博麗霊夢のありふれた日常
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最近これといって事件も起きず、毎日が同じような繰り返し。私はいいかげん暇すぎて死にそうだった。

「ふぁ〜あ」

「よくそんなだらけていられるな。毎日毎日無感動無気力……およそ博麗の巫女らしくない」

大きなあくびを一つしたところで、神社の縁側にいつものように居座る魔法使いが苦言を呈す。

「そういうけどね、暇をつぶせるような事件が最近身近にあった? 平凡で退屈な毎日が限りなく繰り返されるだけ――」

前の事件を解決してからもうどれくらいたったか。変わり映えのしない日常は金太郎飴のように延々と続いていた。

「まあ確かにそうだが……。あぁ、そういえば香霖が面白いものを持ってたから拝借してきたぜ」

そういって魔理沙が取り出したのは、スプレー缶だった。

「なにそれ?」

「ドラマチックガスというらしい。なんでもない日常が一変するって話だ」

「ふ〜ん。暇だし、かけてみるか」

私は魔理沙の手から缶をひったくり、自分の体にまんべんなくふりかけてみた。

「……何にも起こらないじゃない」

「おかしいなぁ、香霖がアイテムの用途を間違えるはずないんだが」

「期待して損した。しょうがない、境内の掃除でもしようかしら」

半ば諦めながら竹箒を取りに立ち上がった。

「おい、今なんていった? 掃除だって!?」

「止めないで魔理沙。覚悟は出来ているわ」

自分のやろうとしていることが無茶なのはわかっている。だが、博麗の巫女に生まれたからには尻込みするわけにはいかない。

「――おまえの覚悟はわかった。だが無茶はするなよ。そうだ、コレを持って行け」

魔理沙は自分の分身でもある箒を差し出した。大切な人からもらったものだと聞いたことがある。

「こんな大切なものを……。魔理沙、無事に帰ってこれたら、私――」

「おっと、それ以上は言うなよ。そういうのは帰ってきてから言うもんだぜ?」

「そうね、ありがとう。必ず無事帰ってみせるわ!」

零れそうな涙を振るって、私は境内へと足を踏み出したのだった。

 

外へ一歩踏み出すと、なにやら不吉な風が吹き惑っていた。

「嵐よ吹け! 何者も私の行く手を阻むことは出来ないわ!」

「どうしたの? 深刻な顔しちゃって」

ひょっこりと現れたのは、七色の魔法使いアリス・マーガトロイドだった。

「これから……、掃除へ行くのよ」

「え〜っ! 掃除!? あんた一人で? そんな……無茶だわ!」

「これが博麗の巫女の生きる道なのよ。ただ……、別れる前に一言だけいっておくわ。魔理沙は……」

「魔理沙はあんたが大好きだったのよ」

アリスは目を見開くと、ぽうっと頬を染めた。

「私も……好きだったわよ」

面映ゆそうにぽつりとつぶやく。私は少し羨ましいと思いながらも、こう続けた。

「行ってあげて、アリス。魔理沙は神社の中にいるわよ。じゃ、私はこれで!」

「霊夢! ……ありがとう」

最後の言葉は、小さくてよく聞きとれなかった。

 

「あら、いいところに」

前方から現れたのは、射命丸文だった。

「今度の新聞にあなたの記事を載せたいんですよ。取材させてくれません?」

「残念だけど……、きょうは重大な任務があるから」

「へぇ〜、断るんですか? いいんですかぁ〜、バラしますよ?」

そういって一枚の写真をちらつかせた。つまみ食いの犯行現場をすっぱ抜かれたものだ。

「くっ、卑劣な」

「さぁさぁ、取材を受けてもらいますよ」

「もはやここまで……」

「コラァ! また違法取材をして!」

「いけない! 閻魔様だ」

文は四季映姫・ヤマザナドゥの姿を見るや否や、一目散に逃げ出した。

「ケガはありませんでしたか」

「おかげで助かったわ」

「えっ! 一人で掃除に? 思いとどまるわけにはいかないのですか」

「石にかじりついてもやり遂げる決心よ」

「それこそまことの博麗の巫女。あなたのような巫女を見られて誇りに思います」

四季映姫の言葉を尻目に、私はさらに歩みを進めた。

 

ついに目的地へたどり着いた。あたりには落ち葉が空を舞い、掃除の困難さを物語っている。

「一瞬の油断が命取りになるわね……」

何故か博麗神社の境内で掃除している巫女、東風谷早苗を手招きしてこちらに呼ぶ。

「なんですか?」

「シッ、静かに。ちょっと聞くけど」

私は早苗の耳に口を近づけ、小声で訪ねた。

「箒の使い方を教えてほしいの」

「え〜っ! 箒の使い方ですって!?」

早苗は自身の箒を強く握りしめ、霊夢に見えるように差し出した。

「ほ、箒なら両手でしっかり握って……」

「両手で握って!?」

「そう、左に掃くのです」

「なんですって! 左に!?」

「掃いて集めます」

「ちっとも知らなかったわ! ありがとう」

その後、二人して落ち葉を集めて勤めを果たした。

「やりましたね! 長い苦難の道を乗り越え、よくぞここまで……」

「早苗も一緒に行かない? 神社でみんなが待ってる」

「いいえ、ここまでです。私にも、待っている仲間がいますので」

「残念だけど、お別れね。あなたみたいな戦友を持てて私は幸せだったわ」

私は早苗とがっちりと握手を交わして、皆の待つ博麗神社を目指した。

 

「勤めを果たした後は、足取りも軽いわね」

私は魔理沙の箒を片手に、家路についていた。

「待ってましたよ、霊夢さん」

神社までもうすぐというところで、文が待ち伏せをしていた。

「ここまできて……、天は私を見放したか……」

ジリジリと追い詰められ、万事休す。両目をつむり、来るべき最後を待った。

「待って!!」

アリスの叫びが境内を包み、文の歩みが止まった。

「霊夢は境内の掃除をするために取材を断ったのよ!」

「境内の掃除っ!?」

「そ、そんなこととは夢にもしらず。私はとんでもないことをしてしまった!」

文は膝を折り、両手を地について許しを請う。

「わかってくれればいいのよ。みんな仲間じゃない」

「れ、霊夢さん……!」

「おーい! 無事かーっ!」

「魔理沙! 私は無事帰ってきたわよ!」

「よかった、私は心配で心配で……。ほら、うまい茶を煎れておいたぜ」

「さぁ、帰りましょう。我が家へ!」

博麗神社のシルエットを指さして、私たちは帰るべき場所へと向かうのだった。

縁側に座って、みんなでお茶を啜る。

「見て、茶柱が!」

「霊夢を祝福してくれているんだな」

「今日一日で、私は大きく成長した気がする」

「そうだ、この一日の出来事を後世に伝えるために記事にしましょう」

文の提案に、上機嫌で取材を受ける。

『今日私は博麗神社境内の掃除に出かけた。そして――』

ふと、言葉に詰まった。おかしい、あんなに色々なことがあったのに次が続かない。

「これだけのことだったかなぁ」

「ガスの効き目が切れたな」

結局、今日もありふれた日常の一つにすぎなかったのだった。

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コメント
これなんてドラえm・・・ゲフンゲフンなんでもないwww  面白かったですよ!(ワカンタンカ)
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