真恋姫無双 究極医術  五斗米道ォォォォォッ!! (中編)
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<真恋姫無双

 

     究極医術 五斗米道ォォォォォッ!! >

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          <はじめに>

 

 

               このテの話は……深く考えると損をします。

 

                さあ、こころの準備はいいでしょうか?

 

 

 

 

 

                

 

 

 

  

 

 

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<究極医術 五斗米道ォォォォォッ!!> 

 

 

 

         数日後、祭酒室に設けられた寝台に全身を包帯で巻かれ張機は寝ていた。

         張機の看病をしている柚は、

                 意識を取り戻した張機に先日の天師のお言葉を伝えた。

 

         「そうですか、一ヵ月後に再度せん議を行うことになりましたか……」

 

         常人であったら数ヶ月の安静を必要とする深い精神的心傷を受けた

          張機であったが、五斗米道の秘術により僅か数日で心身ともに

           マッタリと癒されていた。

 

        しかし、何故か天師の攻撃を受けていないはずの両頬が物凄く腫れていた……

 

        「柚、確か私は師匠の攻撃を『腹』に受け、

           『背中』を壁に激突したが、『何故』 私の頬が腫れているです?」

 

    軟膏を塗った布を両頬に貼ったものを触りながら、何やら挙動不審な妹弟子をジッ―と見た。

        「えっ〜と、ああ、そうだ! 

          そんな些細ことより、師匠の技を封じなければ治すこともできませんヨ」

                  「……いや、しかし」

        「師兄!! そのようなことに気にするようではあの師匠を倒すことはできません!!」

 

      確かに、張機が全回復したとしても

          張魯天師のアノ禁じ手を封じなければ病魔と対峙することすら難しい。

 

          「……やむをえません。私の代でこれを使わなければならないとは……」

 

      そう言って張機は寝台からヨロヨロと立ち上がり、

         鍵付きの薬棚入れから、ドクロの絵が描かれた黒壺を取り出してきた。

                「師匠を毒殺するのですか?」

            この瓶をみて嬉々とした柚に、苦笑しながら言った。

 

 

 

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       「あの師匠を毒殺できるならとうの昔にしています。

                これは我が術式に代々受け継がれてきた霊薬です」

 

       柚はホコリをかぶった汚い黒壺をイヤーな顔をしながら

              これ役に立つのですかとドジョウ髭を震わす張機に聞いた。

       張機はこの秘薬の希少価値を理解できない愚かな妹弟子にため息をついた。

 

      「これはかって金髪の小僧と呼ばれた政戦略の天才である皇帝が、

            唯一心を許した赤毛の友を蹴ってまで飲んだという幻の霊液…… 

 

           その名も 

                 『友蹴・皇帝液!!!』

                                です」 

 

      「この霊液なら、師匠の傍若無人君の技を封じるだけではなく、

                        病魔もろとも昇天するでしょう。 

                     ですが、これには一つ問題があるのです……」

 

        絶対に毒薬にしかみえない柚は、このとき師兄が言葉を濁したことに驚いた。

 

      師兄 張機は、細かいことをネチネチ言う小姑体質であるが、

       医者としての能力、薬湯を扱う疾医(しつい)ならこの大陸で右にでる

        ものはいない。それがこのように投与を迷うことは珍しいく天変地異が

         起きるのではないかと思えた程であった。

 

      「そう、この霊液はまだ未完成であり、最後の薬材の入手がとても困難なのです……」

        この大陸広しと言えども、豊富な品揃えと安さ爆発の五斗米道の薬房にすら無い。

 

       医術の為なら子供のアメを奪うほど残忍になれる

                歴代の疾医祭酒達すら入手できなかったものとは……

 

       柚は龍の爪の垢や左巻きの子安貝、

        火鼠のしっぽと言った伝説的なものだろうと考えていた。

 

       しかし、真剣な顔で黒壺を見ている師兄の口から

             言われた最後の薬材を聞いて素っ頓狂な声を上げた。

 

 

 

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        「ハァー!? 赤毛の娘のアホ毛ェ? 

            あのよく頭に一本ぴーんと出ているアレですよね?」

 

        「ええそうです。

          しかし、アホ毛は世に多数ありますが、

              赤毛の娘となるとなかなか入手は難しいのです。」

 

       柚は歴代疾医祭酒はそんなくだらないことを

               延々と受け継がれていた事実に衝撃を受けた。

 

       「……師兄、そんなものなら今、

          街のお祭りで『天下一(多分)武闘大会』の本年度優勝者が

                     赤毛の娘で、アホ毛がありましたよ」

                   「なぬ!?」

 

        五斗米道に身も心も捧げ過ぎて、

           世俗の事どころか婚期すら逃した張機は柚の話に驚愕し

                   張機はドジョウ髭を震わせながら興奮した。

 

                  「天命は我にあり!」

 

        張機はこうしてられないと薬品の詰まった鞄を掴み、

                 鞄の中から一本の細長い黒瓶を取り出した。

       暫し、張機はその黒瓶を握りこれを対天師戦に使用するべきかと

        躊躇していたが、歴戦の疾医祭酒達が今まで入手できなかったこと

          を考えると迷っていられないと意を決してその秘薬を飲み干した。

 

                       カッ!!

 

             張機は目を大きく見開き、腕を天に高々と上げた。

      「我が薬湯に全ての源、蒸し着なる多撃必倒! 

                  唸れぇぇっ! 蒸・着・五斗米道ォォォォォッ!」

 

 

 

 

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        張機の全身が光り輝き、体中に巻かれていた

           包帯が引きちぎられ筋肉隆々の肉体へと変化していった。

 

 

             このプロセスをもう一度説明しよう!

 

 

      張機は五斗米道の究極薬湯 『利慕美男(リボビダン)』を飲む

        ことにより、利慕美男の薬効によりひ弱な肉体から

             飲み屋のツケをも踏み倒す強靭な肉体となる!! 

                        (この間わずか0.05秒!!)

 

 

       張機は横から見た胸の厚みを強調する怪しげなポーズをとり

                     生まれ変わった己の肉体を誇示した。

 

      「僥倖!僥倖!  待っていろ赤毛の娘。そのアホ毛 

                   この五斗米道の張機が貰い受ける!!!」

 

              ファァイト――――!! 

              

                     イッパ――――ツ!!

 

            謎の掛け声を上げながら張機は街へと駆け出して行った。

 

 

      五斗米道の数々の常識外れの医術を目にしてきた柚であったが、

       流石にこれには対応できず固まってしまった。

        哄笑を上げ部屋から駆け出していった張機を見て

               我に返った柚は慌てて状況を確認した。

     

      「な なんかまた悪い予感がしてきた…… チョットまってください。 師兄〜!!」

 

 

 

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      その頃、華佗は張魯天師の心殺(しんさつ)に破れ、

        己が内氣な性格であったことが敗因と考え、

         より過酷な修業をすべく深山渓谷を

               妹弟子の桜と共に無作為に突き進んでいた。

 

           (なお、人はこれを別名 『 遭 難 』 とも言う)

 

       「華佗師兄〜 本当にこの道でいいのですか〜  

              まあまあ、とりあえず華佗師兄、食べてくださいよ〜」

 

       野山を駆け巡り空腹をおぼえた二人は昼食にすべく、

        道中で採った山菜やキノコを鍋に入れて煮た料理を作り、

                桜はそれを椀に盛り華佗に勧めていた。

 

      「う〜ん、この『隠れ修業スポット山海経(成都版)』では、

                   この当たりに神木があるはずなんだが……

 

        俺より可愛い妹弟子が空腹で倒れたら大変だ。さぁ、桜が先に食べなさい」

 

         隠れ修業スポットなのに本に載っている時点で

            隠れでないのではと考えながら桜は華佗から

               強引に渡された山盛りの椀に冷や汗を流した。

 

      「ほんとにそんな神木があるんですか〜 

         『この〜木、何の木? 氣になる木〜♪』なんて怪しげなモノが

 

        ……イェイェ。これからお師しょ―さまと戦われる華佗師兄より

                   先に食べるなんて、妹弟子としてはとてもとても」

 

  

        双方爽やかな笑い顔で椀の端持ち押し付け合いしていたとき、

                  茂みから一人の旅装束をした男が出てきた。

 

 

 

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     「あぁぁ、助かった。 

        道に迷い途方にくれていたところに、煙を見てもしや人がいるのでは

                          と思いましたがやはりいましたか」

 

       椀を持ったまま、いきなり出現した男を見た華佗と桜は素早く目配せをした。

 

      「おお、それは難儀でしたね〜 

            よかったら食事でもしていきませんか? そう、是非!!」

            そう言って桜は笑い顔で手に持った山盛りの椀を勧めた。

 

      「ありがとうございます。道に迷ってから、

        ここ数日水ばかりだったもので……モグモグ

                   変わった味ですがこの料理は何ですか?」

 

      華佗は余程空腹だったのか山盛りの椀をガツガツと食べる男を警戒しながら言った。

 

      「ああ、それは五斗米道名物、『神の食膳 ゴット煮』というものなんだが……」

                 「ヒャハハハハハハハ……」

          華佗がそう言い終る前に男は椀を落とし、突然笑い転げ出した。

 

      「……やはり、毒キノコがあったか……

        ゴット煮は薬による耐久性を鍛える為に毒キノコだろうがなんでも

         道にあるものは手当たり次第に入れて煮る。

          神に召されるかもしれない。当たるも八卦 当たらぬも八卦

                       の心意気で食うモノだからな……」

 

       そう言って華佗は魔女の鍋のように木の根や蛇、蛙等の

               入っているデンジャラスな異臭を放つ鍋を覗いた。

 

 

 

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                     数刻後、

 

           華佗が調合した毒消しを飲み男は一命を取り留めた。

 

      「食事だけでなく命まで助けて頂いて……あれ?

                記憶が飛んで、どうしてこうなったんだっけ?」

         華佗と桜は冷や汗を流し、慌てて別の話題に話をそらした。

 

     「そぉ、それより、おじさんこそ、どうしてこんなところに迷っているの?」

                  男は腑に落ちない顔でしきりに考えこんでいた。

 

      「う〜ん、まだ頭がボッーとする…ああ、ワシは流れの占い師で許子将と申す」

            桜は素早く占い師!?とわざとらしく歓声をあげた。

 

    「うん。ニンゲン過去に縛られちゃあダメだよ。ほら、占い師なんだから未来を見ないと」

 

      許子将は何かがてんがいかない顔で唸っていたが、些細なことと考え気を取り直した。

            華佗と桜は許子将に聞こえないように小声で話し合った。

       (華佗師兄、薬の効果で記憶障害をしていると言っても

                      こうも単純な人でよかったですね)

         (ああ、もしバレたら役人が来て大変なことになるからな)

 

        「ところで、成都に行きたいのだが道を教えて頂けないだろうか?」

                    「はいぃぃ!?」

 

     華佗と桜は許子将に聞こえないようにヒソヒソ話をしているところに、

           いきなり許子将が話かけたことからから二人は慌てふためいた。

 

     「せっ、成都ならこの山をまっすぐ下りように歩けば……

             って許子将さん占い師なのに自分で占いをしなかったの?」

                桜は首を傾げ許子将に聞き返した。

 

     「ふっ、コムスメよ。ワシ程の大陸一の占い師になれば、そのような些細なこと

       瞬時に解る!! だがいささかメンドくさいのでのう……

               いや、別に占いが外れて道に迷ったのでは断じてない」

 

       華佗と桜は、許子将の狼狽ぶりから占いが外れたのだな思ったが大人なので黙っていた。

 

     「……どれ、馳走になったばかりか、

            命まで助けて頂いたお礼に、ここは一つ何か占って進ぜよう」

      そう言って許子将は華佗や桜のイタい視線から誤魔かすように話題を変えた。

 

     「それなら、俺達は隠れ修業場所を探しているのだが、それを占ってくれないか?」

 

         華佗のいきなりの発言に桜は、華佗の耳を引っ張り小声で話した。

        (えぇ?華佗師兄信用して大丈夫ですか、 

                    自分の占いで道に迷うような人ですよ?)

              (イテぇ、耳を引っ張るな。耳を)

 

       華佗は引っ張られた耳をさすり、今度はお返しに桜の耳を引っ張って話した。

 

        (どうせ、俺達がさ迷って時間を浪費するのなら、

           占いに頼るのも一緒だ。第一タダで占ってもらえるのだから)

        (いたぃ、華佗師兄!乙女の耳を引っ張るなんて何て鬼畜なんですか!?)

 

     華佗と桜は片手で己の耳を庇いつつ、隙あれば相手の耳を引っ張るべく身構えた。

 

 

 

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        「どうらや、桜にはどちらが上かカラダに叩き込む必要があるみたいだな」

        「華佗師兄にはゲコクジョウという言葉をそのカラダに刻んであげますよ」

       華佗は鉄鍼を握り、桜は薪に使っていた木の棒を握り両者はにらみ合った。

 

             「あの〜 占っていいのでしょうか?」

 

       許子将の言葉に華佗は隙が生じた。桜はその隙をつき上段から棒を打ち下ろした。

            

               「甘い!妙技 『魅惑之谷間』 」

 

          鍛え上げられた胸部を華佗は両腕で寄せて上げて、

            桜を下から潤んだ瞳で見上げ、その胸の谷間を見せ付けた!!

 

                      ぐふっ!!

        不気味なものを見せ付けられた桜は棒を落とし、その場にしゃがみこんでしまった。

        「この程度でココロが折れるとは、まだまだ功夫が足りんな」

 

       余りの衝撃的な出来事に呆けていた許子将は華佗から占うように言われ我に返った。

 

       「ハッ、……よろしい。では今都の最先端の占いをもって

                         迷える子羊に道を示して進ぜよう」

         「おおっ、占いも医術と同じよう日夜進化しているのか!?」

 

       「ええ、そうです。

          例えば若い女が語尾にハートマークをつけて話しだした場合

               十中八、九 ジッちゃんの名にかけてそれはワナだ!!

                                  と占えるのです」

                「ナント!そうだったのか!?」

 

       許子将は華佗が驚愕するのをみてヤレヤレとこれだから田舎モノは首を振り言った。

       「私程の占い師になれば、そのようなこと造作もないことなのです。

                          それでは占いをして進ぜましょう」

          そう言って許子将は焚き火の中からまだ燃えていない枝を一本取り出した。

             そして木の枝を立て、はぁ―!! と気合と共に枝を離した。

 

            「でました。この枝の示す東の方向に行けば……」

                 「そっちは崖だが……」

 

             華佗の言葉に、一瞬無言であった。しかし許子将は、

 

       「……そう。普通の占い師では東の方向と言いますが、

            大陸一の占い師である私程になるとこの微妙さの読みが違います。

                        これは東東南の方向に行けばいいのです」

 

           華佗は確かあの方向には小さな邑があったことを思い出した。

 

              「そうか、礼を言う。オイ、桜行くぞ」

 

         今だに何やら成長期だもん等とぶっぶっ言っている

               桜に活を入れ華佗達は邑へと向かっていった。

 

 

 

 

 

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         成都の春節(正月)に行われた武闘大会で優勝した恋は

              その賞金を使いねねと一緒に屋台で豪遊していた。

 

       「恋殿〜 賞金で食べる勝利の肉まんはおいしいです〜 ハグハグ」

          「……うん、モグモグ ねねはもっと食べて大きくなる」

                   「はい、です」

 

 

                   見つけたぞ――!!

 

 

       道端から大声が聞こえ恋とねねは声のした方を向くと

        肩で息を切らしながらこちらを見ている口の両端にまで

         チョロっと伸びた毛をした男と大きな鞄を抱えた若い

          少女が駆け寄ってきた。

 

       「確かに、赤毛の娘でアホ毛が……二本? まあいい、そこのムスメ」

            ドジョウ髭の男はいきなり恋をを指差した。

 

     「ムスメ、 世の為、人の為、特に私の出世の為、そのアホ毛をこの張機が貰い受ける!」

 

         恋は特製肉マンをモグモグ食べながら

          頭から出ている二本の毛をピコピコ動かしながら言った。

                    「……イヤ」

            張機は恋の頭の毛を凝視して苦渋の表情で言った。

 

           「……くっ、なら。平和的に物々交換をしましょう」

                  「……物々交換?」

 

        恋は柚の持つ鞄を広げ露天商のように

              怪しげな大小の瓶を出す張機を不思議そうな顔で見た。

 

     「恋殿!!知らないおじさんからモノを貰ったらダメなのです!! 

          それとそこのお前、一番肝心要なことはねねを無視するなです!」

 

       外野で騒ぐねねの言葉を尻目に、恋は張機の色鮮やかな瓶に興味を示した。

 

     「これはどうです!

         今、若い娘たちに人気の五斗米道の秘薬

              これをつければ肉が溶け、文字どおり色白の骨が……」

                   「……いらない」

 

             恋は張機に一言告げその場を去ろうとした。

     「そっ、それなら、

         こちらならどうです! この減肥薬ならどんなに太っている人でも

                     内臓を溶かし、一瞬で減量できる……」

 

     恋は張機の示す数々の毒薬に興味を無くし、新たな肉まんを食べるべく後ろ向いた。

                   「まっ、まて」

                   「(カブッ)」

 

     恋はその場を去ろうとする恋を引き止めるべく

               恋の肩を握るために伸ばした張機の手に噛み付いた。

 

                   「ぎゃあ〜!!」

        張機は恋の噛まれた手を擦りながら、

              不味いと言ってペッペッとツバを吐く恋を睨んだ。

 

 

 

 

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      「……さすが赤毛のムスメ、何て凶暴なんだ。

        歴代祭酒達が入手できないだけのことがある。

         よかろう。こうなればこちらも実力行使をしましょう。

            五斗米道 心殺十二 『裸児王体操(ラジオタイソウ)』」

 

            張機は、奇声を挙げながら怪しげに身構えた。

 

     その只ならぬ気迫に先ほどまで眠たげだった恋の表情は一変し、応戦すべく身構えた。

                   「れっ、恋殿」

 

       この変な人を相手に本気で応戦しようとする恋にねねは不安な表情で言った。

 

      「ハッハッ!! 赤毛のムスメ。

               アナタには私の攻守の動き見極められないでしょう」

            「ねね、下がって!! ……コイツに近寄ると……デキる」

 

 

     ねねは奇声を挙げながら腰をカクカク動かすヤツが、

           どうして恋殿が冷や汗を出す程の豪の者なのか眉を寄せた。

 

      「どうしました赤毛のムスメ。

        この残像すら生み出す腰さばきに恐れをなしましたか?

       さもありなん。利慕美男を飲んだ私と対等に戦えるのは有名な天の御遣いのみ。

             さあ、この腰さばきに戦慄しなさい! はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

          張機の気合とともに腰の動きは更に加速し、

              その動きにより周囲には小さな竜巻が発生した。

                      

                      「クッ」

        恋は両腕で顔を守り、

          張機の動きにより発生した強風に吹き飛ばされないように重心を下げた。

        恋の腕には、風により発生した鎌イタチにより無数の小さな傷ができた。

 

 

 

 

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        ずんずんずん、クイックイッ  ずんずんずん、クイックイッ 

        ずんずんずん、クイックイッ  ずんずんずん、クイックイッ 

        ずんずんずん、クイックイッ  ずんずんずん、クイックイッ

        ずんずんずん、クイックイッ  ずんずんずん、クイックイッ 

 

               ずんずんずん、クイックイッ!!

 

 

      「はははははッ、どうしました。どうしました。

           赤毛のムスメ、大人しくそのアホ毛を渡す気になりましたか?」

 

      攻撃にでるなら張機のおこす風によりバランスを崩し逆に攻撃を受ける。

      防御するなら幾重にもわたる風から発生した鎌イタチにより全身を切り刻まれる。

 

    幾多の凶悪な病魔と対峙してきた、恐るべし五斗米道の神技に恋は万事休すであった。

 

 

              「恋〜殿〜これを〜 ぎゃぁ〜」

 

       この疾風の中、ねねは恋に愛用の方天画戟を渡すべく駆け寄ってきた。

     「そのような得物をもったところ、

       この技を破ることはムダです。さあ、早くアホ毛を渡しな……グオッ!!!」

 

         と言い掛けたところで声が聞こえなくなり、

            それと同時に先ほどまでの暴風も消滅していった。

 

               「……ねね、ナニしたの?」

 

       恋は股間を押え悶絶しながらその場にうずくまる張機と

                     地面に転んでいるねねを交互に見た。

 

        どうやらねねが風にあおられ、

          転んだ拍子に手に持っていた方天画戟を突き放し、

            それが張機の股間めがけて飛び直撃したことが原因のようだった。

 

                 「師兄、大丈夫ですか?」

 

        あまりにも恥ずかしいので他人のフリをしていた柚だが、

                 悶絶する師兄を心配し木の棒で突った。

 

 

 

 

-13ページ-

 

 

 

 

           その光景を横目に恋は倒れているねねを起こすべく後ろを向いた。

 

                    「好 機!!」

 

          後ろを向いた僅かな隙を出した恋に、

           股間の痛みを堪え張機は恋の頭の毛をむしり取るべく飛びついた。

        しかし、反射的に恋は手刀を繰り出し、張機の腹に一撃を与えた。

 

            張機はその場に前のりに倒れ、柚は慌てて駆け寄った。

 

        「師兄!! 白昼に女の子に襲い掛かる程飢えていたのですか!? 

                               このケダモノ!!」

 

        「ゴホッ、ゴホッ 違います!!  

          あぁ、利慕美男を飲んでいなければ腹を貫通されていました…

                           だが、これを見なさい!!」

 

        張機の右手にはわずかながら恋の毛が握り締められ、柚は歓声を挙げた。

 

            「柚! すぐに山に戻り調剤作業にはいります」

                   「ハイ!師兄」

            怪しげな二人組は人ごみを駆けてその場を去っていった。

 

 

        残された恋とねねは何が起きたのか状況が分からず

                 呆然二人が去っていくのを見送っていた。

 

      恋の頭の毛の一本が無残にも半分に千切れ、残った一本だけが風になびいていた。

 

               「あれは一体なんだったのです?」

          首を傾げ考えていたねねに屋台の親父から掛け声が聞こえてた。

         恋とねねは注文の品が出来たことから屋台に戻るべく踵を返した。

 

          すると恋はフラフラと傾きながら歩き、

              これを見たねねは不思議そうに恋に質問をした。

 

               「恋殿? 何故曲がるのですか?」

                

                「……まっすぐに、歩けない」

 

 

 

 

 

 

次回に続く……あるのか!?

 

 

 

 

 

-14ページ-

             

 

 

 

 

 

 (あとがき)

 

 

 

       はじめまして、この度は 真恋姫無双 究極医術  五斗米道ォォォォォッ!! 

 

        をご覧になって頂きましてありがとうございました。

 

      前回との間で時間が空いてしまいまして申し訳ありませんでした。

      なかなかまとまった時間がとれず、また時間が取れたとしても読者様

      が爆笑するレベルではなく何度も書き直しをしていました。

 

      やっぱりお笑いはムズいですね。

       最後まで、本編を読んで頂きまして大変ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

      

 

 

 

説明
本編とも外伝とも関係ない 『華佗√』 です。
五斗米道を取り巻く暑苦しい漢たちの戦いです。
色んな意味で、それはもうドキドキものです。宜しければ、読んでみてください。


前作:http://www.tinami.com/view/119496
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コメント
>四方多撲様コメントありおがとうございます。恋が何故斜めに歩く理由は後編で判明します(笑)(thule)
真っ直ぐ歩いている積もりで、斜め斜めに逸れていく恋を想像すると、和やかな笑みが…^^ しかし、華佗も暑苦しい必殺技もってるなぁww(四方多撲)
>jackry様コメントありがとうございます。五斗米道では彼らは『まだ!!』ヒヨッ子レベルです。天師レベルになると…(ガクガクブルブル)(thule)
>りょんりょん様コメントありがとうございます。漢方は奥が深く色々なものが薬材とされていますw(thule)
五斗米道、底が知れねぇ、そしてあのアホゲにはそんな役目がw(りょんりょん)
>テス様コメントありがとうございます。五斗米道は恋の病以外なら死者をも生き返らせますからww(thule)
心殺十二に、まさかの恋の一言に撃沈www 恋相手に、恐るべし五斗米道www(テス)
>Night様コメントありがとうございます。元ネタを知っていれば色々とクスクス笑うレベルのものを集めました。(thule)
更新お疲れ様です。キル○アイスを蹴ってまで・・・なんて。ファイト・イッパツで耐え切れませんでした(Night)
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三国志 真恋姫無双 恋姫無双 華佗  ねね 

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