異世界の天の御遣い物語6
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曹操

 

 

 

 

「あなた達、なにやらたのしそうね」

と話しかけられたので、俺たちは振り返ってみるとそこには、小さな少女と軍人達がいた。

「ん?君は?」

「私の名は曹孟徳、私が名乗ったのだからあなた達も名を名乗りなさい。」

・・・え?この女の子が曹操?マジか!?今までも女の子だったから、ある程度予想していたけど

まさかこんな小さな女の子だったなんて・・・でも、この子の覇気すごいな。今まで感じたことの無い氣だ。

「俺は北郷一刀だ」「自分は楽進と申します」「うちは李典や」「沙和は于禁なのー」

「そう、それにしてもあなた達よく黄巾党を追い払えたわね」

と曹操が疑問を口にした。

「えっと、沙和たちが戦ってる所にこのお兄さんが助けてくれたのー」

「・・・あなたが?・・・たった一人で?」

「あ、ああ、森の中にこの街の人がやられていて、それで助けにきたってわけだ」

「へぇ〜、・・・強いのねあなた」

「・・・う」

曹操が値踏みをするかのように、俺の事をまじまじと見てきた。

なんかすごく居心地が悪い。

そんな俺たちを見て、黒髪の女の子とネコ耳フードをかぶった女の子が割り込んできた。

「華琳様!そんなひ弱そうな奴に構ってないで用は済んだのですから、早く帰りましょう」

「そうです華琳様!男になんか近づいたら妊娠させられてしまいます!」

いやいや!妊娠って・・・あんた・・・と思い、ネコ耳フードの子を見ていたら

「な、なによ、はっ!?わかった、あんた私を妊娠させるきね!?これだから男っていうのは・・・ぶつぶつぶつぶつ・・・」

なんだこの子は?なんかついていけん・・・

「それより曹操様、わざわざ来て下ってありがとうございました。」

と楽進が言っていた。

「お礼はいいわ、私達は何もしてない。感謝は無意味よ」

「で、でも来て下さいましたし・・・」

「そう・・・なら、あなた達四人私の部下にならないかしら?部下になってその感謝を返してくれればいいわ、それでどうかしら?」

「自分はかまいませんが・・・」

と言いつつ、李典と于禁の方を見る。

「うちは別にええで」「沙和もいいのー」

と二人が言っていた。

「わかった」と楽進が頷き返す。

「聞いてのとうりです。曹操様これからよろしくおねがいします」

「なら、私の真名を呼ぶことを許します。私の真名は華琳、以後そう呼びなさい。

 そしてわたしの後ろにいる二人が、夏侯惇に夏侯淵で軍師の荀ケよ、後城に許緒っていう子がいるけど後で紹介するわねとりあえず、みな挨拶なさい。」

「私の名は夏侯惇、真名は春蘭という、よろしく頼むぞ」

「私の名は夏侯淵、真名は秋蘭という、こちらもよろしくたのむぞ」

「名は荀ケ、真名は桂花、呼びたきゃ呼んでいいわよ」

「自分は凪です」「うちは真桜や、よろしゅう」「沙和は沙和なのー」

とそれぞれ自己紹介してるなかで、

「あなたはどうするの一刀?」

と曹操が聞いてきた。

「ごめん、俺は曹操の部下にはなれない」

「あら、それはどうしてかしら?」

「俺には誓いあった仲間がいるから、だから・・・ごめん」

「ふーん、そう・・・」

と話していると、

「貴様ぁぁ!華琳様のお誘いを断ろうと言うのかぁぁ!」

と夏候惇が剣をこちらに向けながら、叫んできた。

「ちょ、ちょ、ちょっとまった!?断っただけで剣をこっちに向けるなーーー!?」

「ええい、問答無用だぁぁぁ!」

「ギャーーーー!?!?」

剣を上から振ってきたのでそれを、避ける。

「!?」避けられた夏候惇はすこし驚いていた。

「へぇ〜、春蘭の攻撃を避けられるなんて、すごいわね、そんなにすごそうに見えないのに」

「おそらくですけど、北郷様は普段は氣を操って、力を抑えてるんだと思います。自分も氣をつかうので、少しわかります。」

と楽進が曹操に説明していた。

そう、俺は普段、氣の強さをコントロールすることで、強さをカモフラージュしている。

「そうか、楽進も氣を使うの《ブンッ!!》か・・・って、うああああ!?!?」

「なに余所見をしている!!」

話してる最中でもお構いなしに攻撃をしか《フォン!》うおうおおおお!?!?

「北郷様、凪でいいです。助けていただきましたし」

「うちも真桜でええで」

「沙和も真名を許すのー、えへへ」

と言ってくるので、

「そっか、んじゃありがたく呼ばしてもらうな!《スゥン!!》っていい加減だれか止めてーーー!」

「姉者、いい加減やめたらどうだ?」

「しかし、秋蘭、こやつは華琳様の誘いを断ったのだぞ!」

「ほう、姉者は北郷とそんなに一緒にいたいのか?」

「うえ!?誰もそんなことは・・・」

「そうなの?春蘭」

「そんなことありません、こんな軟弱な奴なぞ」

「だったら、もういいわ。仲間とやらが居るのでは仕方ないわ」

「はっ!」と曹操の言葉に忠実な夏候惇、(・・・ふぅ、助かった)

「・・・ちっ、斬られればよかったのに・・・」と誰かが言った気がしたが無視することにした。

俺は夏候淵にお礼を言った

「ありがとう、助けてくれて」

「ん、なんのことだ?」

「さっききっかけみたいの作ってくれたから、だからありがとう」

「・・・ふふっ、ああ」

と話していると、

「それにしても一刀、あなた見ない服を着ているわね」

「ん、ああ俺の国の服装だよ、俺、違う世界からきたから」

その言葉に、みんなが驚く。

「ええ!?それじゃあ、お兄さんが最近うわさになってる天の御遣い様なのー!?」

「へぇー、兄さんすごいんやね」

「北郷様が御遣い様・・・」

「貴公が天の御遣いだったとは・・・」

「貴様!うそじゃあるまいな!」

「一刀が天の御遣いだったの、驚いたわねこれは」

とみんながそれぞれ―――――――

「って、ちょっと待ちなさいよ!なんで私だけ喋らせないのよ!?」

「いや、なんとなく言うの分かるし、どうせ・・・「あんたみたいな、妊娠させ男が御遣いなわけないじゃない!」とか言いそうだし」

「ぐ・・・」

図星かよ!?自分で言ってて悲しくなったわ!!

「フン・・・」

と荀ケがそっぽ向いていたときに、

「やっぱりあなた、私達と共に行動しなさい」

と曹操が言ってきた。

「いや、あの、だから・・・」

「誰も部下になれだ、なんて言ってないわ・・・黄巾党を討伐するまで協力しなさいと言っているのよ

あなただって、黄巾党・・・許せないでしょう?」

「ああ、そうだな」

確かに許せないし鎮圧したいと思っている、でも、もう目的も終わったしそろそろ桃香たちの所に帰らなくちゃいけないしなぁ・・・んーーーー、よし!

「なら、一つだけ条件いいかな?」

「いいでしょう、何?」

「もし行動中に、俺の仲間にあったら戻らしてもらうけどいいか?」

「そうね、・・・いいでしょう。だけど、仕事や任務中に抜けるのは駄目ですから、そのつもりでいるように」

「ああ、それはわかってる」

「そう、ならいいわ。その条件受けましょう。」

曹操は考えていた、天の御遣いという人物がどのような人なのかを、近くで見てみたいと思っていた

(他人にここまで興味を持ったのは、はじめてね。ふふ、楽しみだわ)

「それでは皆の者!城に帰る!」

「「「はっ!」」」「御意!」

こうしておれは、助けた街の人達に感謝されながら、魏の城に向かった。

 

 

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魏の初日

 

 

 

魏の城に着いた俺たちを迎えてくれたのは、頭に春巻きみたいな物をした女の子と兵士達だった。

「おかえりなさい、華琳様!春蘭様!秋蘭様!桂花!」

「ふふ、ただいま季衣」

「今帰ったぞ、季衣我々のいない間に何か問題はなかったか?」

「はい、なにも問題ありませんでした!・・・ところで後ろの4人は誰なんですか?」

と俺と凪、真桜、沙和を見ていた。

「新しく私たちの陣営に加わる事になった楽進、李典、于禁よ、季衣仲良くね。

そしてそこの男が天の御遣いの北郷一刀よ、一刀には黄巾党を鎮圧するために一時的に協力してもらうことになったから、そのつもりでいるように」

 

「そうなんですかぁー、・・・わかりました!」

そう元気よく返事をするとスタスタと俺たちの所にやってきた。

「僕の名前は許緒、真名は季衣って言うんだ、よろしくね」

「よろしくお願いします、季衣様。自分は凪といいます」

「うちは真桜っていうんや、よろしゅうに」

「沙和の真名は沙和だよ、よろしくねー季衣ちゃん」

三人と挨拶をかわしていた。そして、

「兄ちゃんが噂の天の御遣いって言う人なんだー、・・・じーーーーー・・・」

「な、何?」

すごくじーーーーと見られてしまいました、しばらくすると

「なんか天の御遣いっていうから、なんか・・こう・・バァーーとすごい人なのかと想像してたから、そしたら案外普通ぽいから」

「う・・・ごめん」

なんかしらんが俺が悪いみたいだから謝ってしまった、だって・・・うう、普通いいじゃないか!

「ううん、気にしなくていいよ兄ちゃん、兄ちゃんみたいの方が僕は好きだし」

「お、おう、そうか」

さっきまでのちょぴり悲しい気持ちがどこかに吹き飛んでいった

「さて、どうやら紹介も終わったようですし、そろそろ城に入るわよ」

「「「はっ」」」

 

 

城に入った俺は華琳達と別れ侍女さんに連れられ部屋へと案内された。

案内された部屋はなかなかに広く住みやすそうな部屋だ。

侍女さんにお礼を言うと「それでは」と言い帰っていった。

「・・・そういえば、俺ってこの世界に来てからまともな布団で寝たことなかったな」

そう思い俺は刀の壁に掛け、バックをそこらへんに置くと寝台にダイブした。

「ん〜〜・・・あっちの世界のよりちょっと寝にくいけど、まぁ野宿よりマシだな」

寝転がっていると、疲れていたのだろうか、だんだんと眠くなってきた。

(あーー、やばいな、堕ちる〜〜・・・・・・・・・ぐぅ)

そのまま寝てしまった。

 

 

「――――さい、――――――おきてください! 北郷様起きてください!」

「隊長、起きろー」

「たいちょ、おきてなの〜」

と誰かの声がし、体が揺さぶられている。

(ん・・・ん、んーー、誰だ?)

寝ぼけたままの頭のまま、ムクッと起き上がった

「やっと起きてくださいました・・・」

「ん、凪・・・おはよう」

寝ぼけた頭がどんどんと覚醒していくなか、とりあえず挨拶をしてみた。

「おはようじゃないで!隊長!はよ眼覚ましいや」

「お、おう。わかった・・・ん?なあ、その隊長ってなに?」

「はい、今日から我等三人は街の警備をすることになりました」

「そこでや、大将が、あの男が暇だからだろうから、やらせとけって」

「え?」

そこで俺の頭は完全に覚醒する。

「え?は?なんでそんなことになってるんだ」

「だって隊長、今日の軍議来なかったのー、だから華琳様が怒って、一刀にやらせろって言ってたの」

「ええぇーーー!?そんなの知らないぞ!?なんで誰も起こしてくれなかったんだ!?」

「起こしましたけど、隊長が起きなかっただけやで、まぁ自業自得やな」

・・・〜〜〜・・・!あ〜〜そっか、やっちまったというわけか・・・

とがっくりしている俺をみて、

「あの、いやなら華琳様に言いましょうか?」

とすこし残念そうに凪が言う

「あ、いや、いやってわけじゃないんだけどさ、・・・なんで凪が残念そうなの?」

「いえ、華琳様が決めたことですが、自分も隊長なら北郷様がいいなと思いまして」

ちょっと顔を赤らめながら言ってきた。

「そうか?街を警備するなら詳しい人の方がいいんじゃないか?」

俺はこの街に来たばかりだから、街を詳しく知る人の方がいいんじゃないかと思い口にする

「ああーーもう、隊長は鈍いなぁ!凪は隊長と一緒に仕事したいんやと」

「ん?そうなのか?凪」

「はい・・・だめでしょうか?」

と顔を赤らめながら、すこし上目で見てきた。

(ぐはっ!か、か、かわいい!?なんて破壊力だ!一瞬でライフがゼロだ!?)

胸を押さえながら悶えている俺をみて、

「で、どうなのー隊長?」

「はっ!?・・・あ、ああ、そうだな。一緒にがんばろうか凪」

「っ!は、はい!」《キラキラキラ》

(うおっ!まぶしい!すげー笑顔だ)

「よっしゃ!ほんなら決まったとこで、うちらの親睦を深めるって意味も込めてこれからメシでも食いにいかへん?もちろん隊長のおごりで」

「へ?」

とスットンキョーな声を出してしまった。

「それいいのー!ね、ね、いいでしょ。たいちょ!」

「そうだな、初日だしまぁいいだろう」

「うおっ!まじか!いやー言うてみるもんやな」

「やったーなのー、ね、凪ちゃん」

「隊長、ありがとうございます」

「ああ、気にするな」

話も終わり、街に繰り出そうとドアノブに手を掛けたときに、

「あ、そういえば何でこんな時間に起こしにきたんだ?」

そう、今はちょうどメシ時の時間、普通なら・・・・・あ

「まさか、始めから集るつもりできたんじゃないだろうな?」

ぎくっと真桜と沙和が反応する。

「そんなことないで、隊長!」

「そ、そうなのー」

「じーーーーーー・・・」

とおれは二人の顔を見つめる、二人はあははと笑顔で応える。

「凪、好きなものいっぱい食べさしてやるぞー」

なんかうそっぽいのでかまをかけてみた。

「ありがとうございます!」

と凪も乗ってきてくれた。

「えーー!?そりゃないで隊長!?」

「そうなのー!?」

「それじゃあ、本当のことを言ったら君たちにも食べさせよう」

「「う・・・」」と二人がいきづまる。

「はは、今のでバレバレだな。まぁいいや、もう許してやるから晩飯食いに行こう」

「は、はいなのー」

「あ、まってーな、隊長!」

「・・・ふふっ」

と三人が俺の後を追いかけてくる。

これから楽しくなりそうだなと思う俺であった。

 

 

結論、なんでも好きな物食わしてやるなんて簡単に口に出してはいけないことを今日学んだ。

店に着き、注文を頼んだときは開いた口が閉じなかった。

凪は激辛料理を頼み、量もあの体のどこに入るのかってくらい食べ、真桜も沙和もけっこうな量を食べていた、気がついたときには、テーブルの上の料理はほとんどなくなっていた。

当然のごとく、金額もとんでもない事になっていて、水鏡さんの街で稼いだ金はほとんど無くなってしまった。

「隊長、ごそっさん!」

「たいちょ!ごちなのー」

「ご馳走様でした、隊長」

「・・・ったく、ちょっとは加減してしてくれよな、俺あまり金持ってないんだから」

「ええー、そうなの?天の御遣いって言うからお金持ちだと思ってたのー」

「そうだったのですか・・・申し訳ありません」

「いや!?いいよ、いいよ!そんな謝ることじゃないから!」

笑顔からいきなりそんな落ち込まれたらとても悪いことをした気分になるじゃないか。

「ほら、これから仲良くするわけだし、な、おれは気にしてないから」

「・・・はい」

そう言っても、あまり普通に戻ってくれない凪に、

「それじゃあ、明日から仕事がんばってくれ、それで行いで返してくれればいいから、それでどうだ?」

なにかで返さないと気が済まなそうな顔をしていたから、言ってみた

「は、はい!わかりました!」

と元気よく返事をし、握り拳をつくっていた。

「まぁそうやね、こんだけぎょうさん食わしてもらったし、明日からがんばるとしますか」

「おーなの」

「ははっ、たのむなみんな」

こうして、俺の魏での最初の日が終わっていった。

 

 

 

 

 

 

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VS春蘭

 

 

魏の街に着いてから次の日、おれはこれから街の警備をする準備をしていた。

「えーと、地図はもらったし、後は・・・刀は一本でいいか」

準備が終わった俺は、凪達との待ち合わせ場所の中庭にむかった。

 

「んー、まだ来ていないか」

今日はまだこの街を詳しく知らないので、一日使って街を隅々まで見て回ろうと思っている。

(警備体制を考えるのはその後でいいな・・・)

などと考えていると向こうから、華琳、春蘭、秋蘭がやってきた。

「おはよう、みんな」

と軽く挨拶をすると、

「おはようじゃないわよ、昨日は寝ていて軍議に来ないってどういうことよ一刀!

昨日の軍議、顔見せでもあったんだからね。」

「う・・・それはすまん」

「まったく、どんな人間が天の御遣いかと興味をもっていたのだけれど、こんなだらしない男だったとわね」

「返す言葉もこざいません・・・」

どんどんと小さくなっていく俺であった。

「ふん、北郷などしょせんその程度の男ですよ」

とはっはっはと笑う春蘭、ちょっとムッときたが行けなかった手前なにも言えなかった。

「姉者、あまり人のこと言えないだろう、朝の軍議には時々遅刻するだろう」

「なっ!?秋蘭!?そんなこと言うんじゃない、それに昨日は寝坊しなかったぞ」

「昨日の軍議は昼だったろうが・・・」

「ぐ・・・・」

と赤面する春蘭、そんな様子を見ていて仲がいいんだなぁと微笑んでいると、

「貴様!?なにがおかしい!?」

「え?ええ!?い、いや、可笑しいんじゃなくて、仲がいいんだなぁと微笑んでいたんですけどーーー!」

「うるさい!?こうなったら勝負しろ北郷!!」

「ええーーー!?どうなったらそうなるのーーー!?」

と叫んで、華琳に助けてもらおうと見てみると、

「おもしろそうね、・・・一刀、昨日の罰よ、春蘭と勝負しなさい」

はい、駄目でした。

「いや、でも、これから仕事があるし、臨時でも隊長するわけだからしっかりやらないとさ」

と言ってみるものの、

「だったら昨日からしっかりしてほしかったものね」

「う・・・すいません」

やっぱり駄目でした、最後の頼み秋蘭を見てみるが、首を横に振っていた。

逃げ場なしか、・・・しょうがないな

「わかったよ、昨日は悪いことしてるって思ってるし、勝負受けるよ」

「そうこなくては!」

 

そうして俺は朝から春蘭と戦うことになった。中庭で春蘭と向かいあい、天月を抜き構えていると、華琳達のところに凪達がやってきていた。

秋蘭が三人に説明すると、三人も見学者になっていた。

「私を前にして、余所見とは余裕があるじゃないか」

「いや、余裕ってわけじゃないけど、向かってくる気配がなかったから余所見していただけ」

「・・・ふ、そうか」

そういうと春蘭は完全な戦闘態勢になっていた。

「・・・あの、ひとつ聞くけど本気じゃないよね?」

「私が手加減できるように見えるか?」

いえ、見えませんと心の中で即答してみる。

(それにしても、すげービリビリくるな、こっちの世界で初のタイマンってとこだな)

かんがえていると、

「いくぞ!」「はあああああああ!!」

怒号とともに、春蘭が突っ込んできた。

「っ!はやい!」

春蘭は剣を上段から俺の頭めがけて振り下ろしてきた。

「くっ!」

それをバックして避けた。俺の居たところに大きな穴ぼこができていた。

「・・・マジ?」

その穴をマジマジと見て感想を一言言ってみる。

 

「どうやら初めて会った時に春蘭の一撃を避けたのはまぐれではなさそうね」

「そうみたいですね、北郷も中々の使い手のようです」

と華琳と秋蘭が口にする。

「隊長、生きてられるやろうか・・・」

「へ、変なこと言うな真桜!」

「でも、春蘭様おっかないのー、沙和なら逃げ出しちゃうの」

と三人もさっきの一撃をみて口にする。

 

(これは、受け止めるより刀を寝かせて受け流すしかないな

俺の刀は頑丈で折れはしないが、衝撃がすごそうだからな)

と分析していると、

「ははは、どうした北郷!臆して声も出せないか!」

「いや、すげー一撃だと思ってさ」

「そうだろ、貴様では私には勝てないということがよくわかっただろう」

一撃を褒められて気分がいいのか、そんなことを言ってきた。

「ああ、確かにすごい一撃だが、それじゃ俺には勝てないよ」

と軽く挑発してみた。

「・・・なんだと?私が貴様に負けるだと?・・・冗談にしても笑えないぞ」

「冗談なんかじゃないさ、今から証明してやるよ」

「ふっ・・・おもしろい!・・・いくぞおおおおおおお!!」

今度は横から一閃を放ってきた、俺はそれをしゃがんで避けた。

「ふっ!」

続いて一閃からすばやく戻した片手右斜め切りをしゃがんだ状態のまま受け流し、横に飛び

体勢を整える。

「逃げるのはうまいようだな!」

「そりゃどうも」

「褒めてないわあああああ!!」

とまた突っ込んできた。

(突っ込んできてばかりだな・・・)

「はああああ!!」

と4連続の斬撃を繰り出してきた。

その攻撃を俺は、

「時雨蒼燕流 守式四の型 五風十雨」

を使い相手の呼吸に合わせて攻撃をかわす。

「っ!」

避けられた春蘭はすこし驚いていた。

まさか4連続もの攻撃を避けられるとは思ってなかったのだろう。

「貴様!なんだ今の変な動きは!」

「んー、教えてもいいけど、俺に勝ったらな」

「意地でも貴様には負けんわあああああ!!」

 

 

「今の何?」

と華琳も驚いていた、普通なら受け止めるか受け流すかするはずが、一刀は4連続の攻撃をすべて避けたのだ。

「独特の動きをしますね、北郷は」

「ええ、そうね」

「たいちょ、つよいのー!」

「へぇ〜、やっぱり隊長はつよいんやね、助けてもらってあれやけど、あまり信じられんかったし」

「隊長・・・さすがです」

とこちらもいろいろと反応していた。

 

 

「北郷!さっきから避けてばかりではないか!それでは証明できんぞ」

「ん、ああ、そうだな・・・じゃそろそろこっちからも行くぞ!」

「ああ、来い!」

俺は体制を低くし春蘭に突っ込んでいく。

「時雨蒼燕流 攻式五の型′ワ月雨」

通常の剣術で言うところの中斬りを放ちながら、刀を素早く持ち替え、相手の守りのタイミングを狂わせる変幻自在の斬撃を放つ。

「な、なに!?」

タイミングを狂わされた春蘭は守ることができず、刃が春蘭の防具にあたり吹き飛ばす。

「がはっ!」

防具からの衝撃でわき腹のあたりに痛みが走ったのだろう、すこし痛がっていた。

それでもやはり武人なのだろう、すぐに起き上がり構えに入る。

「やめとけ春蘭、けっこう力を入れて攻撃したから、痛いはずだ。そんな状態じゃ満足に戦えないだろう」

「ふざけるな!私は武人だ!この程度の痛みなどたいしたことはないわ!」

「武人である前に春蘭は女の子なんだから、我慢しなくていいとおもうんだけどなぁ」

「っ!な、なにを軟弱なことを―――――」

こっそり近づき痛い所を突いてみる。

「!?!?〜〜〜〜・・・!!・・・た、大したことはない」

あ、我慢してる。ちょっと涙目になっているよと言うと、これは眼にゴミが入ったからだと意地を張っていた。

そんなところに、

「春蘭、あなたの負けよ、武人なら負けを受け入れるのも強さのうちよ」

と華琳がこちらに歩いてきた。

「か、華琳様!?・・・わかりました。北郷、私の負けだ」

「だが、今度やるときには勝たせてもらうぞ!」

「ああ、俺も負けないようにがんばるよ」

どうやら少しは春蘭に認めてもらえたようだ。

「それにしても、北郷は独特の動きをするな」

「ん、ああ、俺の流派の動きだ、天叢流っていうんだ。いくつもの流派をくみ上げてできたそうだ」

「そうか、流派か。私とも一戦してもらいたいのだが・・・」

と秋蘭が誘ってくるのを、

「いや、今日はもう無理だな、これから臨時隊長の初仕事だからな」

「ふふっ、そうか、残念だが仕方ない」

秋蘭と話していると、

「隊長そろそろ行きませんと、一日で見て回れなくなりますよ」

「ああ、そうだな・・・それじゃ華琳、秋蘭、春蘭行ってくるよ」

「ええ、しっかりと天の世界の知識を使って街の警備頼むわね」

「・・・ああ」

なるほどね、俺を警備隊長にした本当の理由はそれね、抜け目ないなぁ

やっぱり、敵になったときに一番の強敵になりそうだな。

と考えながら、三人娘と一緒に街へと繰り出した。

(まぁでも今は、ここの一員なんだからしっかりしなきゃな)

(いつか敵対することになっても、わかりあえるときがくるさ)

そう信じ今は目の前のことに全力でやると誓った。

 

 

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桂花の罠

 

 

 

春蘭と戦った日から一週間が経過した。

俺はその日、街の警備体制について華琳と一緒に過ごしていた。

 

「・・・俺の報告書どうかな?秋蘭に教えてもらいながらかいてみたんだけど・・・」

こちらの世界の文字が完全にわかったわけではないので、報告書一つ書くのも一苦労だった。

そのことを秋蘭に相談したら、仕事の合間になら教えてやると言ってくれたので、習いながら書いてみた報告書っていうか発案書みたいなものを華琳に見てもらっているところだ。

 

「・・・そうね、文字はあれだけど、内容自体はいいわね」

華琳は報告書を見ながら、うれしいことを言ってきた。

 

「そ、そうか!書いてるときもこんなんでいいのかなぁ?と思っていたから良かったよ」

俺は華琳の言葉を聞いて安心する。

 

「あら、安心するのは早いんじゃないかしら、発案者はあなたなのだからこれをすぐにでも実践してもらうわよ」

俺の安心感を吹き飛ばすような言葉だった。

 

「・・・わかった、がんばってみるよ」

「ええ、がんばりなさい。あなたのことは兵達からも聞いているわ、なかなか評判いいわよ一刀」

「お、おう、そうか」

それはとてもうれしいことだった、この一週間、街の事で警備兵達とがんばってきたから

甲斐があるというものだ。

 

「・・・たった一週間でこの成果、評判、おまけに武力も申し分ない・・・一刀やっぱり私の部下にならないかしら?」

華琳が俺を誘ってきた。

 

「ごめん、それは無理だ。・・・俺には待っている仲間がいるから。ここの生活は居心地がいいけど

・・・すまん」

と俺は即答する。

「そう・・・もう少し考えてもいいとおもうのだけれど・・・」

「俺は桃香の考えに賛同したからな、・・・もし華琳に初めに会っていたら君に賛同していたかも知れないけどな」

「・・・・」

華琳に表情が少し淋しそうに見えたのは多分気のせいなのだろう。

 

「それじゃ、一刀また後で」

「ああ」

俺と華琳は中庭で別れた。最近、黄巾党の動きが活発化しはじめた。

その性もあったここ最近華琳は毎日忙しそうに動いている。

俺も手伝うよと言ったのだが、俺の手伝えることなどわずかなのであまり意味を成さなかった。

(無理して倒れなきゃいいけど・・・)

と考えながら歩いていると季衣に会った。

 

「お、季衣じゃないか、帰ってきていたのか」

「あ、兄ちゃんただいまー!」

季衣はそういいながら俺の胸にダイブしてくる。

「おかえり、今日は少し遅かったな、何かあったのか?」

「えっとね、黄巾党の奴等がさ、遠くの方まで逃げるから追いかけてたら県境越えちゃって

そしたらそれが黄巾党の罠でさ、その時に孫策って言うお姉ちゃんに助けてもらったんだけど、

春蘭様は借りができたって言ってた」

と季衣がいろいろと説明してくれた。

(孫策ねぇ・・・きっとまた女の子なんだろうなぁ・・・)

そう思いながら、

「そういえば春蘭はどうしたの?」

「春蘭様なら華琳様に報告しに行くって、バァーーと行っちゃった」

「そうか・・・多分今の話を聞いたら華琳は呆れると思うなぁ・・・」

と小声で口にする。

「ん?何か言った兄ちゃん」

「いや、なんでもないよ」

それにしても黄巾党はそんな策を使えるようになってきたのか、どんどんと力を付け始めたというわけか、華琳も今の話を聞いて同じことを考えているだろうな・・・

俺もあまり長くはここに居られないな、桃香達が待ってるはずだ・・・・・・・多分

・・・帰るのが遅いから俺の事忘れてないと思うけど、心配になってきた。

 

「あ、そうだ。兄ちゃん気をつけたほうがいいよ」

と季衣が思い出したと口にする。

「ん?なにがだ?」

「最近、華琳様と兄ちゃんの仲がいいせいか、桂花がなんかぶつぶつと兄ちゃんの事言ってたよ」

「ぶつぶつ?・・・なにか悪いことしたかな?」

確かにここのところは、華琳と一緒に居ることが多かったけど、それぐらいで恨まれるなんて

そんな馬鹿な話・・・・あるかもしんないなぁ・・・

最初に会ったときから、ちょっと変・・・・というか百合百合しい感じがこう・・・

うん、気をつけよう。

 

「ありがとうな季衣、気をつけとくよ」

「うん、それじゃ兄ちゃんボク行くから、また後でねーー!」

手を振りながら元気よく駆けて行った。

 

「さてと、俺も凪達と街の様子でも見て回ろうかな」

と歩き出す、しばらく歩いていると前方に地面が掘り返されたような穴があった。

(??・・・なんだこれ?・・・落とし穴?)

よく見るとそれは落とし穴であった、でも作りがお世辞にも上手とは言えずバレバレであった。

(なんでこんなところに、落とし穴なんか・・・・・あ!)

ここでさっき話していたことを思い出す。

(まさか、これ桂花が作ったのか?)

そう思いあたりをキョロキョロと見渡してみる。

(んーーー・・・いないか・・・さすがに見えるところにはいないかぁ・・・・ん?)

とそこで見覚えのあるネコミミフードが草むらからピョコンと出ていた。

(うわー、本当に居たよ・・・しかしこれどうしたらいいんだ・・・)

俺は落とし穴を見ながら考える。

(バレバレとはいえ、さすがにこんなところにあるには、あぶないな)

と考えてるときでも、草むらはガサッと微妙に動く、どうやら俺が早く落ちないかと焦れているみたいだ。

(はぁ・・・しょうがない)

俺は落とし穴の上に歩いていく、そして落とし穴がボコン!と穴が開く直前に瞬歩を使い木の上に隠れる。

 

その瞬間草むらから桂花がガバッと出てきて、

「あははは、引っ掛ったわね!馬鹿じゃないの!この妊娠精液男!」

と桂花は俺を罵倒する言葉を発しながら穴に近づいていく。

穴からは砂煙が出てきて中は何も見えないので、桂花は俺が落ちたと勘違いしているのも気がつかず

穴に向かって罵倒し続けていた。

(なんつーエグイ言葉を使っているんだ・・・)

木の上からその様子を見る俺だが、そろそろ気の毒になってきて、木から降り桂花に近づいていく。

 

「どうした桂花?なにか楽しいことでもあったのか?」

と俺は後ろから話かける。

「ええ、今さっきこの穴に間抜けな全身精液男が無様な姿で落ちていったのよ、可笑しいでしょう」

あはははと笑いながら、話しかけているのが俺だと気がつかず話す。

「なんでそんなことするんだ?」

「ムカつくのよ、崇高なる華琳様のお側にあんな男がいるなんて、それにちょっと仕事ができるからっていい気になってるし天誅よ!」

 

(なるほどね、・・・まぁ理由の大半は前半の部分だな)

(仕事ができるってことは俺のこと少しは見ていてくれてるってことだよな)

なんかうれしいやら悲しいやらだな。

と考えていても桂花は一向にこちらに気がつかないので、

「おい、桂花!」

「!?・・・っ!?な、なんであんたが後ろにいるのよ!?さっき穴に落ちたじゃない!?」

どうやらやっと気づいたようだ。

「ああ、あれは残像だ、あと落とし穴バレバレだったぞ」

と簡単に説明。

「くっ、私を嵌めたわね、孕ませ男の癖に!」

「いや!?先に俺を嵌めようとしたのはお前だろう!」

「なによ!あんたなんか死ねばいいのに!」

「えーーー!?それはいくらなんでもひどいんですけどーーー!!」

「ふん!見てなさいよ!今度は完璧に作って酷い目に遭わせてやるんだから、覚悟してなさい!」

そう言うと桂花はピューと走って行ってしまった・・・

(はぁ・・・俺は仲良くしたいんだけどなぁ・・・まだ無理か)

その場を後にする、そして凪達と街を警邏し華琳や季衣達と過ごし一日は終わった。

 

ちなみに穴は俺が埋めておいた。

その更に一週間後完璧に作った落とし穴に華琳が落ちそうになり、一緒に歩いていた俺が助ける事件がおきた。

その性で桂花は華琳に追いかけられ、

「北郷なんてだーいきらい!」

と言う叫び声が天高く響いていた。

 

 

 

 

 

-5ページ-

 

 

華琳

 

 

 

次の日、またしても黄巾党が暴れていると報告が入った。

そこで俺達は出陣することになったんだけれど・・・華琳の様子がおかしかった。

 

「おい、華琳、大丈夫か?なんかお前フラフラしているぞ」

俺と華琳はみんなの待つ、城の前に向かって歩いている。

 

「だ、大丈夫よ、・・・なんでもないわ」

と華琳がハァハァと少し息をきらせながら、ほんのりと赤みがかった顔でしゃべる。

 

俺はまさかと思い、華琳を立ち止まらせ額に自分の額を当てる。

「〜〜〜!?あ、あなた!何をしているの!?」

「へ?いや、熱があるんじゃないかって思って診ただけだけど、どうした?さらに赤みが増してきたぞ?」

「な、なんでもないわよ、・・・それにしても州牧であるこの私に額を当てるなんていい度胸ね一刀」

「病気かも知れないのに、そんなの関係ないよ、華琳が心配だったんだから」

「///そ、そう・・・」

と少し俯いてしまう華琳。

 

(やっぱり少し熱かったな、・・・風邪かな)

と俺は思い華琳に、

「なあ、華琳、今回の討伐遠征、お前は休んだほうがいいぞ」

華琳にそう言う。

その言葉を聞いて呆れたような顔で、

「なにを言っているの一刀?最近の黄巾党の動きあなたも知っているでしょう、

だから、今回の遠征は示威行為でもあるのだから私が行かなくてどうするの?」

 

「ああ、それはわかっているがお前少し熱っぽいぞ、ここで無理をして体でも壊したら、どうすんだよ」

 

「さっきも言ったけど私はなんでもないと言ったのよ」

「そんなの知らん」

「なっ!?さっき言ったばかりでしょう!」

「いや、そういうことじゃなくて、俺は華琳の部下になったわけじゃないから、そんな無理な命令を聞く云われはないってこと」

「華琳に体を壊してほしくないから、言ってるんだ。一人の友人として」

と俺はお願いをする。

 

「一刀・・・ありがとう、でもその願いは聞けないわ、私の覇業のためにも」

「華琳・・・」

 

そんなことをしていると向こうから秋蘭がやってくる。

「華琳様、出陣の準備が整いました、いつでも出れますが・・・どうかなされました?」

秋蘭も華琳の様子に気がついた。

俺は秋蘭に華琳が熱があることを話す。

 

「華琳様、今回の遠征はお休みください」

「秋蘭・・・あなたまで一刀と同じ事を言うのね」

「当たり前です、華琳様は我等にとって大事な御身、心配しないほうがおかしいです」

「ありがとう秋蘭、だけど今回の遠征は示威―――――」

「示威行為ならば姉者がいれば十分できます、なので今回はお控えください」

秋蘭は間髪いれずに華琳を圧倒する。

(あんな秋蘭、はじめて見るな、・・・本当に華琳のことが心配なんだな)

「秋蘭、この私に意見する気?」

と華琳はそんな秋蘭を目で威圧する。それに臆することなく、

「はい、今回は譲れませぬ、どうか・・・」

しばらく沈黙が続き、ついに華琳が折れる。

「ふぅ、わかったわよ、今回私は出ないわよ。・・・これでいいのでしょう?」

「はっ!ありがとうございます」

「そのかわり、しっかりと成果をあげてくるように、いいわね?」

「御意」

と言い、秋蘭は俺に、

「北郷、今回はお前も来なくていいぞ。・・・華琳様の面倒を見てやってくれ、本当なら私が見て差し上げたいのだがな・・・」

「ん、わかった。・・・けどいいのか俺なんかで」

「ああ、私はお前の事を信用に値する男だと見ている、だから問題ない」

その一言はうれしい一言であった。

「むしろ問題なのは姉者と桂花か・・・」

「あ、ああ、確かにあの二人はなぁ・・・華琳ラブだもなぁ」

 

「ん?ラブとはなんだ?」

「えっと、大好きってことかな」

「ふふ、そうか、なるほどな」

と二人で話していると、

「なに二人で話しているのよ・・・秋蘭そろそろ行かないと行けないんじゃないのかしら?」

「そうですね、では、頼んだぞ北郷」

「ああ、そっちも気をつけてな」

俺は軽く手を振りながら秋蘭を見送った。

 

「・・・一刀、秋蘭といつからあんなに仲良くなったのよ」

「え?ああ、文字を教えてもらっているから、そん時からかな」

「ふーん、そう・・・」

となんかおもしろくなさそうな顔である。

「さ、華琳さっさといくぞ、こんなところに居たら熱が酷くなっちまうかもしれないし」

「え、ええ、そうね」

俺達は華琳の部屋に向かった。

部屋に着いた俺は、寝巻きに着替えた華琳を寝台に寝転がせる。もちろん着替えている間は部屋の外にいた。・・・・本当だからね。

そして手の平で額に触り熱を測る。

(んーー、さっきよも少し熱っぽいかな・・・)

 

「・・・あなたの手冷たくて気持ちいいわね」

「そっか・・・」

「それにしても、この私が熱を出すなんて、不覚だわ」

「ま、人間だれしも完璧じゃないってことだ、最近、華琳は忙しかったんだから仕方ないよ」

「それでも、体調管理ぐらいはできてないとだめでしょう」

「そうかもしんないけど、良い機会じゃないか、今はゆっくり休め」

「・・・ふふっ、そうね、そうするわ」

話しながら、俺は水で濡らして持ってきたタオルを華琳の額に置く。

「・・・ありがとう一刀」

「ああ、どういたしまして、他にして欲しい事ないか?今なら聞いてやるぞ」

「そうね、少しお腹が空いたわね」

「お、そうか、食欲があるのはいいことだ、・・・よし、俺がなんか作ってきてやる」

と言うと、華琳は疑いの目で、

「あなた料理作れるの?」

「ああ、向こうの世界ではご飯は俺が作ってたんだ、まかせとけ」

「そう、じゃお願いしようかしらね、・・・食べられないものが出てきたら承知しないから」

「・・・わ、わかった」

俺は厨房に向かい、料理長さんに事情を話し貸してもらった。

 

「さてと、何をつくろうかな?」

俺は手も洗い、上着を脱ぎ考える。

「よし、あったかいお味噌汁でもつくるか、温まるはずだ」

材料は大体のものはこの厨房にも置いてあったので作ることにした。

風邪引いたときは焼き葱が体にいいって聞いたことがあるな。

 

長葱を食べやすいくらいの長さに切っておく。大根は短冊切りにしてっと

 

鍋にだし汁と大根を入れ、大根がやわらかくなるまで煮込む

 

大根がやわらかくなったら味噌を溶き入れる

 

長葱をフライパンみたいなもので焼き色がつくまでやく

 

お椀にお味噌汁を注ぎ入れ、焼き葱を入れる。上に刻み葱をちらしたら

 

俺特製お味噌汁の完成だ。うん、なかなかうまくできたな。よし持っていくか。

俺は味噌汁をお盆に乗せ華琳のところに戻る。

 

 

「おまたせ華琳。俺の世界のお味噌汁ってやつを作ってみた、これを食べたら体が温まるぞ」

「おみそしる?・・・いい匂いはするわね」

俺は華琳にお碗を渡し―――――あ。

「なぁ華琳、食べさせてやろうか?」

「なっ!?///自分で食べるからいいわよ!」

「そっか、んじゃほれ」

「ん、へぇー、見た目はおいしそうね、・・・味は」

ズズッと小さい音を立てながら一口飲む華琳。

「っ!・・・おいしい、これおいしいわね一刀」

なかなかに高評価だった、俺の味噌汁。

「お、そっか、よかったよ、華琳が早くよくなるように心を込めて作ったからな」

「そ、そう・・・」

「あ、おかわりならあるから、遠慮なく食ってくれ」

「ええ、ありがとう」

しばらく食事の時間が続いた。

 

 

「ありがとう一刀、とてもおいしかったわ。」

「そう言ってもらえると作った甲斐があるよ」

「少し眠くなってきたから、私は寝るわね、一刀も自由にしていていいわよ」

「いや、しばらくここに入るよ、秋蘭にも頼まれてるし、それに風邪で寝ているときは

人恋しくなるしね」

「そう、・・・まぁ好きにしなさい、おやすみ一刀」

「ああ、おやすみ華琳」

華琳は目瞑りしばらくすると、寝息が聞こえてきた。

俺はタオルを水で濡らし、額に置いておく。

 

(こんなに小さいのにがんばってるよな華琳は・・・)

(桃香達とは考え方がぜんぜんちがうのになんか放っておけないんだようなぁ・・・)

目指す場所は同じなのに、考え方がぜんぜん違う。

それは、いつかかならず桃香と華琳の理想がぶつかるということだ。

想像しただけであまり良い気分じゃない、本当ならそんなことにはなってほしくはないけど

人には人の考え方がある、それを押し付けたところでなんの解決のもならないことはわかっている。

だから、桃香と華琳がぶつかる時は俺も全力でみんなに応えよう。

全力には全力で。そうしてすべてを曝け出せば、絶対に信じあえると信じよう。

そう考えながら華琳を看病しながら一日があけた。

 

次の日には華琳の体調は少しよくなっていた。どうやら疲労からきていたらしい。

そのさらに次の日には完全に体調はもどっていた。

 

その次の日に春蘭達は帰ってきた。

春蘭は帰ってくるや否や、華琳のところに行っていた。

桂花も負けじと華琳の元に居た。

他のみんなも二人ほど慌ててはいなかったが、やはり心配していたのだろう、華琳の姿を見たときに安堵していた。

秋蘭にはお礼を言われ、桂花からはなんでか罵倒され、春蘭はずっと華琳様状態だった。

凪達と季衣はそんな様子を見て笑っていた。

 

こうして華琳の熱は治まった。

 

 

 

 

 

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再会

 

 

 

俺がこの街に来て早くも一ヶ月が経とうとしていた。

今日はここに来てからの事を、思い出していた。

 

臨時の隊長になり、凪、真桜、沙和という部下を持つようになった。

春蘭と戦い、少しは認めてもらえるようになったこと。

桂花が罠を作って、俺を嵌めようとして事、秋蘭に文字を教えてもらったこと。

華琳が熱を出し、看病したこと。

凪達と警邏している時に、盗人を捕まえるために街が少し壊れたこと。

本当にいろんな思い出ができた。

 

自室で思い出を思い出し、楽しんでいると兵から黄巾党がまた出没したので出撃の準備をするようにと華琳からの命令が来た。

 

「やれやれ、またか。・・・示威効果はあまりなかったなぁ・・・」

と言いながら、自分の準備をする。刀を二本持ちバックを背負い、部屋を出て華琳達が待っているであろう、城の前まで向かう。

 

「北郷、遅いぞ!」

「悪い」

俺は一言春蘭に謝り、凪達のところへ向かい兵達を整列させ、華琳達と黄巾党討伐に出陣した。

 

しばらく荒野を進んでいると、前方の方に砂塵を見つけた。

華琳は偵察部隊を出し、様子を探るように指示を出す。

そして、帰ってきた斥候から地形や敵などに関する情報を聞く。

 

「報告します!黄巾党の数、約一万二千。地形は平地で、近くの街の者達が襲われ義勇軍らしき軍がそれを守るように交戦中の模様、以上!」

「ご苦労、下がってよい」

「はっ!」といい、下がっていく。

 

「義勇軍か・・・」

と俺は呟く。

「桂花、どこの軍だかわかるかしら?」

「はっ!どうやらもう一つの部隊からの話によると、旗印に劉の文字、その周りに関と張の旗がみえたそうです」

 

「劉?劉ってまさか一刀、あなたの―――――」

「悪い華琳!俺先に行かせてもらう!」

華琳が話終わる前に俺は砂塵の方へと駆け出していた。

 

 

 

 

 

「ひぃ!お助けを!?」

 

「死ねぇい!」

 

黄巾兵は躊躇なく街人に剣を振りを下ろす。

 

だが、その剣は街人に届くことはなかった。

 

「へ?」

 

気づいたときには体から血を噴出し死んでいた。

 

「大丈夫か!」

 

「へ、へい!ありがとうございます、関羽様」

 

「そうか!ならこの場から早く逃げるんだ、お前達この者を護衛しろ。ここは私一人で十分だ!」

 

「え!?いや、しかし・・・」

 

「いいから早くするんだ!」

 

「は、はっ!」

 

兵達は街人を連れて後方へと下がっていく。

 

「逃がすと思ってんのか!」

 

黄巾兵数十人が逃げていく街人を追おうとするが、

 

「待て!ここから先は、この関雲長が通さん!」

 

「へっ!噂の関羽様がまさか女だったとはな、脱がして犯すか!」

 

へっへっへっと愛紗を黄巾兵達は囲んでいく。

 

「下衆共が!」

 

「野郎共!いくぞーー!」

 

おおおおと叫びながら囲んでいた黄巾兵達は愛紗へ駆けていく。

 

「はあああ!」

 

青龍偃月刀を振りまわし、周りの奴らを倒してく、だが倒しても倒しても限がなく

死体の山で足場もなくなってき、だんだんと追い詰められていく。

 

「くそっ!こやつら倒しても一向に数が減らん!」

 

「女だからって油断したぜ!?こんなに強いとは、おい、野郎共次で決めるぞ、一斉にかかるんだ!」

 

「くっ!?」

 

もうだめだと思ったとき、囲んでいる奴らを倒しながら誰かがこちらに近づいてくる。

 

「鈴々か!?」

 

だが鈴々は桃香様を守るため本陣にいる筈と思い考え直す。

 

(いったい誰が)

 

そうしてる間にも、なぎ倒している者はどんどんとこちらに近づいてくる。

 

そして、黄巾兵を突破してきた者の姿を見たとき愛紗は驚く。

 

「ご、ご主人様!?」

 

久しぶりにその姿を見て、表情が緩んでいく。

 

「愛紗!無事か!?」

 

愛紗の近くまで来た、一刀は愛紗の無事を確認すると、安堵し抱きしめる。

 

「ちょ!?あ、あの!?ご主人様!?」

 

「愛紗・・・無事でよかった!」

 

「ご主人様・・・心配をお掛けしました、ご主人様もご無事でなによりです」

 

「ああ・・・ただいま愛紗」

 

「はい・・・おかえりなさいご主人様」

 

と抱きしめあい、いい雰囲気な所に、

 

「おいおいおい!!なに抱きしめあってんだ!?見せ付けてくれるじゃねえか!!」

 

「今の状況わかってんのか!?お前ら今から死ぬんだぜ!」

 

「で、でもよお、あの男すごく強かったぜ、か、勝てるのかな・・・」

 

「びびってんじゃねぇ!!こんだけの人数で囲んでるんだ、殺せねぇはずはない!」

 

といろいろと聞こえてくる。

 

「たくっ、空気読んでくれよな・・・なぁ愛紗―――――――!?」

 

「ふふふ、そうですね、まったくです」

 

久しぶりの一刀との再開を邪魔されたのが許せないのか、愛紗からはとんでもない黒いオーラのようなものが立ち昇っていた。

 

「ええっと・・・愛紗さん、とりあえずここを抜けましょうか」

 

なぜか敬語になる一刀であった。

 

「御意!」

 

返事をしたあと、愛紗と一刀は背中合わせに構える。

 

「背中はまかせたよ愛紗!」

 

「はっ!おまかせください、では行きますよご主人様!」

 

二人は囲んでいる黄巾兵を一掃するために駆け出す。

 

「はあああああああ!!」

「うおおおおおおお!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鈴々ちゃん、さっき愛紗ちゃんの所に助けに行ってくれた人って誰なのかな、ここからじゃよくみえないよ」

 

「鈴々もわからないのだ、確かめに行きたいけど黄巾党の奴らが多くて行けないのだ」

 

「そうだよね、せめてどこかの軍隊さんが助けに来てくれるとありがたいんだけどな〜」

 

「そんなの来るわけないのだ!あいかわらずお気楽極楽なお姉ちゃんなのだ」

 

「うう、ひどいよ鈴々ちゃん・・・」

 

と二人で話していると、

 

「「桃香様ーー!」」

 

「朱里ちゃん雛里ちゃん、どうしたの息を切らせて」

 

「はい、それが黄巾党の後方に砂塵が見えたとの報告がはいりました」

 

「ええ!?それってさらに増えたって事!?これ以上増えたら私達じゃ抑えられないよ!?」

 

「いえ・・・それが多分味方だと思います」

 

「んにゃ?なんでそう思うのだ、雛里」

 

「旗印に曹と言う文字が見えたとの報告がありましたので、おそらく陳留の曹操さんかと・・・」

 

「本当に来たのだ!すごいのだ、お姉ちゃん!」

 

「へ!?えっと・・・まあね〜」

 

「桃香様、これは好機です、曹操さんと挟撃するために押し返しましょう!」

 

「そうだね!みんな、援軍が来てくれたから頑張って押し返そう!」

 

「「「おおおおおおおお!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、一刀ときたら一人で突っ走るなんて、何考えてるのかしら」

 

「おそらく、あの時は何も考えておりますまい、聞くと同時に駆け出しましたから」

 

華琳達は一刀が駆け出した後、作戦を考えた。

華琳率いる本隊、春蘭、秋蘭、季衣、桂花は黄巾党の後ろから、劉備軍と挟む形で攻撃を仕掛ける。

凪達三人羽は、そのことを劉備達に伝えに行くと同時に、劉備たちと協力して黄巾兵を倒すように指示してある。

 

「華琳様、劉備軍動き出しました」

 

「あら、もう?凪達が伝えたにしては、早すぎるわね」

 

「おそらく、こちらを確認して挟撃の作戦を見抜いたんだと思われます」

 

「そうね、劉備の軍にもなかなかいい軍師がいるようね」

 

「華琳様・・・」

 

「ふふ、桂花そんな顔しないの、あなたが劣ってるなんておもってないわ、かわいいわね桂花」

 

「ああ、華琳様・・・」

 

桂花はうっとりとした表情をしていた。

 

「しかし、北郷があんな行動に出るとは・・・それほどに大切な者達なのだろうな」

 

「・・・そうね」

 

華琳は少し胸のあたりが苦しくなっていた。

 

(なに?この胸が苦しくなるような・・・)

 

「華琳様?」

 

「っ!な、なんでもないわ、さあ!仕掛けるわよ」

 

「「「はっ!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあああああ!」

 

凪は氣弾を飛ばし黄巾兵たちを吹き飛ばしてく。

 

「にゃ!すごいのだ!鈴々も負けてられないのだ!」

 

「にゃにゃにゃーーー!!」

 

鈴々は力一杯蛇矛を振り回し、凪に負けず黄巾兵を吹き飛ばしていく。

 

「うわー、すごいであのちびっこ・・・季衣様みたいや」

 

「楽進ちゃんもすごいね!あんなに強いなんて」

 

「へっへー、そうなの、凪ちゃんはすごいんだよー」

 

「いや、あんたが誇ってどうすんねん」

 

「それにしても、助けていただきありがとうございます」

 

「・・・です」

 

と朱里と雛里がお礼を言う。

 

「別に礼なんかいいよ、最初からうちらも黄巾党やっつけるつもりでここに来たさかい」

 

「そうなんですか」

 

「それに、隊長は一人で突っ込んでしまうし、ほっとけることもできなかったしな」

 

「ん?隊長?それってさっき愛紗ちゃんの所に助けに行ってくれた人のこと?」

 

「そうや、まぁ隊長は強いから、多分その人も助かってると思うで」

 

「そっかー!良かった!それでその人って誰なの?」

 

「ん?隊長はあんたらのこと仲間って言ってたで」

 

「仲間・・・!?まさか・・・ご主人様!?」

 

「はわーーーー!!」「あわわわ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!」

 

ブゥオォンと青龍偃月刀を振り一気に数十人の黄巾兵を倒していく。

 

(体が軽い!ご主人様と会ってから、力が湧き出てくるようだ)

 

愛紗の後ろの方では一刀が、

 

「飛天御剣流土龍閃=I!」

刀を神速で地面をえぐる様に勢いよく振りぬいて土砂を巻き上げ相手にぶつけて倒していく。

 

「この二人強すぎる!?こんな人数で囲んでんのになんで殺せないんだ!?」

 

「愛紗大丈夫か!」

 

「はい!大丈夫です!」

 

(大分人数が減ってきたな、さっき華琳たちの旗が見えたから助けに来てくれたんだな)

(そろそろここを離れて、桃香達の所に合流した方がいいな・・・)

 

「愛紗ー!俺が道を作るから、合図したら突っ込んでくれ」

 

「え?何をするんですか、ご主人様」

 

「いくぞ!」

 

「えっ!?は、はっ!」

 

一刀は手に持っていた雷切と鞘に納まっていた天月を抜き、

 

「二刀流七十二煩悩鳳=I!」

二本の刀から飛んでいく斬撃は、黄巾兵を斬り、ズシャーーンと吹き飛ばす。

 

(なっ!?斬撃が飛んだ!?)

 

驚いている愛紗に、

 

「今だ!今できた道を突っ切るぞ!」

 

「ぎょ、御意!」

 

二人は一緒に駆け、囲んでいた黄巾兵達を突破した。

 

「あの男化け物だ!?」

「後ろからも曹操の兵達が来てるってよ!?」

「どうしたらいいんだーーーー!?」

 

黄巾兵は完全に挟まれどうしようもなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桃香様!」

 

「あ、愛紗ちゃん!うう、ぐすっ、ぶ、無事で、よがったよーー!」

 

「ご心配おかけしました、でもご主人様に助けていただいたので」

 

「そっか、それでご主人様はどこ?」

 

「ここだよ、桃香」

 

「あ、ご、ご主人様・・・ぐすっ、えっぐ、ご主人様ーーーーー!!」

 

泣きながら桃香は一刀に抱きつく。

 

「おおお!?と、桃香!?まだ戦いは終わってないんだから――――――」

 

「うん・・・ぐす、わかってるよ、でも、でも、ずっと会いたくて、それで我慢できなくて・・・」

 

「桃香・・・」

 

一刀は桃香の頭をやさしく撫でていく。

 

「ただいま桃香・・・」

 

「おかえりなさい!」

 

そうして桃香から離れた瞬間に腰らへんにガバッと誰かに抱きつかれた。

 

「ご主人様・・・えぐ、すん」

「ご主人様・・・」

 

朱里と雛里が抱きついていた。

 

「朱里、雛里、久しぶりだな、ちゃんと桃香を支えてくれてありがとうな」

 

二人の頭を撫でていく。

 

「はわ・・・ふふ、はい!」

「・・・♪」

 

と少しして、

 

「そういえば鈴々はどうした?」

 

「鈴々ちゃんなら、楽進ちゃん達と一緒に黄巾党を押し戻してるよ」

 

「そうか、凪達はここに来たのか・・・」

 

と小声で言っていると、

 

「そうだ、ご主人様。李典ちゃんや干禁ちゃんから聞いたよ、今まで曹操さんの所に居たんだってね」

 

「へ?」

 

それで今までのいい雰囲気は一変した。

 

「なっ!?それは本当ですか!ご主人様!?我等があなたのことをどれだけ待っていたと!」

 

「あ、愛紗さん?」

 

また黒いオーラ的な物がと思っているとまたガシッと腰あたりをつかまれた。

 

「な、なに?」

 

と下を見ると、朱里と雛里が笑顔でつかんでいた。

 

「あ、あの二人とも・・・そんなことしてる場合じゃ、ほらまだ戦いは終わってないんだし・・・」

 

「いえ、もう終わりましたよ」

 

「へっ!?」

 

と今まで戦っていたほうを見てみるともう黄巾兵は誰もいなかった。

 

「と、桃香――――――」

 

と助けてもらおうと呼びかけたときには、すでに目の前に居て肩をガシッとつかまれていた。

 

「あ、愛紗――――――」

 

無理だった、黒い愛紗はすでに後ろにいて、こちらもガシッとつかまれていた。

 

「「「逃がしませんよ、ご主人様」」」

 

4人が同時に言ってきた。

 

「「「今までどうしていたのか、聞かせてもらいますからね」」」

 

「あ、あの・・・みなさんここは一つ冷静になって――――――」

 

「「「ご主人様ーーー!!!」」」

 

「ギャーーーー!!」

 

この後もひと悶着ありそうな予感がする一刀だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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共同戦線

 

 

 

桃香達と戦っていた黄巾兵達を倒す事に成功したのだが、一刀は桃香達によって真っ白に燃え尽きていた。そこへ黄巾兵達を押し戻すために前線に出ていた、鈴々が戻ってきた。

 

「お姉ちゃん、愛紗、ただいまーなのだ!」

 

「あ、おかえり鈴々ちゃん」

 

「おお、よくやったぞ鈴々!それに無事でなによりだ」

 

「愛紗も無事でよかったのだ、誰に助けてもらったのだ?」

 

「・・・ご主人様に助けてもらったのだ」

と愛紗は助けにきてくれた時の一刀の姿を思い出し頬を緩ませながら話す。

 

「にゃ!?お兄ちゃん!?お兄ちゃん帰ってきてるのか!?」

鈴々は愛紗の様子に気づくことなく聞く。

 

「うん!帰ってきているよ♪、ほらあそこにいるでしょ」

 

桃香の指差すほうに顔を向けると、そこには一刀の姿が見えた。

そして鈴々はその姿の見えた方へと駆けて行く。

 

「お兄ちゃんーーーーー!!」

 

そこには、真っ白に燃え尽きていた一刀がいた。

 

「おぉ・・・鈴々か・・・久しぶりだな、元気してたか?」

 

「にゃ!鈴々は元気だけどなんかお兄ちゃん元気がないのだ・・・、もしかして怪我でもしたのか!?」

 

「いや・・・大丈夫、怪我とかはしてないから、ありがとな心配してくれて」

 

俺は鈴々の頭をやさしく撫でていく。

 

「にゃ〜〜、久しぶりのお兄ちゃんの手、あったかくて気持ちいいのだ〜」

 

「そ、そうか、ならもう少しこうしててやるな、後ただいま鈴々」

 

「おかえりなさいなのだ!」

 

その言葉がうれしかったのか、鈴々は俺の胸に飛び込んできた。

 

「おおっと、どうしたんだ鈴々?」

 

「にゃ〜〜、やっと帰ってきてくれたのだ、だから我慢できなかったのだ」

 

「そっか・・・これからは一緒だから、よろしくな鈴々」

 

「うん!一緒なのだ!」

 

そうして鈴々を抱っこしていると、どこからか視線を感じていた。

 

(ん・・・どこからか視線を感じるな、なんかこう・・・・!?)

 

そこで後ろを振り返ると、朱里と雛里がこっちを見ていた。

 

「え、え〜〜と・・・」

 

「「じぃ〜〜〜〜〜・・・」」

 

と二人は無言で何かを訴えているような目でこっちを見てくる。

 

俺はその目の圧力に負け、なんとなく鈴々を下ろした。

 

「にゃ?どうしたのだお兄ちゃん?」

 

「いや・・・なんか、朱里と雛里が・・・」

 

それを聞いて鈴々も俺と同じ方を見る。

 

「おお、朱里に雛里なのだ。朱里、雛里ただいまーなのだ!」

 

「おかえりなさい鈴々ちゃん」

「おかえりなさい」

 

二人はそれぞれ鈴々が無事に帰ってきたことに安堵しながら言う。

 

「鈴々ちゃん、楽進さん達はどうしたんですか?」

 

「なんか一旦曹操様の所にもどってまた来るって言っていたのだ」

 

「そうですか、なら鈴々ちゃんはそのことを桃香様に伝えに行ってもらえますか」

 

「わかったのだ!じゃあねお兄ちゃん、また後でなのだ」

 

「お、おう」

 

そういうと鈴々は桃香の方へと走って行った。

そして、この場に残ったのは俺と朱里と雛里だけになっていた。

 

「あ、あの二人とも、まだ華琳の所にいた事怒っているの?」

 

さっきじぃ〜と見ていたことは、それなんじゃないかと思い二人に聞いてみる。

 

「いえ、その事はもう怒ってません。理由もちゃんと聞きましたし、ご主人様も考えあっての行動だと思っています」

 

「・・・(コクコク)」

 

「そうか・・・、だったらなんであんなじぃ〜とみてきたんだ?」

 

「それは、その・・・いくら鈴々ちゃんとご主人様が仲良しでも、兵隊さんの前ですし、それにみなさんはまだご主人様の事を知りませんから・・・」

 

「・・・そっか、ごめん、気が回らなかったよ、確かにいきなり来た俺が鈴々と馴れ馴れしくしていたら変だったよな、義勇軍とはいえ鈴々も一軍を率いる将だもんな」

 

「いえ・・・わかっていただけたなら、それで・・・」

 

言葉で俺を責めてしまったからなのだろうか、二人は少し落ち込んでいた。

 

「そんな落ち込まないでくれよ、駄目な事は駄目ってはっきり言ってくれた方がいいからさ、ね」

 

二人に微笑みながら話す。

 

「「は、はい」」

 

「俺はてっきり二人も抱っこして欲しいのかなって思っちゃったよ」

 

冗談半分にそんな事を言ってみる。

 

「はわわ!?そんな事は考えてませんよ!?」

「あわー!?そ、そ、そうでしゅ!?」

 

「いや・・・そんな力一杯否定しなくても・・・」

軽くショックを受けた俺であった。

 

「まぁそうだよね、二人も俺なんかに抱っこされたくないよね」

 

と言った瞬間、

 

「「そんなことありません!!」」

 

とどこからそんな大声が出るの、と不思議になるくらいの声だった。

 

「しゅ、朱里、ひ、雛里?」

 

「はわ!?えっと、その、抱っこして欲しくないなんて・・・思ってませんから」

 

「あわわ、そ、そうです、私達はご主人様の事をお慕いしてますから・・・」

 

と二人は赤くなりながらも、うれしい事を言ってきてくれる。

 

「朱里、雛里ありがとう。しばらく会ってなかったから、不安だったけどその言葉を聞いて安心できた

 抱っこは今はできないけど、これでかんべんな」

 

そう言って俺は兵達の目を盗んで、二人の頭を撫でる。

 

「はい!」

「あわ、・・・♪」

 

そんな俺達の所に、桃香、愛紗、鈴々がやってきた。その後ろには華琳、秋蘭、春蘭がついてきていた

 

 

 

「ご主人様、曹操さん達が話があるんだって」

 

「話?」

 

そこで俺は華琳へと向き直る。

 

「華琳、話って何?」

 

「そうね・・・でもその前に一刀、あなた私にこの子達の主だなんて一言も言わなかったわよね」

 

「え?言わなかったっけ?」

 

「言わなかったわよ!」

 

「そうか・・・すまん、でもそれは俺がご主人様と呼ばれているけど本質的に率いているのは

 桃香だから言わなかっただけだよ、俺はそれを支える天の御遣いという名の仲間、ただ

 それだけだよ。」

 

「ふ〜ん、そうなの」

 

華琳は俺から目を離し、見定めるかのような目で桃香を見る。

 

「うう〜・・・なんか居心地悪いよ〜」

 

「桃香様、もっと堂々としていてください」

 

「む、無理だよ、あんな目で見られたら・・・」

 

華琳に見られ、愛紗と小声で桃香は話していた。

 

「そういえば、凪達はどうしたんだ?後で来るって聞いたんだけど」

 

俺が話しかけると、華琳は俺に向き直る。

 

「凪達には兵を率いて周りを見張らせているわ、また攻めてくるかも知れないから」

 

「そうか。・・・それで話って何なんだ?」

 

「待って一刀。まだ劉備に確認したいことがあるから、・・・その前に春蘭、秋蘭」

 

「「はっ」」

 

「部隊に戻り、進軍の準備をしておきなさい、凪達が帰ってきたらいつでも出られるように」

 

「「御意」」

 

と言うと二人は走っていった。

 

「さて、劉備。あなたに問いたいことがあるわ」

 

「は、はい、なんですか?」

 

「一刀から少しは聞いたのだけれど、あなたの口から聞きたいの。・・・劉備。

 あなたの目指すものは何?」

 

聞かれた桃香はさっきまでのオドオドした感じではなくなり、はっきりと

 

「・・・私は、この大陸を、誰しもが笑顔で過ごせる平和な国にしたい」

 

「それがあなたの理想なのね」

 

「はい。・・・そのためには誰にも負けない。負けたくないって、そう思ってる」

 

「・・・そう。わかったわ」

 

桃香の言葉に何かしら得心をいったのか、華琳はゆっくりと頷き

 

「ならば劉備、一刀。これから私達と協力しないかしら?」

 

「協力?」

 

「ええ、そうよ。今のあなた達では独力でこの黄巾の乱を鎮める力はないでしょう。

 だけど、今は一刻も早く暴徒を鎮圧することこそが大事。・・・違うかしら?」

 

「そうだと思う・・・」

 

「それが分かっているのならば、私に協力しなさいと、そう言っているのよ」

 

「え、でも・・・」

 

そこで桃香は俺を見てくる。

 

「・・・そうだな、申し出を受けよう桃香。華琳の言うとおり、今の俺達には

 独力で黄巾の乱を鎮める力はない。なら華琳と協力して早くこの乱を治めた

 方がいいと思うんだ」

 

俺の話を聞いた後、桃香はみんなに確認するように全員の顔を見る。

みんなは、独力で治められない悔しさをかみ締めながら、現実をみて頷く

 

「わかりました、曹操さんの申し出受けます」

 

「そう、わかったわ。なら、共同作戦については軍師同士で話し合いなさい」

 

話が終わり、自分の部隊の所に戻ろうとする華琳だったが、何かを思い出したのか、足が止まる。

 

「そうだ、劉備まだあなたに聞きたいことがあるのだけれど、二人で話したいから少しここを

 離れましょう。いいわよね?」

 

「え?あ、はい」

 

「なっ!?桃香様!?」

 

桃香がスタスタと着いていくので、愛紗はそれを止めようとしたのだけれど、

 

「待った、愛紗」

 

それを俺が止めた。

 

「ご主人様!?なぜ止めるのです、まだ相手は信用できないのですよ」

 

「大丈夫だよ、華琳はそんな事する奴じゃないから、それに大事な話なんだろ

 二人きりで話すなんて、だから邪魔したら駄目だよ」

 

その言葉を聞いて、愛紗は少し拗ねてような態度になった。

 

「・・・ずいぶんと曹操を信頼しているのですね」

 

「え?それはしばらく一緒に行動してたから、ある程度はね」

 

「そうですか・・・ご主人様は我々より曹操の方が・・・」

 

「え!?いや、そんなことはないぞ!愛紗達だって信頼しているさ!」

 

「・・・ご主人様がそう仰るのであれば曹操の事信じましょう」

 

「あ、ああ、頼むよ、ごめんな」

 

俺は信じてくれる感謝を込めて愛紗の頭を撫でた。

ちなみに兵は見回りに出ているので安心だ。

 

「《かぁ〜〜・・・》な、何をしているのですか!?」

 

「いや、信じてくれてありがとうって意味を込めて撫でてるんだけど、いやだったかな?」

 

「いえ!?決してそんなことは・・・ただ久しぶりに頭を撫でられたので・・・」

 

愛紗を撫でていると鈴々がまた撫でるのだー!と言って抱きついてきたり、それをまたじぃ〜と見ている朱里と雛里やらでこっちは大変だった。

 

 

 

 

そして、桃香と華琳は俺達とは少し離れているところで話を始める。

 

「それで曹操さん話ってなんですが?」

 

「単刀直入に言うわね、劉備。一刀をくれないかしら?」

 

「!?・・・なんで急にそんな・・・」

 

「少しの間しか行動をともにしなかったけど、私は一刀が欲しいと。そう思ったからあなたに話したの 一刀は私が誘ってもこちらに来ようとはしなかったけど、そんな事で諦める曹孟徳ではないわ。」

 

華琳は一呼吸置き、話を続ける。

 

「あなたの顔でだいたい答えはわかっているけど、聞かせてもらいましょうか、

 ・・・一刀をくれないかしら?」

 

「ご主人様は誰にも渡しません!」

 

桃香は気持ちで負けないように大声で言う。

 

「やはりね・・・だったら奪うまで。この乱が終わり、あなたの理想と私の覇道いつかぶつかるときが

 あるでしょう。その時にもらうとしましょう。」

 

「私達は負けませんから!それにご主人様も渡しません!」

 

「ふふ、それでこそ奪い概があると云うものよ、ならばこの乱が終わった後は好敵手ね

 これからよろしくね、劉備」

 

「はい!好敵手ですね、曹操さん」

 

「華琳でいいわ、劉備」

 

「なら私も桃香でいいですよ」

 

そうして真名を預けあい二人は笑っていた。

 

 

 

 

「それじゃ部隊にもどるわ」

 

「はい、これからよろしくです華琳さん」

 

「ふふ、そうね、よろしくね桃香」

 

そういい残し華琳は自分の部隊に歩いていった。

 

(これから先の時代、楽しくなりそうね。待ってなさいよ一刀、あなたを私の物にしてみせるから)

 

 

 

「ご主人様ー!」

 

「お、桃香」

 

俺は一旦愛紗達と離れ、義勇兵達に挨拶して回っていた。

みんな愛紗や桃香達に俺の事を聞かされていたのか、快く迎えてくれた。

朱里と雛里の話じゃ俺の事あまり知らないみたいな事を聞いていたんだけど、気にしないことにした

 

「華琳との話終わったのか?」

 

「う、うん、終わったよ・・・《じぃ〜〜〜〜〜》」

 

「な、何?」

 

そうして見つめてきて、なにを思ったのか桃香は俺の事をガバッと抱きしめてきた。

 

「な!?と、と、と、桃香さん!?な、何事!?」

 

「ご主人様は誰にも渡さないからね!」

 

「意味がわからないんですけどーーー!?」

 

意味が分からないことを言った後、俺から離れ愛紗たちの所に行ってしまった。

 

「・・・・・・・なんだったの」

 

その場にはぼーとつっ立った俺が残されていた。

 

 

 

「愛紗ちゃんーー!みんなーー!」

 

「桃香様、どうかなさいました?走ったりして」

 

「うん、みんなに聞いて欲しいことがあるの・・・」

 

そして桃香はさっき話していた華琳との事を相談する。

 

「なっ!?曹操がご主人様の事を狙っている!?」

 

「お兄ちゃんは誰にも渡さないのだ!」

 

「そうですよ!せっかくもどってきてくれたんですから!」

 

「(こくこくこく!)」

 

「やっぱりみんなも同じ気持ちだよね!」

 

「当然です!一刀様は我等のご主人様なのですから!この乱が終わって、いつか攻めて来たとしても

 かならず勝ちます!」

 

「そうなのだ!鈴々もお兄ちゃんの事守るのだ!」

 

「そうです、かならず守りましょう」

 

「うん、がんばろうね、朱里ちゃん」

 

そうして桃香たちの絆はさらに強固な物になっていった。

 

そして一刀の方をじぃーーと見つめる桃香たち。

 

(・・・・なんでこっち見てるの?すごい目なんだけど・・・)

 

当の本人はまったくわかってなかった。

 

 

 

 

 

 

 

説明
読んでいてキャラに違和感を感じたらすいません。
なにとぞ寛大な心でお読みください。
暇つぶし程度にでもなれば幸いです
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コメント
すごいなぁ、そのうち出しちゃいけないモノまで出るのかねえ(黄昏☆ハリマエ)
元鞘にもどったか。(ブックマン)
いや〜煩悩鳳まで出てきたか〜ここまで盛りだくさんだとかえってすがすがしいな。それに面白い(スターダスト)
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真・恋姫†無双

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