三人の御遣い 五話
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/京

 

京たちは侍女に呼ばれ城門に向かった。そして

京「・・・これはすごいな」

兵士たちが微動だにせず並んでいる様に、ちょっと感嘆が漏れる。

桃香「すご〜い!この人たち全員、白蓮ちゃんの兵隊さんなの〜?」

公孫賛「勿論さ。・・・といっても、本当は正規兵半分、義勇兵半分の混成部隊だけどな」

京「そんなに義勇兵が集まってたのか」

趙雲「それだけ、大陸の情勢が混沌とし、皆の心に危機感が出ているということでしょう」

愛紗「ふむ。確かに最近、大陸各地で盗賊だの何だの匪賊共が跋扈しているからな」

鈴々「いったいこの国はどうなっていくのだ〜」

趙雲「民のため、庶人のため、間違った方向には行かせやしないさ。・・・この私がな」

京「(へぇ〜)」

呟いた趙雲の瞳に宿る真剣な光。その光には、単に自信という言葉以上の強い煌めきがあったと京は感じた。その横顔は凛々しく、そして誇り高い輝きに、思わず見惚れていると、

京「っ!?」

と腕に痛みを感じた。そして腕を見ると桃香が腕をつまんでいた。

京「・・・なんだ?」

桃香「・・・なんでもないです!」

と少し怒りながら桃香は答える。

京「(いったい何なんだ?)」

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愛紗「・・・趙雲殿」

それをよそに愛紗は趙雲に話しかける。

趙雲「ん?どうされた?関羽殿」

愛紗「あなたの志に深く感銘を受けた。・・・我が盟友になって戴けないだろうか」

鈴々「鈴々も、おねーさんとお友達になりたいのだ!」

趙雲「ふっ、志を同じくする人間、考えることは一緒ということか」

愛紗「??どういうことだ」

愛紗「関羽殿の心の中に、私と同じ炎を見たのだ。そして志を共にしたいと、そう思った」

穏やかな微笑みを浮かべて、趙雲は愛紗に向かって手を差し出した。

趙雲「友として、共にこの乱世を治めよう」

愛紗「ああ!」

鈴々「治めるのだ!」

桃香「あ〜!私も!私もだよ!」

がっちりと握手をしている三人の姿を見て、急いで駆け寄った桃香が、自分の手を三人の手に乗せる。

桃香「みんなで頑張って、平和な世界を作ろうね♪大丈夫、力を合わせれば、ド〜ンッ!ってすぐに平和な世界が出来ちゃうんだから♪」

と京に向けていた態度とは一変して、桃香は明るく言う。

鈴々「そんなに簡単なわけないのだ。お姉ちゃんは気楽なのだな〜」

趙雲「ふっ、なかなかどうして。そういうお気楽さも時には必要というものだ」

愛紗「そうだな。・・・我が名は関羽。字は雲長。真名は愛紗だ」

鈴々「鈴々は鈴々!張飛と翼徳と鈴々なのだ!」

桃香「劉備玄徳、真名は桃香だよ!」

趙雲「我が名は趙雲。字は子龍。真名は星という。・・・今後ともよろしく頼む」

再びがっちりと握手を交わし、これからの友誼を誓いあう四人に、言いにくそうな顔をしながら、公孫賛が桃香たちに近付いた。

愛紗「あ、ごめん、白蓮ちゃん!」

公孫賛「良いんだけど。・・・私だって、救国の志はあるんだから。忘れないでくれよな」

趙雲「ふふっ、拗ねなくても良いではありませんか」

公孫賛「す、拗ねてなんかいるか!ふんっ」

そんな風に会話を楽しんでいるうちに、ようやく陣割が決まった。

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愛紗「我らは左翼の部隊を率いることになりました。新参者に左翼全部隊を任せるとは、なかなか豪毅ですな、白蓮殿も」

愛紗たちは公孫賛とも真名を呼び合う関係になったようだ。

桃香「それだけ期待されてるって思って良いのかな?」

京「そうだろうな。・・・鈴々、頼むぞ?」

鈴々「任せろなのだ!」

京「俺は一応桃香の護衛ってことにしてもらったから」

桃香「・・・大丈夫ですか?」

他の兵たちと同じ格好をした京を見て、桃香はとても心配そうに言う。

京「大丈夫だろ。お前一人ぐらいは守れると思う。・・・多分な」

桃香「・・・危険なことはしないでくださいね」

愛紗「桃香様の仰る通りです。危険な目に遭いそうになったら桃香様と二人で逃げてくださいね」

京「ああ。そうさせてもらう」

京たちがそんなやりとりをしていると

公孫賛「諸君!いよいよ出陣の時が来た!」

軍の先頭に立っている公孫賛の演説が始まった。

公孫賛「今まで幾度となく退治しながら、いつも逃げて散っていた盗賊共!今日こそは殲滅してくれよう!公孫の勇者たちよ!今こそ功名の好機ぞ!各々存分に手柄をたてぃ!」

公孫賛兵士「うぉぉぉぉぉ」

大地を揺るがす鬨の声を満足げに聞いた公孫賛が

公孫賛「出陣だ!」

高々と剣を掲げ、出陣の号令を出した。意気揚々と城門から出発する兵士たちと共に、京達も一隊を率いて移動を開始した。

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京「盗賊相手に初陣か」

愛紗「どうかされましたか?」

京「さすがにこういうのは初めてだからな」

と言い手を見ると少し震えていた。

京「俺が住んでいた世界は、戦いなんて他人ごとだったからな。そんなやつが、今戦いに身を投じようとしている。・・・さすがに緊張、いや、怖いのか」

と本音を言った。

桃香「天の世界には戦争って無かったんですか?」

京「・・・天の世界と言っても、所詮は同じ人間が住むところだからな。戦争とか、争いなどは当然あったさ。いつも世界のどこかで戦争が起こってた。だけど俺の周りは平和でな。喧嘩ならあったが、戦いってものは無かったな。・・・どこか他人事だった。・・・可能性としてはいつか起こるのではと思ってはいたが、・・・今目の前に突きつけられているとはな」

と言い手を強く握りしめた。

京「・・・桃香や愛紗、鈴々だって平気そうなのにな。男で、しかも主の俺が怖がっていれば、世話ないな」

愛紗「そんなことありません!戦いを怖がるのは、人として当然のことですから」

桃香「そうです。戦うってことは人を傷つけるってことです。本当はやっちゃいけないことです」

鈴々「だけど不条理な暴力を見つけたら、それに向かって敢然と立ち向かうしかないのだ」

桃香「うん。私たちだって、正直に言うとちょっと怖いですけど、・・・でも、私たちが怖がっていたら、力の無い人たちを助けることができませんから」

愛紗「だから勇気を振り絞り、暴虐と対峙するのです」

京「・・・強いな、三人とも」

三人の言葉を聞き京は思った。

桃香「えへへ、私のはカラ元気ですけどね♪・・・愛紗ちゃんや鈴々ちゃんみたいに、武芸の嗜みがある訳じゃないですし」

京「そうなのか?それなら桃香より俺の方がマシか」

愛紗「ほぉ。ご主人様は何か武芸の嗜みがあると?」

京「独学だけどな。・・・扱ってたのは真剣じゃなく木刀だったけど」

鈴々「木刀って木で作られた刀のこと〜?」

京「ああ」

公孫賛に貰った腰に佩びている安物の剣を撫でる。

京「これを抜けば人が傷つく・・・か。ははっ、そう考えるとなかなか抜けないな」

愛紗「しかしご主人様の身を守る術は、腰間に佩く三尺の秋水のみ。・・・お優しいのも結構ですが、己の価値というものを考えてくださいね」

鈴々「そうそうなのだ。お兄ちゃんと、弱い者いじめをする悪者では、命の価値が違うのだ」

京「・・・」

鈴々にそう言われ京は空を見上げる。

京「(命の価値が違う・・・か。・・・実際どうなんだろうな?理想も何もなく、ただここにいる俺と、盗賊の奴らと・・・どう違うのか。・・・友樹ならどう答えるんだろうか)」

と思いながら友人の顔を思い出す。

京「(・・・しかし戦争の雰囲気がここまでとは、一刀には経験させたくないな。・・・早くあいつを見つけないと。・・・そのためには)」

と頭を下げ、自分の手を見つめながら

京「戦うしかない、か」

と呟く。

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京「覚悟はしているつもりだった。けど、実際その時が来ると程度が知れるな」

愛紗「心配なさらずとも、ご主人様は私と鈴々が命に替えてもお守り致します」

鈴々「そうそう。だから安心するのだ♪」

桃香「私だって頑張って守ります」

京「・・・ありがとな」

と京は素直に感謝を述べた。

京「(自分で決めたことだ。・・・しっかりしないとな。そうじゃないとあいつらに、・・・特に友樹に合わせる顔が無い)」

そうして京はもう一度覚悟を決めた。そして

京「悪いがみんな、今は頼りにするぞ」

愛紗「ええ♪今とは言わず、これからも我々にたくさん頼ってください。それこそ臣下としての喜びなのですから」

桃香「ご主人様のためなら、たくさん頑張ります♪」

鈴々「鈴々がんばるのだ〜!」

と京に頼られて嬉しいのか三人とも張りきっていると

兵士A「全軍停止!これより我が軍は鶴翼の陣を敷く!各員粛々と移動せよ!」

本陣からの伝令が、命令を伝えながら前線に向かって駆け去っていった。

愛紗「いよいよですね」

京「ああ。兵隊たちの指揮は愛紗、鈴々。よろしく頼む」

鈴々「合点なのだ!」

愛紗「桃香様はご主人様と共に」

桃香「うん。二人とも気をつけてね」

京「あと、今から『条件』だ」

愛紗「御意。では!」

京たちにお辞儀をした愛紗が

愛紗「聞けぃ!劉備隊の兵どもよ!敵は組織化もされていない雑兵どもだ。気負うな!さりとて慢心するな!公孫賛殿の下、共に戦い、勝利を味わおうではないか!」

公孫賛軍兵士「応っ!」

愛紗「今より、戦訓を授ける!心して聞けぃ!」

公孫賛軍兵士「応っ!」

鈴々「兵隊のみんなは三人一組になるのだ!一人の敵に三人で当たれば必勝なのだ!一人は敵と対峙して防御するのだ!一人は防御している横から攻撃するのだ!最後の一人は周囲を警戒なのだ!」

愛紗「敵は飢えた獣と思え!情けをかけるな!情けをかければ、それはいつしか仇となって跳ね返ってくることを知れ!」

鈴々「みんなで一生懸命戦って!勝って!平和の暮らしを取り戻すのだ〜!」

公孫賛軍兵士「おお〜〜〜〜〜〜!」

愛紗「全軍、戦闘態勢を取れ!」

愛紗の号令と共に兵士たちが抜刀する。それと同時に

兵士B「盗賊たちが突出してきました!」

緊迫した面持ちの伝令が、本陣に向かって疾走していく。

鈴々「いよいよ戦い開始なのだ!みんな鈴々に続け〜〜っ!」

愛紗「関羽隊、我らも行くぞ!」

公孫賛軍兵士「応っ!」

愛紗「全軍、突撃ぃぃ!」

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そして数時間後

 

愛紗「よし!敵は総崩れだ!今こそ我らの力を見せつけるとき!」

鈴々「みんな、鈴々に続くのだ!」

周囲の兵士を勇ましく励ました二人が、戦線を崩壊させた盗賊団に敢然と立ち向かっていく。それに呼応するかのように、中央と右翼の軍も突撃を開始する。大地を揺るがす怒濤の足音。その響きは腹の奥底にまで響き渡ってくる。

 

京「・・・すごいな」

桃香「ご主人様、まだ怖いですか?」

京「・・・」

京の顔を覗き込んだ桃香が、心配そうな表情で京の手を握る。

桃香「ご主人様が、何か辛い思いをしているんじゃないかって、そんな気がしまして」

京「・・・顔に出てたか?」

桃香「ううん。出てはいなかったですけど。・・・でも、辛そうだなって思いまして」

京「・・・そっか。・・・目の前で戦いが起こって、そして人が死んでいく。・・・そういうのを実際見ると、やっぱり・・・な」

桃香「優しんですね、ご主人様」

京「そうじゃない。ただ、慣れていないだけだ」

と桃香の言葉を否定する。

京「(そう。慣れていないだけだ。相手に同情してもいないし、死んで当然だとも思ってる。俺自身がこの光景を見ても、もう辛いとも思わない。けど・・・一刀がこの光景を見ていると思うと、・・・それが一番辛い)」

と前方で起こっている戦いを見ながら京は思う。

桃香「辛そうですね。けどですね、ご主人様。そういったもの全てを受け止めなければ、人を助けることは出来ないですよ?」

京「悪いが桃香。勘違いしている」

桃香「えっ?」

京「俺自身この光景にもう慣れつつある。・・・俺が辛そうに見えるとしたら、それは友達の事を思っていたからだ」

桃香「友達ですか?こちらに来ているかもしれないという」

京「ああ。その一人が、とても優しい奴なんだ。とてもこの世界に似合わない奴でな。だから、あいつがこの光景を見ていると思うと、・・・辛くてな」

桃香「・・・ご主人様」

と目を細めながら戦いを見つめている京の手を桃香は握りしめる。

京「・・・あとな、桃香」

桃香「はい?」

京「今回は見逃すが、次は無いぞ。・・・『条件』を破るのは」

桃香「あっ、・・・すいません」

と京に指摘され、桃香は今までご主人様と呼んでいたことに気付き、とても落ち込んだ。

京「ははっ、今度から気をつけような」

桃香「・・・はい」

とやりとりしていると、ダッダッダッ、と横から足音が聞こえてきた。京がその方向を見ると

京「なっ!?」

すぐそこに刀を構えた盗賊が一人走って来ていた。

京「ちっ!」

桃香「きゃ」

とっさの判断で桃香を横に押し、剣を構えた。そして、キーン、と金属がはじく音がした。

京「(どこから現れた!?しかも、こんな近くに盗賊がいたのに気付かないとは!)」

一太刀を受け、少し距離をとり対峙しながら、京は自分の失態を悔やむ。

京「(しかも位置が悪い。・・・距離をとったのが仇となったか)」

桃香との距離と盗賊との距離、そして、桃香と盗賊の距離がほぼ一緒だった。

桃香「ご主人様!」

と桃香が京に近付いて走ってくる。盗賊は桃香の方へ向かおうとする。

京「くそっ」

と二人の間に入り、・・・そして、グサッ、と音がしたと思うと盗賊が倒れる。

京「はぁはぁはぁ」

京は荒れた呼吸を整えようとはせず、自分の持っていた刀を見る。

京「(これは、・・・血か?・・・俺が殺したのか?)」

今度は倒れている盗賊を見る。

桃香「ご主人様?」

と桃香が話しかけるが京は反応をしない。京は倒れた盗賊から目を放そうとしなかった。

京「(いつかやるとは思っていたが、こんなに早く人を・・・殺すとは)」

桃香「ご主人様、・・・ご主人様!」

と桃香は京が反応しないのを見て、語尾が荒くなる。

京「心配するな桃香。俺は大丈夫だ」

と桃香の頭を撫でながら答える。

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こうして、愛紗や鈴々、そして趙雲たちの活躍もあって、公孫賛軍は完全なる勝利を手に入れた。意気揚々と引き上げる兵士の中、京たちは公孫賛たちと合流する。

公孫賛「完全なる勝利、だったな。いやぁ、良かった良かった」

京「さすがだな」

桃香「・・・」

公孫賛「いやいや、柊たちの力があってこそだよ。ありがとう」

京「俺は何もしていないからな。お礼なら愛紗たちに頼む」

桃香「・・・」

京「・・・さっきからどうした、桃香?」

さっきから黙って京の顔をうかがっていた桃香に話しかける。

桃香「・・・大丈夫ですか?」

京「ん?」

桃香「さっきのこと」

京「・・・ああ。言ったろ。大丈夫だって」

桃香「でも」

公孫賛「どうしたんだ?」

と二人のやりとりを見て疑問に思っていたみんなの代表として公孫賛が訊いてきた。

京「いや、さっきだな」

と京はさっきの出来事をみんなに話しはじめた。

 

公孫賛「そうか、そんなことが」

京「それだけなんだが、桃香が気にしてるみたいでな」

愛紗「ごしゅ、・・・京殿」

京「まわりに俺達しかいないから『条件』は解除だ」

愛紗「はい。それではご主人様。桃香様を助けていただきありがとうございます」

と愛紗は京に頭を下げた。

京「気にするな。それに今の俺は桃香の護衛なんだしな。助けるのは当たり前だ」

桃香「・・・でも」

と桃香は俯いたまま、話しかけようとする。

京「桃香。さっき自分で言ったろ。全てを受け入れないと人を助けることなどできないと」

桃香「・・・」

京「こんなことを気にしていたら先には進めないさ。だからな、もう気にするな」

桃香「・・・けど」

京「それともここでお前は立ち止まるのか、・・・劉備玄徳?」

桃香「っ!?」

京に名前の方を呼ばれ顔を挙げる。

京「答えろ。劉備玄徳」

桃香「・・・真名で呼んでください」

京「呼んで欲しかったら、顔を挙げ、俺に守ってもらったことを誇りにしろ。いいな」

桃香「・・・分かりました」

桃香は京の眼を見つめながら答えた。

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趙雲「仲が良いですな。お二人とも」

桃香「そ、そんなこと・・・///」

京「別に普通だろ」

趙雲の発言に桃香は照れるが、京はいつも通りだった。

桃香「・・・ぶ〜」

京の対応に桃香は頬を膨らませた。

趙雲「ふふふっ。本当に仲がよろしいことで。・・・それはそうと伯珪殿。最近、何やらおかしな雰囲気を感じないか?」

と急にまじめな顔をし、立ち止まって空を睨みつけながら問いかける。それに合わせるかのようにみんな立ち止まった。

公孫賛「おかしな雰囲気?どうだろう。私は特に感じたことは無いけど」

桃香「白蓮ちゃん、のんびりしてるねぇ〜」

公孫賛「むむっ。確かにのんびりしているかもしれないが、桃香に言われるのは無性に腹立つ」

桃香「あ、ひどぉい!私は伯蓮ちゃんみたいに、のんびりなんかしてないもんね!ですよね、ご主人様」

京「いや、どっちもどっちだろ」

鈴々「そう思っているのはお姉ちゃんだけなのだ」

くっくっ、と鈴々は喉を鳴らして笑う。

桃香「ぶ〜、鈴々ちゃんまでそんなこと言うの?ご主人様までひどい」

桃香と鈴々が騒ぎ出す。その様子を微笑んで見ていた愛紗が

愛紗「しかし、星の言うことも尤も。最近、特に匪賊共の動きが活発化しているように感じます」

至極マジメな顔でポツリと呟いた。

趙雲「お主もそう思うのか」

愛紗「ああ。ここしばらく、匪賊は増加の一方だ。その者共が村を襲い、人を殺し、財貨を奪う。・・・地方ではすでに飢饉の兆候すら出ている」

鈴々「収穫した作物を奪われたりするんだから、当然飢饉も起こっちゃうのだ」

趙雲「うむ。それと共に、国境周辺で五胡の影もちらついているという。・・・何かが起ころうとしている。そう思えるな」

愛紗「大きな動乱に繋がるかもしれん、か」

京「趙雲の言うとおり、まちがいなく起きるな」

愛紗「ご主人様もそうお考えで?」

京「考えってわけじゃないけどな。けど、匪賊だけじゃない。いつか、暴政に対して爆発が起こるはずだ。その動乱の渦の中で、俺たちはどうやって立っていくか。・・・それが問題だな」

愛紗「そう・・・ですね」

そう呟き、愛紗は遠い未来を見据えるように天空を見上げた。

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趙雲「・・・それはそうと、柊殿」

真面目な感じから一変して趙雲は京に話しかける。

京「ん?どうした?」

趙雲「私の事は真名で呼んではくれないのですかな?」

京「呼んでよかったのか?」

趙雲「ええ。柊殿は桃香殿たちの主なのですからな」

京「そっか。でも、ちゃんと本人から預かったわけじゃないからな」

趙雲「ふふっ。柊殿は律義ですな」

京「そうか?」

趙雲「それでは、柊殿。改めまして、我が名は趙雲、字は子龍。真名を星と申します。これからは真名でお呼びくだされ」

京「ああ。分かった。それじゃ俺も改めて。俺の名は柊京。知っての通り字と真名はない。こっちの世界に合わせるなら、京ってのが真名にあたる。だから今度から京でいい」

星「分かりました京殿。・・・ふふっ。それにしても本当に京殿は律義ですな。この前の少年に見せてあげたいほどですな」

京「ん?何かあったのか?」

星「ええ。伯珪殿のところに来る前まで、友人と旅をしていたのですが、その時、賊に襲われていた少年を助けたのです。そしたらその少年が私の友人の真名を許可も得ず呼んだのです」

京「へぇ〜。そいつはあほだな。・・・殺したのか?」

星「いえ。訂正してもらい、そのあと許しましたな」

京「(・・・あ〜、俺も人の事言えんか)」

京は初めて桃香たちと会ったときに愛紗の真名を呼んだことを思い出した。

星「どうかなさいましたかな?」

京「いや、なんでもない。それよりも立ち止まってないでさっさと帰ろうか」

桃香「は〜い」

愛紗「はい」

鈴々「そうなのだ」

星「そうですな」

公孫賛「そうだな」

 

こうして京の初陣は終わった。これから起こるであろう出来事を不安に感じながら。

 

説明
酷い文ですが読んでくれる人がいてくれると幸いです。
基本ゲームのシナリオ通りです。
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コメント
>truth様 コメントありがとうございます。最初は一刀と京の落ちた場所を逆にしようかと思ったのですが、そう思っていただける方がいると素直にうれしいです(フリージア)
>truth様 報告ありがとうございます。さっそく修正させていただきました。(フリージア)
>スターダスト様 コメントありがとうございます。京が聞かなかった理由は次回の話で書きますので、もうしばらく待っていただけるとありがたいです。(フリージア)
コメントを返そうか悩んだのですが、今回から返事をしようかと思います(フリージア)
おいおい・・・何でそいつの特徴や着ていた服の情報を聞こうとしないんだよ京!!(スターダスト)
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