恋姫無双異聞録〜IFルート〜 第8話 |
「顔をあげろって!」
「そうですよ!」
狂骨の暴走も止まり、一度成都に戻る事にした一刀たち そして、成都の玉座の間に着き聖が部下に命じ刑天を部屋に運ばせ、月や詠などが介抱のため部屋を出て一息つこうとした瞬間に狂骨が土下座をし始めた それに全員が驚き、一刀や桃香が顔をあげるように言っているが狂骨は聞かない ひたすら自分を責め続ける
「いや……今回の事は俺に責任がある」
顔をあげた後もその場に座ったまま「腹を斬れ」と言えば何の戸惑いもなく切腹しそうな勢いの狂骨 その姿にとにかく狂骨を落ち着かせるのが先決と決めたが、突然蹴り破られた扉のほうに意識が向いた 入ってきたのは体に包帯を巻いただけで上には何も羽織っていない刑天だった 後ろのほうには必死に止めようとしていたのだろう聖や月、詠がしがみついていた
「ダボが……ハァ……ウジウジ悩んでいる暇があったら、有効な新兵器を作るなり……ハァ…クッ……一刀たちの策を手伝うなり……行動しろ」
まだ完治はしておらず、動く以前に立つ事すらきつい筈なのに息を切らせながら殴りこんできた刑天 そして自分を責め続けている狂骨に喝を入れる姿はまさに父親のようだった
「だが「鬱陶しい!」グッ!?」
また余計な事を言いそうになった狂骨に右ストレートを入れた刑天 そして狂骨の胸倉を掴み
「雛里があんな目に合ったから暴走する……恋人なんだ当然だろうが 別にそれは責めていない……周りを見ろ 誰がお前のしたことを責めている?」
そう言って、狂骨の顔を掴み周りを見渡させる 一刀たちは頷く 責めるわけがないと
「起きたことをいつまでも悔やむな……今度はそうならないようにすればいいだけの話だ そのために俺らが…仲間が居る」
そう言い、つかんでいた手を離すと一刀に向き直り
「こいつはしばらく雛里と一緒にいさせてやれ 魏もこちらの状況がつかめないなら下手に動かないだろう」
曹操なら不確定要素がある場合は無理に攻めて来ない筈 そう考えていた刑天は朱里に目を向ける 朱里は全て承知したと言う風に頷く それを確認した刑天は
「……目の前が暗く……なってきた」
倒れた そして、聖たちが引きずりながら刑天を連れ出していった その光景を見て一刀たちは苦笑した 狂骨は自分の顔を思いっきり殴り
「……一刀 何かやる事はあるか?」
しっかりとした顔で一刀に向き直った 一刀は「とりあえず雛里のところに行ってきなよ」
と告げ、正式な仕事はその後と決めていた
「……すまん」
狂骨はそう言い残し玉座の間から退出して行った
「とりあえず、今日はもう上がりでいいんじゃないかな?」
特に報告する事もなく、精々魏への再攻撃の策を練るぐらいなので解散する事に決めた 一刀は刑天の様子でも見にいく事にした
「……包帯巻かれて……志〇雄真みたいだな……いや、再生する事を考えればイソギンチャク獣人?」
「……紅蓮腕〜ってやかましい。それと、獣人言われて何人の人間が野生児ライダーに出てきた奴だとわかる? ここにはゲ〇ンもガ〇ンダーもいないぞ? まあ作れそうなやつはいるが」
体中に包帯を巻きながら一刀のボケに突っ込む刑天 意外にも知識はあるようだ
「で? 何しに来た?」
起きようとすると横に控えている聖や月に押さえられ、寝台に寝たままの状態で一刀に問いかける
「いや…今回は刑天だけに苦労をかけたからね」
一刀は少し顔を曇らせて呟く 今回自分が何もできなかった事を悔やんでいたのだ しかし、刑天は優しげな笑みを浮かべながら口を開いた
「…戦闘は俺らに任せろ お前や桃香は道を間違えないように進め 間違えていたら俺らが止めてやる だから、お前は桃香と共に「自分の理想」を叶えろ」
「あ、ああ」
「だが、自分の理想を人に押し付けるな、そして理想を現実とすり合わせる事を忘れるな? お前は心配ないが桃香は若干その傾向がある」
そして先ほどの笑みを引っ込め、厳しい顔を作る刑天 一刀はその言葉をしっかりと聞いていた
「自分の理想を語る…実に結構 だが、理想を語るということはその理想を聞いた者を「洗脳」すると言う事だ 現に、幽州からついてきた民は桃香たちの理想に共感してついてきている」
月に水を飲ませてもらいながら言葉を続ける
「そして、理想は所詮理想だ それが完全に叶う事はありえない 自分が持っていた理想を現実とすり合わせて、その内容を少しずつ変えていかなければならない 最初に抱いた理想を叶えようとすれば……待っているのは破滅だ」
刑天は様々な外史でそのような人間たちを見てきた 「世界中の全ての人が笑える世界」
そのような理想を掲げ仲間たちと共に立ち上がった少女が居た だが、そのような事が叶う筈もなかった 片方を笑えるように優遇すれば、もう片方が笑えなくなった 今度はそちらを笑えるようにしたら、もう片方が笑えなくなった そのような事を繰り返す内に異議を唱える者が増え、少女と仲間たちはその者たちに暗殺された
「―――と言うわけだ 桃香たちを戦い以外で殺したくないのなら、そのことを言っておけ」
「分かった」
そして、刑天は月に机の中にある紙の束を一刀に渡すように言った。
「……これは?」
「于吉たち……まあ、白装束の連中が以前まで行ってきた作戦を俺なりに調べた奴だ。それを見てどうするかはお前が考えろ」
「……「それと、それはお前ひとりで見ろ」え?」
一刀は思わず聞き返したが、よく考えると刑天のいうとおりだということに気づいた。今は魏に対応するため国内がピリピリしているので、ここで火種を入れるわけにも行かない。
「(それに……自分たちがいずれ消滅すると分かれば発狂するかも知れんしな)」
一刀は紙の束を持ち部屋を出て行った。刑天は出来るだけ早く体を治し、戦線に復帰するために休む事にした。
狂骨は雛里の部屋へやってきた。雛里は寝台の上で気持ちよさそうに寝ている。狂骨は寝台の傍に椅子を持ってきてそこに座り、雛里を眺めていた。
「雛里……ごめん……」
狂骨の口から出てきたのは、普段の狂骨からは想像できないほどの弱弱しいものだった。
「ご主人様……?」
そして、雛里は目を覚ました。
説明 | ||
約一ヶ月ぶりの投稿です。 結構難産でした。頑張らないと、話の筋が殆ど変わらないから注意しないと…… |
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コメント | ||
ネタ懐かしいです。(ブックマン) 後、刑天さん。だめですよ、獣人作ったら。(南華老仙「再生(リボーン)」) ・・・・・・すみません。すぐにネタが分かってしまいました。私の生まれる10年以上前の作品なのに。(南華老仙「再生(リボーン)」) |
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