輪・恋姫†無双 二話
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“真名の存在を知らない”という壮絶なるカミングアウトから始まった、水鏡塾主席の孔明、もとい朱里による現在の漢王朝講座は、道中延々と続いた。

 

 

  曰く、真名とは相手に許されなければ、知っていても呼んではいけないもの。

 

  曰く、現在の皇帝は霊帝であり、どうやら病にかかっているらしい。

 

  曰く、最近、黄巾党という賊が急激に増えているが、その指導者も目的も不明である。また、その討伐に官軍が失敗し、地方軍閥に討伐の命がだされたらしい

 

  曰く、玄徳様ですか?とても徳高く、見目可愛らしい方だそうですよ?

 

 

 

その一つ一つを、歴史・噂・推察などなど色々なものを織り交ぜて語ったものだから、かなりの時間になった。

 

祐一が最初に「道中暇になりそうだし、可能な限り詳しく話してくれ」とか言ってしまったことを、割と本気で後悔したくらいには。

 

ちなみに、最後の話は、諸葛亮を目の前にした祐一が「英雄が女性化した世界」という推測を立て、それを否定して欲しくて言った「玄徳さんってどんな人?」の返答である。

 

話の途中で、「関羽や張飛と義姉妹の契りを交わした」とか言ってくれたので、三人とも女性らしい。「多分曹操とかも女の子なんだろーなー」とか考えてその後の言葉を少し聞き流したのは朱里には秘密にしている。……多分、雛里は気づいていたとだけは書いておく。

 

関羽や張飛といった武将まで女性だということを、さも当然とばかりに語るからには、女性が男性を武で圧倒することも、特になんの違和感もなく納得しているらしい。

 

そして、玄徳さんが義勇兵を募っているらしい街を認めて、相沢祐一は結論づけた。

 

 

ここは珍妙な術者が作り上げたギャグみたいな結界でもなければ、過去の中国にタイムスリップしたわけでもないと。

 

 

パラレルワールドとか、仮にタイムスリップだとしても過去じゃなくて未来だろう。一度文明が滅んだ後レベルの。

 

とりあえず、平行世界だと思って納得することにした。

 

あまりといえばあまりのあり得なさに、頭を抱えて叫びだしたくもなったが、そもそも元の世界に戻る手がかりがないどころか、どうやってこの世界に来たかもわからないのだ。

 

何がしかわかるまではこの世界を満喫しようと思い、その第一歩として、隣にいる小さな英傑を劉備軍の中枢に食いこませてやると誓った。

 

 

ちなみに、その間、もはや太郎次郎三郎しか聞いていない、祐一のために説明している朱里の話は天の御使いについて語り、雛里は朱里を止めるべきか祐一に呼び掛けるべきか散々迷っていた。

 

 

「あ、お頭!お嬢!目的の街が見えてきやしたぜ!公孫賛の城下街!」

 

太郎の言葉は、消化不良で少し不満げな朱里の顔と、安堵した様子の雛里の顔と、「公孫賛ってだれ?」という祐一の声に出迎えられた。

 

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街に着くと朱里は義勇軍のことについて情報を集めようと張り切り、唐三兄弟は道中で祐一の所持品である一円玉を売って得た金の一部を祐一から貰い、五人分の饅頭と、祐一の服装を目立たなくさせるためにと頼まれたマントを買いに行き、雛里と祐一は残された。雛里の役割は先ほどまでの朱里役である。

 

「公孫賛さんは太守としてはかなり優秀な方です。幽州全土を任されていらっしゃるんですが、政務も軍務も普通にそつなくこなせる方だと聞いています。黄巾党も、曹操さんの治める陳留とかには及びませんが、それほど活発な活動はないそうです。」

 

朱里の前例を間近で見たからか、要点を押さえた簡潔な内容だった。そして、祐一本人も

 

「(こういう方がよかったかもしれない…。朱里には悪いことしたか…)」

 

ひそかに朱里に謝罪を告げ、思い返す。祐一自身冷静なつもりでいて、どうやらかなり動揺していたらしい。

 

「(おかしな世界に迷い込んであれほど簡単に平常心を失うなど、言語道断!あわわはわわ言ってる噛みまくりの女の子を前にして、からかって遊ぶという選択肢が思いつかなかったとは…!)」

 

握りこぶしを作り自らの行いを悔いる(白くはないが、ポリエステルの制服を着た、普通の人には貴族っぽく見える)祐一と、それをため息交じりに見上げる普通の格好をした幼い美少女。

 

 

割とシュールで、かなり目立っていた。

 

 

さっそく雛里をいじって遊ぼうと決意を新たにした祐一だったが、そんな決意とともにシュールな空間は霧散した。

 

「えええぇぇぇぇーー!?」

 

朱里の叫び声によって。

 

祐一と雛里を含めた皆の視線が声の発信元に向き、そちらから、おそらく彼女としては全力疾走なのであろうスピードでやってきた。

 

後ろから、マントと饅頭を買って帰ってきた太郎と三郎に追い抜かれ、次郎と到着が同時になってしまっていたが。

 

「お疲れ、朱里。饅頭食え。」

 

「ど、どちらかというと、お水が欲しいです…」

 

「じゃ、肉汁飲め。」

 

「なんか、違います…って!そうじゃなくって!」

 

がばりという擬音語でも見えるかというくらいの勢いで顔を上げ訴える。

 

「大変なんです!玄徳様たち、もう出発の準備をしてて、もうすぐ出陣なさるって!街の反対側の門に皆集まってるって言ってました!」

 

「あわわ!大変ですぅ〜!」

 

「そっか…よし、じゃあ肉まん食え。」

 

「「なんでですか!?」」

 

「朱里と雛里は肉まん食べて、走って集合場所に来る。太、次、三郎はその護衛。祐ちゃんはひとっ走りして先に挨拶してくる。お、美味いなこれ。」

 

肉まんを二口で食べ、太郎の買ったマントを適当に装着して、

 

「肉まんは蒸したてが美味いんだ。」

 

といって、返事も聞かずに駆け出した。

 

「お頭……真名くらい、ちゃんと呼んでくだせぇ……」

 

「会話の流れを完璧に奪われちゃったよ…」

 

「あむ、あむ、あむ、朱里ちゃん、急いで食べたほうがいいよ?」

 

「また走るのか〜…」

 

「おで…もう疲れたんだな…」

 

残された面々のなかで、雛里が一番精神的にタフに映るのは、気のせいだと信じることにする。

 

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「たくさん集まってくれたね〜♪これなら何とか戦えそうだね、愛紗ちゃん、鈴々ちゃん!」

 

「そうですね。しかし……これからどうしましょうか?」

 

「こーきんとーを探し出して、片っぱしからやっつけるのだ!」

 

「だが鈴々、そんなやり方では兵糧がすぐに底をついてしまうぞ。」

 

「ならどうすりゃいいのだー?……?」

 

「う〜ん……どうしたらいいのかなぁ……」

 

「花子さん、義勇兵の参加、まだ間に合いますか?」

 

「ほわぁ!?」

 

相沢祐一の本職は、忍である。その忍としてのスキルを惜しみなく使って、長物の武器を持っていない少女の背後から、肩を叩きながら話しかけた。

 

予想を上回る反応を見せてくれた少女だが、祐一にとって

 

「貴様!?何奴!?」

 

この程度の悪戯で、これほどの過剰反応をされるのは予想外だった。向けられたのは青龍刀。おそらくは関羽。

 

忠義に厚いことで有名であり、どこをどう間違ったのか現代で商業の神様として扱われることもある豪傑である。

 

 

まぁ、この世界では、そんな天下の豪傑も、ポニーテールの可愛い黒髪の女の子だが。

 

 

声をかけなかった子のもう片方は不思議そうな顔をして祐一とポニーテール関羽を見つめている。朱里や雛里よりもまだ小柄で、不釣り合いなんて言葉じゃ生ぬるいほど長い蛇矛を持っている。

 

ただ、祐一を警戒している様子はない。多分、燕人・張飛なのだろうと合点すると、祐一は泣きたくなった。『この三国志大丈夫か?』と。

 

「(ん?でも待てよ?この二人が関羽と張飛なら、劉備は……)」

 

先ほど素晴らしいと賛辞を送りたくなるほどいい反応を返した……今現在腰が抜けているのか立ちあがれていない……少女を祐一は見詰める。

 

そして、目があった。

 

「あなたが……劉…玄徳さん?」

 

「……へ?は、はい!そうですよ!?」

 

「(やってしまった…)」

 

視界の端に、太郎次郎三郎と一緒に、疲労の為か元からか、さほど早くない速度でやってくる朱里と雛里に心の中で謝罪した。

 

「(ごめん、二人とも。俺のせいで、面倒なことになったかも。)」

 

「愛紗、このお兄ちゃんがどうかしたのか〜?」

 

「どうしたも…!こんな近くに来るまで気配を感じさせないような相手だぞ!」

 

「?愛紗は気づいてなかったのか?それに今このお兄ちゃんから殺気なんて出てないし、さっきは義勇兵が〜って話しかけてきたのだ。」

 

「む、むぅ…」

 

そう言われ、武器を下ろすポニテ関羽。

 

「(さすが無知の俺でも知ってるほどの燕人・張飛…平時にあれだけ気配消してもまだ気づくのか…)」

 

割とプライドを傷つけられた祐一だが、おかげで助かったので何も言えない。

 

「あ、あの〜…」

 

「ん?」

 

「義勇兵に、志願してくれるんですか?」

 

「うん。あと、もうすぐ稀代の名軍師二人を含めた五人が来るから、それまで待っててもらえる?」

 

「はい!わかりました!……あ、それから…花子って、誰ですか?」

 

「なんて呼べばいいのかわからなかったから、勝手に呼び名を決めさせてもらった。」

 

「にゃはは、なんかお兄ちゃんの方が偉そうなのだ。」

 

最後の台詞は、誰の耳にも届かなかった。

 

説明
やっとキャラクターの欄で「女キャラ」を選択できる男女比になりました。
そして、自分で書いてて思う。朱里が可哀そうと。
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コメント
レイン様 はい!小さい存在は『愛でるべきモノ』です!そうですね、いじり方はもう体が、というかもはや口が覚えてるでしょう。(柏葉端)
どうも理知的に考えるのが朱里ちゃんと言うイメージが私の中に生まれてしまっているので、祐一君の気持ちも分かります。…そして小さい存在は『愛でるモノ』ですよね〜いじり方は『誰かさん』でなれてるでしょうし(笑)(レイン)
紅蓮様 私も一刀以外を恋姫の旦那にすることに少し抵抗はあるんですが、原作一刀蜀ルートに負けないくらいみんなと仲良くなるとき、私の脳内ではどうしても恋人なみにふさわしい関係が思いつかない娘が何人かいるので…。そこをすべてクリアすれば原作キャラとはくっつきません。逆に最後まで扱いに困る娘がいれば、序でお返事した程度に祐一はハーレム化します。(柏葉端)
自由人様 ご指摘ありがとうございます。輪恋姫のシリアスモードをオフにした祐一は、大体あの無茶ぶりを発揮すると思います。……ネタが続く限り。(柏葉端)
朱里は仕方が無いかな。様子を伺えばその様な事にはならなかったかもだし、走ってもデクと同着ってのはちょっと可愛かったかなwま、蜀の二大軍師は基本癒し系ですからwwしかしいきなり大将の桃香に話しかけちゃって火蓋が切っておとされるかと思いきや鈴々のお陰で回避…祐一はちょっと抜けてて危ういですね(汗) 御報告 愛沙→愛紗 ではないでしょうか?(自由人)
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真恋姫無双 祐一 朱里 雛里  

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