【FF11】ひと時の休息
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高い石造りの壁、街全体が要塞のようなサンドリア。

そこかしこには大型の城砦攻撃武器・守備防護壁が置かれている。

無粋ではあるがそれが今の現状。

 

そんな戦時下の街にも冬はやってくる。

息は白く空は雪になりそうなほど淀む。

そんな空を見上げながら、手をすり合わせ指先を温める。

朱色の髪のジョゼアーノ。

紅白の神官着のまま、人を待つ。

星芒祭には一緒にいたいと告げてみた。

いつどこで戦いが勃発するかわからないこの時勢。

無理なのは承知で言ってみた。

この日会いたいと。

 

「確実な約束はできんぞ」

そう端正な顔立ちの銀髪のミュゼルワールは言った。

「分かっています。貴方が非常に大変な立場であるのは痛い程知ってはいます。でも、この日だけでも今までの無事を神に祈るのもいいとは思いませんか?」

ジョゼアーノの言葉にミュゼルワールはふんと鼻を鳴らした。

「…神に?」

「ええ」

戦が一段落し街へと戻ってきた彼にジョゼアーノは会いに行った。

ふとしたことから急速に親しくなった二人だった。

互いに情愛と呼べるものを持ち、一線を越えた秘密を共有している仲だ。

ミュゼルワールは下から見つめる頭一つ分小さな年若いジョゼアーノを軽く見ると視線を逸らした。

「…神ではなく、お前に会うというであればいいだろう」

言葉に嬉しそうに破顔するジョゼアーノ。

ミュゼルワールも小さく口元を綻ばせた。

 

もう、約束の日は終わりに近づいていた。

あと少しで日が変わる。

それでもジョゼアーノは彼がいつもいる場所で待っていた。

分かっている。

きっと彼は来る。

 

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この日に意味があるのではなく、無事で会うことに意味があるのだ。

だから、日が変わろうが待っていようと思っていた。

白いものが舞い落ちる。

遙か北の山、ザルカバードからの便り。

雪。

ついに降り出した。

道理で寒いと思った。

そうジョゼアーノは肩を丸め小さく笑った。

何時間もここで待っている。

己も忙しい身であったが、約束だけは果たしたかった。

そんな街角に立ちつくしている神官を奇異な眼で見るものも少なくない。

だが、それでもよかった。

ここにいれば彼とつながっている気がする。

きっと彼は無事だ。

不吉な知らせは街に流れてはいない。

きっときっとこの広い世界のどこかに存在している。

生きて帰ってくるなら、待つことくらい問題はない。

「…スノーマンになるつもりか?ジョゼ」

ふわりと肩にかかる暖かなマント。

低く通る美声。

「ミュゼルワール…!」

ジョゼアーノは顔を上げた。

「遅くなった、オーク共に手こずった」

鎧のあちこちに傷や凹みができている。

よく見れば体にも傷。

彼ほどの手だれでも苦戦したとなると、相手方もさぞや名のある将軍だったのだろう。

「無事で何よりです」

笑おうと思った。

泣くつもりはなかった。

しかし、瞳から雫がこぼれた。

元気そうな彼をみたら感極まった。

それだけ心に彼が息づいている証拠だろう。

「何を泣く」

ジョゼアーノの頭に積もり始めた雪を払い落としながらミュゼルワールは呟いた。

 

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「いえ、泣くつもりではなかったのです」

まだ流れる涙に困惑したようにミュゼルワールはジョゼアーノの頭を左胸に抱いた。

「…俺はこのとおり生きている」

だが鎧で覆われた胸からは鼓動も体温も伝わらない。

むしろ外気に冷やされ冷たかった。

「鎧、冷たいですよ…」

言いながらもくすくすとジョゼアーノは笑いミュゼルワールの鎧の裾を握った。

「約束には間に合わなかったか」

ジョゼアーノを抱いたまま、空を見上げるミュゼルワール。

「いいのです。貴方が生きている…貴方に触れられる…それだけで僕は十分なのです」

「そうか」

ただこうしていられる。

ただ側にいられる。

何の変哲もないそんな小さな安らぎが、本当の幸福なのかも知れないとミュゼルワールは思った。

「俺は今、生きていることを感謝する」

「ミュゼ…」

ミュゼルワールの呟きに、ジョゼアーノの顔に慈愛の神のような笑顔が浮かんだ。

それにミュゼルワールは眩しそうに目を細め、見つめたのだった。

 

 

end

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FF11-ミュゼジョゼ
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