無く、少しは信用してくれたのかな、くらいに思っていた。

そして、この2週間。月に何かしら、行動を起こす者は居なかった。

これは、詠の読み通りなのか、元々李儒にその意図が無かったのかは分からない。が、二人は、穏やかな2週間を過ごしていた。

「それにしても、悪かったな、月。2週間も付き合わせてしまって」

豪臣は、そう言って軽く頭を下げる。

すると、月は

「いえ、良いんです。私は、太守として役に立てていませんから」

悲しそうに、そう答えた。

「役に立てて無いって・・・何で、そう思うんだ?」

「だって、詠ちゃんに任せっきりですから。私が必要なのは、落款をするときくらいです」

月は肩を落とし、だんだん、顔も俯いてくる。

「ホントに、そうなのか?月は、政務に関わって無いと、ホントに思っているのか?」

「私が関わることもあります。でも、必ず詠ちゃんが一緒です。詠ちゃんに負担ばかり掛けて、自分はただ落款しているばかり。このままじゃ、いつか倒れてしまうかもしれません」

月は、完全に俯いてしまった。

(そう言うことか)

豪臣は納得して、月の前に膝立ちになり手を取った。

「ふぇ?」

豪臣の行動に、月が首を傾げる。

豪臣は、そんな月に目線を合わせて言う。

「月。君はとても凄いな、ホントに」

「いえ、違うんです!私は、自分の役目を・・・」

そこまで言ったとき、豪臣は首を振る。

「俺が言っているのは、董太守の話じゃない。月の話だ」

「月、ですか?」

「ああ。確かに、君は太守として未熟かもしれない。気構えも手腕も、まだまだかもしれない。けどね」

豪臣は、優しげな眼で、その不安そうな眼を見据える。

「そんな君を、助けたいと動いてくれる者が居る。損得勘定無しで、だよ。これは、とても凄いことなんだよ?」

「凄いこと、何でしょうか?」

月は、縋るように訊いてくる。

「もちろんだ。これは、月という存在の魅力がなしていることなんだからな。誇れることだ」

「誇れること」

豪臣の言葉を、反芻する月。

「で、せっかく、支えてくれる人が居るんだけど。そんな人が居るのに、甘えてばかりで自分は役に立たない。何も出来ない。君は、そう言って同じ場所を回ってばかりで良いのか?」

その言葉に、月の眼に力が漲ってくる。

「そう、ですよね。努力を怠っていても、何も始まりませんよね」

「ああ、そうさ。君は、これから何だからな」

「はい!」

豪臣の言葉に、月は笑顔で頷く。

「ハハ!やっぱり、笑顔の方が可愛いぞ」

豪臣は、そんな月の頭を撫でた。

すると

「へ、へぅ〜///」

先の力強さは何処へやら、赤面して縮こまってしまう。

それも見た豪臣は

(ああ・・・なんだろう。あのときの感覚が・・・)

月と出会ったときに感じたものを、思い抱いていた。

そして

 

ナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

撫で続けた。

そして、撫で続けられる月は

 

「へ、へぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

と、恥ずかしそうに、鳴き続けるのだった。

 

 

 

 

ちなみに、これは詠が昼食を誘いに来るまで続く。そしてその後は、詠の『豪臣タコ殴りショー』が行われた。

 

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<詠>

 

 

〜賈駆政務室〜

 

月が決意して数日後のこと。

「ふ〜ん。そんなことがあったんだ」

詠は、納得したように頷いた。

詠は、ここ数日、精力的に政務に参加する月を見て疑問に思い、そのことを豪臣に訊いていたのだった。

「ボクは、月を負担だなんて思ってないのに」

詠は、悲しそうにそう呟いた。

「でも、悪い気はしないだろ?」

「誰も嫌だなんて言ってないでしょ!」

「はいはい」

豪臣は、苦笑する。

「まぁ、政務に参加するのは、別に良いのよ。ただ・・・」

「ただ、心が耐えられるかが心配か?」

詠は、溜息を吐く。

「あんたが分かってるかは、知らないけど。政治は、民のためになる綺麗事ばかりじゃないし。それに、いきなりあんな量の政務をこなしたら、体が持たないわよ」

つまり、汚い政治の世界に深く首を突っ込んで、月の心が侵されないかが心配。倒れるかもしれなくて心配、ということだ。

だが、豪臣は心配していなかった。

「はぁ。詠、ちょっと来い」

豪臣は溜息を吐き、詠の手を取る。

「ちょっ!何すんのよ!?」

豪臣は、詠の抗議に耳を貸さずに引っ張って行った。

 

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〜鍛錬場〜

 

詠が連れてこられたのは、豪臣が乗馬の訓練に使っている鍛錬場だった。

豪臣は、あらかじめ練習のために借りて置いた馬の下へ向かった。

「何を始めるつもりよ?」

「まあ、見てなって。よっ!」

豪臣はそう言って、馬に乗る。

そして、馬の腹を蹴って走らせてみた。

詠は

(へ〜。凄く上達してるじゃない)

と、素直に驚いた。

詠が豪臣の乗馬を見たのは、これで二回目。一回目は、この鍛錬場を初めて使ったとき。落馬しまくる豪臣を見て、溜息を吐いていた。

そのときの豪臣に比べたら、今は雲泥の差だ。

そう考えていると、豪臣が下馬して戻って来る。

「どうだった?」

「前に比べたら、マシになったんじゃない?で、こんなことを見せたかったわけ?」

素直に褒めない詠が訊く。

「ああ」

「はぁ。あんたね。ボクはこれでも忙しいんだから、こんなこと一々見せないでよ!」

素直に答えた豪臣に、詠は溜息を吐き怒る。

しかし、豪臣は苦笑いで頭を掻き

「何だ、分からなかったのか?」

そう訊いてきた。

詠は分からず、首を傾げる。

「つまり、2週間前の俺が、今の月だ。で、俺に乗馬を教えた月が、お前だ」

そこまで言われて、詠は気づいた。

「つまり、ボクが教えろ、と?」

「ん〜。ま、教えるのは当たり前だけど、上手くコントロールして欲しい、てことだな」

「こんとろーる?」

詠には、聞き覚えの無い言葉だった。

「ああ、すまない。つまり、上手く制御しろ、って話だ。今の月は、やる気は十分だ。そんな状態で、多くのことを教えたら全部やろうとしてしまうかもしれない。だから・・・」

「制御?」

「そ。月には月のペース、じゃないや・・・そう!歩幅、って言えば分かるかな?それを、守らせないとな」

「そうよね、何、悲観的になってんだろ。ボクが、ちゃんとしなきゃいけないわよね」

詠は、拳を握る。しかし、豪臣は、その拳の上から手を乗せる。

「そう気張るな」

「え?」

激励だと思っていたのに、そう声を掛けられて、詠は戸惑った。

「ボクが言ってること、何か違う?」

詠に、不安そうに訊かれた豪臣は首を振る

「そうじゃない。俺が言いたいのは、一人で気張るな、ってことだ」

「一人で?」

「ああ。せっかく月と二人で支え合って行けるのに、また一人で背負いこむ気か?親友なんだろ?」

「あっ・・・」

詠は気づいた。今、自分がやろうとしたことは、前と何も変わっていない、と。

「そう、ね。二人で、頑張って行くのよね」

「月も、そう望んでるさ」

落ち込む詠の肩に手を置き、豪臣は言う。

「制御、とは言ったが、それは覚えるまでだ。今、俺が一人で乗馬していた様に、月だって一人で出来る様になる。そのとき・・・」

「二人で支え合って、ね?」

「ああ、親友だろ?」

「そうよ。親友なんだから」

豪臣の言葉に、詠は、頑張っていこうと思った。

こんな自分のために頑張ってくれる月のために。こんな自分に大切なことを教えてくれた豪臣のために。

「頑張ってる月のために、頼りにしてるぞ、筆頭軍師!」

「任せなさい!ボクは、筆頭軍師なんだから!」

二人は、ガッチリと握手を交わすのだった。

 

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<朔夜>

 

 

〜豪臣の部屋〜

天水に来て2週間が過ぎた。

豪臣の部屋から、あまり出られない朔夜。

部屋から出れば、文官たちからは逃げられる。武官からは武器を突きつけられる。侍女には気絶される。

だから朔夜は、今日も部屋に籠る。

そして

 

「最近、あたしの出番が無いですね。仕方ないですけど」

 

そう呟く。

そして、昼寝をするのだった。

 

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あとがき

 

どうも、虎子てす。

 

作品の話しです・・・

月の話を書いてたら、拠点っぽくなったので、詠の話もそんな感じに追加してみました。

ラブ要素は無いですけど。

さて、この董卓編も次回で終了です。それが終われば、2、3話洛陽編で、義勇軍編に入っていく予定です。飽く迄も、予定ですので悪しからず。

 

さて、だいぶ休んでいたQ&Aです。15〜20話までにあった質問です。

Q.鈴花ってどんなタイプ?

A.そうですね、言ってみれば桂花とは逆ですね。もうすぐ、出番が多々ありますのでお楽しみに。

 

Q.青竜の“竜”って、“龍”じゃないの?

A.基本的に、東洋では竜。西洋のドラゴンを龍とする、って聞いたことがありましたので。あと、辞書などで引くと“青竜”で出てきますよ。

 

Q.お礼がお礼になってないよね?

A.ま、時代ですかね。風評が何より大事な時代ですから。

 

Q.朔夜の人化は、まだなの!?

A.洛陽編をお楽しみに

 

と、こんな感じです。

 

次回投稿は、早ければ8日。遅くとも9日終了までにと予定しています。

 

作品への要望・指摘・質問と共に、誤字脱字等ありましたら、どんどんコメント下さい。

 

最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。

本当にありがとうございました。

 

ではでは、虎子でした。

 

説明
あとがきに、Q&Aがあります。

拙い文章ですが、よろしくお願いします。
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コメント
ツンデレボクッ子が落ちた?(ブックマン)
仙術はいまいちでも頭はキレる、豪臣君と朔夜さんはやはり良いコンビのようですねぇ…月ちゃんの指導もあって豪臣君は『騎乗』のスキルを見に付けられたようで何より×2。さらには彼女らの『フラグ』まで強固にするんだから、朔夜さんも気の毒でしょうに。…貂蝉さん、仙桃を早くgetして下さい!応援してます(今だけは)(レイン)
お疲れ様です。ちょっと抜けてるだけで賢くない訳ではないんですがねぇ豪臣君は…やはり朔夜さんは優秀です!それにしても月が行動するきっかけになったとはいえ見えないところでイチャイチャと…しかしもうすぐなんですね?あ〜、貂蝉が…おっと、仙桃が待ち遠しいですねww(自由人)
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